パトリック・マクグーハン

Patrick McGoohan
[1928年3月19日 – 2009年1月13日]
28話「祝砲の挽歌」陸軍幼年学校校長:ラムフォード大佐
34話「仮面の男」 国際謀報部員:ネルソン・ブレナー
37話「さらば提督」(演出のみ)
52話「完全犯罪の誤算」 弁護士:オスカー・フィンチ
67話「復讐を抱いて眠れ」 葬儀会社社長:エリック・プリンス
68話「奪われた旋律」(演出・脚本のみ)

28話「祝砲の挽歌」

28話「祝砲の挽歌」では、犯人役の私立ヘインズ陸軍幼年学校の校長ラムフォード大佐を好演。毅然とした風貌、自分の生き様を信じながらも殺人を犯す「化石的模範人物」を演じています。この作品では、規律に厳しく生きる組織の長が、その厳しさが故に自分の犯罪を暴かれるという矛盾を美しく描いています。

34話「仮面の男」

34話「仮面の男」では、国際謀報部員:ネルソン・ブレナー役。祝砲の挽歌で「軍服に帽子姿」だったため、こちらの方がマクグーハンの素顔がよく分かる作品と言えます。自宅で麻雀セットを披露するシーンでコロンボ警部から「ギャンブルはお好きで?」と質問され「他に何がある」と答えたのは印象的でした。

52話「完全犯罪の誤算」

一方52話「完全犯罪の誤算」では、野望に満ちた犯人「弁護士オスカー・フィンチ」役。祝砲の挽歌が1976年製作、この作品が1990年ということで14年の隔たりがありますが、どちらも秀逸です。一人の俳優がいかに、作品の中で存在感を発揮するのかを再考せざるを得ません。このオスカー・フィンチなる人物、異常な程の合理主義者。Mr.タイムイズマネーとも言える、秒刻みの多忙な中、自らの過去の汚点を消し去るべく、殺人を犯します。成功者の典型とも映るこの弁護士が、その風貌から「無能な人物」とも感じるコロンボ警部に、完全犯罪の盲点を暴かれるのです。

67話「復讐を抱いて眠れ」

67話「復讐を抱いて眠れ」は殺人のトリックには少し甘さを感じますが、マクグーハンの存在感、演技には引き込まれるものがあります。

犯行の準備・工作の演技に引き込まれる…

マクグーハンの演技の見どころは、犯罪を隠蔽するためにせっせと工作する時の仕草、表情。まるでそれを楽しんでいるかのようにも見えるし、強がっているようにも見えます。「復讐を抱いて眠れ」でのハリウッドで葬儀屋の社長エリック・プリンスは、「祝砲の挽歌」のラムフォード大佐「完全犯罪の誤算」の弁護士オスカー・フィンチより、若干キャラクター性を抑え気味でしたが、遺体を担いで入れ替えるシーンなど、十分にマクグーハンを堪能できる作品でした。

一家総出でコロンボに出演

長女のキャサリン・マクグーハンは「復讐を抱いて眠れ」で葬儀屋の秘書役で出演。次女の「アン・マクグーハン」は「奪われた旋律」でガブリエルが転落死するその瞬間に居合わせたご婦人役で出演。

映画「ブレイブハート」

パトリック・マクグーハンは映画「ブレイブハート」のエドワード1世役も大好き。とてもハマり役でした。
・身長は188cmと、かなりの大柄。 
加筆:2015年10月2日

28話「祝砲の挽歌」

By Dawn’s Early Light / 1974

作品の持った雰囲気がとても好きです。絵的な美しさ、兵学校という閉鎖された特殊なシチュエーション。他にも軍隊ものの作品はありますが、この「祝砲の挽歌」には及びません。

事件が起こる背景

陸軍幼年学校の劣等生にその罪をきせる行動と相反し擁護するような言葉も…。厳しいが故に学校で孤立してしまう立場も…。生徒たちの「自供」により殺人を暴かれてしまう下りも…。流れるようにつながっています。また、学校の平面図から「陸軍幼年学校」が「男女共学のキャンパス」に改築される計画があったことを見破るあたり、コロンボ警部の着眼は流石です。

冒頭の演出も見事

廊下をこそこそと進んで行くと、砲弾の工作をしている背中が見えてくる。予め準備した材料を丁寧に加工する手元。冷静ながらも…汗がしたたる表情。丁寧に指紋を拭き取る。火薬を流すために蛇口を振り回す。外に出た時、初めてタイトルクレジットの文字が表示され、微かなドラムロールでBGMが始まる。砲台での準備を終え、後に大きな意味を持つ「りんご酒」を見つける。6分30秒を過ぎた頃、軍隊ラッパの音と共に台詞付きのドラマがスタートします。始まりから6分30秒まで台詞は一切なし、音楽もごく小さい。この冒頭シーンを見ただけでこの作品がどれほど凄いかを直感します。

パトリック・マッグーハンの存在感

パトリック・マッグーハン犯人役のパトリック・マッグーハンの存在感は抜群です。ヘインズ陸軍幼年学校の理事長ヘインズを殺害した後も「厳しい校長先生:ライル・C・ラムフォード大佐」が、正義(?)を貫いて生きる様を、美しく演じています。

