68話「奪われた旋律」

Murder With Too Many Notes / 2000
ビリー・コノリーサスペンス映画音楽の巨匠フィンドレー・クロフォード(ビリー・コノリー)が弟子のガブリエルを殺害。ガブリエルはクロフォードの弟子だが、実際にはクロフォード名義の作品のゴーストライターで、彼が師匠に愛想をつかし、反逆しそうになったので犯行に及んだ。

天才作曲家が実は無能で脳天気

チャド・ウィレット冒頭のシーンでフィンドレーが、ガブリエル(チャド・ウィレット)のアドバイスで、音を消した場面。ガブリエルの死後にエンディングの音楽演出で、監督からこっぱみじんに全否定される場面、どちらも「天才作曲家が実は無能」を意味していて、笑える設定でした。フィンドレーの人物像は好きでしたが、かなりヤバイ状況で鼻歌を歌いながら殺害計画を練っている姿など、大胆不敵な人物とも感じます。

容疑者特定の瞬間が見えない

しかし警部はいったいどのタイミングでクロフォード氏を犯人とにらみましたかね~。狂言ガス欠をしたくらいなので、その前ということになりますが、私はそれほど怪しく感じませんでした。

序盤が延々と続き、急に投了(負けを認める)シーン

コロンボが犯人を徐々に追いつめて行く雰囲気もなく、将棋で言えば長い序盤が延々と続き、急に投了シーン…という雰囲気。しかも、えらく楽しそうに犯行を認めているし。普通だったら認めません、殺人容疑ですから。「復讐を抱いて眠れ」も同じく、こんなにあっさり片付けないでほしい気がします。演出のパトリック・マクグーハンの好みでしょうか。

コロンボ作品のラストシーンは、犯人がじたばたしながらも完全に敗北を認めざるを得ない…ってのが美しいと思ったりしますが、今回は動機と状況証拠だけで逮捕してます。「音楽クラブのある刑務所があったら紹介してくれ」が自供ですね、楽観的な人です~。

現実逃避型の自供か?

チャールズ・チョフィでも何度か見るうちに気付いたのですが「クロフォードは捕まりたかった」のかも知れません。番組後半でリッター監督(チャールズ・チョフィ)に「正気か?観客が眠っていまう」とまで酷評され、「起こしてみせる」と突き返すが、おそらく全く解決策を見いだす自信はない。もう才能は枯れているのです。演奏家にもカッコつかないし、一夜で「マジック」を起こせる弟子は自分が殺してしまいました。殺人を暴かれて苦しみから逃れられたのかも。

This Old Man

ヒラリー・ダナー最後のシーンで故ガブリエルの恋人レベッカ(ヒラリー・ダナー)に、ピアノを教えてもらうシーン。この音楽は刑事コロンボシリーズの劇中で頻繁に耳にします。コロンボ警部の鼻歌や、ちょっとおどけたシーンでのBGMとして多用されています。ここではコロンボは「♪おもちゃで遊ぼ」と口ずさみますが題名は「This Old Man」

またまたマクグーハンの娘

アン・マクグーハンガブリエルが転落死するその瞬間に居合わせたご婦人マーシアはパトリック・マクグーハンの次女「アン・マクグーハン」との情報が寄せられました。そう言われてみれば、顔がお父さんによく似ていますね。

今回もデガルモ刑事が活躍

デガルモ刑事捜査を手伝ってくれる部下は、67話「復讐を抱いて眠れ」に続いて、デガルモ刑事。このように年配の刑事が登場する回は、捜査シーンに落ち着いた雰囲気を感じさせ、けっこう好きです。

原題「Murder With Too Many Notes」の直訳は「あまりに多くの音符との殺人」

「あまりに多くの音符」というのは、クロフォードの作風を意味しているのでしょうか?映画「アマデウス」でモーツァルトが皇帝から「音符が多すぎる」と指摘され「自分の曲には必要な音符しかない」と反論した場面を思い出しました。音符が多いというのは、洗練されていないような意味にもとられ、クロフォードの作風が古臭いことを比喩しているのだとも感じます。それに対しガブリエルの曲は映画を引き立たせる最小の音符で構成されていたとか。

音符とメモ

音楽には一般的に「CDEFGAB」「ドレミファソラシ」のNoteがあるのですね。
「G・A・B・E」「B・E・C・C・A」
「B・E・C・C・A」「G・A・B・E」
というメロディ(音符・Notes)を愛する人に渡した手紙(メモ・Note)。これはとても綺麗なテーマだと思えます。しかも「Too Many Notes」ではなくシンプル。よく見ると4/4の楽譜に納まっていませんが(笑)
私の好きな「ペンギン・カフェ・オーケストラ」が敬愛する作曲家「ジョン・ケージ」に捧げた曲「Cage Dead(1993)」では「C・A・G・E」「D・E・A・D」のコードあるいは音符を順に弾く構成でできています。本作のヒントになっているでしょうか?

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ケーヴァ、パトリック・マクグーハン

フィンドレー・クロフォード:ビリー・コノリー(声:佐々木勝彦)
ガブリエル・マッケンリー:チャド・ウィレット(声:森岡弘一郎)
レベッカ:ヒラリー・ダナー(声:山田里奈)
シドニー・リッター:チャールズ・チョフィ(声:小林勝彦)
デガルモ刑事:リチャード・リール

加筆:2021年11月21日

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