3話「構想の死角」

Murder by the Book / 1971

カメラワークやライティングがスピルバーグ的?

演出が若き日のスピルバーグ監督というのは有名ですね。絵作りという着眼点で見ると、他の作品と大きな違いを感じます。まずは、構図の大胆さです。俳優同士の顔がくっつきそうになる程、近くで会話していたり、女優の横顔のシルエットでその場面を深く印象づけたりしています。全体的に画面が暗めなのも特長だと思います。特に夜のシーンでは、不気味な程に室内を暗くし、手前の人物の影が話し相手に重なって不気味な効果を出しています。

やはりこのカメラワークやライティング(照明)は、この1回きりで良かった…とも感じます。そこばっかり気になってしまい、本筋がおろそかになっているように見えてきます。

書けない作家ケン・フランクリン

マーティン・ミルナー犯人の作家ケン・フランクリン(ジャック・キャシディ)が共著の相棒作家、ジム・フェリス(マーティン・ミルナー)を殺害。動機は、ジムがケンとのコンビ解消を言い出したことにあります。実はケンは小説が全く書けないのです。

人気小説「メルビル夫人」シリーズ

メルビル夫人これまでに発表した人気小説「メルビル夫人」シリーズは、すべてが相棒のジムによる作品だというのです。私はものを創る立場なので、このような生き方は理解し難いですね。小説が書けない作家を演じ続けるより、1作でも優れた小説を書く努力をすべきだった。

ウソが本当に思えてくる

リネット・メッティこの事件の背景には「ウソをつき続けていると、そのうち本当になってしまう」という教訓が見えてきました。ケンは主に、インタビューやPRを引き受け、賞賛を浴びているうちに、いつしか「自分が本物の作家である」と思い込むようになったのかも。(写真は美人インタビュアー:リネット・メッティ)

ジャック・キャシディ

ジャック・キャシディ本作「構想の死角」のゲスト俳優ジャック・キャシディは、22話「第三の終章」36話「魔術師の幻想」でも犯人役を演じていて、刑事コロンボシリーズでロバート・カルプと並ぶ最重要人物の一人です。

バーバラ・コルビーは迫真の演技

バーバラ・コルビー第二殺人の被害者ラサンカ夫人(バーバラ・コルビー)は迫真の演技でした。この後のコロンボ作品にも、犯行を見破る→恐喝→殺される という人が多く出て来ます。やはり金は人生を豊かにするものと考えてしまうのでしょうね。15000ドルとは当時の日本円でたったの540万円相当(2021年では約1,700万円弱)‥。それで命を落としたわけです。

ここ一番でセクシーなラサンカ夫人

バーバラ・コルビーケン・フランクリンを店に招いた夜(命を落とした夜)、彼女は昼はレモンイエローの服だったのですが、夜はセクシーな赤のドレスに着替えています。やっぱり相当舞い上がっていたと思われます。

劇場でケンと一緒にいた美女

アニトラ・フォード劇場で連れていたスーパーモデル並みの美女はアニトラ・フォード。この後お食事もご一緒のはずだったのに、ラサンカ夫人に阻まれてしまいました。ケンはプレイボーイですが、自宅の家政婦さんは地味なおばさんだという賢明さも持っています。(笑)

ジムの奥様ジョアンナ

ローズマリー・フォーサイス被害者ジムの妻ジョアンナはローズマリー・フォーサイス。派手な感じの女性ではなく、真面目で堅実な男性に惹かれるタイプなのでしょう。ジムとの馴れ初めを回想するシーンなど、良い感じですね。

バーニー・クビー

バーニー・クビー気のいい感じの生命保険屋のマイク・タッカーは、俳優バーニー・クビー。この人は25話「権力の墓穴」のジャニス・コールドウェルの葬儀屋「明朝8時半までは、閉めさせていただきます」の人と同一人物です。

ホット・ドッグの屋台

バーニー・クビーそれは良いのですけれど、生命保険屋がこのコロンボ警部とホット・ドッグの屋台で会うシーンで、「屋台がけっこうリアルなホットッ・ドッグの形をしている」のが面白いです。

邦題の「構想の死角」について

仕事柄(笑)毎晩のようにネットでコロンボ情報を調べているわけですが、「高層の死角」という森村誠一さんの推理小説が存在します。1969年に出版されました。この「構想の死角」の2年前です。第15回江戸川乱歩賞も受賞している有名な小説です。何か関連性があるのかな…。

**これより数行は妄想的加筆:2021年2月

深く考えてみると、とても面白い。

決着の付け方に「スカっとした切れ味」がなかったというご意見が多いです。コロンボから第二殺人のお粗末さを指摘されたケンは、第一殺人の優れたアイデアも自分によるものであると主張し引き換えに罪を認めました。これは見ての通り。

ジムの「見逃し」と「うろ覚え」。

ジムは作家としての推理力に非常に長けています。冒頭シーンで銃を構えたケンを見て「手袋」「引金」「空のシリンダー」などを一目で見極めました。なのに殺された時は「手袋をしている」「ソファの上に不自然なビニール」などを見逃しています。しかも車中で「なんだか嫌な気分だな、昔ここらに来たような‥」とも言っていて、どうやら以前ケンから聞かされた殺害方法のヒントを思い出した様子でした。

さて、ジョアンナも初動捜査で警察が来た時に「主人が書いた小説でこのようなトリックがあった」と言っていますが、実際には小説には採用されていません。でもジョアンナやジムの頭にはケンのアイデアの記憶が薄っすら残っていました。

印刷物はコロンボが捏造した証拠?

コロンボは解決シーンで、裏面に第一殺人のトリックがズバリ書かれた印刷物を取り出し、「メルビル夫人用完全犯罪のトリック」として文面を読み上げます。でもこれは今日、オフィスでコロンボが発見したとは考えにくいです。警察が初動捜査で見逃すとは思えません。これはコロンボが書いた偽の証拠かのかも‥。

この殺人劇こそ、ケンが書き上げた傑作。

そしてもしも、これがジム本人が書いたのなら、彼は殺される直前に気づくはず。ケンが5年前に考えた本当のアイデアとは「ジャックとジルは山へ行き、一人は死体で戻る。さてそのトリックは‥」程度の、そう、割と稚拙なアイデア書きで、肝心のトリックは思いつかなかったのかも。それに対し今回の第一殺人のアイデアやトリックは、紛れもなくケンが書き上げた最高傑作だったかもしれません。

掟破りの‥セリフ添削。

ぼろんこがケン・フランクリンのセリフを少し書き換えてみます。コロンボが印刷物のメモを読み上げ、それを止めたケン「そりゃデタラメだよ。それはジムが書いたものじゃない。初めの殺人トリックは、確かに僕がジムを殺すために考えたものだ。どうだね?傑作だろ。僕にだってメルビル夫人は書けるのさ。」THE END.