ラムフォード大佐

ラムフォード大佐は、自分の保身のために殺人を犯したとは思えません。むしろ間違った方向を向き始めたアメリカに対し「NO」と言いたかったのでは?私は戦争擁護の立場ではありません。ただ大佐の気持ちを考えただけです。

日本語吹き替え:佐野浅夫さん

ラムフォード大佐の吹き替え「佐野浅夫」さんは素敵でしたが、ミラー当番兵(靴が汚れていた生徒)を再度呼び出して説教するシーンからしばらくの間、別の声優になっていました。佐野浅夫さんとは似ていない声で、この部分がとても残念でした。初期放送版ではカットされていたのでしょうね。重要な場面だと思いますが放送時間の関係でしょうね。

スプリンガー候補生

マーク・ホイーラー落第生のスプリンガー候補生(マーク・ホイーラー)の反抗的な態度やエピソードも上手く描かれています。彼が「大砲の誤爆は自分の責任であるはずがない」「不可能だもん*」と語る場面も印象的です。俳優マーク・ホイーラーは、その後の映画「アポロ13」にニール・アームストロング役で出ているらしいです。あの月面着陸の船長さんですよね。
*=実は掃除当番をさぼっている。

シロとクロを見分ける着眼点

コロンボ警部が容疑者を「ラムフォード大佐」に絞る場面は、大佐がボロ布を最初に見た時に言及を避けたのに対し、スプリンガー候補生はためらうこと無く「大砲の清掃用の布」と答えたことにあるでしょうか。ラムフォード大佐は事故の原因をスプリンガーの不始末として片付けることを前提として、この犯行計画を始めたわけであり、自分の計画どおりに進む捜査に対し、すこしだけためらいの感情が出たのでしょうか。

自ら祝砲を撃つ役目を引き受けた

トム・シムコックスまた、ラムフォード大佐は凛とした振る舞いの中でも、沈着冷静に計画を実行しています。被害者ヘインズ(トム・シムコックス)との口論の最中に、少しだけドアを開けておき、ヘインズが自ら「式典で祝砲を撃つ役目を引き受けた」成り行きを秘書に聞かせるよう工夫しています。本来なら大佐が爆死していた可能性もあることで、自分が容疑者のラインから外れるという計算です。

一癖ありそうな秘書

マデレーン・シャーウッド秘書ブレイディの役はマデレーン・シャーウッド。メガネの上から覗き見るような表情が印象的な女優さんでした。ちょっと気が強そうな感じ。美人秘書という観点ではなくても、とても楽しいキャラクターだと思います。

とばっちりを食らうルーミス大尉

バー・デベニング注目すべき場面は、食堂でふざけている生徒を「突然のように声を荒げて叱る」大佐の態度。スプリンガー候補生についての会話中に、コロンボ警部はスプリンガーを犯人ではないと確信している。むしろ自分が疑われている‥と気付くのです。ご機嫌斜めな大佐の「リンゴ酒密造犯捜査命令」を受けるルーミス大尉(バー・デベニング)のリアクションは、少し不本意そうで興味深いです。

大草原の小さな家

バー・デベニングこのバー・デベニングは大草原の小さな家の「ベイカー先生 休診」に、若いローガン医師の役で出演しています。失意の中で廃業を決意するベイカー先生の代わりに赴任した、身勝手なお医者さんです。またこのお話には、26話「自縛の紐」のスタッフォード夫人(コリン・ウィルコックス)がベス・ノヴァック役で出演しています。

祝砲の挽歌

原題は「By Dawn’s Early Light」で直訳は「夜明けの明りで」という感じ。「挽歌」とは中国で葬送の時に柩(ひつぎ)をひく者が歌った歌で、エンディングに歌とともに訓練する響きも通じて、納得の邦題です。これについては、ブログゲストさんが詳しく解説してくれていますので、ぜひお読みください。

クレーマー刑事が登場

クレーマー刑事後の作品でも活躍する「クレーマー刑事」が初登場。やる気があるんだか…どうだか…わかんない感じがとても良いですね。コロンボ警部の部下は総じて「早く家に帰りたい」人が多いです。その後は「ジョージ」が定着しますが、この時は同僚刑事のマイク・ラリーから「デーブ」と呼ばれています。

モーガン候補生はクレーマー刑事の息子!

ブルーノ・カービーヘインズ陸軍幼年学校のトイレで、高校時代の彼女の思い出話をする相手「モーガン候補生」は「ブルーノ・カービー」で、クレーマー刑事を演じる「ブルース・カービー」の息子。父ブルースは2012年現在存命だが、息子ブルーノは2006年に57歳の若さでこの世を去っています。

ヘインズ陸軍幼年学校

「ヘインズ陸軍幼年学校」はサウスカロライナ州チャールストンがロケ地だということです。ですので海外ロケに匹敵するほどの作品スケールが感じられるわけです。

監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ハワード・バーク

ライル・C・ラムフォード大佐:パトリック・マクグーハン(声:佐野浅夫)
スプリンガ―候補生:マーク・ホイーラー
ミラー候補生:ロバート・クロットワーシー
モーガン候補生:ブルーノ・カービー
秘書ブレイディ:マデレーン・シャーウッド(声:高橋和枝)
クレイマー刑事:ブルース・カービー
ルーミス大尉:バー・デベニング(声:徳丸完)
ウィリアム・ヘインズ:トム・シムコックス(声:堀勝之祐)
マデレーン・シャーウッド

