刑事コロンボの声優さん

ピーター・フォーク

刑事コロンボは英語圏以外の多くの国々で愛されています。ハンガリーのブダペストにはコロンボ警部の銅像もあるようですよ!さて日本人の私たちは、日本語版吹き替えの刑事コロンボに馴染みが深いわけですが、こと刑事コロンボについては、原語よりも日本語の方が好き!なんてファンも多いのです。
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刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?

11話「悪の温室」キャシー・グッドウィン
夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」
 
と、皮肉を添えてさらりと応えた。
 

ほにゃらら の ほにゃらら

「ほにゃらら の ほにゃらら」はまるで往年のテレビクイズ番組「ぴったしカン・カン」を思い出させますね(笑)ここでは刑事コロンボのエピソードタイトルについてまとめてみました。「別れのワイン」「逆転の構図」「祝砲の挽歌」「美食の報酬」「迷子の兵隊」など、エピソードの内容とタイトルが奇麗に結びついたものは特にカッコ良いな〜と思います。
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「これはお約束します」の罠

「これはお約束します」は少なくとも2回、コロンボ警部が口にしている言葉です。よく似たニュアンスを加えるとかなり数が増えるでしょう。犯人あるいは周囲の人物に「犯人の逮捕が近い」ことを予言し、犯人を追いつめるのです。
最初に登場するのは 1話「殺人処方箋」で共犯のジョーン・ハドソン女子に「あなたの弱さにつけ込んで徹底的に付きまとい自白させる、それで、主犯のフレミングを逮捕する」と、恫喝する際「これは約束します」と念を押しています。一見冴えない中年男風の刑事ですが、このような迫力で押されますと、たいていの人間は平常心で居られなくなるようです。
ズバリ、このような言葉の再登場は42話「美食の報酬」。被害者のビットリオを讃えるパーティのスピーチで、甥のマリオや参席者に対し「犯人を必ず逮捕する、これはお約束します」と予言。犯人のジェラードは「この際、コロンボを殺してしまえ…」と、新たな殺人動機を呼び起こされます。恐ろしいですね…。
 
コロンボ警部の常套手段として、犯人自らの行動により犯行を認めさせることがあります。それは警部が「自信喪失」を演じれば犯人は油断し、逆に「自信満々」を演じれば犯人は不安になる、どちらにしても決定的な証拠を自分で作り出すことになるのです。
 

吹き替えの声質が突然変わる

日本語版の吹き替えの声が変わっている箇所

コロンボの日本語版でたまに「おや声が変だぞ、別人のように聞こえる…」という疑問をお感じになった時、それは確かに声優が変わっている箇所です。これは当時の日本のテレビの放送時間の枠に作品が収まりきらなかったので、重要でない場面をカットして、放送する部分のみを吹き替えたためです。その後DVD化やノーカット放送を機会に、声優が亡くなったなどの理由で別の声優さんがその部分のみ新たに吹き替えたのです。
コロンボの日本語版を注意深く見ますとその「重要でないと判断されたシーン」がわかります、これも面白い発見となります。

あなたのこと、褒めてましたよ

「さっき誰々さんにお会いしましたが、あなたのこと、褒めてましたよ」
この台詞は刑事コロンボの作品中、コロンボ警部や口達者な犯人役がよく口にする台詞です。これはおそらく、警戒心を持った相手の心を開かせるための巧妙な褒め言葉と思われます。やはり人間というもの「褒められて気を悪くする人はいない」ということでしょう。
それにひきかえラストシーンなどで犯行を暴かれた犯人の悪態に対し、「あまたの才能は認めます、でもその他はてんでいけません」(参照:美食の報酬)と、人格否定するのも見逃せません。多くの場合、コロンボ警部は殺意の種類により、同情したり、怒ったりすることがあると思われ、犯人が自分の犯行を突き止めたコロンボに対し「いっそ、この刑事を殺してしまえ」と短絡的解決方策に走った場合「人格否定」の発言が見られる気がします。
 
 

犯人たちの口癖

人は思いもよらぬ行動に出る

コロンボ警部に犯行の矛盾点を指摘された場合、最も頻繁に使われる言い訳として「心が動転している場合には、人は思いもよらぬ行動に出るものだ」というもの。この台詞を口走った時には、間違いなく「容疑者」となるでしょう。
 

何か進展があったら教えてくださいね、刑事さん

犯人は捜査の進捗をたいへん気にしています。とにかく、自分が疑われていないか、何かミスが見つかっていないか、心配なのですね。この言葉を口走った時には、間違いなく「容疑者」となるでしょう。
 

要点を言いたまえ、コロンボ君

犯人はコロンボ警部の「回りくどい口調」にいらだつことが多くなります。コロンボ警部が「何を告げにきたのか?」一刻も早く知りたいのでこの言葉が出ます。ほぼ疑われている状況で使われます。
 

それで君の水晶玉には、何が映った?

