31話「5時30分の目撃者」

A Deadly State of Mind / 1975

精神科医のマーク・コリアーが愛人ナディアの夫カール・ドナーを殺害。計画殺人ではなく、妻との愛人関係に気付いたカールが二人の密会現場に居合わせてしまったためです。このような展開上、私の好きな刑事コロンボのストーリー(計画殺人)は望めませんでした。

ジョージ・ハミルトン

ジョージ・ハミルトン犯人役のゲストスター「ジョージ・ハミルトン」は日本でも有名な俳優さんですね。後の57話「犯罪警報」にも犯人役として出演しています。独特な色気を持った俳優さんです。「女たらし」がごく自然に見えますね(笑)

愛人のナディアは決壊寸前

犯行を愛人のナディア(レスリー・アン・ウォーレン)に目撃されているので、コリアーにとってはかなり不利な状況でした。強盗による犯行に見せようと努力しますが、状況証拠やナディアの曖昧な供述による矛盾をコロンボ警部に見抜かれて、どんどん追いつめられてゆきます。女優レスリー・アン・ウォーレンは「スパイ大作戦」にも出演しています。

また出た、コロンボ警部の大芝居

状況証拠は十分でも、決め手が無い。コロンボ警部は「偽の目撃者」を仕立てます。コリアーは「自分は5時30分にドナー邸に居なかった」と跳ね返せば、良かったのでしょうが、人の心理を読むコロンボ作戦はまんまと成功します。不利な状況にある人間は「正当な部分は主張したがる」ということです。これは27話「逆転の構図」でポール・ガレスコが犯したミスと似ていますね。

おぉ、マーチソン博士!

フレッド・ドレイパー「偽の目撃者」であるデビッド・モリス(兄)は、18話「毒のある花」でマーチソン博士を演じたフレッド・ドレイパー。兄弟が並んだ場面で、眼鏡を外した瞬間に「おぉ、マーチソン博士」と叫んでしまいました。日本語版は「永井一郎さん(サザエさんの磯野波平役で有名)」

おぉ、パジェット将軍!

スティーブン・エリオットまた被害者のカール・ドナーはスティーブン・エリオットで、この作品より14年後、49話「迷子の兵隊」でパジェット将軍(ほぼ別人!)を演じています。カール・ドナーの日本語版は「大平透さん(ハクション大魔王)」

犯罪警報のウェイド・アンダースで復帰

ゲストスターのジョージ・ハミルトンはこの16年後(1991年)の57話「犯罪警報」に再登場します。エリオット(パジェット将軍)の変貌ぶりを考えると、「犯罪警報」のハミルトンは「流石、若作り!」と拍手を贈りたくなります。

ボーデン博士のカレン・マッコーン

カレン・マッコーン脇役としてはアニタ・ボーデン博士のカレン・マッコーンも素敵でした。コリアーから「勤勉に働け」と叱咤された場面では不機嫌そうでした。コロンボ警部から「殺人事件について質問しているんですよ!」と叱られた場面など印象的です。

コロンボ警部、またまた大ショック

クレーマー刑事クレーマー刑事「ブルース・カービー」も光っていました。愛人ナディアの飛び降り自殺(実際には殺害された)の現場でカール・ドナーの所持品を発見した際の「コロンボ警部、またまた大ショック」は最高です。しかも、別の着眼点に夢中のコロンボ警部に無視されていました。

コリアーの友人アーノルド

マーク・コリアーの友人アーノルド(ホームパーティの一人)はレドモンド・グリーソン。彼は36話「魔術師の幻想」のジェロームの店でアナウンスなど裏方で活躍するジョージ。サンティーニに「ジェロームさんを消しちゃってください」とジョークを言う男性です。

ランズバーグ先生とコリアー先生は同僚だ!

