7話「もう一つの鍵」

Lady in Waiting / 1971

高圧的な兄を殺害する妹。という恐ろしいシナリオ。被害者は広告代理店の社長にして大富豪のブライス・チャドウィック。犯人はその妹のベス・チャドウィック(スーザン・クラーク)。前半のシーンでは、このベスが、それほど「悪人」とは感じさせない。質素で美しい女性だと感じ、悪人はむしろ兄のブライスではないかと錯覚します。

ベス・チャドウィックが美しく(実は醜く)変貌してゆく

その印象が逆転するのは、事件を知って駆けつけた二人の母親がベスをひっぱたくシーンだと感じました。この時の彼女(スーザン・クラーク)のいでたちが、本編で最高に美しく表現されているように見えました。私が質素な女性を好むというだけなのかも知れませんが…。
独裁者(兄)が不在になった後のベスは、派手な洋服を買いあさったり、スポーツカーを手に入れたり、あげくに会社社長の座について、経営権を我がものにしようと企みます。それに比例するように、彼女は醜くなってゆくように描かれています。

もう一度最初から見返せば、なるほど冒頭近くに庭で朝食を食べるシーンでも、どこか歪んだ心をもった女性の表情が見え隠れしてますね。

時代性を感じる映像処理

意外な展開となったのは「画面が揺れているような描写」のシーンで、最初に見た時には「睡眠薬か麻薬かで、精神が普通でない表現」なのかと、勘違いしました。実際には「こうなる予定」を表現していたのでしょうね。初期の作品(特に第1シーズンまで)には、このような「頑張った映像処理」が多く登場します。テレビドラマの特殊効果に限界のあった時代の産物でしょう。

決め手はピーターの記憶力…ではなくベスの性格?

事件解決シーンでは「婚約者のピーターが、犯行の時の鮮明な記憶を語った」こととなりますが、実際には犯人特定の証拠とは言いきれず、その後のベスの行動「コロンボを銃で撃ってしまえ」というアクションが決め手となりました。これもベスの性格を見抜いたコロンボの切り札だったと言えます。

これがひっかかるんです、ピーター の人間像。

ひとつ腑に落ちないのは、婚約者のピーターがそれほど「野心家」に描かれていないという点。むしろ正直で不正を好まない人物だった気がします。逆に妹のベスはかなりの野心家で、兄の殺害は婚約を反対されていることが動機ではなく、地位と富を一気に手に入れ、派手に暮らしたいという願望が強かったことがわかります。今となっては遅いのですが、彼女がピーターと結婚していれば、夫が妻を上手く操縦できたような気も…。
この婚約者ピーター・ハミルトンは、後の作品34話「仮面の男」でジェロニモとしても登場する「レスリー・ニールセン」です。

フレッド・ドレイパーを見逃すな

チャドウィック家のお母上が到着する場面に出てくるタクシーの運転手は、お馴染みの「フレッド・ドレイパー」です。コロンボを家の召使いと決めつけて代金を請求し、おつりを持っていないと「新米だね」と、さらに見下すのは、笑えました。

チャドイック宣伝広告社のビル

チャドイック宣伝広告社は、2話「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズの弁護士事務所のビルと同じです。また、裁判の開かれる「LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE」も同じ場所です。

その他、ちょい役でお馴染みの俳優さんが…

広告代理店の会議室で、ベスに逆らってクビになりそうになる重役は、38話「ルーサン警部の犯罪」でもテレビ局の撮影所所長として出てくる「フランク・エメット・バクスター」です。

また、美容室の受付係はバーバラ・ローデスで、後の34話「仮面の男」遊園地の女性カメラマン「ジョイス」を演じます。
監督:ノーマン・ロイド
脚本:スティーブン・ボチコ
ベス・チャドウィック:スーザン・クラーク
ピーター・ハミルトン:レスリー・ニールセン
ブライス・チャドウィックリチャード・アンダーソン
チャドウィック夫人:ジェシー・ロイス・ランディス
加筆:2014年6月16日

“7話「もう一つの鍵」” への71件の返信

  1. 初期のコロンボはほとんど見ているつもりでしたが、あまり印象に残っていない作品です。もしかして今回はじめて見たのかもしれません。
    ストーリーやトリックはいまいちでしたが、犯人役のスーザン・クラークがスレンダーできれいでした。70年代の最先端といった感じの露出の多いファッションもすてきでした。私としてはそれだけで満足できる作品のひとつになりました。

    1. そうでうすね、この時代の女性のファッションはかなり派手なものが多く、見てみて楽しくなります。

  2. 一事不再理の話が出ていますので、その点についてコメントさせていただきます。
    この作品に出てくるのはおそらく裁判ではなく大陪審でしょう。起訴するかどうかを決める仕組み。
    起訴するかどうかは有罪とするに足る証拠が提出されているかで判断するようです。
    日本では起訴するかどうかは基本的に検察が判断しますが、アメリカではそこも一般市民が介入する仕組みになってるようです。(GHQは日本にも大陪審制度を導入させようとしましたが、日本側が抵抗し、妥協案として検察審査会制度が作られたそうです)
    で、この大陪審については一事不再理は適用されないようです。
    ですので、コロンボが新たな証拠を揃えて手続きを取れば、再び大陪審が開かれ、起訴、裁判、という流れになるのでしょう。
    皆さんのおっしゃっているとおり、十分な証拠と言えるかどうかは、まだ怪しい気もしますが。

    もうひとつだけ。
    皆さんベスが無能と決めつけていらっしゃいますが、ベスの方針で会社がダメになるかどうかはわからないと思います。制作側も無能であると臭わせるために作ったシーンなのは確かでしょうが、案外あんな感じの経営があたったりするかもしれませんよ。

    1. あれって大陪審ですか?
      確か大陪審は23人、小陪審は12人のはずですが、23人もいましたか?

      ただ、小陪審だとすると、検事の主張を被告人は否定して無罪主張したことになり、当局はベスの主張に納得している、という話の流れから考えて不自然になりますね。

  3. これまであまりコメントが増えなかった話なのですが、
    この2020年の再放送で、語らいの場になりましたこと、
    それが嬉しいと思います。

  4. 決め手が弱いのは、いかんともしがたいですよね。
    見どころは、ベスとピーターの印象(善悪)が入れ替わるところだと感じました。
    ブライスと夫人によるベスの評価が、後に行くほど納得できるところとか。
    やはり作品ごとの違いを出すための構成なのですね。
    そういう心理劇としてみると、なかなかの作品かなと思いました。

  5. 撃たれた場所に血が流れているはず
    その点に触れないのが一番おかしい
    夢想ストーリー通りの展開にして、ガラスの破片の落ち方から不審を抱く、という話の方が自然では?

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