バーク刑事B

ジェローム・グアルディノ

41話「死者のメッセージ」
43話「秒読みの殺人」
47話「狂ったシナリオ」
同名の刑事役としては「クレーマー刑事」に次ぐ出演回数を誇ります。温和な性格で、コロンボ警部の良き話し相手になってくれます。上記にの他に、45話「策謀の結末」で、コロンボ警部から「船の出港を差し止める」よう、電話で指示されていて「名前だけ」出演しています。

また、32話「忘れられたスター」にも別役で出演しています。コロンボ警部に呼び出されて、射撃のテストの代役を引き受ける刑事の役です。名前はハリスですが、役柄の雰囲気からバーク刑事とは別人だと思われます。

新シリーズの47話「狂ったシナリオ」では、少し老けたバーク刑事と再会することができます。海岸で被害者レニー・フィッシャーのベルトを眺めるシーンです。

加筆:2010年10月03日 

40話「殺しの序曲」

The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case / 1977

刑事コロンボの中では、第6シーズンに属する後期的作品。背景は世界でトップレベルのIQを持つ人が集まる「シグマクラブ」で起こる殺人事件。クラブのメンバーである会計事務所の経営者オリバー・ブラントが友人で共同経営者、しかもシグマクラブのメンバーでもあるバーティを殺害。動機は、オリバーの横領を知ったバーティが、世間に公表すると脅したためです。

動機は十分。バーティはかねてより友人オリバーの言動に対し、強い不快感を抱いていて、その腹いせに彼の身辺を探ったため、不正が発覚します。常日頃から周囲にバカにされている人は、たとえそれに悪意が薄かったとしても、いつか許せなくなるものなのでしょう。

トリックは緻密だが、天才集団を感じさせない

この作品の特長は他の作品と比較し「殺害のトリックが異常に緻密」であること。それが大きな要素となりすぎて、「世界でトップレベルのIQを持つ人が集まるクラブ」の存在感は逆に薄くなっている点が惜しいです。一部の登場人物を除いて、あまり頭の良い人の集団と思わせてくれません。

また原題の「The Bye-Bye Sky High I.Q. Murder Case」は「空高いIQの殺人事件」のようなイメージですが、邦題ではむしろ音楽にスポットを当てたようですね、残念でした。

トリックに凝りすぎて、現実味がないとも感じます。傘の中で破裂した爆竹の音が果たして銃声に聞こえるだろうか?音楽のボリュームを絞り、犯行後にプレーヤーのカバーを閉めておけば、もっと怪しまれなかったはず。犯人が頭脳明晰のわりには短気で、容疑をかけられる素性を持っているなど。また、これは微妙な判断ですが、解決シーンで「赤いペンが落ちるほんの一瞬前に辞書が傾き始める気がする」点も‥。ただ、そのようなことを差し引いても、楽しめる作品であることは確かです。

天才オリバー・ブラントは可愛い

セオドア・バイケル犯人の天才オリバー・ブラント「セオドア・バイケル(ビケル)」も、まさかコロンボ警部のような「計り知れない程の頭脳の持ち主」が担当刑事として自分の前に現れるとは予測もしていなかったことでしょう。異常とも思えるほど緻密な殺害トリックを仕掛けるシーンで「満面の笑み」を浮かべ作業するオリバーの顔が印象的に描かれています。犯罪工作の王者「パトリック・マクグーハン」も顔負けです。

大草原の小さな家

セオドア・バイケルセオドア・バイケルは、大草原の小さな家の「自由よ永遠に」で、ロシアからの移民ユーリー役で出演しています。刑事コロンボより約1年くらい前の作品です。

奥さんからは「オリバーちゃん」呼ばわり

サマンサ・エッガーオリバー・ブラントは、頭が良い割には「子供のような性格」な人ですね。公園で拳銃をゴミカゴに捨てるシーンで、コロンボに気付かれる不安が消えた直後に、嬉しそうな顔に一変して傘の説明をし出す場面など、興味深いです。彼の性格は妻のビビアン(サマンサ・エッガー)との会話「オリバーちゃん呼ばわり」でも伺え知れます。

脇役ソレル・ブークが良い

ソレル・ブーク犯人オリバー・ブラント役のセオドアバイケルも良いのですが、被害者のバーティ・ヘイスティング役のソレル・ブークも深く印象に残りました。撃たれて倒れるシーンが可愛い(不謹慎ですが)です。このソレル・ブークは24話「白鳥の歌」で、音楽プロデューサーのJ.J.ストリンガー役で出演しています。

