40話「殺しの序曲」

The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case / 1977

刑事コロンボの中では、第6シーズンに属する後期的作品。背景は世界でトップレベルのIQを持つ人が集まる「シグマクラブ」で起こる殺人事件。クラブのメンバーである会計事務所の経営者オリバー・ブラントが友人で共同経営者、しかもシグマクラブのメンバーでもあるバーティを殺害。動機は、オリバーの横領を知ったバーティが、世間に公表すると脅したためです。

動機は十分。バーティはかねてより友人オリバーの言動に対し、強い不快感を抱いていて、その腹いせに彼の身辺を探ったため、不正が発覚します。常日頃から周囲にバカにされている人は、たとえそれに悪意が薄かったとしても、いつか許せなくなるものなのでしょう。

トリックは緻密だが、天才集団を感じさせない

この作品の特長は他の作品と比較し「殺害のトリックが異常に緻密」であること。それが大きな要素となりすぎて、「世界でトップレベルのIQを持つ人が集まるクラブ」の存在感は逆に薄くなっている点が惜しいです。一部の登場人物を除いて、あまり頭の良い人の集団と思わせてくれません。

また原題の「The Bye-Bye Sky High I.Q. Murder Case」は「空高いIQの殺人事件」のようなイメージですが、邦題ではむしろ音楽にスポットを当てたようですね、残念でした。

トリックに凝りすぎて、現実味がないとも感じます。傘の中で破裂した爆竹の音が果たして銃声に聞こえるだろうか?音楽のボリュームを絞り、犯行後にプレーヤーのカバーを閉めておけば、もっと怪しまれなかったはず。犯人が頭脳明晰のわりには短気で、容疑をかけられる素性を持っているなど。また、これは微妙な判断ですが、解決シーンで「赤いペンが落ちるほんの一瞬前に辞書が傾き始める気がする」点も‥。ただ、そのようなことを差し引いても、楽しめる作品であることは確かです。

天才オリバー・ブラントは可愛い

セオドア・バイケル犯人の天才オリバー・ブラント「セオドア・バイケル(ビケル)」も、まさかコロンボ警部のような「計り知れない程の頭脳の持ち主」が担当刑事として自分の前に現れるとは予測もしていなかったことでしょう。異常とも思えるほど緻密な殺害トリックを仕掛けるシーンで「満面の笑み」を浮かべ作業するオリバーの顔が印象的に描かれています。犯罪工作の王者「パトリック・マクグーハン」も顔負けです。

大草原の小さな家

セオドア・バイケルセオドア・バイケルは、大草原の小さな家の「自由よ永遠に」で、ロシアからの移民ユーリー役で出演しています。刑事コロンボより約1年くらい前の作品です。

奥さんからは「オリバーちゃん」呼ばわり

サマンサ・エッガーオリバー・ブラントは、頭が良い割には「子供のような性格」な人ですね。公園で拳銃をゴミカゴに捨てるシーンで、コロンボに気付かれる不安が消えた直後に、嬉しそうな顔に一変して傘の説明をし出す場面など、興味深いです。彼の性格は妻のビビアン(サマンサ・エッガー)との会話「オリバーちゃん呼ばわり」でも伺え知れます。

脇役ソレル・ブークが良い

ソレル・ブーク犯人オリバー・ブラント役のセオドアバイケルも良いのですが、被害者のバーティ・ヘイスティング役のソレル・ブークも深く印象に残りました。撃たれて倒れるシーンが可愛い(不謹慎ですが)です。このソレル・ブークは24話「白鳥の歌」で、音楽プロデューサーのJ.J.ストリンガー役で出演しています。

ウエイトレスのお姉さんが怖い

ジェイミー・リー・カーティスレストランのウエイトレスの女優は「ジェイミー・リー・カーティス」で、有名な俳優の「トニー・カーティス」と刑事コロンボ32話「忘れられたスター」のジャネット・リーを両親に持ちます。ちょい役でも流石に存在感のある演技です。睨みつける顔がめちゃ怖いですよね。

