2話「死者の身代金」

Ransom for a Dead Man
1971[2話]

女性弁護士レスリー・ウィリアムズが、夫(有名弁護士)のポール・ウィリアムズを殺害し、身代金目当ての誘拐に見せかけるお話。3話の「構想の死角」から本格的にシリーズ化する直前の作品と位置づけられます。タイトルクレジットは細く白色で、いわゆるコロンボ書体ではありません。

リー・グラントは怖(こわ)美しい

犯人役のゲストスター、レスリー役:リー・グラントは2作目にして初の女性犯人。当時44歳頃で、小柄な女性ですが強く美しく描かれています。特にウィリアムズの葬式での横顔が印象に残ります。

犯人レスリー・ウィリアムズ像

物語が進むにつれ「殺害動機」が分かってくる展開が面白かったですね。その過程で彼女の「強欲」「強権的」な性格も見えてきます。娘マーガレット(パトリシア・マチック)との会話はもちろん、失神の演技、法廷で強気の発言…など。著名な弁護士の夫に頼らなくても十分活躍できそうな女性なのでは?と感じさせます。

ロス警察を「この街の警察」と…

FBIの管轄になったことから、コロンボ警部も最初は遠慮がちに捜査に関わっていて、「矛盾に対する困惑」が延々と描かれます。「殺し」の捜査に移行した後は、水を得た魚のようにはしゃぎます。今回はFBIの登場ということで、ロス警察を「この街の警察」と表現していて面白いですね。

後の作品の元アイデアがちらり

ごく初期の作品なのですが、かなり「スッキリ」な仕上がりになっていてびっくりしました。脅迫電話のトリックをレスリーに実演してみせることも興味深いし、娘に一芝居打たせて、犯人を罠にハメるラストは25話「権力の墓穴」、録音テープを使ったトリックは26話「自縛の紐」の原形にも思われ、とても興味深いものです。

確立してゆく捜査スタイル

1話の「殺人処方箋」とこの2話「死者の身代金」で、コロンボの刑事としての捜査スタイルはすでに確立していて「うだつの上がらなそうな風貌を利用して相手を油断させる」「身内の話で手がかりのきっかけを作る」「実はかなりの腕利き刑事」などが見られます。ただ両話とも、コロンボ刑事が事件から外されそうになり、現実の世界でもありそうな展開。

コロンボのキャラクター設定

すでに「チリ好き」も楽しめますし、解決編も圧巻です。レスリーと一緒にセスナに乗るシーンは、大きな場面ですがそれほど重要ではなく、一見無駄に長く感じられます。これは勇敢な女性と頼りない男性を対比させ、コロンボのキャラクターを際立たせているのかな。

髪が伸びて、ぼさぼさ風に

1話「殺人処方箋」から約3年が経っての2作目です。ですので一気にお馴染みのコロンボの風貌が出来上がっています。髪は伸びでぼさぼさ、レインコートも少しよれよれ度を増します。さらに…スーツは今回からお馴染みの「明るい茶系」に変化し、温かみを感じます。殺人処方箋ではグレー系(ちょっと冷淡)でした。

ティモシー・ケリー

コロンボ警部が好物のチリを食べる「Barney’s Beanery」の「バート」役のティモシー・ケリーは、その後の作品、4話「ホリスター将軍のコレクション」にも同じ役で登場します。38話「ルーサン警部の犯罪」はトニーで別人の役。

バーニーの店が初登場か?