加筆:2020年7月26日

34話「仮面の男」

Identity Crisis / 1975

パトリック・マクグーハン

パトリック・マクグーハン28話「祝砲の挽歌」に続き、パトリック・マクグーハンが犯人:ネルソン・ブレナー役で再登場しました。この後の新シリーズでも登場しますが、この作品「仮面の男」での顔が最もマクグーハン本人らしいかもしれません。

壮大なスケールの作品が続く

壮大なスケールで描かれた二作品、33話「ハッサン・サラーの反逆」と35話「闘牛士の栄光」に挟まれたこのお話も、犯人がCIAの情報部員であるという意味で、凄く大げさな背景でした。

「もう一つの鍵」のレスリー・ニールセン

レスリー・ニールセン殺されるジェロニモ(A.J.ヘンダーソン)は、7話「もう一つの鍵」で、ベス・チャドウィック(スーザン・クラーク)の婚約者ピーター・ハミルトンを演じたレスリー・ニールセンです。宿泊先(ビルトモアホテル)は後の52話「完全犯罪の誤算」のマッキー上院議員が滞在場所と同じかもしれません。(要検証)

裸の銃を持つ男

レスリー・ニールセンレスリー・ニールセンはコメディ映画「裸の銃を持つ男」(三部作・1988-1994年)の主役を演じていることは有名です。2023年にこの映画がテレビで放送され、私も観ることができました。レスリー・ニールセンが演じるのは、間抜けな警部補フランク・ドレビン。「警部補でフランク」ってコロンボへのオマージュでしょうね。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー海岸のバー「シンドバッド」のバーテンは、12話「アリバイのダイヤル」25話「権力の墓穴」などに出演している、ピーター・フォークの「盟友」で「名優」のヴァル・アヴェリーです。

ヴィトー・スコッティ

ヴィトー・スコッティ演説している男性:サルヴァトーレ・デフォンテは、19話「別れのワイン」20話「野望の果て」など、たびたび刑事コロンボシリーズに出演している名脇役のヴィトー・スコッティです。

アンダーソン検死官

追いはぎ天国で、初動捜査にあたる検死官の一人:アンダーソンは、バーク刑事Bの「ジェローム・グアルディノ」と良く似ていますが、おそらく別人で「カーメン・アルジェンツィアノ」という俳優さんです。

CIAのコリガン部長

デヴィッド・ホワイトCIAのコリガン部長役は、デヴィッド・ホワイト。大柄で白い髪が何とも目立ち、印象に残ったことでしょう。

「奥様は魔女」のラリー

デヴィッド・ホワイトこのデヴィッド・ホワイトはテレビドラマ「奥様は魔女」のダーリンが勤める広告代理店の社長「ラリー」でお馴染みです。仮面の男では、シリアスな役でしたが「奥様は魔女」のコミカルなラリーの印象が強く、見ていて笑ってしまいました。。

エキストラ俳優ゲーリー・ライト

ゲーリー・ライト交通公園でコロンボ警部をつけ回すCIAの一員はエキストラ俳優ゲーリー・ライト。この人は刑事コロンボに6回も出演している常連さんです。

バーバラ・ローデス

バーバラ・ローデス遊園地の女性カメラマン:ジョイス役のバーバラ・ローデスは、7話「もう一つの鍵」にも出演しています。(加筆2010年7月27日)調べてみました。また、この遊園地のロケ先はロサンゼルス動物園ではないかと思われます。→バーバラ・ローデス

クリフ・カーネル

クリフ・カーネル同じく遊園地の写真屋のオヤジ:ドン役の「クリフ・カーネル」は、9話「パイルD-3の壁」でウイルソン巡査、12話「アリバイのダイヤル」でクレメンス刑事役で出演しています。

遊園地での二人の行動は不可解

コロンボ警部の捜査上で大きな手がかりとなる遊園地での写真。犯人のブレナーと被害者のジェロニモが再会し、秘密の打ち合わせをする場所が遊園地なのですが、ここでのブレナーの行動が大疑問。射的ではしゃいで店主に印象づけたり、ジョイスに記念写真を撮られたり、少女にぬいぐるみをプレゼントしたり、やりたい放題でしたね。

クレーマー刑事

クレーマー刑事補佐役の刑事は、コロンボシリーズ中で最もなじみ深いクレーマー刑事「ブルース・カービー」。今回も可愛い演技を見せてくれました。

広告会社の人の証言で身元がバレる

コロンボ警部とクレーマー刑事は、ヘンダーソンの成りすましを暴き、パイクのロングビーチ遊園地を手がかりに、写真に写っているサングラスの男を見つけた。そこからブレナーの身元がなぜ分かったか?
遊園地から広告会社にとんぼ返りし、社員に写真を見せたのでしょう。コロンボは「広告会社の人が、サングラスの男はブレナーだと教えてくれた」と説明しています。ブレナーは広告会社と面識があったのです。
(加筆:2013年1月16日)

CIAの情報部員が超大金持ち

戦歴も誉れ高く、経営コンサルタントとしても有名。それにしても、半端でなく家が豪華!もの凄いプールで十人近いゲストが泳いでいるし。こりゃ、悪いことして蓄財してますって、自分で言っているようなもので、「二重スパイで荒稼ぎ」って、CIAは見抜けなかったんでしょうかね?

