33話「ハッサン・サラーの反逆」

A Case of Immunity / 1975
アンドレ・ローレンスとある中近東の国のLA総領事館の総領事代理である「ハッサン・サラー」が権力争いの邪魔者である警備隊長ユセフ・アラファ(アンドレ・ローレンス)を殺害。その後、部下であり共犯者のハビブ青年も口封じのために殺害。

大きなスケールで描かれる刑事ドラマ・コロンボは、作品としての完成度が低く感じられるものが多いが、この「ハッサン・サラーの反逆」は好きな作品です。邦題が少々残念ですが、印象に残るタイトルと言えます。直訳は「免責の事例」で、最後に外交官特権を放棄するというエンディングをさしています。

ヘクター・エリゾンド

ヘクター・エリゾンドハッサン・サラー役:ヘクター・エリゾンド(プエルトリコ系らしい)は凛とし存在感たっぷり。歴代の刑事コロンボの犯人でもかなり憎たらしいキャラクターで、特に記憶に残る俳優です。

かなりの悪人…ハッサン・サラーという男

背景の説明で、犯人のハッサン・サラーとライバルのユセフ警備隊長との関係が見えづらい(過激派と通じていたらしいが)ことが少し残念な気がしますが、このハッサン・サラーなる総領事代理、お国のためを第一と考えているように映りますが、実はそれよりも権力を掌握したい野望の方が遥かに上回る悪人と言えます。

ユーモラスなシーン

今回は事件が発覚する前にコロンボ警部が登場。偉い人の集まる重要会議に「コリモ部長との人違い」で呼ばれたという面白い設定。サラーの服の裾を踏んで、いきなり「間抜けさ」を披露しているところが絶妙でした。その後もう一回踏んづけてます。

損と得が逆転して、爽快なラスト

このお話の結末は、かなり大胆な発想によるもので、「損得の逆転」を上手く利用しました。単にスケールの大きな作品であるだけでなく、その壮大さを利用した結末でもあり私は高く評価しました。エンディングでコロンボ警部にお茶を振る舞うサラー。コロンボが「人間あきらめが肝心だ」と完全敗北を認め、サラーを油断させます。しかも、お互いを尊敬しあえる関係を作ろうとしているようにも見えます。

理解者である国王の協力も得て

バリー・ロビンズその直後に大逆転を迎えるわけですが、アームド・カマロ国王(バリー・ロビンズ)の帰国を引き延ばしていることからも、このサラーのようなスキの無い悪党に対し、「勝ち試合」と見抜いていることが凄いのですね警部。サラーに「外交官特権を放棄する書類にサインするよう」伝える小池朝雄さんの口調は、爽快〜。

ロッホマン・ハビブはサル・ミネオ

サル・ミネオ共犯の青年ハビブを演じたのはサル・ミネオ。映画「理由なき反抗」を皮切りに、数々の名作に出演した俳優。刑事コロンボでハビブを演じた後、暴漢に襲われ37歳でこの世を去りました。

オーガスト部長が本領発揮!

ビル・ザッカート会議の席でコロンボ警部に「さっさと失せろ」と冷たくあたるのはオーガスト部長(ビル・ザッカート)。27話「逆転の構図」にも登場していますが、あまり重要な場面ではなかったようで、TV版ではカットされました。またこの俳優さんは55話「マリブビーチ殺人事件」にも再登場します。

優しい女性秘書

ブリオニ・ファレル赤い洋服が印象に残る優しい女性秘書を演じるのはクセーニャ・グラチョス(ブリオニ・ファレル)さん。捜査の過程で被害者の警備隊長ユセフと名前で呼ぶが、深意は分らない。(ノベライズ版では恋人の設定らしい)
この時は35歳だと思われますが、20代のように若く見えます。また、クセーニャ・グラチョスは後に、ブリオニ・ファレルと改名したようです。

