自分の感覚を大切にしたい

かつて、仕事を降りたいと広告代理店に申し出たことがあった。
 
理由は「自分の感覚が狂いそうになって来た」ということ。表現が大げさかもしれないが、その当時の自分にとってはとても重要なことだった。現象としては、デザインを数案提出するように求められ、本命とそうでないものを提出すると、必ず自分の意思とは逆方向に決定が下され、さらに、自分の望まない方向へと進んで行くことが多くなったことだ。
 
それでは、仕事を潤滑に進めるために、自分の意思とは逆方向のデザイン指向で先手を打てるのか?と考えた場合、不可能ではないが、徐々に相手に合わせる仕事をするようになってゆき、自分を見失うことになりかねない。
 
デザイナーは自分の判断力に自信を持ち続けたいものだ。そう心がけていても不調は訪れ、判断力が鈍って仕事に必要以上の時間を要するハメになりがちだ。まずは自分が「これで良いのだ」と筆を置ける(完成とみなす)こと。そして、それは的確な判断でなければ自信へとつながらないだろう。
 
著名なデザイナーの作品を見たり、美術作品を鑑賞したりすることは、その目を鍛える有効な手段となる。そこで見たものは、その作者が「これで良いのだ」と筆を置いたものばかりだ。もしも、自分の作品に「これで良いのだ」と思わなければ、出来る限りの時間を費やしても構わないと思う。
 
話は「仕事を降りたいと広告代理店に申し出た」ことに戻る。自分が「これでは良くない」と思う仕事を要求されることが続けば、前に進めなくなる と、言えないだろうか?おそらく30代前半だったと思うが、その時の自分は、今勇気を出して環境を変えなければ、自分は終わってしまうと感じた。