リンカーン

Lincoln Continental

リンカーンは自動車メーカーフォード・モーターの高級ブランドでです。大型ボディのアメ車でコロンボの歴代の犯人たちからも愛されました。

2話「死者の身代金」では夫婦揃ってリンカーン・コンチネンタルで、ここまでは仲が良かったのか?とも思わせます。妻のレスリー・ウィリアムズは1965年式74A(2a)、夫のポール・ウィリアムズは1971年式53A(2b)です。
妻のリンカーン(ホワイト)は観音開きの4ドアでしかもコンバーチブル。ケネディ大統領が暗殺された時のオープンカーによく似たモデルです。夫のリンカーン・コンチネンタルはリトラクタブル式のヘッドライト(2c)に進化したモデルです。

レスリー・ウィリアムズのリンカーン・コンチネンタルポール・ウィリアムズのリンカーン・コンチネンタル2a2b

(2c)は夜間ポール・ウィリアムズのリンカーン・コンチネンタル53A(1971年式)を運転するレスリー、(6)は昼間に同モデルの車を運転する6話「二枚のドガの絵」のエドナ・マシューズで、ヘッドライトが格納された様子が良くわかります。ナンバーこそ違いますが同車かもな〜なんて夢も広がりますね。二人とも小柄なので車が一段と巨大に感じます。

ブライス・チャドウィックのリンカーン・コンチネンタルエドナ・マシューズのリンカーン・コンチネンタル2c6
14話「偶像のレクイエム」のノーラ・チャンドラーが運転するのはレッドのリンカーン・コンチネンタル(14)は1972年式のマークIV(フォー)で、こちらもカッコ良い2ドアクーペです。38話「ルーサン警部の犯罪」のクレア・デイリーのホワイトのリンカーン・コンチネンタルは1976年式の53Bで4ドアサルーンです。
ノーラ・チャンドラーのリンカーン・コンチネンタルクレア・デイリーのリンカーン・コンチネンタル1438

Lincoln Continental Executive Limousine

リムジンとは後部座席の部分を延長した大型の乗用車を指します。お抱えの運転手を用い、広々の後部座席にお金持ちや要人が乗るというスタイルです。8話「死の方程式」のバックナー社長のリンカーン・コンチネンタル・エグゼクティブ・リムジン。この車体は爆破されるハメになります。

バックナー社長のリンカーン・リムジン8

 

12話「アリバイのダイヤル」のポール・ハンロン、21話「意識の下の映像」のバート・ケプル、両者とも演じるのはロバート・カルプ。愛車はいずれも「リンカーン・コンチネンタル・エグゼクティブ・リムジン」です。お抱え運転手がご主人を乗せて走るという目的があるリムジンですが、持ち主自らが運転しています。これはハンロンやケプルが、自分よりさらにお偉い方をエスコートする‥といった目的があったのでしょうか?
ポール・ハンロンのリンカーン・リムジンバート・ケプルのリンカーン・リムジン1221

Lincoln Town Car Stretched Limousine

時は過ぎ刑事コロンボ新シリーズに話題を移しましょう。47話「狂ったシナリオ」でスクリーン業界の大物モロスコや、65話「奇妙な助っ人」のマフィア、ビンチェンンゾ・フォテーリが乗るのはリンカーン・タウン・カー・ストレッチト・リムジン。もともと大型である車両を専門の業者がさらに長く伸ばしたリムジンです。

モロスコのリムジンビンチェンンゾ・フォテーのリンカーン4765

51話「だまされたコロンボ」ではバチェラーズ・ワールドのリムジン・カーそのものがストーリー展開において重要な役割を果たしていました。外観にピラー(窓の柱)を感じさせないすっきりしたデザインになっています。

バチェラーズ・ワールドのリンカーン・リムジン51

*記事は書きかけ・研究中です。誤りや気付き等はコメント欄にお書きください。
投稿:2024年1月13日

キャデラック

Cadillac

キャデラックはリンカーンに次いで刑事コロンボに多く登場するアメ車ブランドのひとつです。

Cadillac Series 355

35話「闘牛士の栄光」のルイス・モントーヤが所有するクラシックカー「キャデラック・シリーズ・355」は1930年代前半に作られました。ですので運転するのも楽ではないようです。セカンドカーとして運転しやすい「フォードLTD」も所有しています。

ルイス・モントーヤのキャデラック・シリーズ・35519

Cadillac Fleetwood Eldorado

4話「指輪の爪あと」のブリマーのキャデラック・フリートウッド・エルドラドは1971年式の2ドアクーペです。リアのフェンダーにカバーはありません。後にこの車の調子が悪くなったことで、ブリマーの犯行が明らかになるわけです。

キャデラック・フリートウッド・エルドラド4

 
9話「パイルD-3の壁」のウィリアムソンも1971年式のキャデラック・フリートウッド・エルドラド。気性の荒いウィリアムソンはタイヤを鳴らしながらロス市内を爆走(9a)していました。何となく顔つき(9b)まで威圧的に見えてきますね。

キャデラック・フリートウッド・エルドラドキャデラック・フリートウッド・エルドラド9a9b
21話「意識の下の映像」のノリス家も1971年式のキャデラック・フリートウッド・エルドラド。家政婦さんが運転されているようです。25話「権力の墓穴」のマーク・ハルプリンは1973年式のキャデラック・フリートウッド・エルドラド。詳細が映るシーンはないのですが、上品なレッド・メタリックのボディです。
キャデラック・フリートウッド・エルドラドキャデラック・フリートウッド・エルドラド2125
24話「白鳥の歌」のラストシーンの車は1972年式のキャデラック・フリートウッド・エルドラド・コンバーチブル(24a高級車)。一方エピソード前半でベーカーズ・フィールドの空港に乗り付けたレンタカーは「シボレー・ノバ」で(24b大衆車)。いずれもレンタカーですが、トミー・ブラウンは奥様の死後は高級車を借りていることがわかります。
キャデラック・フリートウッド・エルドラドシボレー・ノバ24a24b

