Requiem for a Falling Star / 1973
往年の大女優であるノーラ・チャンドラーが長年パートナーとして秘書を務めたジーン・デービスを車ごと爆破して殺害。
シリーズきっての大スター役
原題を私風に直訳すると「落ち目スターの葬送曲」となり、邦題よりもストーリーを素直に言い表す言葉になります。偶像のレクイエムは、今ひとつ…絵が浮かばない邦題かもしれません。子役時代から一世を風靡し、映画界に君臨して来た銀幕の女王で、刑事コロンボのゲストスターが演じる犯人役の中でも、格別のスター度だと認識した方が良いかも知れません。コロンボ警部も劇中で何度か家に電話して「自分が今、どこにいるか?わかるか?ノーラ・チャンドラーのバンガローだよ」と、自慢気でした。
→偶像のレクイエムのロケ現場(PC)
フランク・ロイド・ライトの孫娘
また、調べているうちにわかったのですが、アン・バクスターの祖父(母の父)は、有名な建築家「フランク・ロイド・ライト」だということで、びっくり仰天ですね。
メル・ファーラーは凄いのだ
ゴシップ記事作家のジェリー・パークスを演じた俳優「メル・ファーラー」は、何とあの大女優「オードリー・ヘプバーン」と14年間の結結婚生活を送っているのだ!本作の制作時期にはすでに離婚しています。それを知って、もう一度見てください。
過去の共演者の名前に驚くなかれ
1956年公開の超有名な映画を2本紹介します。1本目は
「十戒」。主演:チャールトン・ヘストン、共演:ユル・ブリンナー。アン・バクスターはラメセス2世(ユル・ブリンナー)の王妃「ネフレテリ」役として出演。やっぱ美しいです。そして、ラメセス2世の叔母「ベシア」は1話
「殺人処方箋」のキャロル役「ニナ・フォック」、総督バッカは18話
「毒のある花」のラング社長「ヴィンセント・プライス」、奴隷の監督デーサンは「エドワード・G・ロビンソン」!(コロンボが大好きだという俳優)
2本目はトルストイの小説を映画化した
「戦争と平和」。主人公ナターシャに「オードリー・ヘプバーン」、ピエールに「ヘンリー・フォンダ」、そしてアンドレイには「メル・ファーラー」という、とてつもないキャスティングですね。筆者はどちらも見ました!
本当は誰を殺したかったのか、分からない…
14話という初期作品なのですが、倒叙法(最初から犯人が分かっている)を原則としながらも「本当は誰を殺したかったのか、分からない…」という興味深いストリー展開となっています。おそらくこの作品を見た人の多くは、ゴシップ記事作家の「ジェリー・パークス」を殺そうとして誤って秘書を殺してしまった…と思ったでしょう。でも、もしそうであれば生き残ったパークスが「ノーラが自分を殺そうとしていた」と告発すれば、一気に容疑が固まるわけです。この二人の「くされ縁的な不利害関係」が前提として、物語は考えられていて、非常に「深い」ものを感じました。
大女優が演じ続けていたもの
その背景には「ノーラが12年前に当時の夫を殺してしまった」ことも隠れているので、話がさらに複雑になり、ちょっとボケちゃってるのかも。ただ単に「往年の大女優が誇りを守るために殺人を犯した」だけでも、充分ストーリー展開できる気がしました。12年前にすでに殺人を犯していて、その後何喰わぬ顔でスターを演じていた…大女優?というオチでしょうか。
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2020年に、久々に再見して‥
ノーラは盗み聞きにより、今夜がパークスの誕生日で、秘書のジーン(ピパ・スコット)と一緒に過ごす約束を知っていた。「ドロシーを誘って音楽会(8時スタート)」は、ジーンの嘘だったのだ。(午後6時:まだ明るい)
今夜パークスは書店でのサイン会があり、その後ふたりは一緒に過ごすつもりだった。ジーンは約束ようにパーティの準備ができないことを、書店のパークスに伝えに行く。その隙にノーラはジーンの車のタイヤをパンクさせる。(午後8時少し前か:もうけっこう暗い!)
