43話「秒読みの殺人」

Make Me a Perfect Murder
1977[第7シーズン 43話]

テレビ局の女性プロデューサー:ケイ・フリーストン(トリッシュ・バン・ディーバー)は、支社長であり恋人でもあるマーク(ローレンス・ラッキンビル)を殺害。

「秒読みの殺人」は名作です

この「秒読みの殺人」という作品、小学生時代にも間違いなく見ていました。しかしながら、27話「逆転の構図」や32話「忘れられたスター」ほど、強烈な印象は残っておらず、少しノーマーク的な作品でした。今回、再放送を拝見し、見事な作品であることを再認識しました、名作と言って間違いないでしょう。

刑事コロンボ的ストーリー展開を感じる

犯人役の女優や、脇役俳優の良さ云々はさておき、正当派「刑事コロンボ的ストーリー展開」が色濃く、ほとんどのシーンで無駄が無く(注)、密度の濃い作品となっています。コロンボ警部の「落としのテクニック」も、期待通り炸裂してくれています。

トリッシュ・バン・ディーバー

もう一つの側面「犯人役ゲストスター」の影響力は、他の傑作と比較し線は細めです。犯人のケイは美しく描かれていますが、突出した存在であったとは感じません。それ以上に、テレビ業界という厳しい環境において、人間が壊れてゆく様を見せてくれたと思います。

出世欲の強い女性の立場

その反面、心理の描写には鋭いものを感じます。殺意、焦り、意思の強靭さなど、通常の女性では表現しづらい心の揺れを、見事に表現しています。出世欲の強い女性が、組織のトップにのし上がる過程で、仕事を愛する気持ちよりも、成功したい願望が心を支配している様子がうかがえます。周囲の男性たちは、それを好ましく思っていませんでしたね。
それと対比し、同性愛を連想させる描写もありました。女優バレリーとの関係がそれです。初期のコロンボでは扱われなかった題材でしょう。ディレクターの男性が女性的なども、類似した観点です。

終わったら、ほっとすると言うが…

犯行を認める場面で、終わったらほっとすると言うが…その逆だ。と心境を語るケイ。まだ負けたわけじゃない、きっと這い上がってみせる…という意欲をみせました、女は強い。

フィルムチェンジをアリバイに用いたトリック

本作品「秒読みの殺人」では映写時に、フィルムのリールを切り替えるタイミングを画面右隅に表示されるパンチによって、見極める‥というテクニックが焦点となっていて、邦題「秒読みの殺人」に結びつけています。それに対し、21話「意識の下の映像」で映写技師のロジャー・ホワイトは、小銭をリール中心に挟み込んで、それが落ちたら交換のタイミングだと語っています。テレビ局の映写機は最新設備で、小銭を挟めない(カバーで覆われている)タイプでしたね。

特に印象的なシーン「エレベータの中で…」

エレベータの天井に見えた「凶器の拳銃」を、犯人ケイが何とかしてそれを下に落とそうとするシーンは、秒読みの殺人で最も印象に残る場面です。身長が低い彼女が必死になっている様子がスリル満点に描かれています。しかも、その行為そのものが、コロンボ警部が仕掛けた罠だと気付かされ、完敗を認めるのも素晴らしかったです。

パトリック・オニール

テレビ局のお偉方の役で、パトリック・オニールが登場。彼は名作と呼ばれる9話「パイルD-3の壁」で犯人のエリオット・マーカムを演じています。今回もさすがの演技でした。

テレビを修理するクレイマー刑事

なぜかテレビを修理する人の役で、すっかり顔なじみのはずの「ブルース・カーヴィ」が登場。う、どう考えても不自然な起用だと思えますが、これはブルース・カーヴィが「ジョン・フィネガン」同様、特別な俳優扱いだったことを伺い知れます。

撮影所(ロケ地)のモニター室では…

ケイはコロンボ警部に追い回され、ヒステリックに叫んでしまいます。メリーゴーラウンドの音楽と目まぐるしく切り替わる画面が印象的ですが、録画して何度も見られる時代となっては、このような強烈なシーンより、静かな場面の方がありがたいですね。同じような意味で「黄金のバックル」の、ジェニーが死体を発見して叫びそうになるシーンも、早送りしたくなります。(笑)
 
注)テレビ局のモニター室でコロンボ警部が、画面に模様(パターンのようなもの)を写して喜んでいるシーンは、不要でしょうかね~。冒頭で「鼻歌を歌いながら自動車事故を起こすシーン」は、無駄と言い難い楽しいシーンでした。 
 
監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ロバート・ブリーズ
ケイ・フリーストン:トリッシュ・ヴァン・ディヴァー
フラナガン:パトリック・オニール
マーク:ローレンス・ラッキンビル
ウォルター:ジェームズ・マクイーチン
 
加筆:2015年3月7日

“43話「秒読みの殺人」” への26件の返信

  1.  その後DVDを借りて観てみました。聴いてみました。が、けいさんの投稿された台詞は全然聴こえませんでした。タイプの音とテープのノイズに埋もれて。
     何を喋っているかまで述べられているのに…ヘコみました。けいさん、まさか読唇術の心得があるとか?脱帽です。

  2. ふきかえふぁんさま
    コメントをありがとうございました。そうだったのですね。そういう経緯での日米セリフのあの違い。ますますコロンボは奥が深いなあと思います。今日も見てみようっと。
    私は日本語での展開の方が絶対にいいと思います。でっち上げ台本の妙、でしょうか!