女優ジェイミー・リー・カーティス

彼女はこの後、女優としての才能を開花させます。まず翌年の映画「ハロウィン」シリーズ(主演:ドナルド・プレザンス)で評判を博します。数々のキャリアを経て1994年には、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画「トゥルーライズ」でゴールデングローブ賞を受賞しています。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

ジェイミー・リー・カーティスは2022年公開の映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」では、第95回アカデミー賞「助演女優賞」を受賞しました。ウエイトレスのお姉さんから、なんと45〜6年。快挙ですよね皆さん。

ハワード・マクギリン

ハワード・マクギリン出世願望の強い若手会計士のジョージ・カンパネラを演じたのはハワード・マクギリン。目鼻立ちがはっきりした二枚目で、とても印象に残りました。やはりコロンボにはパンチの効いた脇役さんがいますよね。オリバーさんにとても気に入られています。

こっちは浮かばれないアルビン

ピーター・ランパートジョージ・カンパネラのライバル、アルビン・メッツラーは俳優:ピーター・ランパート。バーティの部下だっただけに、オリバーからは忌み嫌われ、この事務所での出世はおろか、業界で生きていくことさえ困難な状況に陥っています。可哀想すぎる。

会計事務所の受付女性

ミッチー・ロジャース会計事務所の受付の女性はミッチー・ロジャース。34話「仮面の男」のブレナーの秘書(アンジェラ・メイ)と顔立ちが似ていますが別人です。

天才少女キャロライン

キャロル・ジョーンズキャロラインを演じるのはキャロル・ジョーンズ。この天才少女と、2話「死者の身代金」に登場する娘マーガレットのイメージがダブるという方もいます。比べてみてください。よく見るとあまり似ていません。

支部長のダンジガーさん

ジェイスン・ダンジガーシグマクラブ支部長のジェイスン・ダンジガーさん(バジル・ホフマン)は、あの手この手で殺人事件の推理をしますが、ことごとく空振り。この人のキャラクターが…天才集団のイメージを落としているような(笑)‥いやいや、それでも良い役柄でした!

シグマクラブ会員のワグナー

ジョージ・スパーダコスプログラム委員長のバーティに注文をつけるシグマクラブ会員のワグナー役はジョージ・スパーダコス。彼は36話「魔術師の幻想」で舞台となったマジックショーのお店で働く「サッカリー」と同一人物です。さすが俳優さんですね、別人みたいです。

アイゼンバックさん

ドリー・トムソンシグマクラブの美人会員アイゼンバックさんは女優ドリー・トムソン。コンタクトレンズを飲みそうになる直前、オリバーとバーティをきょろきょろ見ていて芸が細かいです。どうでもいいシーンだけど(笑)

メルビル夫人の肖像画

メルビル夫人の肖像画シグマクラブの1階には何と「メルビル夫人の肖像画」が飾ってあります。メルビル夫人は3話「構想の死角」の小説の主人公ですね。

チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」

この作品、邦題「殺しの序曲」で、作品中に登場するクラシック音楽はロシアの作曲家チャイコフスキーによる幻想序曲「ロメオとジュリエット」。私の持っている音源はシャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団によるもので、20分33秒という長い演奏時間の14分12秒に、オリバー・ブラントが再生位置を設定した「第二主題による美しいメロディ」を向かえます。おそらくオリバーは特にお気に入りだったのでしょう。当時のステレオでこの位置から自動再生するには「一度手動で記憶」させる必要があると思われ、ここでも彼の無邪気な性格が伺えます。

人間コロンボを感じられる会話で、自分を見つめ直す

シグマ協会で向かえるラストシーンの一場面で、天才オリバーの苦悩や、コロンボ警部の人間哲学に触れることができます。オリバーは神童と呼ばれ苦しんだ幼少期を語ります。私は神童と呼ばれた経験はありませんが、子供の頃から「わざと頭が悪く見られるように振る舞っていました」。その方が周囲と楽しく過ごせるからです。一方コロンボは、自分は決して秀才とは言えない素材だが、粘り強くしつこく頑張ればきっとモノになる。と答えています。今の私はこの心境です。全力を尽くさず人生を終えることなんてあり得ないですね。コロンボにとって、天職とも言える刑事。その姿に自分の生きる指針を見つけ出すことができました。