**2021年の加筆ここまで

ケン・フランクリン邸はエリック・ワーグナー邸

ケン・フランクリン邸は12話「アリバイのダイヤル」のエリック・ワーグナー邸としても登場します。(スタール邸だと勘違いしていましたが別の家でした)
エアオールウェイの豪邸

エリック・ワーグナー邸

監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:スティーブン・ボチコ

ケン・フランクリン:ジャック・キャシディ(声:田口計
リリー・ラ・サンカ:バーバラ・コルビー(声:林洋子)
ジム・フェリス:マーティン・ミルナー(声:堀勝之祐)
ジョアンナ:ローズマリー・フォーサイス(声:野口ふみえ)

加筆:2022年3月6日

刑事コロンボマップ

7話「もう一つの鍵」

Lady in Waiting / 1971
リチャード・アンダーソン高圧的な兄を殺害する妹。という恐ろしいシナリオ。被害者は広告代理店の社長にして大富豪のブライス・チャドウィック(リチャード・アンダーソン)。犯人はその妹のベス・チャドウィック。前半のシーンでは、このベスが、それほど「悪人」とは感じさせない。質素で美しい女性だと感じ、悪人はむしろ兄のブライスではないかと錯覚します。

ベス・チャドウィックが美しく(実は醜く)変貌してゆく

スーザン・クラークその印象が逆転するのは、事件を知って駆けつけた二人の母親がベスをひっぱたくシーンだと感じました。この時の彼女(スーザン・クラーク)のいでたちが、本編で最高に美しく表現されているように見えました。私が質素な女性を好むというだけなのかも知れませんが…。
スーザン・クラーク独裁者(兄)が不在になった後のベスは、派手な洋服を買いあさったり、スポーツカーを手に入れたり、あげくに会社社長の座について、経営権を我がものにしようと企みます。それに比例するように、彼女は醜くなってゆくように描かれています。

もう一度最初から見返せば、なるほど冒頭近くに庭で朝食を食べるシーンでも、どこか歪んだ心をもった女性の表情が見え隠れしてますね。

時代性を感じる映像処理

意外な展開となったのは「画面が揺れているような描写」のシーンで、最初に見た時には「睡眠薬か麻薬かで、精神が普通でない表現」なのかと、勘違いしました。実際には「こうなる予定」を表現していたのでしょうね。初期の作品(特に第1シーズンまで)には、このような「頑張った映像処理」が多く登場します。テレビドラマの特殊効果に限界のあった時代の産物でしょう。

決め手はピーターの記憶力…ではなくベスの性格?

事件解決シーンでは「婚約者のピーターが、犯行の時の鮮明な記憶を語った」こととなりますが、実際には犯人特定の証拠とは言いきれず、その後のベスの行動「コロンボを銃で撃ってしまえ」というアクションが決め手となりました。これもベスの性格を見抜いたコロンボの切り札だったと言えます。びとつ間違えれば、撃たれて死んでしまうのですが。

これがひっかかるんです、「ピーター」の人間像。

レスリー・ニールセンひとつ腑に落ちないのは、婚約者のピーター・ハミルトンがそれほど「野心家」に描かれていないという点。むしろ正直で不正を好まない人物だった気がします。逆に妹のベスはかなりの野心家で、兄の殺害は婚約を反対されていることが動機ではなく、地位と富を一気に手に入れ、派手に暮らしたいという願望が強かったことがわかります。今となっては遅いのですが、彼女がピーターと結婚していれば、夫が妻を上手く操縦できたような気も…。この婚約者ピーターは後の作品34話「仮面の男」でジェロニモとしても登場する「レスリー・ニールセン」です。

裸の銃を持つ男

レスリー・ニールセンレスリー・ニールセンはコメディ映画「裸の銃を持つ男」(三部作・1988-1994年)の主役を演じていることは有名です。2023年にこの映画がテレビで放送され、私も観ることができました。レスリー・ニールセンが演じるのは、間抜けな警部補フランク・ドレビン。「警部補でフランク」ってコロンボへのオマージュでしょうね。

大草原の小さな家のオルソンさん

リチャード・ブル兄のブライスが撃たれて死んだことで、妹のベスを聴取する刑事の一人(裸眼の方)は、な、何と!同時代の人気ドラマ「大草原の小さな家」のオルソンさん(演:リチャード・ブル)でした!コメンテーターさんからの質問があり、調べたら分かった次第です。本当に嬉しい発見でした!オルソン役はこれより3年以上後のことでしょうが、本作の刑事は若く見えますね!カツラ使用かな?

フレッド・ドレイパーを見逃すな

フレッド・ドレイパーチャドウィック家のお母上が到着する場面に出てくるタクシーの運転手は、お馴染みの「フレッド・ドレイパー」です。コロンボを家の召使いと決めつけて代金を請求し、おつりを持っていないと「新米だね」と、さらに見下すのは、笑えました。

この3人の事務所が同じビルに!

刑事コロンボに登場のビル2話「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズ弁護士事務所、7話「もう一つの鍵」のチャドイック宣伝広告社、19話「別れのワイン」のステインさんの事務所はすべてこのビルの中にあります。

LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE

裁判所また、裁判の開かれる「LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE」も「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズの裁判所と同じ場所です。(映像アングルは異なります。)

ちょい役でお馴染みのフランク・エメット・バクスター

フランク・エメット・バクスター広告代理店の会議室で、ベスに逆らってクビになりそうになる重役は、38話「ルーサン警部の犯罪」でもテレビ局の撮影所所長として出てくる「フランク・エメット・バクスター」です。どちらも同じようなキャラクターで、はまり役です。

美容室の受付係はバーバラ・ローデス

バーバラ・ローデスコロンボの葉巻を預かり汚そうに扱う美容室の受付係は、バーバラ・ローデス。短いシーンですが印象に残ります。このバーバラ・ローデスは後の34話「仮面の男」で遊園地の女性カメラマン「ジョイス」を演じます。

ブティックの店員はキャサリン・ダーク

キャサリン・ダークベスが派手な服を買うブティックの店員は女優キャサリン・ダーク。この人は、6話「二枚のドガの絵」で画家サム・フランクリンのヌードモデルを務めていた女優さんです。

監督:ノーマン・ロイド
脚本:スティーブン・ボチコ

ベス・チャドウィック:スーザン・クラーク(声:小沢紗季子)
ピーター・ハミルトン:レスリー・ニールセン(声:柴田昌宏)
ブライス・チャドウィックリチャード・アンダーソン(声:小林恭治)
チャドウィック夫人:ジェシー・ロイス・ランディス(声:鈴木光枝)
美容室の受付係:バーバラ・ローデス
美容室の荷物運び:マイク・ラリー
ブティックの店員:キャサリン・ダーク

加筆:2023年6月24日

9話「パイルD-3の壁」

Blueprint for Murder / 1972
フォレスト・タッカー私は小学生の頃に初めて刑事コロンボシリーズを見て、それ以来のコロンボファンなのだが、第1シーズンの中で最も記憶に残っていたのがこのパイルD-3の壁。建築家のエリオット・マーカムが出資者のウィリアムソン氏(フォレスト・タッカー)を殺害し、しかも「死んだように見せない」要するに「生存しているが行方不明」に見せるというお話。