ウエイトレスのお姉さんが怖い

ジェイミー・リー・カーティスレストランのウエイトレスの女優は「ジェイミー・リー・カーティス」で、有名な俳優の「トニー・カーティス」と刑事コロンボ32話「忘れられたスター」のジャネット・リーを両親に持ちます。ちょい役でも流石に存在感のある演技です。睨みつける顔がめちゃ怖いですよね。

女優ジェイミー・リー・カーティス

彼女はこの後、女優としての才能を開花させます。まず翌年の映画「ハロウィン」シリーズ(主演:ドナルド・プレザンス)で評判を博します。数々のキャリアを経て1994年には、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画「トゥルーライズ」でゴールデングローブ賞を受賞しています。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ジェイミー・リー・カーティスは2022年公開の映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」では、第95回アカデミー賞「助演女優賞」を受賞しました。ウエイトレスのお姉さんから、なんと45〜6年。快挙ですよね皆さん。

ハワード・マクギリン

ハワード・マクギリン出世願望の強い若手会計士のジョージ・カンパネラを演じたのはハワード・マクギリン。目鼻立ちがはっきりした二枚目で、とても印象に残りました。やはりコロンボにはパンチの効いた脇役さんがいますよね。オリバーさんにとても気に入られています。

こっちは浮かばれないアルビン

ピーター・ランパートジョージ・カンパネラのライバル、アルビン・メッツラーは俳優:ピーター・ランパート。バーティの部下だっただけに、オリバーからは忌み嫌われ、この事務所での出世はおろか、業界で生きていくことさえ困難な状況に陥っています。可哀想すぎる。

天才少女キャロライン

キャロル・ジョーンズキャロラインを演じるのはキャロル・ジョーンズ。この天才少女と、2話「死者の身代金」に登場する娘マーガレットのイメージがダブるという方もいます。比べてみてください。よく見るとあまり似ていません。

支部長のダンジガーさん

ジェイスン・ダンジガーシグマクラブ支部長のジェイスン・ダンジガーさん(バジル・ホフマン)は、あの手この手で殺人事件の推理をしますが、ことごとく空振り。この人のキャラクターが…天才集団のイメージを落としているような(笑)‥いやいや、それでも良い役柄でした!

シグマクラブ会員のワグナー

ジョージ・スパーダコスプログラム委員長のバーティに注文をつけるシグマクラブ会員のワグナー役はジョージ・スパーダコス。彼は36話「魔術師の幻想」で舞台となったマジックショーのお店で働く「サッカリー」と同一人物です。さすが俳優さんですね、別人みたいです。

アイゼンバックさん

ドリー・トムソンシグマクラブの美人会員アイゼンバックさんは女優ドリー・トムソン。コンタクトレンズを飲みそうになる直前、オリバーとバーティをきょろきょろ見ていて芸が細かいです。どうでもいいシーンだけど(笑)

メルビル夫人の肖像画

メルビル夫人の肖像画シグマクラブの1階には何と「メルビル夫人の肖像画」が飾ってあります。メルビル夫人は3話「構想の死角」の小説の主人公ですね。

チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」

この作品、邦題「殺しの序曲」で、作品中に登場するクラシック音楽はロシアの作曲家チャイコフスキーによる幻想序曲「ロメオとジュリエット」。私の持っている音源はシャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団によるもので、20分33秒という長い演奏時間の14分12秒に、オリバー・ブラントが再生位置を設定した「第二主題による美しいメロディ」を向かえます。おそらくオリバーは特にお気に入りだったのでしょう。当時のステレオでこの位置から自動再生するには「一度手動で記憶」させる必要があると思われ、ここでも彼の無邪気な性格が伺えます。

人間コロンボを感じられる会話で、自分を見つめ直す

シグマ協会で向かえるラストシーンの一場面で、天才オリバーの苦悩や、コロンボ警部の人間哲学に触れることができます。オリバーは神童と呼ばれ苦しんだ幼少期を語ります。私は神童と呼ばれた経験はありませんが、子供の頃から「わざと頭が悪く見られるように振る舞っていました」。その方が周囲と楽しく過ごせるからです。一方コロンボは、自分は決して秀才とは言えない素材だが、粘り強くしつこく頑張ればきっとモノになる。と答えています。今の私はこの心境です。全力を尽くさず人生を終えることなんてあり得ないですね。コロンボにとって、天職とも言える刑事。その姿に自分の生きる指針を見つけ出すことができました。