Cadillac Fleetwood 75

キャデラック・フリートウッド75は当時市販されていた乗用車では最大級のサイズを誇る高級サルーンです。

19話「別れのワイン」でエイドリアンのワイン仲間のステイン氏のキャデラック・フリートウッド75。4ドアの大型サルーンで後部座席がかなりゆったり座れる設計になっている感じです。

ステインのキャデラック19

33話「ハッサン・サラーの反逆」のLA総領事館の公用車。45話「策謀の結末」のオコンネル社長のお車。どちらもキャデラック・フリートウッド75で、後部座席にVIPを乗せ専用の運転士がハンドルを握ります。

キャデラック・フリートウッド・75キャデラック・フリートウッド・753345

Cadillac DeVille

キャデラック・ドゥビル。かつてな「デビル」とも表記されていましたが、悪魔を連想させることから「ドゥビル」が呼称となりました。

18話「毒のある花」のビベカ・スコットは1970式のキャデラック・ドゥビル・コンバーチブル。この車を自分で運転しビューティ・マーク社に出社しているようです。一方22話「第三の終章」のライリー・グリーンリーフは1969式のキャデラック・ドゥビル・コンバーチブル。凶器の保管場所やグリーンリーフのアリバイ工作などに重要な役割を果たします。

キャデラック・ドゥビルキャデラック・ドゥビル1822

Cadillac Sedan DeVille Stretched Limousine

46話「汚れた超能力」のCIAハロー氏を乗せるのはは1984年式のキャデラック・セダン・ストレッチド・リムジンです。

キャデラック・セダン・ストレッチド・リムジン46

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投稿:2024年1月13日

シボレー

Chevrolet

シボレーはアメリカのデトロイトに本拠を構える世界最大の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズの車種ブランドです。刑事コロンボでは裕福な犯人たちがこのシボレーを愛車にすることは少ないようですが、さまざまなシーンで登場するので、記事を書きました。

Chevrolet Impala

20話「野望の果て」のハリー・ストーンは1973年式のシボレー・インパラに乗っていました。しかしこの時運転していたのはのネルソン・ヘイワードです。本当のネルソン・ヘイワードの車は「クライスラー・ニュー・ヨーカー」です。

ハリー・ストーンのシボレー・インパラ20

Chevrolet Monte Carlo

31話「5時30分の目撃者」のアニタ・ボーデン博士はシボレー・モンテカルロ。華奢な女性にしてはゴツいアメ車にお乗りです。コロンボ警部のプジョー(31a奥)や、同僚のコリアー博士のメルセデス・ベンツ(31b手前)と比較すると、その車体サイズがわかります。

シボレー・モンテカルロシボレー・モンテカルロ31a31b

Chevrolet Nova

24話「白鳥の歌」の前半でトミー・ブラウンがベーカーズ・フィールドの空港に乗り付けたレンタカーは「シボレー・ノバ」で(24a大衆車)。一方エピソードのラストシーンの車は1972年式のキャデラック・フリートウッド・エルドラド・コンバーチブル(24b高級車)。いずれもレンタカーですが奥様の死後は高級車を借りていることがわかります。
シボレー・ノバキャデラック・フリートウッド・エルドラド24a24b

Chevrolet Chevelle Malibu

14話「偶像のレクイエム」のノーラ・チャンドラーは、犯行の時に自分のリンカーンは使いませんでした、最初の犯行時は1972年式のシボレー・シビル・マリブ(Chevrolet Chevelle Malibu)。2回目の犯行(殺人未遂)の時は丸目4灯の1972年式ダッジ・コロネット(Dodge Coronet)です。

ノーラ・チャンドラーのシボレーノーラ・チャンドラーのダッジ14a14b

Chevrolet Malibu

56話「殺人講義」のラスク教授が乗っていたのは1979年式のシボレー・マリブ。ラストの再現シーンも同車です。

ラスク教授のシボレー56

Chevrolet Blazer

44話「攻撃命令」のコーコラン調教師は1971年式のSUVシボレー・ブレイザー。車に犬を乗せたいのでこのタイプ(スポーツ用多目的車)になります。

コーコランのシボレー44

Chevrolet Corvette

26話「自縛の紐」のバディ・キャッスルは1974年式のシボレー・コルベット・スティングレー。これ子供の頃にプラモデルを作ったことがあります。カッコいいです。また31話「5時30分の目撃者」のカール・ドナーの別荘には1959年式のシボレー・コルベットC1が停まってました。

バディ・キャッスルのコルベットカール・ドナーのコルベット2631

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投稿:2024年1月13日

フォード

Ford

1話「殺人処方箋」のジョーン・ハドソンは1967年式フォード・フェアレーン500に乗っていました。5話「ホリスター将軍のコレクションのダットン大佐は1971年式のフォード・LTDです。

ジョーン・ハドソンのフォードダットン大佐のフォード15

28話「祝砲の挽歌」のウィリアム・ヘインズが乗っていたのが1974年式のフォード・サンダーバードです。

ウィリアム・ヘインズのフォード・サンダーバード28

35話「闘牛士の栄光」のルイス・モントーヤのセカンドカーは1972年式フォードLTD。劇中でハードトップと呼ばれていた車です。モントーヤはもう一台クラシックカー「キャデラック・シリーズ・355」も所有しています。

ルイス・モントーヤのフォード35

43話「秒読みの殺人」のケイ・フリーストンは1977年式のフォード・マスタングに乗っていました。スポーツカーの分類に入る勇ましい車です。56話「殺人講義」の後半で特別出演(笑)する「カミさんの愛車」は1968年式のフォード・ファルコンでした。この時1990年ですので22年前に生産された車に乗っていることになります、
ケイ・フリーストンのフォードミセス・コロンボのフォード4356