大胆な死体遺棄計画

エリオット・マーカム原題の「Blueprint for Murder」にはパイルという単語が入っておらず、ぼろんこ風に訳すと「殺人の青写真」といった感じ。邦題「パイルD-3の壁」は一見、殺害のトリックを題名にしてしまっている気がするが、むしろそれよりも最後にコロンボ警部が語った「一度捜査された場所に、遺体を隠そうとした」という、犯人エリオット・マーカム(パトリック・オニール)の「恐るべき大胆な死体遺棄計画」が見どころだったのでしょう。このパトリック・オニールは、43作「秒読みの殺人」にもテレビ局の重役フラナガンで出演しています。

緊張感の漂う掘り起こしシーン

工事現場でパイルを掘り起こすシーンでコロンボ警部が缶コーヒーのようなものを飲み干す場面には、リアルさを感じます。しかし、マーカムの言動から死体遺棄計画を察知したコロンボ警部は、その作戦に乗じた形で一度パイルを掘り起こし、まんまと罠にかかった「演技をしていた」というのです。それを承知でもう一度見てみると面白いです。

秘書シャーマンさん

ベティー・アッカーマンマーカムの秘書シャーマンさん(ベティー・アッカーマン)は、何と32話「忘れられたスター」で夫ヘンリーを演じた俳優「サム・ジャッフェ」が実の夫。いろんな所で人物が繋がっていてとても面白いですね。(2021年のコメンテーターさん情報)

わかりやすい手掛かりが…

今回は、割と分かりやすい「容疑者特定」のヒントもあります。ウィリアムソンシティの一件で、建築家マーカムと出資者ウィリアムソンの仲が抜き差しならぬ状況だった証人が、秘書シャーマンさんなど複数存在します。カーラジオの不思議を発見したことは、コロンボ警部ならではの観察眼ですが、殺人(死体遺棄)行為の最中、被害者の車のカーラジオを自分の好きな音楽にチューニングし直すことは不自然で、視聴者にわかりやすくストーリー展開させるために必要だったと想像できます。

無駄だとは思わせないシーン

クリフ・カーネルまた、遺体移送中の車が高速道路でパンクし、白バイ警官(クリフ・カーネル)にトランクを開けられそうになり困る場面は、ラストの解決シーンに向かう中では無意味にも感じますが、犯人の「あとは遺体を捜査後のパイルに埋め直せばすべて終わる…」という、最後の大仕事を前にした心情を描いているのでしょう。

犯人を捕獲するエンディングは見事

ラストシーンは圧巻です。「指輪の爪あと」「白鳥の歌」でも同じ手法です。暗い中で犯人が決定的な行動を起こす最中に、スポットライト(車のヘッドライト)などが突然照射され、獲物を捕らえるというもの。この効果は絶大で、度肝を抜かれた犯人は、潔く観念します。(指輪の爪あとのブリマーは、それでも抵抗しようと試みましたが…)
このラストシーンのBGMは作曲家「ギル・メレ」によるもので、まさに4話「指輪の爪あと」と同じメロディーなのです!

ジャニス・ペイジ

ジャニス・ペイジ「いいえ、死んでるわ」のセリフで登場する、被害者ウィリアムソン氏(フォレスト・タッカー)の前妻ゴールディ役のジャニス・ペイジはとても印象に残りました。なかなか奇抜なファンションですが、似合っていますよね。ジャニスは1922年生まれで、この時なんと50歳、信じられない若さです!2021年(この文章を書いている今)99歳でご存命。

パメラ・オースティン

パメラ・オースティン若い奥様役はパメラ・オースティン(当時31才)で、ジャニス・ペイジ(当時50才)と比べると確かに若い。パメラも2021年11月現在、79歳でご存命。

ジョン・フィネガン

ジョン・フィネガン現場監督のカール(赤いヘルメット)はジョン・フィネガンで、ダフィー警部や新シリーズの「バーニーの店」オーナーなども演じる名脇役です。

建築局では待たされたあげく…

ロバート・ギボンズ建築局で待たされるシーンはとてもユニーク。技術課ではさらに長い行列ができていて、その果てに担当者(ロバート・ギボンズ)お昼休み。少ない台詞で淡々と描かれますが、楽しいです。この役人のおじさんは36話「魔術師の幻想」で、ロス市警の署員として再登場します!

行列に並ぶ男性1

マイク・ラリーこの長蛇の列には伝説のエキストラ俳優マイク・ラリーも並んでいます。セリフはないのですが、やはりその存在感を示しています。

行列に並ぶ男性2

並ぶ人そして、この列の中に眉毛の濃い男性が映りますが、これは似ているものの‥エキストラ俳優ゲーリー・ライト。とは別人のようです。この俳優さんは、20話「野望の果て」のハリーストーン殺害現場にも刑事として登場しています。

エリオット・マーカムが聴いていたクラシック音楽

マーカムはクラシック音楽が大好き。事務所で血染めの帽子について思案する場面では、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴いていました。特に第2楽章が印象的。その他、モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番-第1楽章、ベートーベンの弦楽四重奏曲第1番-第1楽章も使用されているらしいです。これらは今後確認します。

大草原の小さな家

フォレスト・タッカーウィリアムソン役のフォレスト・タッカーは、同時代の人気ドラマ「大草原の小さな家」の「父さんの友情」で、木こり名人のジム・タイラー役で見ることができます。テレビで見たときは気づかなかったのですが、コメンテーターさんのヒントにより調べましたら、確かにフォレスト・タッカーでした。

ウィリアムソンの牧場

ウィリアムソンの牧場は、LA北西部のサウザンド・オークス近くにあります。この辺りは牧場や農場が多くあり、27話「逆転の構図」で「ガレスコ夫人が誘拐された農家」、65話「奇妙な助っ人」のマクベイ牧場もこの付近です。一方、エリオット・マーカムのオフィス、とパイルを掘り起こしたビルの建設現場は、ともにビバリーヒルズの南より(センチュリー・シティ周辺)に位置します。

刑事コロンボマップ
刑事コロンボマップ

監督:ピーター・フォーク
脚本:スティーブン・ボチコ
音楽:ギル・メレ(エンディングだけだと思われるが‥)

エリオット・マーカム:パトリック・オニール(声:川辺久造)
ボー・ウィリアムソン:フォレスト・タッカー(声:勝田久)
前妻ゴールディ:ジャニス・ペイジ(声:中西妙子)
妻ジェニファー:パメラ・オースティン
現場監督カール:ジョン・フィネガン(声:加藤治)
警備員:ニック・デニス
マーカムの秘書シャーマン:ベティー・アッカーマン
行列に並ぶ男性1:マイク・ラリー
建築局の職員:ロバート・ギボンズ(声:水鳥鉄夫)
モス医師:ジョン・フィードラー(声:水矢田稔)
白バイ警官:クリフ・カーネル

