54話「華麗なる罠」

Uneasy Lies the Crown / 1990

楽しむ意欲を持って見たくなる作品

歯科医ウェズリー・コーマン(ジェームズ・リード)が妻の愛人である俳優アダムを殺害し、自分の妻の犯行に見せるという話。犯行計画はかなり「きわどい」です。妻や愛人がすべて自分の思い通りに行動しないと成立しません。しかしこれは、新・刑事コロンボシリーズの中では私が好きな作品の一つ。刑事コロンボは旧作の45作のみだ、と断言してしまうと楽しめません。

古典的な作品との共通点

コメンテーターさんからの情報で、この作品の脚本は「旧シリーズのために書かれた」ものだということです。犯人の職業に特化した犯行。「転落回避」「報復」「金銭問題」などを一挙に解決できる殺人動機。「アダムが歯医者に通院」「転落した車のギアがニュートラル」「シャツのポケットに不倫相手夫妻の名入マッチ」「残っていた毒の濃度」「リディアの、2〜3分でもう‥発言」など面白い手がかりも満載。「緊急ボタンの解説」を競馬場のラウンジで、勝手に回線をつなぎかえ実演したことは驚きですが(笑)

ギャンブル好きが祟ってしまう

ただしストーリー全体を冷静に見直すと、犯人のウェズリーは今後この華麗なる家族と一緒にどうやって余生をすごそうと思っているのか?大疑問です。相変わらずのギャンブル好き、殺人犯人となった妻、自分に愛想を尽かした義父。馬鹿は死ななきゃ直らない…と言った感想です。犯人が「頭が良い」というコロンボ作品の理想からは外れました。

奥さまは魔女のダーリン!

ディック・サージェント奥さまは魔女のダーリン役ディック・サージェントが脇役で出演していますが、カミさんと一緒に見ていて「これ誰だっけ?」と一緒に楽しめたことは良い思い出になりそうです。同じくポーカー仲間のナンシー・ウォーカーなどの有名人は、ウェズリーの歯科医院に通ってたようです。

ジョンソン先生はスティーヴン・ギルボーン

スティーヴン・ギルボーン検死医のジョージ・ジョンソン先生は「スティーヴン・ギルボーン(Steven Gilborn)」。この「華麗なる罠」の他、56話「殺人講義」、57話「犯罪警報」58話「影なき殺人者」と立て続けに登場します。とても素敵な俳優さんですよね。

同じく鑑識のおじさん

モーガン・ジョーンズ鑑識のおじさん「モーガン・ジョーンズ」は、この「華麗なる罠」の他に51話「だまされたコロンボ」、56話「殺人講義」にも同役で出演していてちょっと気になる俳優さんです。

なんで、バーニーズ・ビーナリーが駄目だったか?

バーニーズ・ビーナリー2話の「死者の身代金」で登場した「バーニーズ・ビーナリー(写真)」。今回は、ウェズリーが義弟のデイヴィッドと一緒に呼び出される際お店を決めるのに、「バーニーズ・ビーナリー、いや駄目…」と、口にしています。夜の11時だったので、もう閉店後だったのかな。

原題「Uneasy Lies the Crown」

2021年に再度調べてみたところ「Uneasy lies the head that wears a crown」はシェイクスピア「ヘンリー四世」のセリフからの引用だと思えます。「冠をいただく頭は安んぜず」で、偉大なる者には心安まる時はないと訳せるそうです。アダムの治療シーンでウェズリーが「今すぐ処置すべきは右のクラウン(かぶせ歯の意味)」と言っていまして、殺人工作につながる原題だと思えます。(2021年4月15日)

邦題「華麗なる罠」

私は「それに対し邦題の『華麗なる罠』は最低レベルのアイデアです。」と酷評を書いていました。しかし日本語ではクラウンと歯科医の関連性が分かりづらい。ヘンリー四世のセリフも馴染みが薄いので。まったく別のアングルから考えられたのでしょう。

コーマンの豪邸とマルホランド

ウェズリーとリディア夫妻の住む海岸の豪邸は、コロンボ作品で犯人の居住地などで度々登場するマリブ地区です。それに対しアダムの事故現場「マルホランド(モルホーランド)」は、マリブの付近から東西に走る峠道で、バイクや自動車事故が良く起きる場所のようです。

ウェズリーとリディア夫妻の住む海岸の豪邸

監督:アラン・J・レヴィ
脚本:スティーブン・ボチコ

ウェズリー・コーマン:ジェームズ・リード(声:菅生隆之)
ホレス:ポール・バーク(声:大塚周夫)
リディア・コーマン:ジョー・アンダーソン(声:佐々木優子)
アダム・エヴァンス:マーシャル・R・ティーグ

加筆:2023年1月13日

58話「影なき殺人者」

Columbo and the Murder of a Rock Star / 1991

もしも「共犯」が前提なら、評価は全然変わってくる

「お面をかぶってスピード違反をしてくれ」と犯人ヒュー・クライトンは、共犯者でもない秘書のトリッシュにお願いしたとのこと。誰かスタッフの一人でも「このお話には無理がある…」と進言できなかったのでしょうか?