「殺しの序曲」は意外と深い作品かも

先述のオリバーとコロンボの会話。それ以外にも、「いじめっ子、いじめられっ子」「天才と凡才」「気持ちの通じない夫婦」「出世を競う二人の秘書」など、殺人事件の周囲で見られる人間関係が面白く描かれています。
なかでもオリバーとバーティの関係は特に興味深いです。バーティのことが好きなオリバーは行き過ぎた愛情表現から逆にバーティから嫌われ、それが横領を暴露される危険を増大させます。本当に頭が良ければ「相手から嫌われない工夫」をもって世を渡れるはずなのですが、最も短絡的な解決方法「殺人」を実行するのも皮肉に感じます。

ラファイエット・パーク
ラファイエット・パークは、例のオリバーが拳銃を捨てるシーンでもあり、公園内にはウエイトレスに睨まれるドーナツのカフェもあります。会計事務所の所在地もこの近辺でしょう。

監督:サム・ワナメイカー
脚本:ロバート・M・ヤング

オリバー・ブラント:セオドア・バイケル(ビケル)(声:田中明夫)
ビビアン・ブラント:サマンサ・エッガー(声:横山道代)
バーティ・ヘイスティング:ソレル・ブーク(声:高木均)
ジェイスン・ダンジガー:バジル・ホフマン(声:田中明夫)
キャロライン:キャロル・ジョーンズ
ワグナー:ジョージ・スパーダコス
アイゼンバック:ドリー・トムソン
マイク:ケネス・マース
アンジェラ:フェイ・デ・ウィット
ウエイトレス:ジェイミー・リー・カーティス
ジョージ・カンパネラ:ハワード・マクギリン(声:納谷六朗
アルビン・メッツラー:ピーター・ランパート
会計事務所の秘書:ミッチ・ロジャース
バーの女性スージー:キャスリーン・キング
バーク刑事:トッド・マーティン
シグマクラブ会員:マイク・ラリー

加筆:2024年8月29日 

“40話「殺しの序曲」” への148件の返信

  1. こんばんは 今夜は殺しの序曲を観てます
    コロンボはアイスクリームにも目がないですよね🍦😋 レストランに入るまえ 手にしていたドーナツ🍩はほとんど食べおわったくらいで 会計士のジョージとレストランの中であった途端右手にまたドーナツ🍩が急にあらわれました😄

  2. これもあんまり好きな作品ではないなぁ~。プレイヤーをオートコントロールにして、プレイヤーのアームにクリップを付け、爆竹を鳴らす。導線とアンプと拳銃は傘に入れて暖炉の煙突に隠す。どこからコロンボはこうした経緯を見つけたのか? そもそも最初の捜査で、真空掃除機で煙突の煤を吸い込んだのなら、煙突内をきちんと探せば、傘も拳銃も見つけただろうに。しかも犯行時は手袋をしていないから、指紋もばっちり付いているし。プレイヤーのオートコントロールだって最初に犯行の場面を見せられなかったなら、視聴者にも、何故ここまでコロンボはこだわるのか、って全然わからないはずだ。天才が集まったクラブの割には、おつむのできの良さが感じられない作品だから、これでもいいのかもしれないが・・・
    視聴者は犯行の場面を見ているからわかるけど、何故コロンボがそれを知ったのか、全然論理的でないもう一つの例が、人気の高い「別れのワイン」。最後の場面でコロンボは「冷房を止めてしまえばあの中は45度にはなったでしょう」といった台詞を言っているけど、何故コロンボは、ワインカーヴに半死の状態で置き去りにされ、冷房を切られて窒息死したことがわかったのか?
    出演者では、オリバーちゃんのカミさんがお気に入り。美人ではない、とは言えないかもしれないが、それよりも可愛いんで、こういう女が好みだから。美人と言うなら、キャロラインとおっかないドーナツのねぇちゃん! ねぇちゃんの方はヌードにもなったみたいだけど・・・オリバーのカミさんもヌードがあるみたい。