「殺しの序曲」は意外と深い作品かも

先述のオリバーとコロンボの会話。それ以外にも、「いじめっ子、いじめられっ子」「天才と凡才」「気持ちの通じない夫婦」「出世を競う二人の秘書」など、殺人事件の周囲で見られる人間関係が面白く描かれています。
なかでもオリバーとバーティの関係は特に興味深いです。バーティのことが好きなオリバーは行き過ぎた愛情表現から逆にバーティから嫌われ、それが横領を暴露される危険を増大させます。本当に頭が良ければ「相手から嫌われない工夫」をもって世を渡れるはずなのですが、最も短絡的な解決方法「殺人」を実行するのも皮肉に感じます。

ラファイエット・パーク
ラファイエット・パークは、例のオリバーが拳銃を捨てるシーンでもあり、公園内にはウエイトレスに睨まれるドーナツのカフェもあります。会計事務所の所在地もこの近辺でしょう。

監督:サム・ワナメイカー
脚本:ロバート・M・ヤング

オリバー・ブラント:セオドア・バイケル(ビケル)(声:田中明夫)
ビビアン・ブラント:サマンサ・エッガー(声:横山道代)
バーティ・ヘイスティング:ソレル・ブーク(声:高木均)
ジェイスン・ダンジガー:バジル・ホフマン(声:田中明夫)
ワグナー:ジョージ・スパーダコス
アイゼンバック:ドリー・トムソン
ジョージ・カンパネラ:ハワード・マクギリン(声:納谷六朗
キャロライン:キャロル・ジョーンズ
バーク刑事:トッド・マーティン
シグマクラブ会員:マイク・ラリー

加筆:2023年9月17日 

41話「死者のメッセージ」

Try and Catch Me / 1977
チャールズ・フランク人気女流ミステリー作家の「アビゲイル・ミッチェル」が「ヨットの事故で亡くなった姪」の夫エドモンド(チャールズ・フランク)を殺害。今回は金銭的な利害ではなく、姪のが死んだ責任はエドモンドにあると推理したアビゲイルが、その復讐を企んだもの。

エドモンドはフィリスを殺したか?

被害者のエドモンドは、それほど悪人には描かれていません。彼がフィリスを殺した証拠もありません。しかしエドモンドがアビーさんの部屋で、妻フィリスの写真を手にとって「薄笑い」をするシーンがあります。この表情は気にかかりますね。

この作品がベスト!と推すファンも多い。

ファンが選ぶベスト作品としては、やはり19話「別れのワイン」が最も多くの票を集めるのですが、この41話「死者のメッセージ」が一番好きだというコアなファンも多いのです。それくらい人気の高い作品。

ゲストスターのルース・ゴードンが素敵!

ルース・ゴードンこの作品も過去に見たときの印象がとても強かったです。まずゲストスターのアビゲイル・ミッチェル役:「ルース・ゴードン」が、素晴らしかったです。小柄な女性ですが、その小柄さと独特の仕草があいまってとても可愛らしく描かれていたと思います。
アビゲイル・ミッチェルはミステリーの女王「アガサ・クリスティ」がそのモデルになっているという説があります。
コロンボ警部が講演会のスピーチでも語っていますが「時には殺人犯を尊敬し、好意を抱くこともある」とは、まさにこの話のアビゲイル・ミッチェルを指しているのではと思われる程、お互いに敬意を表しながらストーリーは進みます。どこか19話「別れのワイン」に共通する雰囲気を持っている作品だと思いました。飛行機での旅行や、窒息死などの類似点もあります。

マリエット・ハートレイも魅力的

マリエット・ハートレイ22話「第三の終章」にも出演のマリエット・ハートレイが演じた秘書のベロニカもとても良かったと思います。ゲストスターの犯行を見抜いて恐喝する脇役はたくさんいますが、「殺されなかった」ことも、この作品を美しく感じさせる要因となっています。この点も「別れのワイン」に通じますね。この作品でベロニカは老眼鏡をかけるシーンがあります。でも実年齢は37歳。老眼にはまだ早すぎる気も‥。

秘書のベロニカは「聡い娘」

冒頭シーンでアビゲイルは秘書のベロニカを「聡(さと)い娘(こ)」だと評しています。聡いとは、感覚に優れ、聡明だという意味。ベロニカはエドモンドが金庫で死んだ時、すでにアビーさんの計画だと気づいていました。ベロニカはこの秘密をアビーさんの「遺産(財産)」と引き換えにするつもりだった。それを旅行中に提案しようと考えていた。(ぼろんこの妄想です)