変装した老人の顔がエリック・プリンスに似てるか?

スタインメッツメルビルを事故に遭わせる「スタインメッツ」はブレナーが変装したものですが、その顔が後にマクグーハンが演じる67話「復讐を抱いて眠れ」のエリック・プリンスに雰囲気が凄く似ています。これは実際に、マクグーハンが老けたということもあるのでしょうが、比較してみると面白いです。

ブレナー邸で人生を語る二人。

後半のシーンで、ブレナーはコロンボを自宅に誘います。署に戻る必要があると一旦は断わりますが、日を改めて邸に出向くことになります。ここでブレナーはお酒を振る舞いますが「百薬の長としては、何が望みか?」とコロンボに尋ねます。シンドバッドのオーナーが「毒は何にします?」と言い回したのと対照的で面白いです。
中国の麻雀セットを見せてもらったコロンボから「ギャンブルがお好きなんですね?」と尋ねられ「それ以外、何がある?」と答えるブレナー。コロンボ作品の中には、ギャンブル好きの登場人物が多く出てきます。
ブレナーは数々の成功を収め名誉も富も手に入れたのに、退屈な人生だと評しシラけた口調です。コロンボ警部がブレナーの部屋で珍しいものを見てハシャイでいるので、何とも不思議な会話になっています。

超重要な豪邸なのです!

ブレナー邸17話「二つの顔」のクリフォード・パリス邸、34話「仮面の男」のネルソン・ブレナー邸、38話「ルーサン警部の犯罪」のウォード・ファウラー邸は同じ家です。車の入り口〜ロータリー型の車寄せ、アーチ型の白い装飾の門扉、大きな暖炉が特徴です。
アンジェロドライブの豪邸
刑事コロンボマップ
遊園地は前半でジェロニモとブレナーが待ちあわせをする場所で、交通公園は後半にCIAに尾行される舞台になります。以外にもこの2箇所は同じロサンゼルス動物園の敷地内にあります。

シンドバッドはどこにあるか?

刑事コロンボのシンドバッド
「シンドバッド(追いはぎ天国)」は西海岸の「サンタモニカ埠頭」という設定ですが、実際には南の外れ「ロングビーチ」がロケ現場だということです。

タクシーの運転手

マイク・ラリー前半、殺されたジェロニモを乗せたと話すタクシーの運転手として、伝説的エキストラ俳優マイク・ラリーが登場します。今回は貴重な「セリフ付きの役」です。

ホットドッグ屋のオヤジ

ベン・フロマーコロンボがCIAに後をつけられている交通公園のホットドッグ屋のオヤジ:太っちょの俳優さんはベン・フロマー。は25話「権力の墓穴」の前半のシーン、高級クラブのバーでバーテンダー、33話「ハッサン・サラーの反逆」で総領事館の料理人の役でもお目にかかれます。印象的な俳優さんです。12話「アリバイのダイヤル」でもカメラマン役で出ています。

ラストシーンのジョークについて

ラストシーンのジョークの意味が不明であるというコメントを頂くことがあります。これはぼろんこの私的解釈ですが、ポーカーは「ポーカーフェイスなブレナー」を比喩しています。マージャンは中国発祥のゲーム。「ポーカー(ブレナー)がマージャン(中国)と賭けをして、はじめはポーカーが優勢、ところが後半…逆転。」これはブレナーの完全犯罪は、中国のオリンピック不参加報道によって阻まれた…という感じでしょうか。

コメンテーターさんの調べで原文は

Columbo “Would you like to hear something funny?”
Brenner “I’d love to.”
Columbo “Today, Chinese…they changed their minds.”
Brenner “Did they, again?”
Columbo “They’re back in the games…”
Brenner “in the games….Mah-Jong.”

だそうです。

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ウィリアム・ドリスキル

出演:ネルソン・ブレナー:パトリック・マクグーハン(声:佐野浅夫
ジェロニモ:レスリー・ニールセン(声:家弓家正
クレーマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也
コリガン部長:デヴィット・ホワイト(声:早野寿郎)
サルヴァトーレ・デフォンテ:ヴィトー・スコッティ(声:相模太郎)
シンドバッドのバーテン:ヴァル・アヴェリー(声:金井大)
ジョイス:バーバラ・ローデス
ホットドッグ屋:ベン・フロマー
タクシーの運転手:マイク・ラリー

加筆:2023年12月17日

37話「さらば提督」

Last Salute to the Commodore / 1976

完全に倒叙でない刑事コロンボ作品です。私のような保守的な刑事コロンボファンの場合、受け入れ難いのですが、普通に考えれば面白い作品なのだと思えます。

提督はジョン・デナー

ジョン・デナー提督(オーティス・スワンソン)役の俳優さんはジョン・デナーで、24話「白鳥の歌」のパング・ボーンも演じています。今回は帽子をかぶっているので、パング・ボーンとはまた別の印象が強いですね。このように作品をまたいで出演している俳優さんの発見は、とても楽しいです。