  3.  昨夜BS-TBSで2回目の放送でした。地上波放送は昭和54年1月2日で、面白い事に1月3日は今夜放送の「策謀の結末」、4日には「攻撃命令」という3日連続のコロンボだった!今じゃこのように毎日観られますけれど、当時は三連チャンでもファンには夢のような日々だった事でしょう。
     TV版『宇宙戦艦ヤマト』をSTAR-chで観てしまったので、『コロンボ』からデスラー総統の声が聴こえて来るのがおかしくってたまりません。
     犯人役を吹き替えた寺田路恵さんは犯人ばかりやっていなかった。この年アメリカで作られた『ミセス・コロンボ』で題名役を演じたのも寺田さん。イギリスのヘレン・ミレン版『第一容疑者』後期では警部役を丘みつ子さんから引継いでいます。
     チャイコフスキイ作曲『くるみ割り人形』の音楽がエンディングで鳴っていました。CD一枚に収まらない事のあるバレエ音楽版で聴かれるもので組曲版には入っていないという話を日曜にラジオでやっていました。
     けいさん。
     当該のシーンは(“秒読みの殺人”に因んで)18:10:12過ぎに来ました。コロンボの声が銀河万丈さんだったので、昭和54年の地上波放送でカットされていた事は明らかです。
     確かに増岡弘さん=『サザエさん』マスオさんの声で「銃が見つかったらしいですよ!」なんて台詞があのタイミングで入れば話の腰がカイロプラクティック、違う、エレベーターの中で悪戦苦闘したケイが浮かばれなさ過ぎますし、意図的に全然違う台詞を充てたのかも知れませんが、私はDVD化の際の単純ポカも疑いました。補完作業では台本が手元に無く、ヒソヒソ声なので台詞も聴き取れず、適当に台詞をデッチ上げたら実際の台詞とは違うけれどネタバレ回避に効果的だったという…違うかな。

  4. さっきBSの再放送でこれを見たのですが
    これまでの作品であったようにあの手袋の時点で
    コロンボは硝煙反応検査してほぼ確定するので何か冗長的なような。
    心理面はよくある会社内でくっついた二人のよくある別れから
    業界で女一人で突っ張って生きてるやり手~レズ描写の精神の退廃感など
    よく出来ているようにも思いますが・・・
    男の方が既婚で不倫だった挙句もっと残酷に捨てた、など
    犯人に同情出来る部分があれば別ですが、作中はっきりしませんが
    おそらく両方未婚?なわけで、言ってみれば男女の別れでしかないわけです。
    また結局は仕事の能力も自分の勘違いで支社長には実力不足だった。
    それで殺人を犯して最後は開き直って自分の事しか考えていない台詞。
    犯人の印象が序盤から完全に逆転してタダの馬鹿女になっているラスト、
    男はただの殺され損の回だなぁと思ってしまう・・・
    タイトル通り、秒読みの殺人の序盤のスリルや脚本構成は良いし
    名作回と呼ぶ人が多いのはわかりますが、単純に推理モノの一作品として
    見た場合、読後感が上記の理由でどっちらけの駄作という印象にもなってしまいます。
    今回の犯人役は自己中心的過ぎるなぁ・・・最後も人殺して捕まって
    肩の荷は降りない、と言った直後に「あたし負けないわ戦って生き残る云々」など、
    やり手の弁護士雇って裁判で黒を白にして見せるみたいな決意の目で
    アタシの生き方を明言されても・・・とまとまらない長文ですみませんが
    見事なトリックや展開より不快感が最も高い作品でした。

  5. ほろんこさん、こんばんわ。
    私、実を言うと最近コロンボが嫌いなんです。
    ずうずうしくて、デリカシーが無くて、言いたい
    事を言いたいだけ言って、犯人を罠に嵌めて・・。
    8割がたは犯人を応援しています。でも、最後は捕まっちゃうんです。
    犯人が美しい女性の時は特に悲しい。
    すっかり製作者の思うつぼです。

  6. 英語の勉強のため両方の言語で見ていますが、吹き替えとあまりに違う箇所があり、これはすごい!と思ったので書かせてください。
    私のDVDでは1時間0分52秒のところです。部下が廊下を走ってきてコロンボを呼び止め、大事な連絡をする場面。
    日本語:「このくらいの背の男がうろうろしてたっていうんですよ」
    英語:We found something. It’s the gun. It’s in the top of the elevator.(凶器の)銃を見つけました。エレベーターの上です。
    これはすごいギャップだと思いました。
    というのも、後でコロンボがケイと一緒にエレベーターに乗りますが、英語視聴者はこの時点で既に、コロンボがケイにトラップを仕掛けているのを知っていることになります。上を見上げて血の気が引くケイを、コロンボは鋭く観察していたはずです。ケイがエレベーターにもう一度乗り込むのを見送りつつ、これから彼女がそこで何をするか、絶対的に確信していたに違いない非情なほどのコロンボの姿を、英語視聴者はイメージできます。
    でも、日本語視聴者はまだ知りません。大胆な翻訳によって、エレベータに背を向けて去るコロンボの意図は、隠されたままの状態が作られているからです。最後に ああそうだったのか!となるまで、日本語視聴者のサスペンスは持続します。と同時に、コロンボの非情な捜査手法も、ほどよく和らいだ形で伝わるのではないかと思いました。
    ↑という効果を狙っての、「超絶」翻訳だったのでしょうか。だとしたら、日本語版製作スタッフがどれほど思いをこめて作ったのかが偲ばれるシーンだなあと思いました。

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