大草原の小さな家「父さんの秘密」

マリエット・ハートレイ大草原の小さな家のシーズン2・19話「父さんの秘密」(1976年)。魅力的な未亡人「エリザベス・サーモンド」役でマリエット・ハートレイを見ることができます。本作の1年ほど前だと思われ、ほぼ同年齢。美しく優しい女性として描かれています。2020年の4K再放送でこれを見られたことは、とても嬉しいことです。

宇宙大作戦(スタートレック)

マリエット・ハートレイまたマリエット・ハートレイは、宇宙大作戦(スタートレック)の「タイムマシンの危機」の回のザラベス役で出演しています。あのスポックが彼女に恋愛感情を抱くエピソードです。1969年放送で、彼女が29歳の時です。

計画殺人モノとしての醍醐味

シリーズ中最も人気の高い「別れのワイン」は計画殺人ではありません。その点、この作品ならではの楽しめる点も多いのです。冒頭のベロニカとの会話のシーンでは、エドモンドが金庫から大声を出しても外に聞こえないテスト。そして、ストップウォッチを覗き見する時の表情も見逃せません。

弁護士のマーチンは鋭い

G・D・スプラッドリンまた、遺書にサインした直後に「不審な死をとげた」エドモンドですが、抜群のタイミングで起きたこの事件に対し、弁護士のマーチン(G・D・スプラッドリン)は「最初からアビゲイルが怪しい」と睨んでいたと思われます。旅立つ直前(犯行直後)に、金庫の前に立っている彼女と遭遇していますし…。船で口走った意味深な言葉はダメ押し的でしょう。

エドモンドの車のキー

ベロニカが「エドモンドの車のキー」の入手後、しばらくはアビゲイルの様子を伺っているのも、上手いな〜と思います。そして自ら恐喝に打って出ました。予期せぬ出来事「エドモンドの車のキー」の処理について、アビゲイルは2回キーを捨てるチャンスがありました。最初は犯行直後、2回目は警部の犬の散歩で出会った埠頭。推理小説の巨匠でも、生身の人間の行動においては、冷血な判断ができなかったのでしょう。キーは捨ててしまった方が良かったのです。

コロンボ警部の刑事哲学を感じました。

事件解決のエピソードはここでは語りませんが、ラストシーンで「特別扱いしてもらうわけではないが、この年だし、害のない人間だし…」と、見逃して欲しい…とすがるような態度を示すアビゲイルでした。ここでコロンボ警部が「先生も私も立派なプロですから」と諭した場面は、深く心に残るものです。コロンボにしてみれば、その動機から考えても同情したい気持ちは大きいのだが、「プロとして見逃すことはできない」ということでしょう。それはまた「殺人を扱う作家の完全殺人計画」が失敗に終わったことを認めた今、責任から逃避しないことを彼女に求めたのだと思われます。

ナイチンゲールはサヨナキドリ。

犯行の準備をするシーンで「何か聞こえる?ナイチンゲール?」のくだりがありますが、ナイチンゲールはサヨナキドリで鳴き声が美しい小鳥。「墓場鳥」とも呼ばれるそうで、コロンボ警部と初対面の日「警部がピアノでThis Old Man」を弾いた後、バーク刑事がドアを開けたシーンなどで庭から聞こえてくる鳥の鳴き声が、そのナイチンゲールなのでしょうか。

アビゲイル・ミッチェル邸。

ネットで調べたら「アビゲイル・ミッチェル邸」らしき場所の地図が見つりました。おぉ、ベロニカから恐喝をほのめかされた庭らしき形状がわかります。本当だろうか…。個人宅かもしれないので、いたずら行為等は厳禁です。しかし劇中では近所らしき海岸を散歩しますので、マリブ近辺に住んでいる設定です。

コロンボマップ
コロンボマップ

バーク刑事B

ジェローム・グアルディノバーク刑事Bは「ジェローム・グアルディノ」。この41話を皮切りに、43話「秒読みの殺人」や、47話「狂ったシナリオ」と多用されています。

32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる俳優です。この人の他にもトッド・マーティンの演じる「バーク刑事A」が存在します!

