25話「権力の墓穴」

A Friend in Deed / 1973

ギャンブル好きが命取り…ロス警察ハルプリン次長

財産目当てに妻を殺害するロス警察の上司マーク・ハルプリン次長のキャラクターが素晴らしい。殺人動機が弱いとも感じるが、夫婦仲は良くない状況が続いていたと思われます。しかしながら隣の2軒で連続殺人が起きれば、相当厳しく捜査されるのが予想される中で、よく夫人殺害という犯行に及んだと感心します。自分の現在の地位・名誉を全て失うだけの価値がある殺人だったのか?

本物のワルの匂いが…

隣人のヒュー・コールドウェル(マイケル・マクガイア)が奥さんを死なせてしまったことが、事の発端になりますが、それを知った直後に、自分の妻もついでに殺して、二人の共犯で罪を闇に葬る計画をした…というのがね~あくどいです。

見どころが満載の作品

捜査の過程で、自分に都合の良いようにコロンボに指示を出すハルプリン次長の傲慢さに、いかにも官僚的な体質が見えます。また、巧みとは言い難いですが「妻(ローズマリー・マーフィ)が犯人を見てしまったかもしれない」ように仕立てるのもポイント。

邦題は「けんりょくのぼけつ」?

読みの問題。「はかあな」ではなく「ぼけつ」が正解だと思われます。NHKのアナウンサーが番組紹介でそのように読んでいました。

シロとクロを嗅ぎ分ける嗅覚

他の作品でも感じますが、コロンボ警部の嗅覚は凄いです。このお話の場合、まず疑うべきは夫のコールドウェル。次に連続窃盗犯も有力に思えます。しかし、コールドウェルは証言の些細な部分からシロと判定。連続窃盗犯も「窃盗」の容疑者を狭めつつ、殺人ではシロと判定し、本題の事件解決の協力者へと導きます。このような鋭い嗅覚が身に付けば、我々の仕事にも役立つと思うのですが…。

「チャンスを得た」は、大きな勘違い

ハルプリン次長が署内でコロンボから前科者のリストを見せてもらうシーン。思いがけず決定的に有利な情報を得て、濡れ衣工作を思いつくのですが、それもコロンボ警部の仕組んだ罠だという展開は素晴らしいですね。あくまでも次長の命令に従っているだけの行動に見せています。まかれた餌にまんまと食いつかせたわけです。

シリーズ中、最も爽快なラストシーンの一つ

前科者アーティに殺人の罪をなすりつけ、その仕上げ工作の最中に自分が真犯人だということを「自らの行動で証明」してしまう場面。罪を被せられそうになるアーティの自宅(実はコロンボの部屋)で、「あなたが奥さんを殺したんです」とコロンボ警部に告げられるまで、一所懸命に証拠品を探しているハルプリン次長の必死の形相は傑作です。警察権力に対して、一石を投じたと言わんばかりの爽快なラストシーンでした。

リチャード・カイリーのハルプリン次長

リチャード・カイリー(リチャード・キーリー)はハルプリン次長役を名演したと思います。コロンボの「突っ込み」に、たじたじの様子が可愛く描かれています。

おそらくキャリア・エリートの設定で、現場バリバリのコロンボ警部の評判を良く知らなかったのでしょう。経験不足から、指紋の指摘に始まる失言を連発し、墓穴を掘ってしまいます。報告書を提出しろ!と、何度も催促するのも役人根性の表れで、笑えました。

日本語版は北村和夫さん

北村さんは俳優としてのお仕事がメインで、吹き替えは多くないようです。その中でも刑事コロンボではこの「権力の墓穴:リチャード・カイリー:ハルプリン次長」と「迷子の兵隊:ステファン・エリオット:パジェット将軍」を担当されました。

ヴァル・アヴェリー

前科者アーティ・ジェサップ(アーチー)役の俳優「ヴァル・アヴェリー」は12話「アリバイのダイヤル」で盗聴器をしかけた探偵:ダブス役や、34話「仮面の男」のバー:シンドバッドのオーナー役としても登場します。目立たない役では5話「ホリスター将軍のコレクション」の貸しヨット屋でも出演。

ダフィ警部

ダフィ警部はお馴染みの、ジョン・フィネガン。警察官役で数回登場しますが「ダフィ警部」と特定できるのはこの一回のみ。(Wikiでは毒のある花もダフィ警部と記載)

高級住宅地「ベル・エア」地区

ハルプリン次長と友人ヒュー・コールドウェルらの家がある地区。「二枚のドガの絵」デイル・キングストンもご近所さんではないかと思われます(笑)
→刑事コロンボマップ:ベル・エア地区