キャシー・スピアーズ31話「5時30分の目撃者」の精神科医コリアー先生と、32話「忘れられたスター」の外科医ランズバーグ先生の病院は同じでした!詳しくは「廊下に色ラインが描いてある病院」をご覧ください。それとは関係ないですが、病院の受付の女性(キャシー・スピアーズ)が必要以上に色気ムンムンでした。そしてここは、殺人講義の大学のロケ地でもあります。
刑事コロンボマップ
刑事コロンボマップマーク・コリアーのヨットハーバーは、悪の温室のキャッシーのそれと同じ場所「 マリーナ・デル・レイ
」です。海岸沿いに南下しますと、ナディア・ドナーのマンションがあります。かなり眺望が良いと思われます。

犯行直後に車を門にぶつけた件

ブログゲストさんからのご指摘があり、加筆します。コリアーは犯行現場にブルーのベンツのクーペで来ていました。そして犯行後に逃げる際、目が不自由なダニエル・モリスさんが飛び出したため、避けるために白い門に激しく車をぶつけています。その衝撃で門の角度が変わったほどです。

そしてその夜、コリアーが呼び出されて現場に駆けつける時は、ボーデン先生のシルバーの大きな車で来ていました。ブルーのベンツはバンパーに傷がついたはずなので、自分の車で来れなかったのか?日が変わり、コロンボがコリアーの病院を訪れた時、駐車場のコリアーの車を調べています。この時には、コリアーはすでにベンツを修理に出した後なのでしょう。コロンボはタイヤのトレッド(模様)に着目していますが、バンパーの傷は無さそうでした。
本編では兄のデビッド・モリスは「急ブレーキを踏んで止まった」と証言していて、衝突したことには触れていません。そうでなく、「5時30分に出て来た車は、自分を避けるために何かに激しく衝突した」と証言し、コリアーが直後にフロントバンパーを修理したことも証拠にすれば良かったが…。

しかしここはやはり目撃者に「ブルーのクーペに乗っていた」と証言させ、「目撃者は目が見えないはずだ」とコリアーに反論させたことで、十分面白いのでしょう。
 
監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ピーター・S・フィッシャー
マーク・コリアー:ジョージ・ハミルトン(声:小林勝彦)
ナディア・ドナー:レスリー・アン・ウォーレン(声:渋沢詩子)
アニタ・ボーデン:カレン・マッコーン(声:村昌子)
カール・ドナー:スティーブン・エリオット(声:大平透)
クレイマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也)
ハント医師:ウイリアム・ウインターソール
チャック・ホイーラン:ライアン・マクドナルド
病院の受付:キャシー・スピアーズ
看護師:プリシラ・バーンズ
アーノルド:レドモンド・グリーソン
デヴィッド・モリス:フレッド・ドレイパー(声:永井一郎)
ダニエル・モリス:ジャック・マニング
ヘンドリックス刑事:バンス・デイビス

加筆:2024年8月29日

49話「迷子の兵隊」

Grand deceptions / 1989

犯人が悪人なだけに、殺害動機は十分!

ロバート・フォックスワースこれは初回放送時に見ています!国防関連財団の幹部ブレイリー大佐(ロバート・フォックスワース)が部下のキーガン曹長を殺害。殺害動機は十分でブレイリー大佐が財団を利用し私腹を肥やしていたり、名誉会長であるパジェット将軍の妻との愛人関係を暴露すると脅迫されたためです。

「祝砲の挽歌」に似ているか?

この作品を最初に見た時は「祝砲の挽歌」とイメージが重りましたが、しかし何回も見てみると、随分違うテイストでした。とにかくブレイリー大佐なる人物がかなりの悪人で、戦争帰りの「タフさ」が悪の方向に向いています。殺されたキーガン曹長は生き様として正当性を感じませんので、ドラマ自体に美しさは全くありません。殺害状況には若干無理を感じますが、全体の流れとして受け止めることはできます。

物語は、結構面白いのです

キーガン曹長が「恐喝」という新たな職を得たこと。愛人関係にあったパジェット将軍の妻ジェニーがコロンボの車を発見し、密会場所に現れなかった場面。笑いを誘う教会のシーン。いろいろ見どころはありましたね。秘密のファイルが「赤と緑」に色分けされている設定も笑えます。パジェット将軍は美しく描かれていると感じました。軍人とはかくあるべき、でしょうね。