「死者のメッセージ」は、音楽も素敵なんです。

音楽は、パトリック・ウィリアムズが担当しています。この他でも合計9作品に関わっているそうです。刑事コロンボ第7シーズンは音楽が素敵です。この「死者のメッセージは特に音楽が素敵」もその一つです。

「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」

YouTube「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」をパソコン演奏で再現しています。この作品が持つ「上品さ」はそのBGMの音楽性も大きく影響していると感じます。「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」とは、私が名付けた呼び名です。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

犬の散歩で出くわす海沿いのデッキ

Ocean Side East Cafe12

Ocean Side East Cafe41

コロンボ警部が犬の散歩中にアビゲイル・ミッチェルに出くわす海岸沿いのデッキは、12話「アリバイのダイヤル」で探偵ダブスとコロンボ警部が会う店と同じ(あるいは近い)場所です。ちなみにこの階段の下には「オーシャン・サイド・イースト・カフェ」があります(12話当時)。手すりの色が違いますが、5年経っているので、取り替えられたのかな。

三谷幸喜さんの大河ドラマ

三谷幸喜さんが脚本を手掛けられた2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、北条義時は妻に毒殺されたと描かれます。実際にそのように書かれた歴史資料も見つかっています。「鎌倉殿の13人」の最終回では、はは〜、アビゲイル・ミッチェルの講演会の言葉通りだな‥と頷きました。

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ジーン・トンプソン、ポール・タッカホー
音楽:パトリック・ウィリアムズ

アビゲイル・ミッチェル:ルース・ゴードン(声:南美江)
秘書ベロニカ:マリエット・ハートレイ(声:桧よしえ)
エドモンド:チャールズ・フランク(声:松橋登)
マーチン弁護士:G・D・スプラッドリン(声:内藤武敏)

加筆:2023年2月3日

刑事コロンボマップ 刑事ぼろんこチャンネル

42話「美食の報酬」

Murder Under Glass / 1978

ジェラード はあまり聡明ではない…

料理評論家のポール・ジェラード氏がレストランのオーナー、ヴィットリオ・ロッシ(マイケル・V・ガッツォ)を殺害。テレビ番組やCMでも有名なジェラードが、その名声を利用してレストランの評価を思いのままに操っていることに腹を立てたビットリオの口を封じたのです。

ジェラード はあまり聡明ではない…

ルイ・ジュールダン犯人のジェラードは(ルイ・ジュールダン)「頭脳明晰」というよりむしろ脳天気なキャラクターの人物で、切れ味は感じませんでした。ワインによる毒殺が判明した瞬間、ワインオープナーが怪しまれることも当然の成り行きと思えます。

美食の国、日本とイタリアが大きく扱われた作品

初期のコロンボ作品と、新刑事コロンボの中間のようなテイストです。刑事コロンボ作品中、最も「日本」が大きく扱われた作品。「日本」とともに、イタリアンレストランが舞台いということで、イタリアンな雰囲気も全体に漂います。それと、コロンボ警部は食べているシーンが多いですね。

日本人「小津氏」

マコ岩松登場人物の日本人「小津氏」。映画監督の小津安二郎を連想させるし「OZ」と発音され、アメリカ人にも親しみやすかったのでしょう。襟には「福壽」と書かれています。俳優のマコ岩松氏。この時、ふぐ刺しを食べるコロンボの箸使いは、下手で笑えます。

刑事というと、警視庁の方ですか?

ブログ読者さんのご指摘によると、英語では「警視庁」とは言っておらず「lieutenant」警部補と言っているようです。翻訳家の誤訳ではないか?ということです。面白い発見ですね。

あなたの才能は素晴らしいが、後はてんでイケません

ラストシーンは、なかなか印象的でした。ジェラードはコロンボ警部の「誘い」にのる形で「いっそのこと、コロンボを殺してしまえ」と第二殺人計画を思い立ちます。それが、コロンボの狙いでもあっただけに悔しさもひとしおだったでしょう。この後のコロンボの台詞「証拠ってのは、こういうヤツを言うんです」と、ジェラードの仕掛けた毒入りのワイングラスを指差すあたり、爽快です。一連の会話の中で「お互いの才能を評価する」反面、人間としては好きでない、という言葉の応酬があります。ジェラードの方は腹いせ的ですがコロンボ警部の「あなたの才能は素晴らしいが、後はてんでイケません」の台詞は、殺人という短絡的な解決方法に走った犯人に対し「人間失格」の判決を下す裁判官のように見えました。

後のコロンボの「カミさん」シェラ・デニスが再登場

シェラ・デニスジェラード氏の秘書イブ・プルマー役で、シェラ・デニス(シーラ・ダニーズ)が出演しています。新シリーズと比較するとやはり若いですね~。吹き替えの声優も「若い女性風」の声で、後に新刑事コロンボに数多く登場する際の声とは異なります。ジェラード氏の自宅で小津氏と同席するシーン、松竹梅と書かれた派手なオレンジ色のハッピを着ているのはこっけい。