54話「華麗なる罠」のアダム・エヴァンスが乗っていた赤いスポーツカーは1965年式のフォード・マスタング・コンバーチブルです。ケイ・フリーストンの車とは違いビンテージのオープンカーです。

アダム・エヴァンスのフォード・マスタング54

65話「奇妙な助っ人」のグラハム・マクベイは1991年式フォード・エクスプローラー(65a)に乗っています。冒頭で拳銃を購入するシーンでは別の車フォード・エアロ・スター(65b)を使用しています(レンタカーかな?)。
グラハム・マクベイのフォードグラハム・マクベイのフォード65a65b

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投稿:2024年1月13日

2話「死者の身代金」

Ransom for a Dead Man / 1971

まだ本格的なシリーズ化ではない 死者の身代金

死者の身代金 は女性弁護士レスリー・ウィリアムズが、夫(有名弁護士)のポール・ウィリアムズを殺害し、身代金目当ての誘拐に見せかけるお話。3話の「構想の死角」から本格的にシリーズ化する直前の作品と位置づけられます。タイトルクレジットは細く白色で、いわゆるコロンボ書体ではありません。

犯人レスリー・ウィリアムズ像

物語が進むにつれ「殺害動機」が分かってくる展開が面白かったですね。その過程で彼女の「強欲」「強権的」な性格も見えてきます。娘のマーガレットとの会話はもちろん、失神の演技、法廷で強気の発言…など。著名な弁護士の夫に頼らなくても十分活躍できそうな女性なのでは?と感じさせます。

リー・グラントは怖(こわ)美しい

死者の身代金 リー・グラント犯人役のゲストスター、レスリー役:リー・グラントは2作目にして初の女性犯人。当時44歳頃で、小柄な女性ですが強く美しく描かれています。特にウィリアムズの葬式での横顔が印象に残ります。リー・グラントという出来すぎた芸名は、南北戦争の敵同士「リー将軍」「グラント将軍」から命名されたそうで、納得。

娘のマーガレット

パトリシア・マチック娘マーガレットを演じたのは、女優:パトリシア・マチック。なかなかの強者(つわもの)で、良いキャラクターでした。メガネをかけた若い女性ということで、40話「殺しの序曲」の天才少女「キャロライン」に似ているとの声も上がります。パトリシア・マチックは1971年の映画「白い肌の異常な夜(The Beguiled)」でクリント・イーストウッドとも共演しています。
ウィリアムズ邸

ウィリアムズ邸

ウイリアムズ邸は、サネット・ブールバード沿いの高級住宅街にあります。一番近いご近所は、会計士のオリバー・プラントさんです。

ロス警察を「この街の警察」と…

FBIの管轄になったことから、コロンボ警部も最初は遠慮がちに捜査に関わっていて、「矛盾に対する困惑」が延々と描かれます。「殺し」の捜査に移行した後は、水を得た魚のようにはしゃぎます。今回はFBIの登場ということで、ロス警察を「この街の警察」と表現していて面白いですね。

後の作品の元アイデアがちらり

ごく初期の作品なのですが、かなり「スッキリ」な仕上がりになっていてびっくりしました。脅迫電話のトリックをレスリーに実演してみせることも興味深いし、娘に一芝居打たせて、犯人を罠にハメるラストは25話「権力の墓穴」、録音テープを使ったトリックは26話「自縛の紐」の原形にも思われ、とても興味深いものです。

確立してゆく捜査スタイル

1話の「殺人処方箋」とこの2話「死者の身代金」で、コロンボの刑事としての捜査スタイルはすでに確立していて「うだつの上がらなそうな風貌を利用して相手を油断させる」「身内の話で手がかりのきっかけを作る」「実はかなりの腕利き刑事」などが見られます。ただ両話とも、コロンボ刑事が事件から外されそうになり、現実の世界でもありそうな展開。

セスナに乗るシーン

レスリーと一緒にセスナに乗るシーンは、大きな場面ですがそれほど重要ではなく、一見無駄に長く感じられます。これは勇敢な女性と頼りない男性を対比させ、コロンボ警部(高所恐怖症)のキャラクターを際立たせているのかな。この飛行場は「バーバンク・グレンデール・パサデナ空港」と呼ばれていたが、現在は俳優の「ボブ・ホープ」に因んで「バーバンク・ボブ・ホープ空港」となっています。

バーバンク・ボブ・ホープ空港

髪が伸びて、ぼさぼさ風に

1話「殺人処方箋」から約3年が経っての2作目です。ですので一気にお馴染みのコロンボの風貌が出来上がっています。髪は伸びでぼさぼさ、レインコートも少しよれよれ度を増します。さらに…スーツは今回からお馴染みの「明るい茶系」に変化し、温かみを感じます。殺人処方箋ではグレー系(ちょっと冷淡)でした。すでに「チリ好き」も楽しめますし、コロンボのキャラクター設定が出来上がってきました。

ティモシー・ケリー

ティモシー・ケリーコロンボ警部が好物のチリを食べる「Barney’s Beanery」の「バート」役のティモシー・ケリーは、その後の作品、5話「ホリスター将軍のコレクション」にも同じ役で登場します。38話「ルーサン警部の犯罪」はトニーで別人の役。

バーニーズ・ビーナリーが初登場

バーニーの店新シリーズに登場する「バーニーの店」の前身として考えて良いのかどうか疑問ですが店名は「バーニーズ・ビーナリー」です。ティモシー・ケリー出演の5話「ホリスター将軍のコレクション」のお店は違うようですね。今回はビリヤード台の置いてある広いお店でした。コロンボ警部のビリヤードシーンは今後もたびたび見られます。→バーニーの店「バーニーズ・ビーナリー」