加筆:2024年3月4日

10話「黒のエチュード」

Etude in Black / 1972

2つのバージョンについて

この黒のエチュードには、75分と96分[96mv]の2バージョンが存在します。[96mv]と記載のある箇所は、75分版にはなかったシーンです。詳しくはゲストさんがこの2つを比較検証されたコメントもありますので、お読みください。
75分と96分バージョンの違いについて

オーケストラの指揮者を演じたジョン・カサヴェテス

ジョン・カサヴェテスオーケストラの指揮者アレックス・ベネディクト(ジョン・カサヴェテス)が愛人のピアニスト、ジェニファー・ウェルズを殺害。俳優カサヴェテスは、ピーターフォークの親友ですが、インディペンデント映画の製作・監督としても有名です。

ベネディクトはイタリア系

以前本記事で「ベネディクトはイタリア系」であると断言していましたが、その後自信がなくなり一旦削除しました。2020年に久々に見返しましたら、ラストシーンで「チャオ」って言っていますね。だからイタリア系で良いのだと思います。本編でも(コロンボ警部と同じ)イタリア系について触れたらよかったのにと思います。

完全犯罪とはほど遠い凡ミス

ジェニファーから離婚を迫られていたことが動機。ベネディクトはジェニファーの死を自殺に見せかけますが、現場で証拠品の「花」を落としてしまうという、推理作品で最低のミスを犯し、それが決め手となり逮捕されます。しかも、それを映像手法上で分かりやすく見せていて、最も重要なシーンを見逃させない工夫が施されています。おそらくこの作品、「決め手」を分かりやすく設定したことで、ドラマの側面を引き出しているのではないでしょうか。

サングラスに花が映るシーン [96mv]

ジョン・カサヴェテス現場検証の最中のジェニファー宅にベネディクトが現れたとき、彼のサングラスに花が映るのは大胆な演出です。花を落としたことに気づいたサインですね。4話「指輪の爪あと」のブリマーのアイデアと似ています。

一流の芸術家は色を好む?

芸術の世界で成功を収めているが、それに満足できず全てを失うリスクを知りつつ浮気に走るベネディクト。仕事での成功も、権力者の娘と結婚したことで得たもので、純粋な成功とは言い難い。ベートーヴェンやブラームスが色を好んだエピソードを楽しそうに語りますが事実はそれ程とも思えず、彼は「自分が色を好んでいる」ことを暗に肯定しているようにも見えます。ベートーヴェンは確かに女性を好んだようです。ブラームスはもう少し堅物な印象。両者とも生涯独身を通していて、ベネディクトのような既婚者の浮気性とは結びつきません。

一見、潔く逮捕されたように映るが‥

「ラストは潔い犯人」という意見も多くいただきますが、私はその反対の印象も持ちました。有罪を認めながらも妻ジャニスに「証言の時には、僕が愛していたことを思い出して」と、囁いています。夫が愛人を殺害した‥というショッキングな事実を突きつけられた直後に、その夫が裏切った妻に「裁判で自分に有利に働く証言」を求めているのです。その後の「チャオ!」までの言葉は確かに、潔く聞こえますが。最後にコロンボ警部が「フランク、もう一度回してよ。今のコンサート」という言葉で画面は止まりますが、後味の悪さを拭い去りたいような気分もしました。

なおこの「証言の時には、僕が愛していたことを思い出して」というセリフは英語版には無いとの情報をいただきました。ですので本来の作品は、日本語版より綺麗なエンディングだったのだと思われます。(加筆:2021年12月7日)

被害者について語る刑事 [96mv]

ヘンリー・ベックマンジェニファー宅の捜査で最初、彼女の死について自殺とか、青い瞳とか、ナチュラル・ブロンドとか語り合う刑事は俳優ヘンリー・ベックマン。この特徴ってジェニファーよりむしろ妻ジャニスに似てますね。さてこの場面は96分バージョンで付け足されたものだそうです。それを知れば、あまり意味のないシーンだとも思えますね。

後任の刑事?は、マイラー刑事

ルー・ノヴァ最初の刑事(ヘンリー・ベックマン)が画面から消えた後は、突然、このマイラー刑事(ルー・ノヴァ)が画面に登場。恰幅の良い人で存在感を出しています。この2つの場面を見ますとやはり、別の日に撮影したシーンをくっつけた感じです。

美人ピアニスト、ジェニファー・ウェルズ

アンジャネット・カマー既婚者のアレックスに結婚を迫り、殺害されてしまう愛人ジェニファー(アンジャネット・カマー)。コロンボは彼女を「美人で若さと才能にあふれる女性」と賞しています。眉毛の細さが際立ってます。ブロンドというより、ブルネットまたはブラウン系の髪に見えたけど。

ジェニファー・ウェルズが最初に弾いていたピアノ曲

YouTube「ピアノ練習曲(エチュード)」ピアニストのジェニファー・ウェルズが夜のコンサートの指慣らしに弾いていたピアノ曲をパソコン演奏で再現しました。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

ブログ・コメンテーターさんからの情報でこの曲は「バッハ Bach:平均律第1巻第15番ト長調 BWV860」であると判明しました。またこの曲は「練習曲(エチュード)ではない」と書いておりましたが、「練習曲」として分類されることが多いそうです。大変失礼いたしました。(加筆訂正:2021年11月26日)

ジェニファーが死ぬ直前に弾いたもう一つのピアノ曲

アレックスのリクエストでジェニファーが死ぬ直前に弾いた‥最後の曲「ショパン練習曲作品25-1(エオリアン・ハープ)」。10年以上ブログを書いていて、これを見逃していたのは本当に罪深いです…。今反省しながら所有している音源ポリーニの1972年の演奏を聴いています。(加筆:2021年11月25日)

妻ジャニス役ブライス・ダナーが印象的

ブライス・ダナー妻のジャニス(ブライス・ダナー)は美しく見えました。アメリカ人離れした容姿と気品が出ています。そして彼女が要所で見せた表情は抜群でした。しかし、ベネディクトは愛人ジェニファーに惹かれます。それには「彼が才能を美と感じる」芸術家独特の視点があったからでしょう。妻のジャニスはそれを見抜いていました。

娘はオスカー女優「グウィネス・パルトロー」。

ブライス・ダナーの長女は女優「グウィネス・パルトロー」。私はあまり馴染みがないのですが、今ではむしろグウィネスの方が広く知られているのかもしれません。Wikipediaを見ますと私生活などに多くの有名人が登場し、華やかというか…びっくりします。グウィネス・パルトロー主演の映画「恋におちたシェイクスピア」を観ました。さすがに美しく、輝きを放っていました。この作品で彼女は「アカデミー主演女優賞」など多数の受賞をしました。(加筆:2023年6月24日)

ジャニスとカレンがお揃い

ジュリー・ハリスこの妻ジャニスが後半のハリウッド・ボウルでのリハーサル風景〜ラストで着ていた服は、何と19話「別れのワイン」の機中でカレン・フィールディングが着ていたものと酷似(ハッキリ言って同じ!)。(ゲストコメンテーターさん情報)→ジャニスとカレンがお揃い