不思議なキャラクターのバーク刑事

トッド・マーティンコロンボ警部は初対面の2分後に、犯人はジェラード氏であると疑ったと明言していますが、この時居合わせたのが40話「殺しの序曲」にも登場するバーク刑事(トッド・マーティン)。画面にいるだけで存在感を感じる素敵な俳優さん。

ヴィットリオはマイケル・V・ガッツォ

マイケル・V・ガッツォマイケル・V・ガッツォはゴッドファーザーPART IIなどにも出演した俳優さん。「美食の報酬」では、豪快なイタリア人シェフを名演しています。毒に苦しんで絶命するシーンは印象的です。日本語版吹き替えは藤岡重慶さん「あしたのジョー」のおっつぁん「丹下段平」役でも有名ですね〜。

レストラン振興協会の女性会長はロバート・カルプの元カミさん

フランス・ニュイエン葬式のシーンで支払済の小切手を破って、コロンボから目をつけられたメアリー・チョーイはフランス・ニュイエン。彼女は1967年〜3年間ロバート・カルプの奥さんでした。
コロンボマップ
コロンボマップ
ヴィットリオが埋葬された墓地はイングルウッド・パーク墓地で、逆転の構図のロケ地と同じです。

監督:ジョナサン・デミ
脚本:ロバート・バン・スコヤック

ポール・ジェラード:ルイ・ジュールダン(声:金内吉男)
ヴィットリオ:マイケル・V・ガッツォ(声:藤岡重慶)
イブ・プルマー:シェラ・デニス(シーラ・ダニーズ)(声:田島令子)
メアリー・チョーイ:フランス・ニュイエン(声:瀬能礼子)
マリオ:アントニー・アルダ(声:徳丸完)
アルバート:ラリー・D・マン(声:雨森雅司)
バーク刑事:トッド・マーティン
マーケットの主人:マイク・ラリー
 
加筆:2020年7月26日

43話「秒読みの殺人」

Make Me a Perfect Murder / 1978
ローレンス・ラッキンビルテレビ局の女性プロデューサー:ケイ・フリーストン(トリッシュ・バン・ディーバー)は、支社長であり恋人でもあるマーク(ローレンス・ラッキンビル)を殺害。果たして殺すほどの憎しみがあったのか?
マークの出世に対する嫉妬はありますね。さらにマーク(あるいは社)からの自分への評価が思いのほか低いことを思い知ったからか。それで殺人‥とは短絡的すぎるかな。

「秒読みの殺人」は名作です

この「秒読みの殺人」という作品、小学生時代にも間違いなく見ていました。しかしながら、27話「逆転の構図」や32話「忘れられたスター」ほど、強烈な印象は残っておらず、少しノーマーク的な作品でした。今回、再放送を拝見し、見事な作品であることを再認識しました、名作と言って間違いないでしょう。

刑事コロンボ的ストーリー展開を感じる

犯人役の女優や、脇役俳優の良さ云々はさておき、正当派「刑事コロンボ的ストーリー展開」が色濃く、ほとんどのシーンで無駄が無く(注)、密度の濃い作品となっています。コロンボ警部の「落としのテクニック」も、期待通り炸裂してくれています。

トリッシュ・バン・ディーバー

トリッシュ・バン・ディーバーもう一つの側面「犯人役ゲストスター」の影響力は、他の傑作と比較し線は細めです。犯人のケイ「トリッシュ・バン・ディーバー」は美しく描かれていますが、突出した存在であったとは感じません。それ以上に、テレビ業界という厳しい環境において、人間が壊れてゆく様を見せてくれたと思います。

出世欲の強い女性の立場

その反面、心理の描写には鋭いものを感じます。殺意、焦り、意思の強靭さなど、通常の女性では表現しづらい心の揺れを、見事に表現しています。出世欲の強い女性が、組織のトップにのし上がる過程で、仕事を愛する気持ちよりも、成功したい願望が心を支配している様子がうかがえます。周囲の男性たちは、それを好ましく思っていませんでしたね。
それと対比し、同性愛を連想させる描写もありました。女優バレリーとの関係がそれです。初期のコロンボでは扱われなかった題材でしょう。ディレクターの男性が女性的なども、類似した観点です。