カールソン捜査官

ハロルド・グールド誘拐事件の捜査の責任者カールソンは俳優ハロルド・グールド。ヒゲがお似合いのジェントルマンでしたね。ハロルド・グールドは長い俳優キャリアを持っており、映画「スティング」、テレビ出演では「0011ナポレオン・ソロ」「逃亡者」「スパイ大作戦」「鬼警部アイアンサイド」など懐かしいタイトルがずらり。

リチャード捜査官

チャールズ・マコーレイもう一人の年配のリチャード捜査官は俳優チャールズ・マコーレイ。コロンボに計3回出演しています。今回の役は他と外見が異なり、同一人物だと断定するのに数年を要しました。今回が一番若いはずなのですが、そうも見えませんし笑。

ハモンド捜査官

ポール・カーカールソンの部下で自宅での盗聴や、身代金をバッグに詰める役のハモンド捜査官は俳優ポール・カー。この人は「宇宙大作戦」34話「光るめだま」に出演しています。

ジェリー(フィル)捜査官

ジェド・アラン黒い髪の捜査官は俳優ジェド・アラン。劇中では「ジェリー」(和英とも)と呼ばれていますが、データサイト等では「フィル」とクレジットされています。

マイケル・クラーク

ジョン・フィンク弁護士レスリーをサポートする男性社員マイケル・クラークは俳優ジョン・フィンク。キャラクターとしては40話「殺しの序曲」のジョージ・カンパネラに通じる感じです。

女性社員ナンシー

リサ・ムーア女性社員ナンシーはリサ・ムーア。ウィリアムズ事務所で鉛筆をピンピンしながら歩いてくる女性です。何ともオシャレなファッションの女性で、ちょい役ですが印象に残っています。

レスリーのご友人グロリア

セレステ・ヤーノール葬儀の後レスリーの自宅で「私なら叩き出しちゃう」とマーガレットを非難した女性グロリアは女優セレステ・ヤーノール。この女優さん「宇宙大作戦」34話「死のパラダイス」にもヨーマン・マーサ・ランドン隊員として出演しています。

この3人の事務所が同じビルに!

刑事コロンボに登場のビル2話「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズ弁護士事務所、7話「もう一つの鍵」のチャドイック宣伝広告社、19話「別れのワイン」のステインさんの事務所はすべてこのビルの中にあります。

LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE

裁判所また、裁判の開かれる「LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE」も「もう一つの鍵」のベス・チャドイックの裁判所と同じ場所です。(映像アングルは異なります。)

クローウェル原告

ビル・ウォーカーこの裁判でプレス工(こう)として臨時に雇われ、階段を踏み外して怪我をした原告です。レスリー弁護士にこっぴどく追及されてましtね。でも可愛い感じの俳優さんでした。

裁判長

ジャドソン・モーガンさらには裁判長の俳優ジャドソン・モーガン。この俳優さんは、25話「権力の墓穴」のクラブで「ローレンス様がたいへんついていらっしゃいまして」と話すマネージャー風の男性チャールズと同一人物。

傍聴人の一人

バート・グリーンさらにさらに、この裁判を傍聴するこの男性はエキストラ俳優のバート・グリーン。何とコロンボに計回も出演していることがわかりました。2回目は9話「パイルD-3の壁」のサングラスの作業員、3回目は15話「溶ける糸」の病院で掃除機をかける人と、割と美味しい役どころでした!

グレープジュースはルートビア

裁判所
空港のカフェでコロンボ警部が飲む「グレープジュース」は、葡萄色じゃないので変だな~と思って英語で聞き直したら「ルートビア(root beer)」を注文していました。ノンアルコールの炭酸飲料だそうです。(ウエイトレスの女優はロイス・バトル)

お金を持っているのに払えない…

また同シーンで、3ドル50セントの飲み物代を支払うお金を持っておらず、警察手帳を見せながらサインをします。これは大金の札束(身代金)を手にしながら支払えない…という矛盾に加え、筆記用具も持っておらず、ウエイトレスに借りるという始末。こっけいなBGMも加わり、微笑ましい締めくくりです。

音楽担当はビリー・ゴールデンバーグ

タイトルバックのシーン、中盤でセスナに乗るシーン、それと空港でのエンディングには、「死者の身代金のテーマ」とでも名付けたい印象深いメロディが登場します。これは何と、15話「溶ける糸」のメイフィールド邸でのパーティのBGMにも使われています。作曲家は「ビリー・ゴールデンバーグ」。70年代っぽいポップなサウンドなので、聞いてみてください。

監督:リチャード・アーヴィング
脚本:ディーン・ハーグローブ
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

レスリー・ウィリアムズ:リー・グラント(声:山東昭子
マーガレット:パトリシア・マティック(声:上田みゆき)
カールソン捜査官:ハロルド・グールド(声:北村弘一)
リチャード捜査官:チャールズ・マコーレイ
ハモンド捜査官:ポール・カー
ジェリー(フィル)捜査官:ジェド・アラン
パーキンス銀行員:リチャード・ロアト
バート:ティモシー・ケリー(声:鈴木泰明)
男性社員マイケル・クラーク:ジョン・フィンク(声:納谷六朗)
女性社員ナンシー:リサ・ムーア
クローウェル原告:ビル・ウォーカー(声:雨森雅司
裁判長:ジャドソン・モーガン
空港のウエイトレス:ロイス・バトル
セリア(依頼人):ノーマ・コロニー
グロリア(レスリーの友人):セレステ・ヤーノール
パット(電話の女性):ジーン・バイロン
傍聴人:バート・グリーン

加筆:2024年11月21日

刑事コロンボマップ

4話「指輪の爪あと」

Death Lends a Hand / 1971

刑事コロンボらしさが確立した初期の傑作「指輪の爪あと」

作品として素晴らしいです。成功を収めた探偵社の社長ブリマー「ロバート・カルプ」のキャラクターも印象的。成功者が調子に乗りすぎて足を踏み外して一気に転落するというシナリオも、コロンボ作品らしくて好きです。「計画殺人ではない」という点ではイレギュラー的な展開を見せます。