「バーニーの店」として良いのかどうか疑問ですが、ティモシー・ケリー 出演の2作(2話と5話)のお店は違うようですね。この回ではビリヤード台の置いてある広いお店でした。コロンボのビリヤードシーンは今後もたびたび見られます。→バーニーの店「BARNEY’S BEANERY」

ウィリアムズ弁護士事務所のビル

このビルは7話「もう一つの鍵」のベス・チャドイック宣伝広告社のビルと同じです。また、裁判の開かれる「LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE」も同じ場所です。

グレープジュースはルートビア

空港のカフェでコロンボ警部が飲む「グレープジュース」は、葡萄色じゃないので変だな~と思って英語で聞き直したら「ルートビア(root beer)」を注文していました。ノンアルコールの炭酸飲料だそうです。

お金を持っているのに払えない…

また同シーンで、3ドル50セントの飲み物代を支払うお金を持っておらず、警察手帳を見せながらサインをします。これは大金の札束(身代金)を手にしながら支払えない…という矛盾に加え、筆記用具も持っておらず、ウエイトレスに借りるという始末。こっけいなBGMも加わり、微笑ましい締めくくりです。

→ コロンボはよく「筆記用具を忘れる」件
*ウィキペディアでは「女性弁護士レスリー・ウィリアムス」としているが、2015年10月のBS-TBSの放送で「ウィリアムズ」とクレジットされていたため、そちらを採用しました。
監督:リチャード・アーヴィング
脚本:ディーン・ハーグローブ
レスリー・ウィリアムズ:リー・グラント
マーガレット:パトリシア・マティック
バート:ティモシー・ケリー

加筆:2015年10月5日

“2話「死者の身代金」” への20件の返信

  1. ぼろんこ様、ご返答ありがとうございます。
    レスリーにとって、人望の厚い夫は、さぞやうっとうしい存在だったのでしょう。
    自分も彼と遜色ない実力があるという自負があれば、なおさらだと思います。
    私もちょっとそういうところがあります(笑)。
    私の職場にも、人望が厚くやさしくて実力も申し分ない人がいるのですが、何故か精神的な問題が起きて、休みがちになりました。人望の厚いやさしい人は傷つきやすいのかもしれません。
    レスリーの夫もレスリーの心ない言葉にひどく傷ついていたと、娘さんが証言してました。殺された夫は本当に優しい人だったんだと思います。そうなると、レスリーの行為は本当に残虐です。
    この作品、私は大好きですが、その残虐さを思うと、あまり気楽に見られない…。
    一方でレスリーの嫉妬心にシンパシーを覚えるという、非常に複雑な思いを抱かせてくれる作品です。
    元々コロンボはドフトエフスキーの「罪と罰」のポルフィーリー検事をモデルにしているとのこと。ポルフィーリーは主人公を追詰めつつも、一番の理解者でもあります。
    私はコロンボ作品に、そういったところに魅力を感じているのかもしれません。

  2. HIDEKO さん、鋭い観察です。ありがとうございます。私がこの記事を書いたのは6年前。今思えば、無駄ではないシーンだと気付かされますね。

  3. コロンボ全作品が交流できる、楽しいブログをありがとうございます。ぼろんこさんは冗長と評された「セスナにコロンボと犯人が同乗する」シーンですが、私はあの場面が好きです。機中で犯人が夫の人望の厚さを語るのですが、セスナ機を降りた後、その話を受けて「容姿も成績も完璧ないとこに対し殺したいほど嫉妬することがある」とコロンボが返した時の犯人の「そう…」という返事と表情!犯人の主たる動機は金と事務所だけど、自分にはどうあがいても得られない夫の人間性に対する嫉妬があることをコロンボは見抜き、また見抜かれたことを察知する犯人、という凄い場面だと思うのです。

  4. 決定的物証を突き付けられたタイプで言い逃れできません。
    レスリーは冷静にコロンボ分析をしたという点において評価できます。
    新シリーズに入っていくと犯人のレベルとドラマの品格が急降下する。

  5. 犯人の言葉でのコロンボ分析で良いのは「殺人処方箋」「死者の身代金」です。
    コロンボ自らの言葉によるコロンボ分析で良いのは「殺しの序曲」
    「死者のメッセージ」です。すばらしい内容でした。

  6. コロンボとこれだけ堂々と対決した女性犯人は数少ないのではないでしょうか。コロンボ警部は特に女性に対して紳士(男の犯人へのようなバカ丁寧とは違う)なので、女性犯人ものでは対決色が薄いことが多い気がするのですが「死者の身代金」のレスリーは冷酷無比で、フレミング医師と同等の強敵でした。
    解決の仕方も普通の人間なら通用しない手、でもレスリーなら罠にかかる、という犯人の内面に付け込んだもので印象的です。
    今となってはかなわぬ願いですが、一度コロンボが激怒するような女性犯人ものを作って欲しかったなあ、と思います。

