27話「逆転の構図」

Negative Reaction
1974[第4シーズン 27話]

最高傑作の一つ「逆転の構図」

著名な写真家ポール・ガレスコ(ディック・ヴァン・ダイク)が口うるさい妻を殺害し、誘拐殺人に見せかけるというお話です。この作品、「ポール・ガレスコ」という犯人の名前が非常に印象的で、小学生時代に見た頃から、コロンボシリーズ中、最も好きな作品として心に残っていました。そしてNHK BSの再放送で数十年ぶりに再会しました。色褪せていません、最高傑作のひとつだと思います。
  

殺意を抱き続ける夫、ポール・ガレスコ

まず、被害者にも非があること。計画的な殺害でありほぼ計画通りに実行できている。動機が十分である(と、思われる…。本当は殺してはいけません。)。状況証拠の揃え方も見事。コロンボ警部がしつこく犯人がいらだつ。結末が意外性を持っていて爽快。などなどです。  
犯人のポール・ガレスコは「この世からお前が消えてくれれば良いのと何度も願った」ほど、妻のフランシスを憎んでいました。会話の中で「15年間」と言っていますが、離婚できなかったのでしょうか?おそらく計画通りに事が運べば離婚より幸せな将来が待っていると想像したのでしょう。
  
計画はほぼ思い通りに進みます。1点のみ、廃車置き場でトマス・ドーラン(ヴィトー・スコッティ)(浮浪者風の男)に殺害の様子を「聞かれた」こと以外でしょうか。それも決定的な証拠とはなりません。むしろ、計画通りに運んだのだが、数カ所の「落ち度」をコロンボ警部に見抜かれてしまうことが、命取りになります。

ガレスコ氏の緻密な殺害計画

ガレスコ氏の計画は、なかなかのものです。ガソリンスタンドでのアリバイ工作。メイドに誘拐をほのめかすこと。そして前科者のアルビン・ダシュラー(ドン・ゴードン)を誘拐殺人の犯人に見立てて、銃撃戦で殺して口封じをする。おそらく担当刑事がコロンボでなければ、完全犯罪として成立したと思われます。担当のホフマン刑事(マイケル・ストロング)はまんまと騙されていますね。まあ、よく考えてみれば「タクシーを使って誘拐の準備をする」ってことはあり得ないんですが。まるで自分の行動を運転手に教えているようなものです。
コロンボ警部の捜査のポイントは見どころ満載です。まず容疑者のダシュラーが相当の「お馬鹿さん」で無い限り、真犯人ではないことに気付く点です。それにガレスコ夫人を誘拐したダシュラーが脅迫状に添えた写真になぜ「時計」が必要であったか?普通に考えれば必要の無いアイテムです。日めくりやテレビ番組など、日付を特定したいものあれば別ですが、時間を特定する必要は無いと思われます。この2点で、単なる誘拐殺人ではないことは明白となります。

徐々に表情が曇るガレスコ氏

その他は、芋づる式に状況証拠が揃います。要するに、初期捜査の着眼点が他の手がかりを引き出してゆくのです。メイドに誘拐をほのめかす際に「脅迫電話のメモ」を書いた矛盾は最大の失敗のひとつです。さらには誘拐犯からの呼び出し時間のズレを、後になって解説したこと。ダシュラーのモーテルの部屋で、彼が犯人であることを分かりやすく演出しずぎたこと。これらの「甘さ」がコロンボ警部を「逆転の構図」作戦の実行に駆り立てたと感じます。つまり犯人は100%の確率でガレスコ氏と断定でき、あとはガレスコ氏自身に「私がやりました」と言わせれば良いのです。
そのために、状況証拠をちびちびとガレスコ氏に見せ、彼を追い込んでゆきます。その手法が凄いです。自分が撮影した下手な写真を見せガレスコ氏のプロカメラマンとしての誇りを引き出し「犯人像とダブる」ことを伝える。助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)を「奇麗な方ですね~」と、二人の男女関係を疑う。ホテルの部屋の件は「メイドが掃除をさぼったことで嘘をついた」という、苦し紛れのガレスコの証言を「復唱しながらメモ」しています。さらには、刑務所の写真集からガレスコ氏と前科者のダシュラーの関係を突き止める。そして最後に「脅迫状作成を実演」です。

コロンボ警部の得意技「大芝居」

エンディングは圧巻。注目すべき点は、コロンボ警部が「ここが重要です。あたし自身が采配をとり、全て落ち度なくやった」と自慢気に喋る場面。「頭脳明晰で手強い刑事」から「お間抜けデカ」に印象が変わるように演じています。そこで生まれた一瞬のスキが「崖っぷちまで追い込まれた」状況から「大逆転」のチャンスと錯覚させ、証拠品のカメラにを手に出させるのです。
よ~く考えてください。「証拠写真を複写して引き延ばした。その際にミスで裏焼きした。オリジナル写真は紛失した。」のですが「複写したネガ」は存在するわけで、そのネガを調べれば「裏焼き」は明白。それに気付かれれば、全てがフイになる「賭け」のような作戦だったと思います。まんまと自分の罠にハマるガレスコ氏。コロンボ警部は、彼の捨て台詞に対し一言も解答せず、無言のラストを向かえます。

ホフマン刑事もびっくり

「残念でした」という印象的な台詞。ホフマン刑事(マイケル・ストロング)の表情もとても印象的です。現場タタキ上げのような刑事ですが、「あんた、自分で罪を認めたんだよ」って、コロンボ警部の補佐について「どえらい体験しちゃった」台詞でした。

誰が見ても怪しい関係?

