ハイリゲンシュタットの遺書

ハイリゲンシュタットの遺書とは、かの有名なクラシック音楽のマエストロ(巨匠)ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが、1802年に家族に綴った手紙を指します。
 
主に体調の不良(難聴)、人間関係への絶望、それらのどん底を味わったベートーヴェンの、苦痛を表す文面。難聴は、彼にとって単なる疾患に留まらない。音楽家として致命的な病状であるが故に、絶望感は計り知れないほど大きかったはず。そのような状況で、光を見出す一行があります。
 
「そのような死から私を引き止めたのはただ芸術」
 
私たちの知っているベートーヴェンの名曲は、ほとんどがこの「ハイリゲンシュタットの遺書」以後に創られたと言っても言い過ぎではありません。「傑作の森」と呼ばれる黄金期は、死のふちより蘇った不屈の魂が生んだ傑作の宝庫です。その後も様々な病に悩まされるベートーヴェンですが、1827年3月にその生涯を閉じるまで、作曲に懸ける意欲は衰えませんでした。
 
私も今年で48歳。56歳で生涯を終えたベートーヴェンの晩年にあたります。彼が私に教えてくれること、それは今携わる仕事を天職と認識し、持てるすべてを捧げなさい。それが「生きる」ということなのだ。
 
「ハイリゲンシュタットの遺書」は決して「死にたい…」というネガティブな意思表示ではなく、それでも生き抜くという強い生命力、創作意欲を私たちに伝えてくれるのではないか。と、私は思う。