  7. 開始後、約2分で殺害。犯人とコロンボの初対面まで約12分。
    これは、とても良い長さです。
    トリックや殺害背景が複雑だと、この時間がとても長くなり、コロンボが犯人
    を追い詰めたり、犯人が追加証拠のねつ造などをする暇が無くなるケースが
    あります。尤も、たとえそういうケースであったとしても、前提時間をカット
    して、捜査段階で順次詳らかにしていく方法はあるはずです。
    別れのワインでは、初対面まで約36分もかかっている。
    =これは、さすがにかかり過ぎだろう。
    車のライトが十字に光る。この感じがとても好きです。
    レスリーの目の位置とライトの位置を同じにするなんて、ドギツイですね。
    電話で誘拐連絡があった。
    このときは、レスリーの友人からその連絡を装わせた。
    コロンボにおいては、よく通話記録を証拠として採用している。
    よって時代背景と考え合わせると、この時代は電話局で通話記録は
    取られていないと考えるべきだろう。
    刑事コロンボは一話完結で観るべきであって、刑事コロンボ全体としての一貫性
    や整合性は考えるべきではないとは思う。しかしながら、重要な証拠能力を持つ
    通話記録が証拠として採用されたりしなかったりすると、観ている方は
    ありゃりゃ??、って思ってしまう。
    この回では「かみさん」じゃなくて「女房」と言っている。
    これは翻訳の問題だとは思うものの、私が観ているのはColumboなどではなく
    「刑事コロンボ」なので、元はどうあれ、そういう変化も面白味ではある。
    事務所に置いてある電話機の機能を説明するというのは、トリックを半ば
    明かしているに等しい大胆な行動だろう。これは「ルーサン警部の犯罪」に
    おいて、ビデオカメラの説明をしているくだりに似ている。これは、
    「殺人処方箋」フレミングの言う「見くびっていた連中」の類なのだろう。
    バーニーの店で娘に対して、コロンボの本音がビシバシ出てくるのは面白かった。
    捜査進行段階で、コロンボが自身の言葉で本音を語るのは珍しいし、
    観る方は、ただでさえ嘘つきのコロンボが何を考えているかが掴みづらい。
    ◆レスリーの言葉によるコロンボ分析
     恐ろしい人ねえ。そのショボくれたなりも態度もみんな見せかけ。
     敵の油断を見透かして、いきなりワナをぶつけてモノにしようっていう
     腹でしょ。どれもこれもワナよ。おつむが空っぽみたいなフリをするのも、
     奥さんや従兄の内輪話も。とにかく大した役者だわ。上辺はモタモタして
     いるけど、おつむの中は目まぐるしく回っている。
     刑事仲間でも腕利きで通っているんでしょ。
    ◆犯人を出し抜く奥の手
     コロンボが捜査から手を引くことを告げる。犯人は油断が増してしまう。
     もちろんウソだ。そして、トドメのモリを投げ入れる。これは、
     「殺人処方箋」や「ハッサン・サラーの反逆」でも油断させる手法として
     効果てきめんだった。
     下記の通り、主要要素が揃わない場合や、犯人が強敵の場合用いられる。
    ◆要素
     動機:娘マーガレットの証言から明らか。全く同情できない。
     方法:推理
     チャンス:推理
     状況証拠:車のシートの位置、キーが無かった、
    ◆決定的証拠は、鮮やかと言う他はなかった。
    ◆評価
     「初夜に消えた花嫁」でコメントした評価基準を全て最高位に満たしている。

  8. 天才弁護士を落とす。
    天才弁護士は自らの才に溺れ、人間の本来ある面を見落としてしまった。
    最後、運ではなく負けたのだと悟った。散り際は良かった。

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