野望の果てとの共通点

この「権力の墓穴」は20話の「野望の果て」と何か共通するテイストを感じます。その最大の理由は「音楽」でしょう。エピソードのテーマ曲とも呼べる「不気味な雰囲気のホルンのメロディー」とても印象的な音楽です。その他にもう1曲、隠し味の曲があります。ハルプリンとコードウェルが会うクラブのバーで流れるピアノ曲。これは「野望の果て」で夫人の誕生パーティで女性がピアノの生演奏をしている曲と同じ曲なんです。

クラブのバーテンダー

このクラブのバーでバーテンダーをつとめるなんとも印象的な太っちょの俳優さんはベン・フロマー。この人は34話「仮面の男」にも登場します。コロンボがCIAに後をつけられている遊園地のシーンです。

ウェクスラー宝石店の女性

ウェクスラー宝石店の女性は女優:アーリーン・マーテルです。この人は11話「悪の温室」で「グロリア・ウエスト」嬢を演じていました。ウェクスラー宝石店ではブルネット、グロリア・ウエストはブロンドですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。

監督:ベン・ギャザラ
脚本:ピーター・S・フィッシャー
マーク・ハルプリン:リチャード・カイリー
アーティ・ジェサップ:ヴァル・アヴェリー
コードウェル:マイケル・マクガイア
ハルプリン夫人:ローズマリー・マーフィー
ダフィ警部ジョン・フィネガン
クラブの客:ダイアン・ ターレイ・トラヴィス

加筆:2020年8月16日

“25話「権力の墓穴」” への96件の返信

  1. ハルプリン次長がコロンボにアーティの資料を見せられるシーン。
    あれはダフィ警部の部屋ですよね。
    濡れ衣工作をするためにアーティの住所を確認しようと訪れたら、
    コロンボが先回りしていて、ニセの資料を見せられたというストーリーと見ました。
    その借りた部屋で、衣服や親族の写真まで見せるコロンボ・・・
    しつこくてイジワルだなと感じましたが、それだけ権力者の犯罪を憎んでいるんですね。

  2. コードウェルさんの気弱っぷりが、堪らんです。
    奥さんの浮気を責められず、殺しちゃったら、マーク次長の言いなり。
    アーティのユスリにも、途端にビビッちゃって。
    多分、胃潰瘍やってますね。顔色、すげえ悪そうだし。
    こんな人が何でベルエア地区に豪邸建てられたんでしょうか?

    1. 代々の金持ちなんでしょうかね。次長も奥さんが資産家みたいですし、本人の財力とは思えませんね。

  3. ぼろんこさん
    初めまして!いつも再放送のたびに、復習がてら楽しく読ませてもらっています。
    あの、下町のバーの雰囲気が好きで、どの作品に出ていたか探していたのですが、
    この作品でした。
    ステンレスの無機質な大きなカウンターと気取らない(やさぐれた)感じが良いですよね!
    あんな居酒屋でビールが飲みたいです!

    1. 都内で言うと、立石辺りでしょうか?(笑)
      でも一応、ビリヤードがあるプールバー(死語)ですね

    2. お返事が遅くなりました。下町のバーと次長が通うギャンブルクラブの高級バーが、対照的ですね。

  4. しかし、コロンボシリーズの犯人は、やたらと奥さん殺しますね。
    (逆もまたしかり、ですが)
    今回は何と2組も。
    当時のアメリカの世相が、そうだったのでしょうか?
    これじゃ「推理ドラマ」じゃなくて「愛憎ドラマ」(笑)

    1.  キリスト教、特にカトリックにおいて離婚は罪悪で許されないもののはずです。
      そこらへんのこともあり、解決手段として殺人となることがあるのかも。
       この話においては莫大な財産は夫人のものであり、次長がそれを手に入れるには相続しかないからだと思います。

  5. 最後のクライマックスの私の予想は単純で「次長が隠した宝石が回収されていた」それ以降は何も考えてませんでしたが、まさか部屋を借りてコロンボ自身を証人に仕立て上げるとは〜完全に上を行っていました。
    このドラマのポイントを考えると当然ながら犯罪を犯したのがコロンボの上司だったこと。
    上下関係に翻弄されながらもいつどうやって次長の犯罪に気付くかスリリングさがあり、次長の犯罪を確信すると、その上司に責められつつ気を遣いながら苦心惨憺知恵を凝らしたコロンボが逮捕に導く。最後はほんとうに溜飲が下がりました。最高に面白かったです!