ロバート・ヴォーン

ロバート・ヴォーン死体遺棄の犯人(チャーリー・クレイ)として、29話「歌声の消えた海」のロバート・ヴォーンが再登板。今回は、いつもに増して馴れ馴れしく接近してくるコロンボ警部にタジタジな感じでした。私としては‥ロバート・ヴォーン=ダンジガーさんがお気に入りですが。

フレッド・ドレイパー

フレッド・ドレイパー18話「毒のある花」31話「5時30分の目撃者」等、数々のコロンボ作品に出演のフレッド・ドレイパーがスワニー・スワンソン役で登場。また、お馴染みの「クレーマー刑事:ブルース・カービー」が重要な役を務めるなど、華やかでした。

シオドア・アルビンスキー刑事

デニス・デューガンでも、事件解決編で新米エリート刑事のシオドア・アルビンスキー:デニス・デューガン(なぜか通称マック)と一緒に、声高に説明をし出すシーンは、日本のサスペンス劇場顔負けの演出で楽しめました(笑)。

ブログ訪問者さんからの情報(1)

この「デニス・デューガン」は、その後の作品63話「4時02分の銃声」で監督をつとめています。さらには(1973年 – 1987年の間)「ジョイス・ヴァン・パタン」の夫だったそうです。彼女は27話「逆転の構図」、39話「黄金のバックル」に出演している重鎮女優ですね。

執事のタナーを発見!

ウィルフリッド・ハイド=ホワイト弁護士の老紳士ケタリングは。13話「ロンドンの傘」でサー・ロジャーの執事タナーを演じた俳優「ウィルフリッド・ハイド=ホワイト」でした。アリバイの証言内容など、ちょっと一癖ある人物を好演しています。

金太郎あめのような俳優

ジョン・フィネガンそれは「ジョン・フィネガン」。今回はガードマンの役で出てました。調べてみたら合計12回出演しているようです。おそらくコロンボシリーズ最多出演(セリフあり&クレジット)の俳優と考えて間違いないでしょう。

最終回的な匂いの漂う作品

ジョン・フィネガンラストシーンのクレーマー刑事との会話「やめたんじゃないですか?」「まだまだ。まだやめられませんよ。もうちょい、やらせてもらうよ」。と煙草の話に引っ掛けた台詞があります。これは本作品が最終回になる予定であったと伝えられるが「ピーターフォークはやる気満々」という意思表示に映ります。「カミさんも乗せてやろうと思って…せめてこのボートに」と海に去って行くコロンボ警部でした。しかし…残念なことに、BGMの「THIS OLD MAN」のメロディが間違っているんです!

ジョシュア・ブライアント

ジョシュア・ブライアントスワンソン造船所の所長ウェイン・テイラー(黄色いジャンパーの人)は俳優ジョシュア・ブライアント。この人は25話「権力の墓穴」でマクマレイ検視官を演じていました。

特に第7シーズンに秀作が続く!

しかし本作が意外に好評だったのか? 第6シーズン以降の8作品が制作されることになりました。その中には41話「死者のメッセージ」43話「秒読みの殺人」など私の好きな作品も含まれています。

ブログ訪問者さんから情報(2)

37話「さらば提督」のチャーリー・クレイ邸と、55話「マリブビーチ殺人事件」のテレサ・ゴーレン邸は同じでした。

クレイ邸テレサ邸

左:チャーリー・クレイ邸 右:テレサ・ゴーレン邸

周囲が車寄せの道に囲まれた円形の花壇が印象的な豪邸です。マリブビーチというロサンゼルス中心から北西に位置します。おそらく近くには「マイロ・ジャナス」「ブリマー」「マックス・バーシーニ」「フィールディング・チェイス」などの有名人が住んでいました。実在の「ピーター・フォーク」の家も近かったようです。
それに対しヨットハーバー「 バルボア・ベイ・リゾート」は、ロス中心からずっと南の方で、家とはぜんぜん近くないのです。

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジャクソン・ギリス

オーティス・スワンソン提督:ジョンデナー(声:小林修
チャーリー・クレイ:ロバート・ヴォーン(声:西沢利明
ジョアンナ・クレイ:ダイアン・ベイカー(声:水野久美)
スワニー・スワンソン:フレッド・ドレイパー(声:佐藤英夫)
リザ・キング:スーザン・フォスター(声:松金よね子)
ケタリング:ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(声:松村彦次郎)
クレーマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也
シオドア・アルビンスキー刑事:デニス・デューガン(声:玄田哲章)
ガードマン:ジョン・フィネガン
ウェイン・テイラー:ジョシュア・ブライアント(声:鈴木泰明)
オコーナー少尉:ロッド・マッケリー(声:納谷六朗

加筆:2022年8月14日 

52話「完全犯罪の誤算」

Agenda for Murder / 1990

政界入りを目論む弁護士オスカー・フィンチが自分の過去の汚点を知るステイプリンを殺害。フィンチは下院議員ポール・マッキーを支援し将来の司法長官を目指すが、無名時代にマッキーと共に犯した「証拠書類隠滅」をネタにステイプリンより脅迫されて犯行に至ります。