コロンボ警部も負けていませんでした。

同業者(事件捜査)による犯罪のエピソードは他にも例がありますが、今回は成功をおさめた探偵です。一見してコロンボ警部を見下し、小馬鹿にするブリマーに対し「この手相は成功しそうでいて、失敗しそうな性格」と、言い返す場面は見逃せません。

運命論者と手相見。

2021年の再放送でこの「運命論者と手相見」のつながりが腑に落ちました。コロンボ警部は死体発見現場で、ケニカット夫人の頬に傷を発見します。翌日ケニカット邸で初めてブリマーに会った時、彼の大きな指輪を発見し、傷が「指輪の爪あと」の可能性がある‥とピンと来ています。それで少し意味深に、「目の前にぱっと灯りがついた気分」「幸先がいい」「ついている」と言っています。そしてそれを「手相見」につなげ、さりげなくブリマーの指輪を観察しているのです。シーンを見直しますとケニカット氏は「右手」、ブリマー氏は「左手」の手相を見ています。すでに‥左利きで左指に指輪を大きな指輪をしている者がバックハンドで殴った可能性が高いと睨んでいる!(加筆:202110月)

ラストシーンでコロンボ警部は「運命なんて信じない」とも言っています。これは手相見が「小芝居」であることも告白しているのです。だから「ケニカット夫人はコンタクトレンズを落としていない」「運良く車が故障したのではない」‥ただし、あの時ブリマーが「のこのこ」自分の前に現れたこと、これは実に運が良かった‥というオチですね。(加筆:202110月)

二つのレンズで別の場面を描写

ロバート・カルプ殺人シーンから隠蔽作業の表現で、犯人役ロバート・カルプのサングラスのレンズに映り込みを利用したのは、とても面白いです。左右のレンズで別々の場面を映し出し、スリリングに仕上げています。ちなみに6話「二枚のドガの絵」では犯行シーンで「ガ~ン、ガ~ン」みたいな音楽とともに画面が揺れていました。(笑)

ロバート・カルプの憎まれ役は最高

ロバート・カルプ俳優ロバート・カルプは他のコロンボ作品でも見ることができますが、この「指輪の爪あと」のブリマー氏の「傲慢」「短気」「高圧的」「インテリ肌」は格別です。特に短気な性格は、ストーリーのいろいろな場所で効果的に描写されています。

ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件

アリバイのダイヤルのロバート・カルプこれはかなり味の良いトリビアです。ゲストコメンテーターさんが発見してくれました。ロバート・カルプが犯人役を演じた3作品ですが、何といずれも「同じ服を着ているのです」。詳しくは→「ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件」をお読みください。

相手の弱みにつけ込んだことが、自分の命取りになる…。

パトリシア・クローリー選挙に有力な情報を教えろとブリマーに脅迫されたケニカット(パトリシア・クローリー)夫人が、開き直ってブリマーを脅迫仕返すのはグッドな設定です。「それだけはいけません、奥さん」「探偵事務所をここまでに築き上げるのにどれほど苦労をしたか…」というブリマーの本音が出ていました。

殺人ではなく傷害致死?

3話の「構想の死角」では「脅迫された相手を殺してしまう」のですが、この作品では、その逆展開をやっています。夫婦関係は一つや二つの失敗で壊れないもの、自分は正直にすべてを主人に話す…と開き直られて逆上して殺害に及ぶのです。しかしよく考えてみると、これは「殺人」ではなく「傷害致死」でしょうか?「殺す気はなかった…」と言っていますしね。
相手の破滅と引き換えに利益を得ようとする発想は、自分にも最大のリスクを発生させるという教訓を感じます。今回ケニカット夫人は利益ではなく復讐の意図でブリマーに逆襲しますが、相手に逃げ道を示すことを考えつけば、命は落とさなかったことでしょう。

ブリマーはコロンボの思い通りに動かされている…

最後は犯人に罠をしかけるパターンで解決を迎えますが、その過程で徐々に犯人を精神的に追いつめて行く手法も見逃せないですね。その中でも、コロンボに示唆され「自宅でコンタクトレンズを探している」シーンはこっけいです。台詞にはありませんが「そうか、クルマの中だ!」と気付いて、修理工場に忍び込むのですが、全てコロンボ警部の「シナリオ通りに動かされている」というわけでした。

原題の「death lends a hand」は乱暴な直訳で「死は手伝います」。最初はピンと来ない気がしましたが、ブリマーが事件捜査に手を貸す振りをしてコロンボに接近したことや、決め手となった「コンタクトレンズ(Lens)」をひっかけたものと思われ、興味深いものだと思えます。

レイ・ミランド

レイ・ミランド殺害されたレノア・ケニカットのご主人アーサー・ケニカットはレイ・ミランド[Ray Milland]で後の11話「悪の温室」で犯人のジャービス・グッドウィン(今回とは風貌が異なる:笑)を好演する名優です。どちらも流石の演技でしてコロンボファンの心を掴んでいます。

オスカー俳優レイ・ミランド

1945年の映画「失われた週末」ではアカデミー主演男優賞を受賞しています。まだ38歳の若々しいレイ・ミランドに会えますよ。Amazon Prime VideoなどのVODで見られる場合もありますので、ぜひチャレンジしみてください。

ギル・メレの音楽

ブリマーがケニカット夫人を死なせてしまってから死体を捨てに行くシーンのBGMに軽快なジャズ音楽が流れます。これはジャズ音楽家「ギル・メレ(Gil Mellé)」によるものです。それに自動車工場のエンディングシーンのBGMもギル・メレ。この曲は、なんと9話「パイルD-3の壁」のエンディングシーンでも同じように使われているの、気づいてました?