パークス邸に着いたパークスの車を爆破(午後9時ちかいはず)事故が起きた後、警察がノーラの居場所をやっと突き止めて、レストランに現れた。エビの注文を変えたいくらいなので、まだ食事は始まって間もない。(午後10時ちかいはず)となると株主(フランク・シモンズ 演:ケビン・マッカーシー)との食事会のスタートが、遅すぎないですか?お店お雰囲気では7時台に感じますよね?
パークスの証言では本屋でジーンに会った点、まだお使いを何も済ませていなかった様子。このシーンがもっと明るかったら、良かったかもね!同じ夜の出来事とは思えない。
考えられるシナリオ‥
パークスとジーンの二人とも死んでもらわないと、リスキーな証人が残ってしまいます。先にジーンを殺す。パークスはずる賢いからノーラを犯人としてしまうより、もっと本格的に恐喝してくると踏んだ。(本当にはジーンを愛していないから)そして時期をずらして、パークスを殺す。
車が全部違う‥
ジーンの殺害に使った車が濃いグリーンメタリック(に見える)、ノーラの車が褐色のメタリック、パークスを跳ねた車がブルーメタリック(に見える)。
結局、考え出したら夜も眠れなくなりそうです(笑)
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愛車プジョーの汚れ方が尋常でない
セレブな犯人たちは、こぞってこの車を「ボロ車」と見下しますが、大女優:ノーラ・チャンドラーがこの「愛車プジョー・403コンバーチブル」に同乗したのは奇跡かもしれません。しかもこの時のボディの汚れ具合は尋常ではありません。どう見ても演出上、わざと汚しています(笑)
ジェフリー刑事
この駐車場で事件当夜や車のことを説明する刑事は、ジェフリー巡査部長(ウイリアム・ブライアント)。この刑事さんは23話
「愛情の計算」でフィールズ刑事とて再登場しています。名前は違うのですが同じようなキャラクターです。
ファロン所長
若くてかカッコ良い撮影所の所長ファロン氏は俳優:フランク・コンバース。この人なんだか、ロバート・カルプに似た雰囲気がありますよね。コロンボ警部と「お互いに似つかわしくない」と言い合う場面は可愛いです。
イーディス・ヘッドさん
イーディス・ヘッドは長年にわたり映画衣裳デザイナーの第一人者だった人。コメンテーターさんもご指摘の通り映画「イヴの総て」の衣装を担当したのがイーディス・ヘッドです。あらすじは往年の名女優マーゴ‥、ひょんなことから彼女に拾われた秘書のイヴがマーゴを踏み台にして女優として名声を得るという物語。なんとなく‥「偶像のレクイエム」にも通じる雰囲気ですね。
映画「イヴの総て」
マーゴ役の女優は「ベティ・デイヴィス」‥22話
「第三の終章」でコロンボ警部が、カミさんと一緒に夜中までテレビ見て寝不足になった人です。そして「イヴ」役にアン・バクスター(写真:当時27歳で美しいですね)。そしてマーゴの友人として、39話
「黄金のバックル」の美人姉「セレステ・ホルム」を見ることができます。コロンボファンにとって、大変興味深い映画だと思います。
Tクラブ会員とは?
Tクラブとはフリーメーソンの外郭団体「シュライン」を意味するそうです。
第2~第3シーズンの不思議なピアノ曲
YouTube「不思議なピアノ曲」刑事コロンボの第2~第3シーズン「黒のエチュード」「偶像のレクイエム」「絶たれた音」「毒のある花」などで多用された「不思議な雰囲気を持ったピアノ曲」を再現しています。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)
監督:リチャード・クワイン
脚本:ジャクソン・ギリス
ノーラ・チャンドラー:アン・バクスター(声:藤波京子)
ジェリー・パークス:メル・ファーラー(声:小山田宗徳)
ジーン・デービス:ピパ・スコット(声:牧野和子)
フランク・シモンズ:ケビン・マッカーシー(声:家弓家正)
ファロン所長:フランク・コンバース(声:西山連)
イーディス・ヘッド:イーディス・ヘッド
ジェフリー刑事:ウイリアム・ブライアント(声:寺島幹夫)
聴取される女性:ダイアン・ ターレイ・トラヴィス
撮影所の警備員:マイク・ラリー
撮影所の門番:ジャック・グリフィン
見物人:レン・フェルバー
見物人:トニー・レーガン
加筆:2020年8月2日