パトリック・マクグーハンが登場

犯人役のパトリック・マクグーハンはコロンボ作品中、最も重要だとも言えるゲスト俳優。異常な程時間にシビアな犯人フィンチが、日本人には理解し難い下ネタジョークに大笑いしたり、タイヤを鳴らして急発進したりする場面はこっけい。このフィンチの最大の欠点が「つまみ食い」であるというのも、かなり計算された笑いどころだと感じます。

殺しの場面に血を使わないコロンボシリーズだったが…一滴だけ

殺人シーンの描き方は緊張感が漂うものでした。けど、撃たれた後に血が一滴?は若干違和感があります。それでもフィンチの工作シーンや、殺害後オフィスに戻って濡れた髪を乾かす仕草など、良く描かれていました。

新シリーズ中では最高ランクの作品

音楽の使い方も好きでした。冒頭のシーンの「デキシーランドジャズ」は印象的ですし、撃たれた時の効果音的な音楽も絶妙でした。エンディングの「命取りでした」というコロンボの言葉で画面が固まる場面など、新・刑事コロンボの作品の中ではとても良いの出来だと言えます。

オスカー・フィンチの人物像は、強烈!

パトリック・マクグーハン弁護士としての名声を博したオスカー・フィンチ。執拗につきまとうコロンボ警部に「死後硬直のアドバイス」をしたり、不敵な笑みを浮かべて自信満々に「電話じゃ人は殺せんよ」とマッキー議員に豪語したり、とても魅力的な描かれていました。そうそう、警部の「プジョー403」を「鉄クズ」と呼んでいましたね。

吹き替えは俳優の久米明さん。やはり流石です。選挙に勝利した祝賀ムードの中でコロンボ警部に「濡れちゃったズボン」と大声で指摘され、「失望したよ、キミ」という台詞を吐くあたり、最高潮です。また「下ネタジョーク」でアイリッシュのジョークは聞きたくないと答えるフィンチ氏。パトリック・マクグーハンはおそらくアイリッシュ系ではないでしょうか?自分はこの手の話には詳しくないので、勉強する必要がありそうです。

マッキー議員

デニス・アーントポール・マッキー下院議員役のデニス・アーント[Denis Arndt]もなかなかの好演です。表ではコロンボ警部に敬意を表しながらも、裏では「猿芝居」呼ばわりしていますね。でも、やはりそこは議員。うっとうしいサインの要求にも笑顔で応えていました。

フランク・ステイプリン

ルイス・ゾリックオスカー・フィンチの弱みに付け込み殺害されるフランク・ステイプリン役はルイス・ゾリック。声優さんの吹き替えもぴったりでとても良い味を出していました。「もし俺が5年くらったら、いや例え半年でも‥俺を見殺しにした奴を良く思わんだろう」は凄みがあります。テレビドラマ「あなたにムチュー(Mad About You)」で主人公の父親バート・バックマンが代表作のひとつ。

モントゴメリー候補

アーサー・ヒル大統領候補のモントゴメリー知事は俳優アーサー・ヒル。大物らしい堂々とした演技で印象に残りました。大草原の小さな家にも出演しているようで、調べてみます。(そして調べてみました)

アーサー・ヒル

アーサー・ヒルこのアーサー・ヒルですが、大草原の小さな家「春の別れ(前後編)」で、チャールズ・インガルスの父親、ランスフォードを演じていました。準主役級でかなり良い役です。ぜひご覧ください。大草原が1976年(54歳)コロンボが1990年(68歳)。

クレーマー刑事出演作品

クレーマー刑事役名としてのクレーマー刑事(演:ブルース・カービー)が出演している最後の作品となります。その後の65話「奇妙な助っ人」では、残念ですがブリンドル刑事。クレーマー刑事は28話「祝砲の挽歌」で初登場、主に第4シーズン第5シーズンを中心に活躍しました。

選挙参謀のティム

スタンリー・カメルモントゴメリー候補の選挙参謀ティムはスタンリー・カメル。良い俳優さんだな〜と思ったら、やはり数々のテレビドラマに出演しています。「名探偵モンク」では神経質な主人公の主治医Dr.チャールズ・クローガーを演じました。しかし2008年に心臓発作で急死。後任ともいえるDr.ネーブン・ベルは33話「ハッサン・サラーの反逆」のヘクター・エリゾンドが担っています。

オスカー・フィンチの秘書ルイーズ

アン・ヘイニーテキパキした感じの秘書ルイーズは女優アン・ヘイニー。仕事に厳しそうな反面、優しさも備えた素敵な役どころでした。彼女はたくさんの映画やドラマに出演しています。

邦題「完全犯罪の誤算」について

「完全犯罪の誤算」という邦題は原題「Agenda for Murder(殺人の計画?)」とかけ離れますが惜しいですね~。フィンチ氏の「忙しさ」を表現すると思われる「Agenda」にこだわった題名が欲しかったと悔やまれます。

オスカー・フィンチの事務所

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ブルーム

オスカー・フィンチ:パトリック・マクグーハン(声:久米明)
ポール・マッキー議員:デニス・アーント(声:黒沢良)
フランク・ステイプリン:ルイス・ゾリック(声:小松方正)
クレーマー刑事:ブルース・カービー