  3. 少し前、アメリカのドラマ「ナイトライダー」を見ていたらバイケル氏が出てきて、「あっ、『殺しの序曲』の人だ!」と一人で驚いていました。驚いたのはそれだけでなく、その役が高IQ集団「ヘリオス」のリーダー(悪役)であったこと。高IQと縁がある方ですね。
    この方は私が好きな映画「眼下の敵」でも印象的です。

  4. どなたかお教えください。
    前から気になっていたのですが、よくわかりません。
    吹替版のセリフの話です。
    クラブで、スージーという女性がジョージに、「あたしさあ・・サンフランシスコの黒ミサ、自由結婚、ESP、みんな試みた」と話したあとに、「あたし、●●●●」と言っているのですが、●●●●の部分がどうしても聞き取れません。
    どなたか、わかりますか?

    1. 久しぶりに見て確認しました。日本語でも英語でも酔ってるしゃべり方なので非常にわかりにくいです。私の持ってるDVD吹替えでも英語の「TA・TMもした」と言ってます。字幕出すと超越瞑想と出るので間違いないです。70年代はオカルト的に色々なものが、健康に良いとかリラックス効果があると流行りましたね。

    2.  みなさま。
       あーそうだったんですね。「あたしOK。あんたOK」。スローで再生してみると、確かにそんな感じですね。OKとあん が合体して、キャンに聞こえている感じかな・・・ 長年の悩みが解消しました!
       ありがとうございました。

  5. 個人的に最も好きな作品です。
    家にビデオがなかったので、カセットテープに音だけ録音して何度も聴いていました。
    犯人が自分の虚栄心に負けて決定的な行動に出るラストは音楽の盛り上がりに相まってとても好きな場面です。
    大きな辞書の中央でバランスを取るというのを実際真似てやってみましたが、平衡を保ってはくれず、ズドンと落ちてしまいました。

    1. >家にビデオがなかったので、カセットテープに音だけ録音して何度も聴いていました。
      これ、わかります!共感します。

  6. コロンボシリーズのエスタブリッシュメントに対する憎悪と逮捕によるカタルシスが出ていますね。今回も犯人は成功者で社会的地位も高い。
     ところで犯人の奥さんの「何のことかわからない」というセリフと存在感も良いですが、やはり光ったのはチョイ役のジェイミー・リー・カーティス。(コロンボのドーナツを見て)「それ、ここで買ったの?」最後に「フン!」と鼻を鳴らすところなど存在感たっぷりです。のちにハリウッドで出世し、主演映画まで作られるようになりましたね。
     ちなみに美人をほめるにはそれ以外の性格とか頭の良さとか、秀才をほめるには容姿とか別の角度からほめると効果的だそうです。
     他の方が疑問を呈していましたが、アメリカでは銃犯罪が多すぎるので爆竹の音を聞くと銃声だと思うようです。本作のトリックはピタゴラスイッチみたいでいまひとつでしたね。

  7. 最近コロンボにハマり、動画配信サービスを見ながらブログ、みなさまのコメントを拝見し楽しんでおります。楽しいブログをありがとうございます。

    キャロラインをコロンボが褒めるシーンについて。今まで頭の良さしか褒められたことがなく、頭の良さをアピールすることでしか自分の存在意義を示せないと思っているであろう彼女。良い推理を出せず落ち込んでいるところに、コロンボが〝あなたは頭だけじゃなく、それ以外にも素敵なところがありますよ”と励ましてくれる、心温まるシーンだと感じました。

    いいシーン!!と、とても印象に残ったのですが、コメントを見て、そうか女性の容姿を誉めるとNGか…と唸っています。「あなたはそのままで十分素敵ですよ。」あたりが現代では限界なのでしょうか。好きなシーンですが…。難しいですね。

  8. オリバーに金貨の問題を出されたときのコロンボの笑顔が最高でした。あれは印象に残っています。

  9. タイトルの中の「スカイ ハイ」というのはIQの高さという意味の他に、打ち砕かれて粉々になった」という意味も兼ねているのではないでしょうか?(考えすぎでしょうか?)
    昔流行した曲、ジグソーの「スカイハイ」は、失恋の歌だそうです。