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」の第4楽章

冒頭のベネディクト邸内やがコンサートで彼が指揮する交響曲は、ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」の第4楽章。この交響曲はベートーヴェンが唯一自分で「田園」と名付けた標題音楽的作品で、第4楽章は激しい雷雨・嵐の様子を表現しています。
→ 劇中で使われた印象的なクラシック音楽

モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第4楽章

もう1曲はモーツァルトのセレナーデ「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第4楽章。この2曲の演奏会であればかなり「ベタ」な演奏曲目ですが、本作ではともに「最もポピュラーな楽章」ではない楽章を採用していて、興味深いです。ちなみに両曲とも「第1楽章が最も有名」。

ピアニストが活躍する曲は?何だったのか…

ピアニストのジェニファー・ウェルズがドタキャンした…コンサートの本来の演奏予定曲目を大胆予想してみました。お遊び的な予想ですので、間違いかもしれません。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」
根拠はジェニファーが来れなくなった時ベネディクトは、「ベートーヴェンなら稽古済みだ(ベートーヴェンをピアノ無しの曲に差し替える)」と言っていること。そしてこの日のコンサートは「ベネディクト指揮 若者のための週末コンサート」であったこと。ベートーヴェンの有名なピアノ曲といえば「皇帝」でしょうね。

野外音楽ホール:ハリウッドボウルが舞台

犯人の職業がオーケストラの指揮者ということで、映像が華やかですね。そしてドラマの舞台がハリウッドボウルという美しい野外音楽ホールを中心に展開していること。このシチュエーションのパワーは大きいと思います。
→ハリウッドボウルの場所(PC)

コロンボ警部が演奏していた曲

コンサート会場で独りピアノを演奏していたコロンボ警部はベネディクトから「チョップスティック(曲名)は何十年ぶりに見た」と言われました。素人でも両手の人差し指だけで演奏できるのを、少し馬鹿にされた感じでした。チョップスティックとは「お箸(はし)」で、まるでお箸で弾いているような曲という意味です。

その後で、タイプライターの矛盾の指摘から始まり、修理に出した車の走行距離が15km増えた件に触れ、正式に他殺(殺し)事件として担当することになったと、切り返したのはスカッとしました。この話の流れだと警察は完全に「犯人=ベネディクト」と決めつけている感じですよね。

全編に流れる素敵な音楽

クラシック音楽を扱ったエピソードで、BGMもピアノ中心のクラシカルな曲でした。この「黒のエチュード」からスタートした「第2シーズン」。音楽監督を「ハル・ムーニー」が担当することになり、雰囲気が変わりました。私は大好きです。
→第2~第3シーズンの作品で使われるピアノBGM

第2~第3シーズンの不思議なピアノ曲

YouTube「不思議なピアノ曲」刑事コロンボの第2~第3シーズン「黒のエチュード」「偶像のレクイエム」「絶たれた音」「毒のある花」などで多用された「不思議な雰囲気を持ったピアノ曲」を再現しています。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

あのビートルズもコンサートを行ったハリウッドボウル

そのシーンもハリウッドボウルで撮影されていますが、このハリウッドボウルは私の大好きなビートルズ(イギリスのロックバンド)が1964年と1965年にライブコンサートをしていて、その様子は「The Beatles At The Hollywood Bowl」として当時ビートルズ唯一の公式ライブアルバムとして発表されています。

トランペットのポール・リフキン

ジェームズ・オルソントランペット奏者で南カリフォルニア交響楽団の楽団員ポール・リフキンは「ジェームズ・オルソン」。ジェニファーに振られたり、あらぬ容疑をかけられたり、理事長から睨まれたり、散々でした。2021年の加筆で初登場ですが、実は前から大好きなキャラでした。

LAのジャズの店と、ロンドンの蝋人形館が同一!

10話「黒のエチュード」で容疑をかけられるポールが演奏するLAのジャズの店と、13話「ロンドンの傘」の蝋人形館は同じ場所です。大胆な演出ですよね!(ブログゲストさんの発見でした)

LAのジャズの店ロンドンの蝋人形館1013

パット・モリタ [96mv]

パット・モリタベネディクト家の使用人を演じたのは、12年後に映画「ベスト・キッド」で一躍有名となった俳優「パット・モリタ」さん。黒のエチュードに出演時は40歳でした。コロンボをオーケストラのメンバーと間違えるシーンをコミカルに演じていました。このシーンのみベネディクトの髪が短く整髪されており、後で追加撮影されたことが良くわかります。でも良く見直しますと、この訪問でコロンボ警部が得たものは、ベネディクトの資産情報と直筆サインくらい。

コロンボ警部の年収が判明 [96mv]

アレックス・ベネディクト宅での会話、コロンボ警部の年収は自身が「1万1000ドル」であると口にしています。1972年当時の1ドルを約305円としますと、約335万円。そして消費者物価指数などを加味すると…600万円弱。という感じでしょうか。同情するほどの薄給ではありません。容疑者の方々がとてもセレブですので、差を感じますが。
→コロンボ警部の年収

楽団のビリー・ジョーンズ

ジェームス・マッキーチンジェニファーがコンサート会場に現れないことを知らせに来た、楽団のビリーは俳優ジェームス・マッキーチン。後の43話「秒読みの殺人」の映写技師「ウォルター」で再会できるでしょう。素敵な俳優さんです。

新聞社のエベレットがワイン屋のオヤジ! [96mv]

ジョージ・ゲインズランチのシーンで登場する。新聞社のエベレット(ジョージ・ゲインズ)は後に、19話「別れのワイン」でワイン屋のオヤジを演じています。雰囲気が変わるので気づきにくいですが、これは確かです!

新聞社のダーキーはドッグの校長先生 [96mv]

チャールズ・マカーリー同じシーンで登場する新聞社のダーキーは俳優:チャールズ・マカーリー。この俳優さんはなんと、23話「愛情の計算」で、犬の学校の校長先生を演じています。
また2話「死者の身代金」の捜査員もこの人ですが印象は薄いです。

修理工場のマイク

ドン・ナイトクラシックカーの修理が得意なマイク・アレキサンダーは俳優ドン・ナイト。助手のおじさんは、マイク・ラリーでしたね。クレジットにはアレキサンダーとされているが看板はグッドマンで、実際のこの修理工場のオーナーはグッドマンさんなのか?この修理工場はハリウッドボウルよりR101(ベンチュラ・ハイウェイ:アメリカの曲でも有名)を北西に向かい、R170で右折、オキシナード・ストリートを左折、バン・ナイーズ・ブールバードを北に向かうと最短距離で、往復でおよそ15kmです。(笑)
詳しくはコロンボマップ「ハリウッドボウルから修理工場」をご覧ください。

修理工場向かいのスタジオは閉店か?