加筆:2022年9月2日

67話「復讐を抱いて眠れ」

Ashes to Ashes / 1998

最後のパトリック・マクグーハン

パトリック・マクグーハン今回で四度目の犯人役となった「パトリック・マクグーハン」。殺人を暴かれた詰めの部分には少し甘さを感じますが、マクグーハンの存在感、演技には引き込まれるものがあります。エリック・プリンスを演じた時マクグーハンは70歳。かつて34話「仮面の男」の劇中で「スタインメッツ」に変装した顔に酷似しています笑。この時ネルソン・ブレナー(演マクグーハン)は47歳だっと思われます。

犯罪工作の名手マクグーハン

特に犯罪を隠蔽するためにせっせと工作する時の仕草、表情は絶品。まるでそれを楽しんでいるかのようにも見えるし、強がっているようにも見えます。「復讐を抱いて眠れ」でのハリウッドで葬儀屋の社長エリック・プリンスは、28話「祝砲の挽歌」のラムフォード大佐、52話「完全犯罪の誤算」の弁護士オスカー・フィンチより、若干キャラクター性を抑え気味でしたが、十分にマクグーハンを堪能できる作品でした。

コロンボ警部が語気を急に強める

後半でコロンボ警部が語気を急に強める場面は、他の回と比べて嫌悪感を露にしていない犯人に対して、すこし唐突な態度に感じました。おそらく、遠く離れた相手に向かって、大きめに喋ったのでしょう。執拗に付きまとうコロンボ警部に対し、今回のエリック・プリンス氏は忍耐強かったと思いますね。

灰から灰でも良かったかも…

原題「Ashes to Ashes」の直訳は「灰から灰」で、邦題の「復讐を抱いて眠れ」よりも内容に直接的な題名です。復讐を抱いて眠れは間違っていませんが、ベリティの復讐心が殺される引金になったとしても、その後の展開ではあまりクローズアップされていないのでピンと来ません。
また決め手となった金属製の砲弾の破片ですが、プリンス氏が骨壺に灰を入れる際にもっと慎重に行っていれば、入っていなかったでしょうね、割と慎重そうな人物ですけど。

ルー・マクラナハンが憎まれ役を好演

ルー・マクラナハン被害者の芸能リポーター、ベリティ・チャンドラーはルー・マクラナハン。かつての男女関係の恨みを晴らすため、テレビでエリックの秘密を暴露する「復讐」を本人に宣告するが、その口調が強烈に意地悪。ピッタリのハマり役でした。

骨がカタカタ言い出すようなレポート

ベリティ・チャンドラーが次回のハリウッド裏情報は「骨がカタカタ言い出すようなレポート」だと予告しているのも興味深いです。これはネタの対象が「葬儀屋」であることだけでなく、ラストシーンで骨壷を振ったらカタカタと音がしたことへも繋がっています。

サリー・ケラーマンが可愛い

サリー・ケラーマン最初の葬式の喪主でヒューストン夫人役の「サリー・ケラーマン」はとても可愛い役どころ。かなり長身の女優さんなのでしょうね。彼女はとても有名な俳優さんで、テレビ版スタートレック(宇宙大作戦)など数多くの作品で会うことができます。

葬儀屋の秘書役はマクグーハンの長女キャサリン

キャサリン・マクグーハンまた、葬儀屋の秘書役で長女のキャサリン・マクグーハンが出演しています。品のある素敵な女優さんだと思いました。さらに、葬儀場でベリティが遺体(ヒューストン)の頬にキスする場面で、遺体がハッキリ「まばたき」しています。(笑)

初期型のマック

初期型のマック余談ですが、作品中に殺害されたベリティ・チャンドラー(ルー・マクラナハン)が使用していたパソコンは初期型のマックですね。マウスにアップルマークを確認できます。また、電子メールや「.com」などが登場し、時代性を感じさせます。ちなみに「hollywood_heartbeat.com」は存在しません。ドメインに「_」を入れることはできません。

イニシャルS.B.の登場人物

ベリティのメモの解読の過程で候補にあがったイニシャルの中で「スティーブン・ボチコ」は、1話「構想の死角」7話「もう一つの鍵」9話「パイルD-3の壁」10話「黒のエチュード」17話「二つの顔」などを手掛けた脚本家。

サンセット・ブールバード

サンセット・ブールバード

ドロテア・ページの旧邸の位置はピンポイントではなく、サンセット・ブールバードを示しています。それに対しハバランド・プリンス葬儀社はストリートビューで見ると2021年現在「ほぼ当時のまま」のを見ることができます。

デガルモ刑事

デガルモ刑事コロンボ警部を補佐するのはデガルモ刑事[リチャード・リール]で、68話「奪われた旋律」にも出演しています。このように年配の刑事が登場する回は、捜査シーンに落ち着いた雰囲気を感じさせ、けっこう好きです。

監督:パトリック・マクグーハン

脚本:ジェフリー・ハッチャー

エリック・プリンス:パトリック・マクグーハン(声:有川博)
リズ・ヒューストン:サリー・ケラーマン(声:大西多摩恵)
ベリティ・チャンドラー:ルー・マクラナハン(声:此島愛子)
リタ:キャサリン・マクグーハン(声:駒塚由衣)
デガルモ刑事:リチャード・リール