ギル・メレの音楽はこの他、5話「ホリスター将軍のコレクション」 、8話「死の方程式」などにも使われています。

刑事コロンボマップ
刑事コロンボマップブリマー邸は「潮風が当たる」マリブビーチにあります。その一方ケニカット邸はもう少しロサンゼルス中心に近い場所で、近くにはハルプリン次長が住むベルエア地区もあります。
マリブ周辺(ブリマー邸)
ベルエア周辺(ケニカット邸)

ケニカット邸は映画「ゴッドファーザー」等にも登場

アーサー・ケニカット邸は、LAでも有名な豪邸「通称ビバリー・ハウス」で、皆さんご存知の映画「ゴッドファーザー」や「ボディーガード」にも登場していることが判明しました。ぜひご覧ください。加筆:2023年12月30日
「指輪の爪あと」のケニカット邸

3年ぶりに本作品を見て、印象が多少変わりました

2009年にNHK BS2(当時)で再放送されたシリーズで、本作品と再会しました。その頃は、1話より順に放送されていなかった記憶があります。
加筆:2012年6月4日にAXNミステリーで再放送されました。それを見ながら書いています。

まず第一に、ブリマー氏は当時感じたほど「高圧的」ではありませんでした。その後の作品「権力の墓穴:ハルプリン次長」「4時02分の銃声:フィールディング・チェイス」などの豪傑を見ましたので(笑)。ブリマー氏は「威張り腐っている」感じより、むしろ「自分をやや謙遜しつつ」「猫なで声ですり寄ってきて」「相手の隙を狙っている」ように映りました。
またブリマーは、ケニカット氏への体面上ではコロンボ警部を小馬鹿にしていますが、実は会う前から警部を「切れ者」だと気付いています。警察署長にコロンボについて下調べをしているのです。初対面の時も「ゴルフバッグ」を発見され先制パンチを喰らいました。

本当に隙・無駄の無い作品

○白バイに停められるシーンでの会話→免許の書き換え
○出口を間違える→ゴルフバッグの発見
○客の秘密を喋りそうな部下を激怒→関係した部下を外す・短気な性格を引き出す
○犯人の逮捕をほのめかす→自動車修理工場へ出向かせる
など、すべてのシーン・台詞がストーリー展開に重要な役割を果たしていて、展開も速く非常にスリリングです。またメガネの映り込みのシーンは、思ったよりも長めで、証拠を隠滅する作業の時間経過と、人を殺してしまったという後悔の気持ちや不安な感情を、台詞無しで表現しているものです。指紋を拭き取る動作など、かなりテキパキしていますし、その反面表情は複雑です。

クライマックスも見事

ピアノで「ガーン」「ガーン」「ガーン」と打ち鳴らし緊張感をあおる。そしてパッと真っ白に照らすヘッドライト。証拠を捨てようとする瞬間を捕らえる。観念したブリマーが犯行を認めて謝る。ケニカットとの会話で仕掛けた罠を明かす。ユーモアたっぷりのエンディング。素晴らしかったです。

受領書をもらう際に筆記用具を忘れている

ブリマーが左利きであることに気づくシーンで、得意技である「筆記用具を忘れる」が出ていました。
→ コロンボはよく「筆記用具を忘れる」件

ブリマー探偵事務所

ブリマー探偵事務所はとてもカッコいいですね、ガラス越しにマップが描かれていたりして。そして所内には10人近い探偵が所属していると思われます。でもほとんどのエキストラ探偵は名前がわかりません。それなのに一人だけ俳優名がわかりました。「写真A」の左から2番目です。

ブリマー探偵事務所A

俳優の名前が特定できた探偵

マーク・ラッセルそれは俳優の「マーク・ラッセル(中央)」で1話「殺人処方箋」でトミーの取調室の警官、3話「構想の死角」でケンのオフィスで彼を連行する警官、そして今回の探偵役で合計3回出演しているエキストラ俳優さんだったのです。目立った仕事は一度もないのに、名前がクレジットされているので、不思議だったのですが解決できて嬉しいです(2024年11月)。

俳優の名前が特定できない探偵

ウィルコックス探偵その一方俳優のクレジットがなく残念なのが「ウィルコックス探偵」です。「写真A」のシーンで右から2番目は「ブルックス」と呼ばれているのですが‥後のシーンのウィルコックスとよく似ているんだけどな〜。このモヤモヤが解決する日は来るのでしょうか?

怒鳴られるデニング

デニングブリマー探偵社の社員でコロンボ警部の案内役を仰せつかったデニングは俳優:エリックジェームス。社長に怒鳴られたシーンが印象に残ります。彼はこの1〜2年で数作品にしか出ておらず、ひょっとして早死にしたかな…。

ゴルフプロのアーチャー

ゴルフプロのアーチャー一方ケニカット夫人の浮気相手、ゴルフは素人とちょぼちょぼの腕前のゴルフレッスンプロ「ケン・アーチャー」は俳優ブルット・ホールジー。この人は70年代から2010年代まで俳優として活躍しているようです。ゴッドファーザーIIIにも出ているそう。肉眼で見つけたら加筆します。それにしても、コロンボ警部のゴルフの腕前は凄かった!