常連の犯人役「ロバート・カルプ」「パトリック・マクグーハン」などが使う言葉。コロンボ警部の仮説が、あまりに的を射ているので「それは推理ではなく空想だ」などの言葉とセットで使用されることがあります。「水晶玉」は占いで使われるものです。
 

私が△△△の死に関係している?と言いたいのですか。

犯人は自分の犯行を疑われていると感づかれた場合「殺した」という直接的な表現を口にすることを恐れ、「△△△の死に関係した」と、若干回りくどい言い方をすることがあります。この言葉を口走った時には、間違いなく「容疑が深まる」でしょう。
 

これは自分なりの推理なんだがね…。

犯人たちはたびたび自分ならではの推理を展開します。こういったケースではほぼ「自分が犯人です」と説明しているようなものです。もしも犯行と無関係であれば、そのように積極的に推理などはしないものです。
 

君は自分を無能に見せかけ、無邪気そうな顔ですり寄ってくる。

コロンボ警部の執拗な捜査にいらだった犯人は、このような台詞を吐き捨てます。コロンボ警部が毎回自分に不利な状況証拠などを持ってくるので、かなり追いつめられた状況です。暗に警部を有能と評しているわけで、それらの証拠が的をえていると自分で言っているようなものです。

加筆:2022年8月23日(誤:的を得て 正:的を射て)

日本語吹き替えは素敵!

素晴らしい声優さんたち

他の洋画作品は別として、刑事コロンボシリーズは字幕より日本語吹き替えの方が好まれる傾向が強いようです。その最大の貢献者は、何と言ってもピーター・フォークの声を担当した小池朝雄さん。ピーター・フォーク=小池さんというイメージを定着させました。
その他にもジャック・キャシディ=田口計さん、ロバート・カルプ=梅野泰靖さんなど、犯人役ゲストスターのイメージにぴったりでした。
→日本語吹き替えの声優さん

日本語吹き替えの面白さと時代性

一言(いちごん)もありません

コロンボ警部も犯人も使う時があります。これは相手の指摘に対し完敗を認める発言ですが、その相手を「気分よくさせる」効果をもたらしています。行き過ぎた行動などで相手に不快感を与えた場合に「一言もありません」と返答しその場をおさめます。

然様(左様)。

「さよう」と読みます。犯人や関係者で、比較的年配の人、厳格な性格の人が使います。何かを尋ねられた際に「然様=はいそうです」と短く答えるのですが、これには「もちろんだ、それで?」という切り返しの疑問の意味も含まれています。

犯人の丁寧語が美しい。

特に女性の言葉遣いに、美しさを感じます。現在の日本人は女性でも男性のような言葉遣いをする方が増えていますが、こうして70年代のドラマを見ると、多くの女性が美しい言葉を使っいて、知性の高さを感じさせます。

逆手(ぎゃくて)に取る。

コロンボ作品で数回、この「逆手に取る」が出できます。私は「さかて」ではないか?と疑問を持ち、調べたところ「ぎゃくて」が正確のようです。しかし最近は私のように「さかて」と読む人が多いらしく、こちらも間違いではないという見解になったようです。

紙入れ。

今なら「財布」と呼びます。コロンボに出てくる紙入れは、紙幣を入れて持ち歩く入れ物、お札入れです。しかし日本では、もともとは「紙幣」を入れるものではなく、なんでもちょっと入れておく「小物入れ」のこと(メモ、紙、楊枝など)です。

加筆:2022年8月14日

コロンボ警部の言葉遣い

アタシャねぇ

ほとんどのエピソードで「上流階層」の犯人を扱うので、丁寧な言葉遣いを心がけていますが、初期の作品では「アンタ」「キミ」などとセレブを乱暴に呼ぶこともあります。また、自分のことは「ワタシ」ではなく「アタシ」と呼ぶことが多く、語気を荒げた時は「アタシャねぇ」に変形します。
これに対し、同僚の刑事などには少し上から目線の口調が多くなったりして、それなりの威厳を保つ場合もありますし、犯人以外の登場人物には丁寧語は使いません。

労働者階級的な言葉遣い

警察の同僚や労働者たちの口調として「△△です」が「△△でさぁ」「☆☆なんでさぁ」と訛る傾向があるのも面白いです。これらの口調が似合う俳優として「ティモシー・ケリー」が挙げられます。
7話「もう一つの鍵」では犯人ベス・チャドウィックの母親の愛犬「エンリコ」を「ワン公」と呼んで叱られています。

業界用語

また警察の業界用語?として、良くコロンボ警部が口にするのは「被害者=ホトケさん」「犯人=ホシ」「有罪=クロ、無罪=シロ」「刑務所=ムショ」など「事件=ヤマ」など。

よござんすか

「よござんすか」は、コロンボ警部が連発する言葉です。日本の時代劇では賭博の壷振りの台詞「よござんすか?よござんすね?」が思い浮かびますね(笑)いわゆる富裕層の「ざーます言葉」とはニュアンスが異なり、江戸の芸者や下町職人が使った江戸弁の「〜ざんす」に由来すると思われます。

喧し屋(やかましや)

形式通りの捜査を好み、報告書の提出をせかす上司をコロンボ警部は「喧し屋(やかましや)」だと表現しています。小言や理屈を多く言う人「うるさがた」も同じような意味です。

奴さん(やっこさん)

奴(やっこ)さん。コロンボ警部に限らず、「あいつ」「やつ」の軽称として使われます。現代ではあまり使われなくなりましたが、哀愁を感じる言葉ですね。

一言もありません

一言は「いちごん」と読みます。ひとことも弁解できない、弁明する余地がない時に使います。

加筆:2021年8月17日