コロンボが修理工場を訪れるシーンで、ベネディクトが居た時と去った後では状況が一変!まずコロンボ警部がよそよそしく再登場します。クラシックカーの置いてあった場所がかなり手前に変わっていて、道路沿いに警部のプジョーが出現。そして道向かいの「レコーディング・スタジオ」が閉店し、別の店に変わっています。(ブログゲストさんの発見でした)

修理工場を訪れるシーン修理工場を訪れるシーン7596

ポールを吊るし上げる理事会の女性。

ダイアン・ターレイ・トラヴィス理事会で向かって右側に座るメガネの女性は「ダイアン・ターレイ・トラヴィス」で刑事コロンボに度々、ちょい役で登場するエキストラ女優さんです。女版「マイク・ラリー」だと言えます。

交響楽団の理事長は大女優。

マーナ・ロイ鮮やかな衣装も話題になった交響楽団の理事長リジー・フィールディングは女優「マーナ・ロイ」。映画の黎明期?から活躍した大女優の一人だそうです(私は馴染みがありませんが)。「影なき男」シリーズ(1934年〜)で一時代を築いたとされます。日本語吹き替えは麻生美代子さん(サザエさんのフネ役)です。マーナ・ロイは、チャールトン・ヘストン主演の映画「エアポート’75」で、7話「もう一つの鍵」のスーザン・クラークと共演しています。

ショパンはインコではない!

ピアニストのジェニファーが飼っていた鳥ピアニストのジェニファーが飼っていた鳥は、おそらく「キバタン」だと思われます。隣の女の子はコロンボに「ショパンはボタンインコ」と言っていますが、それは間違い。顔の配色をみますと…これは「キバタン」というオウムの一種です!インコの一種(オカメインコ)なら「おかめ」のように頬にオレンジ系の丸があります。

隣の女の子オードリー

隣の女の子オードリー隣の女の子は「オードリー」で子役「ドーン・フレーム」。犬を飼う手ほどきや権利の説明など、大人びたキャラクターが可愛かったですね。彼女ドーンはその後のキャリアは確認できず、本格的な女優にはならなかったのかな。

監督:ニコラス・コラサント
脚本:スティーブン・ボチコ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

アレックス・ベネディクト:ジョン・カサヴェテス(声:阪脩
ジャニス・ベネディクト:ブライス・ダナー(声:寺田路恵)
ジェニファー・ウエルズ:アンジャネット・カマー(声:有馬瑞香)
リジー・フィールディング:マーナ・ロイ(声:麻生美代子)
ビリー・ジョーンズ:ジェームス・マッキーチン(声:笹岡繁蔵)
ポール・リフキン:ジェームズ・オルソン(声:野島昭生)
オードリー:ドーン・フレーム(声:冨永みーな)
ベンソン獣医:マイケル・フォックス(声:今西正男)
ベネディクト家の使用人:パット・モリタ
修理工マイク・アレクサンダー:ドン・ナイト
修理工フランク:マイク・ラリー

大幅に加筆:2021年12月7日
少し加筆:2023年6月24日

17話「二つの顔」

Double Shock / 1973

まさに二つの顔!

ポール・スチュアート原題「Double Shock」に対し邦題「二つの顔」の示す通り、双子の兄弟デクスター・パリス(料理研究家)と兄ノーマン・パリス(銀行員)ともに「マーティン・ランドー」が、莫大な財産を持つおじクリフォード(ポール・スチュアート)を殺害します。

マーティン・ランドーと二つの大作戦

マーティン・ランドー双子のパリスを演じたマーティン・ランドーはテレビアクションドラマ「スパイ大作戦」第1〜3シーズンのローラン・ハンド役で有名な俳優さんです。同時期に「宇宙大作戦」のミスター・スポック役のオファーも来ていて、それを断わってスパイ大作戦を請けたそうです。そのミスター・スポック役を引き受けたのは15話「溶ける糸」のメイフィールド医師「レナード・ニモイ」。しかもレナード・ニモイは、スパイ大作戦の第4・5シーズンで「アメージング・パリス」役で出演しています。かなりややこしいですね。

コロンボ的倒叙作品ではない

犯人が双子という設定を用いたお話で、殺害シーンを見せているにも関わらず、純粋な倒叙作品には仕上がっていません。見る側は「あらかじめ犯人を知っている」はずなのですが、二人が同じ顔なので真犯人が「弟デクスター」であるか「兄ノーマン」であるか、断定できないのです。

******

では、クリフォード殺害の実行犯は兄弟どちらか?

2021年これの検証を試みました。

この「二つの顔」は「実行犯がどちらか?」分かりにくくしてあるのも、一つの特徴だと言えるでしょう。
ラストシーンでコロンボ警部が「デクスターは邸内に潜み(クリフォードを殺害)、車で出て行ったのはデクスターと同じ服を着たノーマンだった。」と解説するとデクスターは「冗談じゃない」ノーマンは「それは承服しかねますな」と二人が揃って否定しています。これは意味深ですね。
 
また双子を区別する方法として、ノーマンは渋目のグレー系+ネクタイ、デクスターは派手目の暖色系のファッションが多いですね。

仮説(2021年8月15日)

・感電の実験をしていたのはノーマン(黒)
・(警報装置OFF時)二人で来て、ノーマン(黒)は邸内に潜む。
・クリフォードに会ったのはデクスター(赤)
・車で出て行ったのもデクスター(赤)
・邸内に残ったノーマンは警報装置をOFFにし待機(黒)
・【黒に着替えた】デクスターは靴を持って再び侵入し地下に向かう(黒)
・ノーマン(実行犯)がクリフォードを殺害(黒)
 
です。 
他にも仮説は立てられますが、私はこう思います。
・デクスターが黒衣装で感電の実験をする必要はないので、これはノーマンだとします。
・再び侵入した方は鞄(ミキサー)を持っていないのでおそらく「実行犯」ではありません。
・ポイントとなるのは「犯行時は二人とも黒」です。それは派手な赤い服では目立つからです。

☆デクスター=クリフォードに会う、車で帰る、黒に着替え再侵入し、地下室でヒューズを戻すなど
★ノーマン=感電の実験、邸内に潜み、警報装置OFF、クリフォードを殺害、警報装置ONに戻し立ち去る
*****

婚約者のリサの不可解?

ジュリー・ニューマー殺されたおじクリフォード(ポール・スチュワート)のお相手リサ(ジュリー・ニューマー)は、結婚を金銭目的ではないと断言しています。本当にクリフォードおじさんに惚れていたのでしょうね。愛のカタチも様々です。でも結果的には、この婚約が殺人事件の引金となりました、悲しいことです。リサは予め財産相続を放棄しておくべきでした。

宇宙大作戦(スタートレック)

ジュリー・ニューマーこの「ジュリー・ニューマー」は、宇宙大作戦(スタートレック)では「宿敵クリンゴンの出現」でカペラ4号星の皇帝の妻のエリン役で出演しています。

双子犯人の不可解?

