愛憎のもつれで殺害されてしまうケース…。
ジェニファー・ウェルズさん
10話「黒のエチュード」オーケストラ指揮者アレックス・ベネディクトの愛人でピアニストのジェニファー・ウェルズさん。アレックスに結婚を迫るが、その結果殺害されてしまいます。この愛憎劇がそのまま転落劇となっている典型的なケースです。
ロザンナ・ウェルズさん
29話「歌声の消えた海」中古車販売会社社長ヘイドン・ダンジガーの不倫相手で歌手のロザンナ・ウェルズさん。こちらは最初から恐喝目的で交際していて、逆に殺されてしまうケース。悪人がゆえに、同情の余地はありません。
ナディア・ドナーさん
31話「5時30分の目撃者」精神科医マーク・コリアーの愛人ナディア・ドナーさん。不倫を暴かれたコリアーは衝動的に夫を殺害。その後、口止め目的に愛人のナディアまでも殺されます。このエピソードは、犯人が何のために殺人を犯したか?がよく分かんなくなっちゃうケース。
ボーデン博士
一方のボーデン博士は、以前「色男」マーク・コリアーと付き合っていたのか?継続中なのかわかりませんが、事件の核心に触れなかったので、命の危険はありませんでした。
愛人と別れたくなくて、殺害計画に至るケース。
リンダ・ジョンソンさん
20話「野望の果て」上院議員候補ネルソン・ヘイワードの妻の秘書リンダ・ジョンソンさん。これは分かり易いケース。選挙参謀ストーンから、別れることを求められたヘイワードは、彼を殺害。政治家生命よりも愛人を選んだという、まさに典型的な転落劇。
ローナ・マグラスさん
27話「逆転の構図」著名な写真家ポール・ガレスコの助手ローナ・マグラスさん。ガレスコは口うるさい妻フランシスを殺害し、余生を美人助手のローナと一緒に過ごそうと企て、見事に失敗。愛人のための殺害計画とまでは断言できない。
共犯者で事件に巻き込まれたケース。
ジョアン・ハドソンさん
1話「殺人処方箋」精神科医レイ・フレミングの愛人で共犯者のジョアン・ハドソン。妻を殺して財産を独り占めにしたいフレミングに利用されて、共犯者となりますが、そこをコロンボ警部につけ込まれて、計画は破綻しました。
トレーシー・オコーナーさん
6話「二枚のドガの絵」美術評論家デイル・キングストンの恋人で共犯者のトレーシー・オコーナー。殺害計画の中に「自分の殺害」も含まれているとも知らず、見事に殺されちゃいました。
新・刑事コロンボシリーズでは…
48話「幻の娼婦」女性心理学者ジョーン・アレンビーが恋人デービッドを殺害。
58話「影なき殺人者」敏腕弁護士ヒュー・クライトンが内縁の妻を殺害。
62話「恋におちたコロンボ」大金持ちの美女ローレン・ステイトンが婚約者ニックを殺害。
などがあります。これら以外にも、愛人もしくは恋人が殺人事件に関わるケースがありますが、お金目当てだったりするので除外しました。
加筆:2020年8月19日
こうしてみると、『刑事コロンボ』では、様々な角度から、数多くの女性の光と影を描いていますね。
数多くの女性の光と影を描くといったら、何といっても千年前の『源氏物語』。今年は、大河ドラマ『光る君へ』に影響され、昔は好きではなかった『源氏物語』が、すっかりマイブームになってしまいました。
『源氏物語』と『刑事コロンボ』は、ファン層もほとんど重ならず、一見全く異なる作品ですが、両者にはいくつかの類似点が見られのではないでしょうか。
1. 人間心理の深い描写
・源氏物語は、人間関係や愛憎、嫉妬といった感情の奥深い部分を描き出し、平安時代の社会背景を反映しながら複雑な人間ドラマを展開します。
・刑事コロンボもまた、犯人の心理や動機に焦点を当てた作品で、単なる犯行の解決ではなく、犯人が追い詰められていく様子や精神状態の変化に重点を置いています。コロンボが犯人の内面に迫る様子が、源氏が多くの女性たちの内面に寄り添いながらも時には葛藤する姿と重なります。
2. ストーリーテリングの独特な構造
・『源氏物語』は章ごとに異なるエピソードが連なり、物語全体の中で一貫性を持ちながらも、登場人物の変遷を長い期間にわたって描きます。連続した短編的な構成が、一つ一つのエピソードを際立たせています。
・『刑事コロンボ』も各エピソードが独立した事件を描きながら、一貫してコロンボ刑事が主人公として登場し、異なる犯人との「対決」がそれぞれの物語を作り上げています。この連続短編的な構成が、視聴者に新鮮さを与えつつ、シリーズ全体に統一感を持たせている点は源氏物語の巻ごとの独立性と共通します。
3. 社会的・文化的背景の描写
・源氏物語は、平安貴族社会における美意識、階級、そして恋愛に対する価値観などが丁寧に描かれ、当時の日本の文化や生活様式を理解する上で貴重な資料となっています。
・刑事コロンボも、アメリカの60年代〜70年代の社会情勢や文化、上流階級と庶民の対比が巧みに描かれています。特に、富裕層の犯人と庶民的な刑事コロンボの対比は、社会的な価値観や文化的背景を示唆しており、当時のアメリカ社会を反映しています。
4. アイコン的なキャラクター
・『源氏物語』において、光源氏は理想的な男性像であり、複雑な恋愛遍歴を通じて数々の女性たちとの人間模様を織り成す中心的存在です。その魅力と弱点の両方が描かれることで、時代を超えて愛されるキャラクターとなっています。
・『刑事コロンボ』の主人公コロンボも、愛されるキャラクターであり、彼の特徴的な風貌や言動、対話の仕方がシリーズを通して際立ち、視聴者の記憶に残ります。どちらも独特な魅力を持ち、物語に欠かせない「象徴」として君臨しています。
5. 時間を超えた人気
・『源氏物語』は、平安時代から千年以上が経過してもなお、日本文学の古典として愛読され続け、現代でも多くの翻訳や研究が行われています。
・『刑事コロンボ』も、放送から半世紀以上経った現在も根強い人気があり、リバイバル放送や新規ファンの増加が続いています。それぞれの作品が、時代を超えて人々に支持され続けるという点で共通しています。
このように、『源氏物語』と『刑事コロンボ』は、異なる時代・文化を背景にしていながらも、人間心理の観察、社会背景の描写、アイコン的なキャラクターなどの面で、多くの類似点があると思いました。