終わったら、ほっとすると言うが…

犯行を認める場面で、終わったらほっとすると言うが…その逆だ。と心境を語るケイ。まだ負けたわけじゃない、きっと這い上がってみせる…という意欲をみせました、女は強い。

フィルムチェンジをアリバイに用いたトリック

本作品「秒読みの殺人」では映写時に、フィルムのリールを切り替えるタイミングを画面右隅に表示されるパンチによって、見極める‥というテクニックが焦点となっていて、邦題「秒読みの殺人」に結びつけています。それに対し、21話「意識の下の映像」で映写技師のロジャー・ホワイトは、小銭をリール中心に挟み込んで、それが落ちたら交換のタイミングだと語っています。テレビ局の映写機は最新設備で、小銭を挟めない(カバーで覆われている)タイプでしたね。

映写技師ウォルター:ジェームス・マッキーチン

ジェームス・マッキーチン作品中重要な役割を果たす映写技師ウォルターを演じたのは、ジェームス・マッキーチン。10話「黒のエチュード」で、楽団の関係者ビリー・ジョーンズ役でも登場しています。どちらも良い演技を見せてくれます。

特に印象的なシーン「エレベータの中で…」

エレベータの天井に見えた「凶器の拳銃」を、犯人ケイが何とかしてそれを下に落とそうとするシーンは、秒読みの殺人で最も印象に残る場面です。身長が低い彼女が必死になっている様子がスリル満点に描かれています。しかも、その行為そのものが、コロンボ警部が仕掛けた罠だと気付かされ、完敗を認めるのも素晴らしかったです。

パトリック・オニール

パトリック・オニールテレビ局のお偉方の役で、パトリック・オニールが登場。彼は名作と呼ばれる9話「パイルD-3の壁」で犯人のエリオット・マーカムを演じています。今回もさすがの演技でした。

テレビを修理するクレイマー刑事

ブルース・カービーなぜかテレビを修理する人の役で、すっかり顔なじみのはずの「ブルース・カービー」が登場。う、どう考えても不自然な起用だと思えますが、これはブルース・カービーが「ジョン・フィネガン」同様、特別な俳優扱いだったことを伺い知れます。ここシーンでは「愛犬ドッグ」も一緒にテレビを見ていますね。

バーク刑事

ジェローム・グアルディノ41話「死者のメッセージ」に続いて今回も捜査に起用されたバーク刑事Bは「ジェローム・グアルディノ」。あまり役に立ちませんが、憎めないキャラクターですね。32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる俳優です。

テレビ局のプロデューサー

ジョージ・スカフ女上司に不満げな「しがないテレビ局のプロデューサー」を演じたのは「ジョージ・スカフ」。気づきにくいのですが、この人はなんと33話「ハッサン・サラーの反逆」の領事館でアラブ人「クラ」を演じた人です!

撮影所(ロケ地)のモニター室では…

ケイはコロンボ警部に追い回され、ヒステリックに叫んでしまいます。メリーゴーラウンドの音楽と目まぐるしく切り替わる画面が印象的ですが、録画して何度も見られる時代となっては、このような強烈なシーンより、静かな場面の方がありがたいですね。同じような意味で「黄金のバックル」の、ジェニーが死体を発見して叫びそうになるシーンも、早送りしたくなります。(笑)

注)テレビ局のモニター室でコロンボ警部が、画面に模様(パターンのようなもの)を写して喜んでいるシーンは、不要でしょうかね~。冒頭で「鼻歌を歌いながら交通事故を起こすシーン」は、無駄と言い難い楽しいシーンでした。→プジョー403

同じ風景画が、最低でも3回出現。
ブログゲストさんから情報をいただき検証しました。レイ・フレミングのマンション、ネルソン・ヘイワードのホテルの風景は同じでした!さらに調査した結果、ケイ・フリーストンのオフィスの窓にも出現しています。

レイ・フレミングのマンションの風景1

ネルソン・ヘイワードのホテルの風景20

ケイ・フリーストンのオフィスの風景43

マークとケイのビーチハウス

マークとケイが暮らすビーチハウスは、数々の刑事コロンボの重要人物が居を構えるマリブビーチにありました。二人が務めるテレビ局のロス支局は、市街中心部近くだと思われ、冒頭シーンでコロンボ警部が愛車プジョーで追突事故を起こす道路はそこからほど近い場所です。