仲の悪い兄弟が手を結んで殺害を計画します。が、コロンボ警部の登場後、お互いに相棒が真犯人であるように見せかけることから「共犯」の疑いを持たれるリスクも増大しました。最終的に婚約者のリサが死亡しないと遺産が手に入らない状況になったことも致命的でした。ちょっと計画が甘かったかな~。

ペックさんが大暴れ

ジャネット・ノーランクリフォード家のお手伝いさん「ペック夫人」は奇麗好きで、だらしないコロンボ警部と真っ向勝負。犯人から嫌われることには慣れている(それが手法の一部)警部ですが、お手伝いさんから嫌われることには抵抗があったらしく、不本意さを露にしている演出が面白いです。このペック夫人(ジャネット・ノーラン)は、45話「策謀の結末」にも「オコンネル財閥の女王役」で出演しています。

ティム・オコナー

ティム・オコナー第二殺人の現場に居合わせる弁護士マイケル・ハサウェイは、後の作品である39話「黄金のバックル」で殺害されたエドワード・リットンと同一人物。「うさん臭い」キャラクターが似合います。動きがサンダーバードの「操り人形」的で、ぼろんこが大好きな俳優さんの一人。

これは知っておきたい!

ダブニー・コールマンクリフォード・パリス邸での現場検証を仕切るマレー刑事。このお顔をよ〜く見てください。この俳優さんは「ダブニー・コールマン」で、ぐーんと後の58話「影なき殺人者」の犯人「ヒュー・クライトン」の若い頃(18年前)なのです!

超重要な豪邸なのです!

クリフォード・パリス邸17話「二つの顔」のクリフォード・パリス邸、34話「仮面の男」のネルソン・ブレナー邸、38話「ルーサン警部の犯罪」のウォード・ファウラー邸は同じ家です。車の入り口〜ロータリー型の車寄せ、アーチ型の白い装飾の門扉、大きな暖炉が特徴です。
アンジェロドライブの豪邸
刑事コロンボマップ

刑事コロンボマップ

監督:ロバート・バトラー
脚本:スティーブン・ボチコ、ピーター・アラン・フィールズ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

デクスター・パリス、ノーマン・パリス:マーティン・ランドー(声:滝田裕介)
ペック夫人:ジャネット・ノーラン(声:文野朋子)
マイケル・ハサウェイ:ティム・オコナー(声:保科三良)
リサ・チェンバース:ジュリー・ニューマー(声:清水良英)
クリフォード・パリス:ポール・スチュワート(声:杉田俊也
銀行員:マイク・ラリー

加筆:2022年2月14日

23話「愛情の計算」

Mind Over Mayhem / 1974

こんな話、実際にありそう

リュー・エアーズ人工頭脳学調査研究所所長のケーヒル博士が、息子の研究論文の不正を知った同僚のニコルソン博士(リュー・エアーズ)を殺害。学会の論文に関しては、日本でも2014年に「スタップ細胞」大事件が起きました。

初期の駄作?と言っては…お終い。

初期の作品においては、イマイチ納得のゆかない代表作です。近未来を描いたSF作品のようなシチュエーションもあり、こっけいな感じが漂います。もちろんその主役は「MM7」なるロボットです。当時の最先端な描き方ですが、時の流れとともに現実離れしました。

上手く行かない時もあります

脚本陣にはスティーブン・ボチコ、ディーン・ハーグローブ、ローランド・キビーと名を連ねていますが、ちょっと投げ出したくなった?かも。このような連名は名作にも見られることから、決して悪いことではないようですが。

フライデーではなく、ロビー。

ロビーロボットMM7は「私の場合」宇宙家族ロビンソンに出てくる「フライデー」が目に浮かびましたが、そうではなく映画「禁断の惑星」に登場した「ロビー」です。お恥ずかしながら、禁断の惑星は未見でしてピンときませんでした。

スティーブン・スペルバーグ少年

ロビーそれと、犯行解明に一役買う天才少年「スティーブン・スペルバーグ」くんはリー・ハーコート・モンゴメリー。投稿時には否定的でしたが、今見ると可愛い少年です〜。この数年前に映画「ベン」の主役を演じています。冒頭のクレジットにも名を連ねています。

不思議な味:ロバート・ウォーカーJr

ロバート・ウォーカーJr犯人の息子にして、研究論文をパクったニール・ケーヒル役のロバート・ウォーカーJr(声:原田大二郎)は、意外と?と言いますか、すごく印象的でした。ひょろっとした感じで、登場シーンから、妙に「ひっかかりました」ね~。彼は、宇宙大作戦(スタートレック)の「セイサス星から来た少年」でも印象的な役を好演しています。

セイサス星から来た少年(チャーリーX)

ロバート・ウォーカーJrこのロバート・ウォーカーJrは宇宙大作戦(スタートレック)の「セイサス星から来た少年」でチャーリー(日本語版ではピーター)役で出演しています。何でも思い通りにできる超能力少年です。本作はとても印象に残っています。

愛情の計算?

Mind Over Mayhemは直訳「騒乱についての心」。私は英語力が乏しく、これ以上言及しませんが邦題「愛情の計算」はひねり出した結論でしょうか。確かにコロンボシリーズ中、人のために(依頼されたケース:22話「第三の終章」などを除く)殺害することは稀です。
 
張本人のご子息ニールも事実を知らないのですし。しかし息子のために「殺し」を実行したというより、ケーヒル博士自身の名誉を汚さぬために犯行に及んだとも考えられます。むしろ、放置すれば息子が殺人犯になってしまうことから、自分の犯行を自供したことが「愛情の証」で、コンピュータを使った計画から「計算」という単語を引き出したのでしょうね。

犯人役「ホセ・フェラー」

ホセ・フェラーちょっと地味に感じてしまう、ゲストスターの「ホセ・フェラー」について調べてみました。プエルトリコ出身で「アカデミー主演男優賞」「ゴールデングローブ賞主演男優賞」なんかも受賞してるすごい俳優みたいです!また「アラビアのロレンス」でベイ将軍を演じていました。

ドッグの校長先生

チャールズ・マカーリー「愛犬ドッグ」が犬の学校を退学になります。この威厳のある校長先生:ファーンズワースは俳優:チャールズ・マカーリー。この一癖ありそうな俳優さんは、2話「死者の身代金」の捜査員、10話「黒のエチュード」では新聞社のダーキー役でも出演しています。

ニコルソン夫人

ジェシカ・ウォルター殺害されたニコルソン博士の夫人マーガレットは女優「ジェシカ・ウォルター」。とても美しい若奥さまでした。年の差婚なのですが、ざっと計算(笑)してみますと、夫ハワード(66歳)妻マーガレット(33歳)となりました。夫は実年齢より老けて見えるか!ジェシカ・ウォルターは映画「恐怖のメロディ」で監督・主演のクリント・イーストウッドと共演しています。また、コロンボと同時代のテレビドラマ「警部マクロード」にも出演しています。2021年81歳で他界しました。

フィールズ巡査部長

ウイリアム・ブライアントこの事件現場で活躍する刑事は、フィールズ巡査部長(ウイリアム・ブライアント)。この刑事さんは14話「偶像のレクイエム」でジェフリー刑事とて登場しています。同じようなキャラクターですので、名前も揃えて欲しかったです。

駐車場係のマーフ

アーサー・バタニデス顔を真っ黒にして働いていた駐車場係のマーフは俳優アーサー・バタニデス。彼は宇宙大作戦「スタートレック」にも出演しており、今後加筆いたします。

可愛いキャラ、ロス博士

ルー・ワグナー小柄な研究員、ロス博士はルー・ワグナー。シャツの大きな襟が印象的です。ドアに付いた「靴がかすった跡」の高さから、死体を運んだ人物とは思えず容疑者から除外。なんとも可愛いキャラでした。

2021年の大発見!

