11話「悪の温室」

The Greenhouse Jungle / 1972

ランの栽培家ジャービス・グッドウィンは、莫大な遺産を受け継いだ甥トニーの狂言誘拐を計画。成功の後、甥を射殺し身代金を横取りしたというお話。事件の背景にはおそらく「ランの栽培で儲かっていない」「甥の嫁の素行に腹を立てていた」ということもあるのでしょう。

レイ・ミランドがピカイチ!

この「悪の温室」は見どころが満載の作品でした。まず犯人のレイ・ミランドが素晴らしかったです。4話の「指輪の爪あと」で夫人を殺害されたケニカット氏とヘアースタイルに変化(笑)はあったものの、流石の演技でした。

グッドウィン伯父さんは毒舌を連射

犯人のジャービス・グッドウィン伯父さん(レイ・ミランド:野本礼三)は、数在るコロンボシリーズの犯人中、もっとも「ひねくれた性格」だったとも言えます。口を開く度に「憎まれ口」を連射。とにかく口が悪い人でした。それがミランドの表情・台詞と相まって、独特な悪人像を作り出していましたね。日本語版の臼井正明さんも良かったのでしょうね、音声言語を切り替えてみても違和感が全くなかったです。車の襲撃を偽装するために銃を構えたグッドウィン伯父さんがトニーに向かって「どいてくださらんか、坊や」と吐き付ける台詞は見事。

ウイルソン刑事

次に相棒役のフレデリック・ウイルソン刑事(ボブ・ディシー)。登場の場面から事件解決までコロンボ警部を補佐、あるいは捜査の指揮をとっていました。コロンボシリーズでは事件解決の流れに影響する刑事役の起用は珍しいのですが、このウイルソン刑事は特に印象に残る人でした。

事件現場での転落シーンは早回し?

テレビ番組で三谷幸喜氏が語っていた「転落シーン」は、何度見ても笑えますね。自分には少し早回しで再生しているのではないか?と思えました。転落後にそのまま撮影が続いていることから、アクシデントではなく「狙って作ったシーン」だと考えましたが、それにしても凄い!刑事コロンボはアクションシーンに頼らず、ストイックな程「犯人と刑事の会話」にこだわったドラマですが、こうした「ユニークで笑えるシーン」を盛り込むことにも情熱を注いでいますね。

グローバー刑事は万年ヒラか?

年齢の割には平刑事の「グローバー刑事(Robert Karnes)」は、20話「野望の果て」バーノン刑事として再登場します。両者とも寡黙ですが存在感がありますね、出来れば同じ名前にして欲しかったです。参照:「ロス警察の気になる同僚たち」

被害者の夫人キャシー(サンドラ・スミス:阪口美奈子)の家宅捜査で年下のウイルソン刑事から手足のように使われて、少し気分を害していたのでしょう。その後コロンボ警部の言いつけで弾道検査の報告を持ち込みむ際に、少し自慢げな顔を見せていました。

被害者のトニー・グッドウィン

伯父さんの罠にはまって殺害される甥のトニー(アンソニー)の日本語吹き替え版の声優は、山田康雄さんでアニメ「ルパン三世」で有名ですね。

妻のキャッシーも強者(つわもの)

殺害されたトニー(アンソニー・グッドウィン)の妻、キャッシーもなかなかの強者。おじのジャービスの毒舌に負けじとばかり、チクチクと皮肉めいた言葉を吐いています。

ストーリー後半で夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」と突っ込んだのは、鋭い切れ味でした。

邦題は「悪の温床(おんしょう)」のパロディ

悪の温床とは、悪人・悪事や悪い思想を助長する場所のような意味で使われます。それを「温室」とかえて邦題化したのでしょうが、ジャービス・グッドウィンの悪人ぶりとイメージが合致して、こっけいで可愛い印象すら与えています(笑)

「不気味とユーモア」両極端な印象の不思議な作風

お気づきとは思いますが、この作品の特長として「不気味な音楽」を挙げたいと思います。しかしその反面、セリフは皮肉やユーモアに溢れています。この両極端な2つの要素が独特な雰囲気を醸しています。

可愛らしい「グロリア・ウエスト」

トニーの受付嬢「グロリア・ウエスト」を演じるのは女優:アーリーン・マーテルです。この人は25話「権力の墓穴」でウェクスラー宝石店の女性として再登場します。グロリア・ウエストはブロンド、ウェクスラー宝石店の女性はブルネットですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。

ロケ地

キャッシーのマリーナ:マリナ・デル・レイ
ガソリンスタンド:8610 S Sepulveda Blvd., Westchester
 
監督:ボリス・セイガル
脚本:ジョナサン・ラティマー
ジャービス・グッドウィン:レイ・ミランド
フレデリック・ウイルソン刑事:ボブ・ディシー
トニー(アンソニー)・グッドウィン:ブラッドフォード・ディルマン
キャシー・グッドウィン:サンドラ・スミス
グロリア・ウエスト:アーリーン・マーテル
ケン・ニコルズ:ウイリアム・スミス
グローバー刑事:ロバート・カーンズ
加筆:2015年11月28日

