11話「悪の温室」キャシー・グッドウィン
夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」
と、皮肉を添えてさらりと応えた。
筆者ぼろんこが刑事コロンボの素晴らしさを語る。コロンボ全話解説・出演者研究など。
11話「悪の温室」キャシー・グッドウィン
夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」
と、皮肉を添えてさらりと応えた。
コロンボの場を和ませるテクニックやウケ狙い
「別れのワイン」
・イタリア人で音痴とは、あたしだけじゃないかしら。
→音痴という恥をさらすことで和ませる。
→確かに「影なき殺人者」Closerの歌唱で証明された。
・親父は、闇ビールのトラックの用心棒だった。
→”酒”と言わず”ビール”と言い、”トラックの用心棒”とまで修飾を入れた。
このように修飾し言いまわすことで、暗い時代を明るく表現する効果が
あるし、意表を突かれ思わず笑ってしまう。
「白鳥の歌」
・出所されてからの活躍は、下積みの連中に希望を与えるもんです。
→聴いててけっこうジーンときました。犯人も心を開く第一歩となった。
・朝鮮戦争では、炊事場の見張りで・・・。
→下っ端かみたいな感じで、本来暗い戦争なのに明るい印象を与えます。
「華麗なる罠」
・従兄は、パン屋の軽トラックにはねられたんです。
→パン屋という何とも平和なイメージと、軽トラックという軽い感じで、
死亡事故なのに、重々しい印象を与えない。
これでウェズリーも、つい笑ってしまった。ちょっと失礼でしたね。
コロンボお得意の逮捕手法として、でっち上げの証拠や状況をつくり出して、
その結果、犯人による勇み足の行いや言動があったときに、それ自体を決定的
な証拠することが多い。犯人は完全犯罪を狙っていて、簡単には完全性を
崩せないので、そういうテクニックを使うのだろう。
よく「弁護士を通してくれ」とか、周囲の関係者が「しゃべってはイケナイ」
などと容疑者に対して注意を促すことがある。
これらは、コロンボに対しては特に必要な措置と言えるだろう。
コロンボから逃れるには、コロンボとコンタクトしないことである。
特に話さないことだ。コロンボは、催眠術師レベルの誘導術を心得ている。
犯人は別段追い込まれてもいないのに、勝手に追い込まれた気分になって、
つい勇み足や自白をしてしまうのだ。犯罪完全性が崩されていくと、犯人は
必要以上に追い込まれた錯覚に陥ってしまう。犯罪完全性が崩されていく事と、
犯人側の容疑が固まることはイコールではない。
そこを、よくはき違えてしまうのだ。コロンボに勝つには近づかないことだ。
いろいろなところへ分散してコメントしましたが、ここでまとめてみます。
これらの全ての要素が含まれるものを傑作と言いたいです。
◆犯人のコロンボ分析
「殺人処方箋」
また始まったな。ほのめかしだよ。実に計算されている。その小道具の葉巻に
至るまでな。君のは代償作用の実例と言える。欠点をカバーする代償作用さ。
君は優れた知性を持っているが、それを隠している。道化のようなフリをして
いる。なぜか?。その外見のせいだ。外見のせいで押しも効かないし尊敬も
されない。が、君はその弱点を逆に武器にする。君は不意打ちをかける。
見くびっていた連中は、そこで見事につまづく。・・・今度はおだてかね?。
「死者の身代金」
恐ろしい人ねえ。そのショボくれたなりも態度もみんな見せかけ。
敵の油断を見透かして、いきなりワナをぶつけてモノにしようっていう
腹でしょ。どれもこれもワナよ。おつむが空っぽみたいなフリをするのも、
奥さんや従兄の内輪話も。とにかく大した役者だわ。上辺はモタモタして
いるけど、おつむの中は目まぐるしく回っている。
刑事仲間でも腕利きで通っているんでしょ。
◆コロンボ自身による自己分析
「殺しの序曲」
世の中というのは不思議ですねえ。わたしゃ、どこ行っても秀才にばかり
出会ってねえ。学校でも頭の良い子は大勢いたし。軍隊初めて入った時にも、
あそこにも、おっそろしく頭の良いのがいましたよ。ああいうのが大勢いちゃ、
刑事なるのも容易じゃないと思ったもんです。あたし考えました。連中より
せっせと働いて、もっと時間かけて、本を読んで、注意深くやりゃ、モノに
なるんじゃないかって。なりましたよ!。
あたしゃ、この仕事が心底好きなんです。
「死者のメッセージ」
科学捜査なんて何にも知らないんです。それから私の仕事が、恐るべき暗黒
っていう点でも正直言いますとねえ、これもあんまり自信がないんです。
私は自分の仕事が大好きでしてねぇ、憂鬱になることなんざぁ有りません。
また世界中に犯罪や殺人犯が満ち溢れているとも思いません。みなさんの様な
良い方がいっぱいだし。刑事をやってたからこそ、皆さんにもお目にかかれた
わけだし。あたしゃ人間が大好きです。今まで出会った殺人犯の何人かさえ
好きになったほどで、時には好意を持ち尊敬さえしました。やったことにじゃ
ありませんよ。殺しは悪いに決まっています。しかし犯人の知性の豊かさや
ユーモアや人柄にです。誰にでも良いところはあるんです。ほんのちょっと
でもねぇ。こりゃ刑事が言うんだから間違いありません。
「殺人講義」
(実際にはない証拠を作り上げることは?)
実際にはない証拠を作り上げることはあると言われています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
あたしの場合はこうです。この自分の鼻について行きます、
もし臭いを嗅ぎつけたら、解決の為ならありとあらゆる事をやってみますね。
(若い刑事へのアドバイスは?)
まあ~あまり喋らんことですかね。
何かをした場合など、黙っている方がよろしい!。
すーぐ、ベラベラ喋っちまわないで、待つんです。待って展開を見る。
大事なのは、タイミングです。それからツキ。ツキが必要ですね。
「忘れられたスター」で、夫のヘンリーにミュージカルの資金援助を頼むシーンでの、ヘンリーの言葉は素敵でした。
「あなたは、頑固で、けちで、役立たずの老人よ」とグレースがまるで子供のように詰ると、彼はこう返します。
「君がただ愛情だけで僕と結婚したのではないことは、始めから分かっていたよ。でも、そんなに悪い人生じゃなかっただろう?」
幼い子供は、親に対して完璧な愛情と気遣いを当然のように要求します。グレースは正に、成長できなかった子供のようでした。
年は離れていたのだと思いますが、心からグレースを愛し、慈しむ彼を、彼女は、殺してしまいます。
大人と子供の違いを残酷なまでに見せられたシーンでした。