免許センターの検眼係

ケン・サンソム物語の後半、免許センターらしき施設の検眼係の男性は俳優ケン・サンソム。この人は15話「溶ける糸」で溶ける糸の解説をするポール医師と同一人物です。どちらも黒ブチ眼鏡がよく似合う可愛いキャラクターです。

白バイ警官

ビル・ヒックマンプジョー403の右のテールランプが切れていることで、白バイ警官に止められてしまいます。なかなかカッコ良い人です。この時に免許証が来週に切れることも教えてもらっています。

いい味出している検視官

ドン・キーファー87地区の殺害現場に登場する検視官は「ドン・キーファー」。遺体目線?のローアングルが印象的でした。この検視官は後半の墓を掘り起こすシーンでも再登場します。

殺人現場の検証でマッチを借りる

レン・ウェイランド現場検証に立ち会うお偉方(課長)は「レン・ウェイランド」。警部に何か質問はないかね?と尋ねると「マッチを持っていないか?」と答えられていました。ことごとく断られ、3人目の刑事にやっとこさ借りられました。

遺体安置室の医師

ジョージ・ホームズケニカット氏が亡くなった夫人の遺体を確認する際の医師です。エキストラ的なのに名前がクレジットされていました。

  
監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:リチャード・レビンソン/ウィリアム・リンク
音楽:ギル・メレ

ブリマー所長:ロバート・カルプ(声:梅野泰靖
アーサー・ケニカット:レイ・ミランド(声:横森久)
レノア・ケニカット:パトリシア・クローリー(声:池田昌子)
ケン・アーチャー:ブルット・ホールジー(声:阪脩
白バイ警官:レン・ウェイランド
検視官:ビル・ヒックマン
課長:レン・ウェイランド
デニング:エリックジェームス
秘書:バーバラ・バルダビン
レオ・ジェントリー:マーブ・ゴークス
シール・ジェントリー(夫人):リュー・ドレスラー
検眼係:ケン・サンソム
ウィルコックス探偵:不明
探偵:マーク・ラッセル
 
*本編を見る限り犯人のブリマーはファーストネームは不明です。(ノベライズ:小説版では、マイケルだそう。)これは全69作中、36話「魔術師の幻想」の「グレート(偉大なる)・サンティーニ」と二人のみ。
 
加筆:2024年11月4日

25話「権力の墓穴」

A Friend in Deed / 1973

ギャンブル好きが命取り…ロス警察ハルプリン次長

財産目当てに妻を殺害するロス警察の上司マーク・ハルプリン次長のキャラクターが素晴らしい。殺人動機が弱いとも感じるが、夫婦仲は良くない状況が続いていたと思われます。しかしながら隣の2軒で連続殺人が起きれば、相当厳しく捜査されるのが予想される中で、よく夫人殺害という犯行に及んだと感心します。自分の現在の地位・名誉を全て失うだけの価値がある殺人だったということです。ズバリ財産目当てですね。

隣人のヒュー・コールドウェル

マイケル・マクガイア隣人のヒュー・コールドウェル(マイケル・マクガイア)が奥さんを死なせてしまったことが、事の発端になりますが、それを知った直後に、ハルプリン次長は自分の妻もついでに殺して、二人の共犯で罪を闇に葬る計画をしたということです。このコールドウェルのキャラクターが良いですね。お坊っちゃま風で、私は大好きです。

見どころが満載の作品

ローズマリー・マーフィ捜査の過程で、自分に都合の良いようにコロンボに指示を出すハルプリン次長の傲慢さに、いかにも官僚的な体質が見えます。また、巧みとは言い難いですが「妻(ローズマリー・マーフィ)が犯人を見てしまったかもしれない」ように仕立てるのもポイント。

邦題は「けんりょくのぼけつ」?

読みの問題。「はかあな」ではなく「ぼけつ」が正解だと思われます。NHKのアナウンサーが番組紹介でそのように読んでいました。この作品はWikipedia「刑事コロンボ」の代表的な画像としても登場しています。

シロとクロを嗅ぎ分ける嗅覚

他の作品でも感じますが、コロンボ警部の嗅覚は凄いです。このお話の場合、まず疑うべきは夫のコールドウェル。次に連続窃盗犯も有力に思えます。しかし、コールドウェルは証言の些細な部分からシロと判定。連続窃盗犯も「窃盗」の容疑者を狭めつつ、殺人ではシロと判定し、本題の事件解決の協力者へと導きます。このような鋭い嗅覚が身に付けば、我々の仕事にも役立つと思うのですが…。

「チャンスを得た」は、大きな勘違い

ハルプリン次長が署内でコロンボから前科者のリストを見せてもらうシーン。思いがけず決定的に有利な情報を得て、濡れ衣工作を思いつくのですが、それもコロンボ警部の仕組んだ罠だという展開は素晴らしいですね。あくまでも次長の命令に従っているだけの行動に見せています。まかれた餌にまんまと食いつかせたわけです。

シリーズ中、最も爽快なラストシーンの一つ

前科者アーティに殺人の罪をなすりつけ、その仕上げ工作の最中に自分が真犯人だということを「自らの行動で証明」してしまう場面。罪を被せられそうになるアーティの自宅(実はコロンボの部屋)で、「あなたが奥さんを殺したんです」とコロンボ警部に告げられるまで、一所懸命に証拠品を探しているハルプリン次長の必死の形相は傑作です。警察権力に対して、一石を投じたと言わんばかりの爽快なラストシーンでした。

リチャード・カイリーのハルプリン次長

リチャード・カイリーリチャード・カイリー(リチャード・キーリー)はハルプリン次長役を名演したと思います。見逃せないのは、妻マーガレット殺しのシーン。会話の際に見せる「優しそうな笑み」が本当に怖いです。そして「私の財産だ」という名台詞も必聴。

おそらくキャリア・エリートの設定で、現場バリバリのコロンボ警部の評判を良く知らなかったのでしょう。経験不足から、指紋の指摘に始まる失言を連発し、墓穴を掘ってしまいます。報告書を提出しろ!と、何度も催促するのも役人根性の表れで、笑えました。コロンボの「突っ込み」に、たじたじの様子が可愛く描かれています。

日本語版は北村和夫さん

北村和夫さんは俳優としてのお仕事がメインで、吹き替えは多くないようです。その中でも刑事コロンボではこの「権力の墓穴:リチャード・カイリー:ハルプリン次長」と「迷子の兵隊:ステファン・エリオット:パジェット将軍」を担当されました。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー前科者アーティ・ジェサップはこのエピソードの重要人物で、好きな人も多いことでしょう。演じた俳優の「ヴァル・アヴェリー」は12話「アリバイのダイヤル」で盗聴器をしかけた探偵:ダブス役や、34話「仮面の男」のバー:シンドバッドのオーナー役としても登場します。目立たない役では5話「ホリスター将軍のコレクション」の貸しヨット屋でも出演。