      1. 「だって俺の部屋じゃないぜ!」このラストは本当に意表をついていました。リアルタイムで昔見たときには(子供だったせいもあり)とっさに理解できませんでした。アーティの部屋だとばかり信じていたらコロンボが自分で借りていたなんてね。

    1. JJさん、いいのですよ。
      JJさんのコメントを読んで「黒人青年」のとっかかりになる人もいるでしょうし。
      恥ずかしがらず、これからも書いてくださいね〜

    2. 同じところに気づかれた方がいらして嬉しいです。 と言っても私は子供の頃を含め3度目の視聴で今回初めて気付いたのですが…(汗

  6. 昨夜、見ていたら、次長夫人がチャリティ会場に来ないので様子見に来た黒人青年。
    この人、ダーティハリーシリーズで強盗だったり、女衒の親分だったり、後に同僚刑事にまで出世?する人だったように見えましたが・・・・。

  7. 次長夫人の、”殺害”現場に現れる黒人は、ダーティーハリー1でイースウッドの名ゼリフの後に「どうせハッタリだろう?」と呻くアルバート・ポップウェルでは? ちなみに字幕再生すると、面白い事にカッコ書きの役名が俳優名に因んだかのように「アル」となっていました。

    1. おお、本当ですね。IMDbで調べたら、ズバリでした。
      役名は「Al Como」のようです。

      1. IMDbって、こんなすごいデータベースがあったんですね。ああ、ちゃんと英語勉強しておけばよかった…

  8. 再放送のコロンボをみたあと、こちらを拝見するのが最近の楽しみです。宝石店の女性、第11話にも出ていましたね。

    1. 実は第21話のタニヤ・ベイカー嬢も演ってたりします。
      コロンボだから何も言いませんが、城西署の徳吉刑事だったら「あなた、以前どこかでお会いしてません?」とか言い出しそう。

  9. アメリカの自治体警察の制度って、日本とは違いすぎてなかなか理解できませんね。
    法的にはアメリカ合衆国に常設の軍隊というものは存在しないというのも驚きです。建国の理念に由来するのだそうですが。
    アーティ行きつけのバー、いいですね。広いピカピカのカウンターに巨大換気扇。いかにもアメリカっぽくて、あの場面映画みたいです。
    ローラーゲームがわかるのは50代以上じゃないでしょうか。東京ボンバーズ・・・いやなんでもないですw

  10. 設定の衝撃度はシリーズ隋一かも。第3シーズンの掉尾を飾るにふさわしい大作(笑)。
    NHK初期の放映時はアーティさん個人のエピソードはコロンボとの絡みを除いてほぼ丸ごとカットしてたんですよねえ。
    小心な小者っぷりを発散させる第一の犯人に対して、堂々と偽装工作をするまだ犯人じゃない人(笑)、というキャラクターの対照と設定の大胆さ。
    警察上層部の不正、「コロンボ」のロマンを愛するものとしては(笑)リアルな話はしたくないのですが、今回は第二次安倍晋三政権下で「検察」上層部の不審人事、不起訴を散々見せつけられた後ですからねえ。嫌なリアリティを感じました。
    でも、それだけにクライマックスのインパクト抜群、リアリティなんかどうでもよくなる(←おいまたか)ダイナミックさが良かった。

    1. リアルタイム放送時、再放送の時にほとんどカットされていた部分でアーティの人柄がよく描かれていると思いますね。悪人だけど中身は善人で「次長」と比べて本当の悪党はどちらか?というのが隠れたテーマのような気がしています。

  11. 今宵はリアルタイム。
     このエピソードの見どころの1つは”おフロ”!
     シリーズNo.1のバスルームだと思います。

    1. お風呂の壁に、ルノワールかシスレーの様な絵画が掛かってますね。
      高温多湿の風呂場に、印象派の名画が!?
      シルクスクリーンである事を願うばかりです(笑)

      1. ほんまや!今まで気付かなかった。モネの「ひなげし」に似せた絵のようです。浴室に絵画飾るなんて一体…

          1. 同感!
            それにしてもこのピラミッド風呂はキケンすぎ。まさに墓です。年とったら自力で入浴するの相当大変。

  12. アーティーさんが、何ともいいなぁ
    (コロンボのイミテーションリングを見て)
    「アンタ、詐欺でもやろうってのかい?」
    (警察手帳を見せられて)
    「オレの鼻も効かなくなったもんだ...」
    そして
    「オレはシャム猫が大嫌いだ」

      1. アーティーさんいいですね❗️刑事と話してると健康に悪い、とか、最後のセリフ、あほか、俺の部屋じゃないぜ、も良かったです。

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