加筆:2023年1月17日

68話「奪われた旋律」

Murder With Too Many Notes / 2000
ビリー・コノリーサスペンス映画音楽の巨匠フィンドレー・クロフォード(ビリー・コノリー)が弟子のガブリエルを殺害。ガブリエルはクロフォードの弟子だが、実際にはクロフォード名義の作品のゴーストライターで、彼が師匠に愛想をつかし、反逆しそうになったので犯行に及んだ。

天才作曲家が実は無能で脳天気

チャド・ウィレット冒頭のシーンでフィンドレーが、ガブリエル(チャド・ウィレット)のアドバイスで、音を消した場面。ガブリエルの死後にエンディングの音楽演出で、監督からこっぱみじんに全否定される場面、どちらも「天才作曲家が実は無能」を意味していて、笑える設定でした。フィンドレーの人物像は好きでしたが、かなりヤバイ状況で鼻歌を歌いながら殺害計画を練っている姿など、大胆不敵な人物とも感じます。

容疑者特定の瞬間が見えない

しかし警部はいったいどのタイミングでクロフォード氏を犯人とにらみましたかね~。狂言ガス欠をしたくらいなので、その前ということになりますが、私はそれほど怪しく感じませんでした。

序盤が延々と続き、急に投了(負けを認める)シーン

コロンボが犯人を徐々に追いつめて行く雰囲気もなく、将棋で言えば長い序盤が延々と続き、急に投了シーン…という雰囲気。しかも、えらく楽しそうに犯行を認めているし。普通だったら認めません、殺人容疑ですから。「復讐を抱いて眠れ」も同じく、こんなにあっさり片付けないでほしい気がします。演出のパトリック・マクグーハンの好みでしょうか。

コロンボ作品のラストシーンは、犯人がじたばたしながらも完全に敗北を認めざるを得ない…ってのが美しいと思ったりしますが、今回は動機と状況証拠だけで逮捕してます。「音楽クラブのある刑務所があったら紹介してくれ」が自供ですね、楽観的な人です~。

現実逃避型の自供か?

チャールズ・チョフィでも何度か見るうちに気付いたのですが「クロフォードは捕まりたかった」のかも知れません。番組後半でリッター監督(チャールズ・チョフィ)に「正気か?観客が眠っていまう」とまで酷評され、「起こしてみせる」と突き返すが、おそらく全く解決策を見いだす自信はない。もう才能は枯れているのです。演奏家にもカッコつかないし、一夜で「マジック」を起こせる弟子は自分が殺してしまいました。殺人を暴かれて苦しみから逃れられたのかも。

This Old Man

ヒラリー・ダナー最後のシーンで故ガブリエルの恋人レベッカ(ヒラリー・ダナー)に、ピアノを教えてもらうシーン。この音楽は刑事コロンボシリーズの劇中で頻繁に耳にします。コロンボ警部の鼻歌や、ちょっとおどけたシーンでのBGMとして多用されています。ここではコロンボは「♪おもちゃで遊ぼ」と口ずさみますが題名は「This Old Man」

またまたマクグーハンの娘

アン・マクグーハンガブリエルが転落死するその瞬間に居合わせたご婦人マーシアはパトリック・マクグーハンの次女「アン・マクグーハン」との情報が寄せられました。そう言われてみれば、顔がお父さんによく似ていますね。

今回もデガルモ刑事が活躍

デガルモ刑事捜査を手伝ってくれる部下は、67話「復讐を抱いて眠れ」に続いて、デガルモ刑事。このように年配の刑事が登場する回は、捜査シーンに落ち着いた雰囲気を感じさせ、けっこう好きです。

原題「Murder With Too Many Notes」の直訳は「あまりに多くの音符との殺人」

「あまりに多くの音符」というのは、クロフォードの作風を意味しているのでしょうか?映画「アマデウス」でモーツァルトが皇帝から「音符が多すぎる」と指摘され「自分の曲には必要な音符しかない」と反論した場面を思い出しました。音符が多いというのは、洗練されていないような意味にもとられ、クロフォードの作風が古臭いことを比喩しているのだとも感じます。それに対しガブリエルの曲は映画を引き立たせる最小の音符で構成されていたとか。

音符とメモ

音楽には一般的に「CDEFGAB」「ドレミファソラシ」のNoteがあるのですね。
「G・A・B・E」「B・E・C・C・A」
「B・E・C・C・A」「G・A・B・E」
というメロディ(音符・Notes)を愛する人に渡した手紙(メモ・Note)。これはとても綺麗なテーマだと思えます。しかも「Too Many Notes」ではなくシンプル。よく見ると4/4の楽譜に納まっていませんが(笑)
私の好きな「ペンギン・カフェ・オーケストラ」が敬愛する作曲家「ジョン・ケージ」に捧げた曲「Cage Dead(1993)」では「C・A・G・E」「D・E・A・D」のコードあるいは音符を順に弾く構成でできています。本作のヒントになっているでしょうか?

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ケーヴァ、パトリック・マクグーハン

フィンドレー・クロフォード:ビリー・コノリー(声:佐々木勝彦)
ガブリエル・マッケンリー:チャド・ウィレット(声:森岡弘一郎)
レベッカ:ヒラリー・ダナー(声:山田里奈)
シドニー・リッター:チャールズ・チョフィ(声:小林勝彦)
デガルモ刑事:リチャード・リール

加筆:2021年11月21日