ただし、トリックには大疑問です

決め手になる段ボール箱の件は、容認できません。私は何回も引っ越した経験がありますが、宅配業者に問い合わせれば「中身が本であったか否か」は歴然。本が段ボール箱いっぱいに詰まっていれば、重くて容易に持てませんね。パーティ当夜:軍隊ミニチュアと書かれた段ボール箱が届きますが、これをブレイリー大佐ご本人でさえ、持ち抱えられず引きずっています(笑)

その点、中身が人形であれば重量は数分の一です。なので、段ボールの容積を量る以前の問題です。また「人形を並べていた=強力なアリバイがある」というものかなり強引な印象です。共犯者がいた可能性がゼロであれば別ですが。

すでに敗色濃厚だ

日本語版では犯人ブレイリー大佐が「すでに敗色濃厚だ」という台詞で終わります。これは、コロンボ作品らしいエンディングで気持ち良いです。権利の説明とコロンボ人形のアップのシーンは、新シリーズならでは…かな。

邦題「迷子の兵隊」

原題は「Grand deceptions」で直訳「壮大な詐欺」となりました。軍隊と全く無関係のタイトルになってしまいますので、「迷子の兵隊」は大正解でしょうか。この迷子の兵隊とは殺されたキーガン曹長を比喩したものと考えます。刑事コロンボ’90版では「おもちゃの兵隊」というタイトルでしたか、「迷子の兵隊」の方が好きかな~。

スティーブン・エリオット

スティーブン・エリオット出演した俳優陣は好きでした。パジェット将軍のスティーブン・エリオットは声優の北村和夫さんとセットで大満足です。エリオットは初期作品31話「5時30分の目撃者」でジョージ・ハミルトンに殺される被害者「カール・ドナー」として出演。日本語の北村和夫さんは「権力の墓穴」ハルプリン次長も素敵。

ジャネット・エイルバー

ジャネット・エイルバー将軍の若き夫人ジェニーのジャネット・エイルバーも印象に残りました。単にパジェット将軍の地位と名誉に目がくらんだようには描かれていませんでしたね。特に「ダンスタン」のアパートの下で、コロンボの「プジョー403」と出くわすシーン。その後、夫のパジェット将軍にそのことを告白する演技など、良かったです。

アンディ・ロマノ

アンディ・ロマノキーガン特務曹長のアンディ・ロマノも良かったです。軍人アガリのタフさが出ていてリアリティがありました。「ポッポ」「ネンネ」など、下品なスラングを連呼するも、綺麗好きな一面もあり、独特のキャラクターが際立っていました。

マイケル・マクマナス

マイケル・マクマナス教会のシーンで登場するキーガンの戦友「タンザー曹長」を演じたのは、マイケル・マクマナス。表情豊かに演技をしていて、とてもよかったです。たたき上げの軍人っぽさも出ていて印象に残りました。

リン・クラーク

リン・クラーク財団に勤める事務員(秘書)のマーシャは女優リン・クラーク。カラッと陽気で天真爛漫な感じで、すごく可愛かったですね。似た感じの秘書さん、他の作品にも登場します。今度まとめてみます。

日本語版吹き替えは羽佐間道夫さん

ロバート・フォックスワースの吹き替えの羽佐間道夫さんは絶妙です。日本声優界の大御所の一人です。シルヴェスター・スタローンのロッキーなど数々の名作で吹き替えを担当。マイナーな仕事ですが「巨人の星の速水譲次」では、意地悪な声色が強烈で大好きでした。
そして、ロバート・フォックスワースは、日本でも大人気を博したテレビドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ役「エリザベス・モンゴメリー」と結婚していました。

監督:サム・ワナメイカー
脚本:シイ・サルコッツ
音楽:ジョン・カカヴァス

フランク・ブレイリー:ロバート・フォックスワース(声:羽佐間道夫
ジャック・パジェット:スティーブン・エリオット(声:北村和夫
ジェニー・パジェット:ジャネット・エイルバー(声:宗形智子)
レスター・キーガン:アンディ・ロマノ(声:麦人)
タンザー曹長:マイケル・マクマナス
秘書のマーシャ:リン・クラーク
民兵:リー・アレンバーグ
民兵:ジョン・ウイリアム・ギブソン
民兵:ステファン・クァドロス
伍長:バーネット・リス
検視官:ミルト・コーガン
 
加筆:2024年8月29日