“11話「悪の温室」” への56件の返信

  1. お早うございます。
    度々皆さんの指摘がありますが、コロンボの坂落とし(10秒足らずのシーン)は印象的で、彼の愛すべき人柄を感じてしまうシーンですね、何故かほのぼのします。
    ●『悪の温室』は暗転スタートからピーター・フォークのタイトルが入るまで、5分かかってる。
    いつもドラマが始まってすぐタイトルが出るのがだいたいだと思うんですが、5分は長い(悪い意味でなく)意図的で面白いですね。
    ●殺人が行われる前にコロンボが登場した初の作品だそうです。
    →コロンボ登場は9分前後
    →犯人ジャービスが第3段階だと言って甥のトニーを殺害するのが36分半前後
    ストッキング被ったトニーがジャービス運転の車のトランクに隠れてるところを、コロンボ&ウィルソン刑事が車停めさせてるんですよね………トランク開けさせてたら殺されずに済んだのに。トニーじゃなくてジャービスがヒヤヒヤしたんだろうなぁ。

    1. 本当に坂転げは、よくぞスタッフ方々も許可を出してくれましたよね~
      ビックリです。NGで何度もチャレンジしちゃったら笑えますね・・

      何故トランクの見なかったのか・・・・

  2. ジャービスさん、イマイチ、蘭に対する愛情が無いみたいですね。
    蘭の美しさや、栽培の難しさ等のウンチクは云わず、価格の事しか言わないし、商売に徹している感じです。
    「別れのワイン」のエイドリアンさんとは大違いで、面白いです。
    コロンボが持ち込んだ「アフリカン・バイオレット」も、ジャービスさんが手を入れた、というより、温室設備の良さで勝手に?蘇生した感じです(笑)

    1. 私もそんな感じがしました。
      蘭のお世話は庭師がやってたのでは?盛んにコロンボさんが庭師に聞いて温室に入って来ましたよ。
      ジャービスさんは買ったり売ったりだけではないかなあ。

    2. そうそう・・・勝手に成長(笑)
      でも。。蘭を愛する人は私の知ってる限り
      愛情深い人が多いんですが・・・

  3. 本作品、崖を転がり落ちるコロンボが印象的ですが、崖から落とされる黄色いジャガーも印象に残ります。昔のヨーロッパ車のデザインは美しいですね。フェラーリやシトロエンなど、今では見られない曲線美の欧州車が出てくるのもコロンボを観る楽しみの一つです。逆に当時のアメリカ車はとにかく幅広く直線的でマッシブでお国柄が出ています。 別の作品では信号待ちの古いサニークーペが写っていて、日本車のコンパクトさが際立っていました。 ところで、犯人が乗る車に欧州車が多いのは、アメリカの自動車メーカーに気遣ってのことだったのでしょうかね。

    1. 崖から落ちた黄色いジャガー、なんだか、ボディとシャシだけの「大道具さん作成」の様に観えるんですが...

      1. 賛成です。ヘッドライトなんか跡形もなくなっていましたよね。あそこまで壊れるかっていう。

        1. 明らかに別物ですが、制作予算の都合でしょう。ジャガーは確かヘップバーンのおしゃれ泥棒にも使われてましたね。 品があって美しい車です。

  4. はじめまして。
    途中クルーザーのシーンで5万ドルで別れる云々の話をコロンボがしたと思いますが、それはあの一緒にいた男が本当は貴方を愛してなんかいないんだよって事を女性に伝えるためだったのでしょうか?どうも、しっくり来ないのですが。

    1. そうですね。コロンボは自由奔放な振る舞いを見せるキャシーに対し「あなたの夫トニーは手切れ金として5万ドルを何とか工面してケンと別れさせてあなたに戻ってきて欲しかったんですよ」と伝えて諭したかったのと、ケンに対し「おまえさんにとってキャシーは5万ドル程度の女だったんだな」と皮肉を言いたかったのと両方だと思います。

      1. メル・ファラーはヘップバーンの元ご主人でしたよね
        本当に今でも着れそうな素敵なファッションでした

    2. 二人から道徳がなんだとか結構言われていますんで、
      応酬的に、グロリアの言葉「5万ドルで別れる」話を出したように映りますが、
      どうでも良い会話というわけでもなく、
      トニーが偽装誘拐の話に乗った理由がここにあるわけですね。

  5. 被害者妻はおばさんくさいが、ファッションはかなりセクシーでごちそうさまでした。浮気症だが旦那も大切?

  6. 妻さんのアフリカバイオレットを忘れかけた時のコロンボの最後のセリフ 「かみさん、おっかないから〜」でしたが、 原語は「If I forgot. my wife kill me!」と聞こえました。 間違っていたらごめんなさい。 はにかみながらのこのセリフ、いいですね。

    1. アメリカ人は深い意味もなくI’ll kill youってよく言いますね。日本人が聞くとびくっとしますが。

  7. レイ・ミランドの若い頃の代表作「ダイヤルMを廻せ!」を数年前に観ましたが
    浮気した妻に殺人の罪をなすりつけようとして破滅する主人公。
    「指輪の爪あと」と本作のキャスティングはここに由来?

    ちなみに彼の頭髪云々のご指摘がありますが
    本作初登場のウィルソン刑事も「魔術師の幻想」で再登場した時には…(涙。

    1. 「ダイヤルMを廻せ!」 (論創海外ミステリ211)は戯曲版の翻訳です。コロンボ、古畑の文学的祖先のひとつがこの作品らしく、コロンボ研究家の町田さんの詳しい解説が付いているので、書いてあったような記憶があります。

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