  10.  ぼろんこさんが「傑作クラスの名作」と位置づける本作は、作家の大倉崇裕氏(倒叙もの「福家警部補」シリーズの作者)のお気に入りでそうで、海外のサイト”The Columbophile”の運営者もシリーズのベストワンに推しています。今回ブルーレイで再見しましたが、私はひねくれているのか、やはりそこまでの作品とは思えませんでした。とりわけ気になる点をまとめてみますと、
     ○「コロンボも実は天才だった」とも受け取れるような描き方をしているのが気になります。コロンボはラストで「自分は人一倍努力をしてきた」と述べてはいますが、そうした捜査ぶりが実際に描かれているとはあまり思えない一方で、犯人が出す”クイズ”はどれも鮮やかに解いていくだけに、”人生哲学”が何だか白々しく聞こえてしまいます。
     旧シリーズも後半になると、コロンボのキャラクターによりスポットを当てる路線が強まりますが、本作はそれへの”寄りかかり度”が高すぎるように感じます。私が好むコロンボは、「どんなに頭のいい犯人でも、犯行は1回だけのアマチュアです。だがわれわれはそれで食っている捜査のプロだ。大変な修練を積んでいるんです」(「殺人処方箋」)という信念に基づいて、腑に落ちない点を徹底的に詰め、相手にネチネチと食い下がる(例えば「野望の果て」に見られるような)捜査を経て、隠していた爪を最後に突きつける姿です。
     ○”天才クラブ”のメンバーたちが、揃って「IQは高いが、世間的にはどこか欠けたところがある」という、ステレオタイプ的な印象を与えているのが残念です。中にはそうしたメンバーがいても構いませんが、皆が皆そういう感じで安易に描かれているように見えてしまいました。犯人の最後の告白は痛切とはいえ、これもいかにもパターン化した天才の描き方のように感じられます。
     ○何度か出てくるチャイコフスキーの序曲「ロミオとジュリエット」。確かに名曲で、曲の最後の部分がそのままドラマ本編のエンディングにBGMとして使われますが、その昔テレビで最初に放送された時、この締め方に「安っぽい!」と感じてしまいました。この印象はずっと変わりません。エンディングはオリジナル曲にしてほしかったなあ。
     もっというと、”通俗名曲”ともいえそうなこのチャイコフスキーの曲は、主人公の愛好曲としてはちょっと残念な選択だったと感じます。”ピタゴラスイッチ”的な複雑・緻密な仕掛けがトリックに使われていることもあり、個人的にはバッハのクラヴィーア曲で何か似合いそうな作品がありそうな気がするのですが・・・。
     それからこの作品については、宝島社の「完全捜査」本で編者が、「おそらくはシリーズの最終作として製作された」と、根拠を示すことなく書いています。しかし製作の舞台裏を書いた本”Shooting Columbo”によると、プロデューサーのリチャード・アラン・シモンズ(ピーター・フォークがシリーズに活を入れるために連れてきた旧友)が担当を引き受けた初めの段階から、「天才クラブのメンバー(→本作)、アガサ・クリスティ的な作家(→「死者のメッセージ」)、料理人(→「美食の報酬」)、心理学者(→「攻撃命令」)」という犯人の4作がすでに構想として設定されていたそうです。
     シモンズがシリーズの新プロデューサーとして最初に手がけた「殺しの序曲」は、第6シーズンの最終作として放送されましたが、上記の舞台裏本の記述が正しければ、少なくとも「シリーズ最終回」として本作が作られたわけではまったくないことになります。
     それから犯人を演じたセオドア・ビケルは(ネットで音を聞くと「バイケル」ではなく「ビケル」という感じでした)大変な才人だそうですが、個人的には今回の犯人にはちょっとそぐわない感じがします。上記”Shooting Columbo”によると、製作陣が最初に白羽の矢を立てたのはロバート・モーレイでしたがスケジュールが合わず、続いて打診したピーター・ユスティノフには断られ、ジェームズ・メイソンやレックス・ハリソンといった大物も検討した末にビケルに落ち着いたそうです。先に書いた作曲家のバッハは、ライプツィヒ市が音楽総監督を選ぶ際、他の意中の候補たちに次々と断られた末に選ばれた、という挿話を連想してしまいました。
     気になる点を中心にいろいろ書いてしまいましたが、私としても、シリーズで上位に位置するエピソードであるとは思っております。