それなら最初から「一緒に愛人を殺してくれ」と秘書に依頼すべきだった?‥そうであればグっと真に迫れた気がします。「お面をかぶってスピード違反」は、計算された立派なアリバイトリックです。ただし、毎回共犯者がいるような設定に甘んじては、コロンボ作品としての品格も薄れるでしょうが。

これは知っておきたい!

ダブニー・コールマン犯人ヒュー・クライトンの俳優は「ダブニー・コールマン」。なんとこの人は17話「二つの顔」でマレー刑事役として出演しています。クリフォード家の現場検証のシーンで、けっこうセリフも多く印象に残るキャラクターです。18年前のことで風貌も一変しています。

ゲストスターは女優シェラ・デニス

シーラ・ダニーズ本作のゲストスターはシェラ・デニス(シーラ・ダニーズ)。それに対し犯人役のダブニー・コールマンは「スペシャル・ゲストスター」とクレジットされていることも興味深い。
※ゲストスターとスペシャル・ゲストスターのクレジットは自然でした。(加筆訂正:2022年11月1日)

ダフィ警部(ジョン・フィネガン)が大出世…?

ジョン・フィネガン51話「だまされたコロンボ」で登場した「ジョン・フィネガン」の本部長が、再登場。今回は「クエンティン・コルベット」と名前まではっきり出ていました。本部長(Chief)と言っても、一番偉い警察本部長ではないような気がしますが、どうでしょう?。

ハバック巡査

ソンドラ・クリー一緒に捜査に当たるハバック巡査は女優ソンドラ・クリーです。彼女は55話「マリブビーチ殺人事件」でジェニングスの恋人の一人、ロッカ夫人(電話をかけてくる女性)を演じています。ぜんぜん雰囲気が違いますよ。

検死医のジョージ

鑑識のジョージ鑑識のジョージは新シリーズではお馴染みの俳優:スティーヴン・ギルボーンです。54話「華麗なる罠」、56話「殺人講義」、57話「犯罪警報」にも登場します。

何と本物のリトル・リチャードが登場

リトル・リチャードが劇中で登場します、私の大好きなビートルズのポール・マッカートニーが、リトル・リチャードのカバーをレパートリーにしています。

コロンボとロック・スター殺人事件…

タイトルに使われている曲(題名:クローザー)ですが、なんと歌っているのは「シェラ・デニス」。劇中では歌手マーシー・エドワーズの作品だということです。受賞歴を重ねたスターシンガーにしては、歌唱力がちょっと…。という声もききましたが…やはり(笑)

エンディングにもこの歌が!

2012年にAXNミステリーで見たのですが、エンディングではコロンボ警部が車を運転しながらタイトル曲を一緒に歌っています。それが、恐ろしく下手なんです。ピーター・フォークの肉声(あるいは吹き替え?)だと思われます。ピーター・フォークは他の作品でも歌を歌っていますが、こんなに下手だっけ?調べることにしましょう!(加筆:2012年3月)

監督:アラン・J・レヴィ
脚本:ウィリアム・リード・ウッドフィールド

トリッシュ・フェアバンクス:シェラ・デニス(シーラ・ダニーズ)(声:塩田朋子)
ヒュー・クライトン:ダブニー・コールマン(声:小林清志
マーシー・エドワーズ:シェリル・パリス(声:弘中くみ子)
コルベット本部長:ジョン・フィネガン
ハバック巡査:ソンドラ・クリー
鑑識のジョージ:スティーヴン・ギルボーン

加筆:2023年12月17日

60話「初夜に消えた花嫁」

No Time to Die / 1992

この作品は私のような古典的コロンボファンにとっては、許されざる類(たぐい)のお話なのですが、意外と高く評価する人も存在するのです。これは面白い現象です。

賛否両論あります

激しく賛否両論が出ます。酷評が多いのですが、この作品が好きだという意見も頂きます。例えば18話「毒のある花」、22話「第三の終章」など、比較的「賛否どっちも少ない」作品より話題になるみたいです。

何年かかろうと、深く分析したい作品

私のコロンボ作品の鑑賞回数としては、この「初夜に消えた花嫁」と「死を呼ぶジグソー」が最も少ないです。どうしても好きな作品を中心に記事を書きがちですが、この作品もいつか深く探求して記事を書き上げるつもりです。

監督:アラン・J・レビイ
原作:エド・マクベイン
脚本:ロバート・バン・スコイク

アンディ:トーマス・カラブロ(声:大塚芳忠)
メリッサ:ジョアンナ・ゴーイング(声:佐々木優子)
ストラッサー:ダニエル・マクドナルド(声:谷口節)

加筆:2020年8月18日