ルー・ワグナー2021年の7月にテレビで映画「猿の惑星」を録画することができました。その中で新たな発見をすることができました。人間テイラーを助ける甥っ子のチンパンジー「ルーシャス」がこのロス博士:ルー・ワグナーだったのです。小柄な体格を活かした名演技です、この発見は大感動でした。詳しい猿の惑星情報は研究記事「刑事コロンボと猿の惑星」をご覧ください。

ダイアン・ターレイ・トラヴィス

ダイアン・ターレイ・トラヴィス冒頭シーン「人工頭脳学調査研究所所長」の「第三次世界大戦のシミュレーション」で、登場する女性研究員の女優は「ダイアン・ ターレイ・トラヴィス」で、その他のコロンボ作品にも多少出演しています。

研究所の受付嬢を見逃すな

ディードル・ホールセリフも大写しもないので絶対見逃しますが、研究所の受付嬢は女優「ディードル・ホール」で、15年後に51話「だまされたコロンボ」でダイアン・ハンターを演じる有名女優です。本作は27歳、どんなに頑張ってもこれがベストショットで、言われてみればディードル・ホール本人かも?程度ですね。

監督:アルフ・ケリン
脚本:スティーブン・ボチコ、ディーン・ハーグローブ、ローランド・キビー
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

マーシャル・ケーヒル所長:ホセ・フェラー(声:鈴木瑞穂)
ニール・ケーヒル:ロバート・ウォーカーJr(声:原田大二郎)
ハワード・ニコルソン博士:リュー・エアーズ(声:真木恭介)
マーガレット・ニコルソン:ジェシカ・ウォルター(声:谷口香)
ロボットMM7:ロビー
スティーブン・スペルバーグ:リー・モンゴメリー(声:手塚学)
ロス博士:ルー・ワグナー
ドッグの校長先生:チャールズ・マカーリー
女性研究員:ダイアン・ ターレイ・トラヴィス
男性研究員:マイク・ラリー

加筆:2022年8月14日

54話「華麗なる罠」

Uneasy Lies the Crown / 1990

楽しむ意欲を持って見たくなる作品

歯科医ウェズリー・コーマン(ジェームズ・リード)が妻の愛人である俳優アダムを殺害し、自分の妻の犯行に見せるという話。犯行計画はかなり「きわどい」です。妻や愛人がすべて自分の思い通りに行動しないと成立しません。しかしこれは、新・刑事コロンボシリーズの中では私が好きな作品の一つ。刑事コロンボは旧作の45作のみだ、と断言してしまうと楽しめません。

古典的な作品との共通点

コメンテーターさんからの情報で、この作品の脚本は「旧シリーズのために書かれた」ものだということです。犯人の職業に特化した犯行。「転落回避」「報復」「金銭問題」などを一挙に解決できる殺人動機。「アダムが歯医者に通院」「転落した車のギアがニュートラル」「シャツのポケットに不倫相手夫妻の名入マッチ」「残っていた毒の濃度」「リディアの、2〜3分でもう‥発言」など面白い手がかりも満載。「緊急ボタンの解説」を競馬場のラウンジで、勝手に回線をつなぎかえ実演したことは驚きですが(笑)

ギャンブル好きが祟ってしまう

ただしストーリー全体を冷静に見直すと、犯人のウェズリーは今後この華麗なる家族と一緒にどうやって余生をすごそうと思っているのか?大疑問です。相変わらずのギャンブル好き、殺人犯人となった妻、自分に愛想を尽かした義父。馬鹿は死ななきゃ直らない…と言った感想です。犯人が「頭が良い」というコロンボ作品の理想からは外れました。

奥さまは魔女のダーリン!

ディック・サージェント奥さまは魔女のダーリン役ディック・サージェントが脇役で出演していますが、カミさんと一緒に見ていて「これ誰だっけ?」と一緒に楽しめたことは良い思い出になりそうです。同じくポーカー仲間のナンシー・ウォーカーなどの有名人は、ウェズリーの歯科医院に通ってたようです。

ジョンソン先生はスティーヴン・ギルボーン

スティーヴン・ギルボーン検死医のジョージ・ジョンソン先生は「スティーヴン・ギルボーン(Steven Gilborn)」。この「華麗なる罠」の他、56話「殺人講義」、57話「犯罪警報」58話「影なき殺人者」と立て続けに登場します。とても素敵な俳優さんですよね。

同じく鑑識のおじさん

モーガン・ジョーンズ鑑識のおじさん「モーガン・ジョーンズ」は、この「華麗なる罠」の他に51話「だまされたコロンボ」、56話「殺人講義」にも同役で出演していてちょっと気になる俳優さんです。

なんで、バーニーズ・ビーナリーが駄目だったか?

バーニーズ・ビーナリー2話の「死者の身代金」で登場した「バーニーズ・ビーナリー(写真)」。今回は、ウェズリーが義弟のデイヴィッドと一緒に呼び出される際お店を決めるのに、「バーニーズ・ビーナリー、いや駄目…」と、口にしています。夜の11時だったので、もう閉店後だったのかな。

原題「Uneasy Lies the Crown」

2021年に再度調べてみたところ「Uneasy lies the head that wears a crown」はシェイクスピア「ヘンリー四世」のセリフからの引用だと思えます。「冠をいただく頭は安んぜず」で、偉大なる者には心安まる時はないと訳せるそうです。アダムの治療シーンでウェズリーが「今すぐ処置すべきは右のクラウン(かぶせ歯の意味)」と言っていまして、殺人工作につながる原題だと思えます。(2021年4月15日)

邦題「華麗なる罠」

私は「それに対し邦題の『華麗なる罠』は最低レベルのアイデアです。」と酷評を書いていました。しかし日本語ではクラウンと歯科医の関連性が分かりづらい。ヘンリー四世のセリフも馴染みが薄いので。まったく別のアングルから考えられたのでしょう。

コーマンの豪邸とマルホランド

ウェズリーとリディア夫妻の住む海岸の豪邸は、コロンボ作品で犯人の居住地などで度々登場するマリブ地区です。それに対しアダムの事故現場「マルホランド(モルホーランド)」は、マリブの付近から東西に走る峠道で、バイクや自動車事故が良く起きる場所のようです。

ウェズリーとリディア夫妻の住む海岸の豪邸

監督:アラン・J・レヴィ
脚本:スティーブン・ボチコ

ウェズリー・コーマン:ジェームズ・リード(声:菅生隆之)
ホレス:ポール・バーク(声:大塚周夫)
リディア・コーマン:ジョー・アンダーソン(声:佐々木優子)
アダム・エヴァンス:マーシャル・R・ティーグ

加筆:2023年1月13日