妻のテルマ

ヴァル・アヴェリーアーティの妻テルマは女優「エレノア・ズィー」。柄は悪いが、仲悪そうで‥そうでもないこの夫妻。妻殺しを犯したコールドウェルやハルプリン夫妻とは、対照的に描かれます。ローラーゲームのチケットのくだりは見どころ。

ダフィ警部

ダフィ警部ダフィ警部はお馴染みの、ジョン・フィネガン。警察官役で数回登場しますが「ダフィ警部」と特定できるのはこの一回のみ。(Wikiでは毒のある花もダフィ警部と記載)

高級住宅地「ベル・エア」地区

ベル・エア地区はハルプリン次長と友人ヒュー・コールドウェルらの家がある閑静な高級住宅街。コロンボ警部が「プジョー403」でバック運転していましたね。それに対しアーティの偽造アパートは、下町にあります。ロス市警からほど近く捜査しやすい‥という狙いもあったでしょうか。

野望の果てとの共通点

この「権力の墓穴」は20話の「野望の果て」と何か共通するテイストを感じます。その最大の理由は「音楽」でしょう。エピソードのテーマ曲とも呼べる「 不気味な雰囲気のホルンのメロディー」はとても印象的な音楽です。その他にもう1曲、隠し味の曲があります。ハルプリンとコードウェルが会うクラブのバーで流れるピアノ曲。これは「野望の果て」で夫人の誕生パーティで女性がピアノの生演奏をしている曲と同じ曲なんです。

クラブのマネージャー

ジャドソン・モーガンクラブで「ローレンス様がたいへんついていらっしゃいまして」と話すマネージャー風の男性チャールズ(写真左)は俳優ジャドソン・モーガン。この俳優さんは、2話「死者の身代金」の裁判長と同一人物。2024年の新発見でした。

クラブのバーテンダー

ベン・フロマーこのクラブのバーでバーテンダーを務めるなんとも印象的な太っちょの俳優さんはベン・フロマー。この人は34話「仮面の男」にも登場します。コロンボがCIAに後をつけられている遊園地のシーンです。

宝石商ウェクスラー

エリック・クリスマス宝石商のウェクスラーを演じたのはエリック・クリスマス、可愛い名前ですよね。こういう年配の俳優さんの存在はストーリーを落ち着かせてくれて、とても心地よいです。

ウェクスラー宝石店の女性

グロリア・ウエストウェクスラー宝石店「ナガサキですか‥」の女性は女優:アーリーン・マーテルです。この人は11話「悪の温室」で「グロリア・ウエスト」嬢を演じていました。ウェクスラー宝石店ではブルネット、グロリア・ウエストはブロンドですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。 

ジャニスのボーイフレンド

ジョン・カルビン亡くなったジャニス・コールドウェルのボーイフレンド「チャーリー・ショープ」は俳優ジョン・カルビン。彼はコロンボ警部の愛車プジョー403を「約28,000円」なら下取ると、申し出ました。

ランドール刑事

、ベン・モリノラストシーンで前科者アーティを連れてくるランドール刑事は、ベン・モリノ。刑事コロンボシリーズ屈指の名シーンに立ち会いました。こういった黒縁のメガネをかけたキャラクターは、良いです好きです。

ドイル刑事

ビクター・カンポスコールドウェル夫人やハルプリン夫人の現場検証で、指揮を振るうドイル刑事は俳優ビクター・カンポス。若いけど結構「やり手」っぽい刑事さんです。吹き替えの声優さんも良かったです。

マクマレイ検視官

ジョシュア・ブライアントハルプリン夫人の検視官として登場するマクマレイ先生は俳優ジョシュア・ブライアント。「言うに及ばずさ」や、無線194の「石鹸だよ、シャボンだ」はいずれも名セリフ。この人の吹き替えも良いです。このジョシュア・ブライアントは37話「さらば提督」のスワンソン造船所の所長ウェイン・テイラー(黄色いジャンパーの人)も演じています。

アルマ・ベルトラン

アルマ・ベルトランコールドウェル家のメイドを演じたのは女優:アルマ・ベルトラン。この人は21話「意識の下の映像」のノリス邸でもメイドとして働いていました。

バーニー・クビー

バーニー・クビージャニス・コールドウェルの葬儀屋「明朝8時半までは、閉めさせていただきます」の人は、俳優バーニー・クビー。風貌も名前も可愛いですね。この人は、3話「構想の死角」の生命保険屋マイク・タッカーと同一人物です。

監督:ベン・ギャザラ
脚本:ピーター・S・フィッシャー
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

マーク・ハルプリン:リチャード・カイリー(声:北村和夫
ヒュー・コールドウェル:マイケル・マクガイア(声:山本勝)
アーティ・ジェサップ:ヴァル・アヴェリー(声:金井大)
ダフィ警部ジョン・フィネガン
テルマ・ジェサップ:エレノア・ズィー
マーガレット・ハルプリン:ローズマリー・マーフィー(声:白坂道子)
ランドール刑事:ベン・モリノ(声:岡部政明)
ドイル刑事:ビクター・カンポス
マクマレイ検視官:ジョシュア・ブライアント
刑事:ロバート・バッキンガム
ウェクスラー:エリック・クリスマス(声:杉田俊也
宝石店の女性:アーリーン・マーテル
チャーリー・ショープ:ジョン・カルビン
クラブのバーテンダー:ベン・フロマー
クラブの客:ダイアン・ターレイ・トラヴィス
クラブの客:コスモ・サルド
コールドウェル家のメイド:アルマ・ベルトラン
葬儀屋:バーニー・クビー
下町のバーテンダー:マイク・ラリー

加筆:2024年9月3日