    1. tempus fugitさん、今更ながら‥
      深い〜コメントを下さって、感激しています。
      今日再読し、痛感しました。
      何というか、このようなコメントをみんなで読んで、
      再考できるのが、本ブログの魅力だとも感じます。

  11. 笑える美容室のシーンで、当初の放送では「それでなくちゃ警察のイメージ狂っちゃうもんね」と言ってましたが同じ声優さんで「変わっちゃうもんね」になってましたね。クレーム対応が面倒なので変えたのでしょうが、やり過ぎではないでしょうか。
    もう一つ、音声で聞いていた頃からの疑問なのですが、大雨の夜にブラント邸を訪ねるシーンで「あらまあ、前まで車をお入れになればよろしかったのに」と言う奥さんに「今夜に限ってカミさんがコートに防水スプレーをたっぷりかけちゃったんで」と答えていますが、なぜそれが雨の中を歩いてくる理由になるのかなと思っていました。もちろんここは、わざと傘を間違える(?)ために傘をさして歩いてくる必要があったわけですが・・・。

    1. 同感ですねー、スプレーが乾くのを待てなかった、、という解釈なんですかね?
      ただ、最後の犯人の『やられた!』の顔は、コロンボを楽しむ真骨頂!
      原作小説の『カリブ海殺人事件』の犯人自爆シーンと重なるスッキリシーンで大好きです(^。^)

  12. 今年も、あまりにも全国的に暑過ぎますので納涼ネタを一席。
    「原題はIQ殺人事件?ああ、芭蕉とか古池やってヤツ?」
    「それは俳句(はいく)」
    凍り付いていただけましたか?

  13. 調べた所フランスのパリテロ事件の追悼式で爆竹を銃声と勘違いした例がありますがユーチューブで爆竹音の動画見ましたがマシンガンの連射した音と似ていますしたね

    1. 爆竹の音を銃声、本の落ちた音を人の倒れた音と勘違いするかということですが、一発目で「銃声?」、ドシン!で「誰か倒れた?」、二発目で「とどめ?」という状況は、音が今一つでも現場を確認しに行かせるには十分だと思います。
      先日の奈良での元首相の銃撃事件は、一発目で「なにか爆発?」と振り返ったけれど、鈍い音だったのでとっさに銃弾だと思わなかったのが、ニ発目の銃撃が命中する結果を呼んだんじゃないでしょうか? 爆発音を反射的に銃声と判断できるかどうかが生死に関わるわけですが、日本人SPのことを責め過ぎてはいけないような気がします。

  14. IQが異常に高いというだけでは凡人であるという演出だったと言ったら言い過ぎでしょうか?
    オリバーが、顔が煤で汚れているのに気付いて慌てて拭く場面とか、
    拳銃を捨ててハラハラしてる場面とか、とても間抜けに撮ってますよね(笑)
    感情をコントロールできないというのも凡人ですね。
    もともと株で失敗して横領して殺人に至ったという事がダメダメなんですが。
    結局オリバーは天才と呼ばれるような業績は残せなかったわけです。
    その理由は、コロンボのセリフにある「地道な努力」をしなかったからですね。
    エンディングでのオリバーのセリフを直訳すると、
    「警部、あなたは何か他の仕事に就こうかと思った事はないの?」
    とコロンボに訊いています。
    この期に及んでオリバーはまだ解ってないんですね。IQだけではだめだという事を。
    もちろんコロンボはよくわかっていますから、こう返答します。
    「あたしが?ない……全くない!今後もあり得ないね!」
    日本語訳はダジャレオチにしてしまいましたが、英語版とは印象がかなり違いますね。
    最終回的な素晴らしいセリフだったと思いました。

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