助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)の美脚がカメラワークにより魅力的に表現されていました。またコロンボの「奇麗な方ですね~」に対し、仕事での有能ぶりを評価していると逃げたガレスコ氏の台詞に「うしろめたさ」を見ることができました。

成功者に美人秘書あり

英雄は色を好む…ですか、コロンボシリーズで頻繁に見られるシチュエーション「成功者に美人秘書(今回は助手)あり」。もしも、ガレスコ氏がローナとフィリピンに逃避行しなければ、もっとスッキリ逮捕したかったのでしょうね、コロンボ警部~。

可愛い!ジョイス・ヴァン・パタン

シスター役の女優「ジョイス・ヴァン・パタン」とのやりとりは何度見ても傑作です。ジョイス・ヴァン・パタンはこの後の作品39話「黄金のバックル」で美術館の館長ルース・リットンで犯人役を好演します。やはり素敵な女優さんは、脇役でも光るものです。

 
 

笑える場面が盛りだくさん、楽しい作品です

しかしこの作品は本題の完成度に加え楽しめる箇所も多いです。人間コロンボの魅力もいたる場面に盛り込まれています。警部がガレスコ宅で灰皿を見つけられず、ポケットにタバコの灰を捨てる仕草もかなり笑えました。一部始終を見ているガレスコ氏もあえて突っ込まないのがGOODでした。
名優「ヴィトー・スコッティ」との知的な会話も面白いです。トマス・ドーランは酔っぱらいの浮浪者風の男ですが、供述の証言や食堂での会話からも知的なキャラクターに描かれていて、とても面白いです。供述書で自分を「余(よ)」と呼んでいました。コロンボ警部はこのドーランに対し優しく接していて、社会的弱者の味方であることが伺い知れます。
 

ハリー・ルイスにも注目!

カメラ店のハリー・ルイスを演じた「ハーヴェイ・ゴールド」も良かったです。ハーヴェイ・ゴールドは32話「忘れられたスター」と33話「ハッサン・サラーの反逆」「アンダーソン検死官」を演じます。日本語吹き替えは「ウイルソン刑事」「ドカベンで徳川監督役」の野本礼三さん。

 
解決編があっさりしている(突然のクライマックスを向かえる)という解釈は少々違う気がしています。カメラ店でヒントを得た後、運転免許の試験官ウイークリー氏と会う場面で、すでに「逆転の構図」作戦を着々と実行していたわけです。ほぼ全ての場面で無駄の無い作り、それでいてユーモアもたっぷりです。

ラリー・ストーチ

ストーリー後半の短い出番でしたがウイークリー役のラリー・ストーチの演技も良かったです。神経質な性格で、仕事に嫌気がさしていて、かなりマイってました。公務員の気質丸出しで可愛かったです(笑)

ウイークリー氏が「教習所の教官」と思っている人は間違いで正しくは運転免許試験場の試験官。ダシュラーは運転を習う必要はありません。
監督:アルフ・ケリン
脚本:ピーター・S・フィッシャー
ポール・ガレスコ:ディック・ヴァン・ダイク
ホフマン刑事:マイケル・ストロング
アルビン・ダシュラー:ドン・ゴードン
ローナ・マクグラス:ジョアンナ・キャメロン
トマス・ドーラン:ヴィトー・スコッティ
シスター・マーシー:ジョイス・ヴァン・パタン
ハリー・ルイス:ハーヴェイ・ゴールド
ウイークリー:ラリー・ストーチ
 
加筆:2015年3月7日

“27話「逆転の構図」” への44件の返信

  1. 「空っぽのお腹は悪魔の遊び場ですわ」は私も大好きです。ネットで検索してみますと、やはりこの「逆転の構図」のシスターの台詞として、様々な方が語っております。面白いですね。

  2. 初めまして、ケーブルTVにて正月連続企画でコロンボを観ております。
    この回は皆さんが書かれているように、やはりラストシーンは印象的で、これには完敗だ!と感じました。こんなに想定している通りに相手が自分の手の内に引っかかるとどんなにかスカっと気持ちいいでしょうね。
    シスターのセリフで、空っぽのお腹は悪魔の遊び場ですわ、というのにとてもハマりました。このような表現は初めて聞き、日本人はこんな表現しないのでとても興味が湧き、セリフを英語で調べてみると、どうやら何処かの国(ハンガリー?)の諺のようです。
    あと2日間は、TV放映をみながら、ぼろんこさんのサイトを見て、コロンボを2倍楽しみたいと思います!

  3. みなさん、楽しいコメント、いつも拝読しております。「ジョン・アシュトン(John Ashton)」の情報、ありがとうございます。

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