マークとケイのビーチハウス
追突事故を起こす道路

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ロバート・ブリーズ
音楽:パトリック・ウィリアムズ

ケイ・フリーストン:トリッシュ・ヴァン・ディヴァー(声:寺田路恵)
フラナガン:パトリック・オニール(声:黒沢良)
マーク:ローレンス・ラッキンビル(声:森川公也)
バーク刑事B:ジェローム・グアルディノ
ウォルター:ジェームス・マッキーチン(声:加藤修)
ルーサー:ロン・リフキン(声:原田一夫)
バレリー:レイニー・カザン(声:大橋芳枝)
電気屋:ブルース・カービー(声:杉田俊也)
テレビ局の警備員ー:マイク・ラリー
 
加筆:2023年1月11日

48話「幻の娼婦」

Sex and the Married Detective / 1989

この作品は好き嫌いが分かれます

リンゼイ・クローズ女性心理学者ジョーン・アレンビー(リンゼイ・クローズ)が恋人でもあるパートナーのデービッド・キンケードを殺害。2009年BS Hi(現BSプレミアム)での放送を初めてみました。これは私がノーマーク時代のコロンボ作品でした。作風は私の好みではありませんが、紛れもなく刑事コロンボの一作品であります。

犯人の職業設定にも苦労したのか?

犯人も多彩になってきた印象です。当時は視聴率へのプレッシャーから様々な努力をしたのでしょうね。妖艶な絵作り・音楽…全体的にそのようなムードで描かれています。ただし、このような雰囲気・音楽が好きだというファンもいらっしゃいまして、それも頷ける点です。2021年の再放送をご覧になったゲストさんが、参考になるコメントを書いてくださったので、読んでみてください。

音楽はパトリック・ウィリアムズ

音楽は、パトリック・ウィリアムズが担当しています。41話「死者のメッセージは特に音楽が素敵」を皮切りに、43話「秒読みの殺人」、45話「策謀の結末」と立て続けにコロンボ作品の音楽を担当。それらが素晴らしい仕上がりになっています。新シリーズでは47話「狂ったシナリオ」や50話「殺意のキャンバス」もパトリック・ウィリアムズです。

賛否両論の「賛」

この作品は倒叙法で書かれていますし、コロンボ警部の地道な捜査によって事件が解決されるという、あるべきスタイルは守られていますよね。37話「さらば提督」よりこっちの方が好きです(笑)キャメルヘアのコートの商品タグ、デービッドのキーの件、待たせたタクシーの怪など。面白い「ひっかかり」もたくさんありました。

女性トイレに長蛇の列

警部がミュージックホールの女性トイレを調べるシーン、その後、女性たちの長蛇の列ができています。「こんなに?」と思いますが、クラシックコンサートの休憩時間と重なったわけです。そのシーンの切り替えのBGMが楽曲の終わりを意味していて、よく考えられたユーモアシーンです。

賛否両論の「否」

後半になってジョーンはまたリサに扮装し、夜のクラブをハシゴして、お金や伝言をばらまき、指紋をベタベタ残し、バーテンダーなどにも印象づけるような行動をしています。このシーンはどういう意味なのでしょうか?

お色気の有無は別として

ジュリア・モンゴメリークリニックで働く助手シンディを演じたのは女優:ジュリア・モンゴメリー。一部のコメンテーターからは、むしろ主役のジョーンより美人だという意見もありますが、どうでしょう?私にはちょっと軽い感じがして、役柄としてはそれ以上の魅力は感じませんでした。

またまたバーク刑事

スチュワート・J・ツリー今回バーク刑事Cを演じたのは俳優スチュワート・J・ツリー。「今回」と強調したのは、この「バーク刑事」はよっぽどコロンボ警部のお気に入りらしく、「トッド・マーティン」「ジェローム・グアルディノ」に次ぐ三代目なのです。演じる俳優こそ異なりますが、皆それぞれ、良い味を出しています。

重要ではありませんが、このビル

アレンビー・クリニック番組内に登場するこのビル、アレンビー・クリニックがテナントで入っていますが、65話「奇妙な助っ人」と66話「殺意の斬れ味」にも登場します。いずれも下から上に眺めるようなシーンで、同じフィルムを使い回したのでしょうか?

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ジェラルド・リー・ルドウィッツ
音楽:パトリック・ウィリアムズ

ジョーン・アレンビー:リンゼイ・クローズ(声:鈴木弘子)
デービッド・キンケード:ステファン・マクト(声:堀之紀)
シンディ:ジュリア・モンゴメリー(声:井上喜久子)
ヘレン:マージ・レッドモンド(声:麻生美代子)
バーク刑事C:スチュワート・J・ツリー

加筆:2021年3月5日