領事館のおじさん

ジョージ・スカフ領事館に勤務するアラブ人「クラ」を演じたの「ジョージ・スカフ」。この人は後の43話「秒読みの殺人」の、テレビ局のプロデューサーと同一人物です!これを発見したときた、本当に嬉しかったです。

検死官はハーヴェイ・ゴールド

ハーヴェイ・ゴールド検死官はハーヴェイ・ゴールド。前作「忘れられたスター」でアンダーソンと名乗っている。ハーヴェイ・ゴールドは27話「逆転の構図」ではカメラ店の店主ハリー・ルイスを演じています。日本語吹き替えは「ウイルソン刑事」「ドカベンで徳川監督」の野本礼三さん。

オルテガ警部

ジェイ・バレラ領事館の事件現場を仕切るのは「オルテガ警部」。この人を演じている俳優「ジェイ・バレラ」は、20話「野望の果て」のロハス巡査と同一人物です。かなり出世したようで、堂々とした仕事ぶりでしたね(笑)

国務省のお役人モーガン

ディック・ディンマン国務省のお役人カーミット・モーガンを演じたのは、俳優ディック・ディンマン。頭のキレそうなエリートの役側で、シャキッとカッコ良い感じです。俳優としては、それほど目立ったキャリアはないようです。

やけに目立つカメラマン

マイク・ラリー事件現場で写真を撮る警察のカメラマンはお馴染みの「マイク・ラリー」今回は度アップなカットからのスタートでした。ラリーは警察の現場検証のカメラマンに扮することが多いです。

デモ隊の男性

バート・ブレイヴァーマン領事館の門の外で毎日のように抗議デモが行われている。その中でコロンボ警部を会話していた男性はバート・ブレイヴァーマン。そこそこ名の知れた俳優さんです。

もう一人のデモ隊の男性

ジェフ・ゴールドブラム台詞もない長身のエキストラ俳優は「ジェフ・ゴールドブラム」。こっちはもっと名の知れた俳優さんで、後に出世し映画「ザ・フライ」「ジュラシック・パーク」「インデペンデンス・デイ」などに出演しています。

客貧夫妻

アーサー・ウォンとノエル・トイ国王主催パーティでキーウイン大使と令夫人「マオ・リン」夫妻と紹介された二人。アーサー・ウォンとノエル・トイというクレジットがありました。

総領事館の厨房で、小さな発見

ベン・フロマー総領事館の厨房で警部が国王陛下からの差し入れ料理をいただシーン。そこに太っちょの料理人がちらっと登場します。この俳優さんは「ベン・フロマー」で、25話「権力の墓穴」の前半のシーン、高級クラブのバーでバーテンダー、34話「仮面の男」ではホットドッグ屋のオヤジで登場します。

監督:テッド・ポスト
脚本:ルー・シャウ

ハッサン・サラー:ヘクター・エリゾンド(声:井上孝雄)
ロッホマン・ハビブ:サル・ミネオ(声:宗近晴見)
スアリ国王(アームド・カマロ):バリー・ロビンス(声:坂部文昭)
ユセフ・アラファ警備隊長:アンドレ・ローレンス
秘書:クセーニャ・グラチョス(ブリオニ・ファレル)(声:三浦真弓)
オーガスト部長:ビル・ザッカート
本部長:ケネス・トビー(声:松下達雄)
国務省モーガン:ディック・ディンマン
検死官(アンダーソン)ハーヴェイ・ゴールド(声:野本礼三)
オルテガ警部:ジェイ・バレラ
デモ隊員:ジェフ・ゴールドブラム
デモ隊員:バート・ブレイヴァーマン
写真係:マイク・ラリー
領事館員クラ:ジョージ・スカフ
領事館員ハキム:ネイト・エスフォルムズ
領事館員警備員:ジョージ・サワヤ
領事館員警備員:ニック・ペレグリーノ
国王訪問警備班の部長の一人:ゲーリー・ライト
総領事館のコック:ベン・フロマー
客貧夫妻:アーサー・ワン、ノエル・トイ
パーティ客:レオダ・リチャーズ

加筆:2024年9月4日