ロールス・ロイスとベントレー

Rolls Royce

ロールス・ロイスとベントレーは設計を共有する姉妹車で、運転手に運転させるのがロールス・ロイス、自分で運転するのがベントレーというコンセプトの違いがあると言われます。しかしコロンボに登場するロールス・ロイスにはそのパターンは当てはまりません。

10話「黒のエチュード」のベネディクト家のロールス・ロイスは、1959年式シルバー・クラウドIIというモデルで丸目2灯のヘッドライトがエレガントな印象を出しています。

ベネディクト家のロールス・ロイス10

一方4話「指輪の爪あと」のアーサー・ケニカットと19話「別れのワイン」のエイドリアン・カッシーニのロールス・ロイスは、シルバー・シャドーIというモデル(1966・67年式)で丸目4灯のヘッドライトです。ちなみに(4)は他の車内から覗き見しているシーンです。エイドリアンのナンバープレートは「CARSINI」とされているのも印象に残っています。
アーサー・ケニカットのロールス・ロイスエイドリアン・カッシーニのロールス・ロイス419
26話「自縛の紐」のマイロ・ジャナスの赤いロールス・ロイスもエイドリアン等と同様シルバー・シャドーIということです。
一方の27話「逆転の構図」のポール・ガレスコのロールス・ロイスは、1962年式シルバー・クラウドIIIでこちらも丸目4灯になってます。
マイロ・ジャナスのロールス・ロイスポール・ガレスコのロールス・ロイス2627
41話「死者のメッセージ」のアビゲイル・ミッチェルのロールス・ロイスは「コーニッシュ(Corniche)」と呼ばれるモデルで、彼女の車はドロップヘッド・クーペ(オープンカー)です。ボディもシートも鮮やかなブルーでとても印象に残りました。
そして44話「攻撃命令」のエリック・メイスンのロールス・ロイスは、1962年式シルバー・クラウドIIIで、ポール・ガレスコと同モデルです。シルバー・クラウドはリアフェンダーが盛り上がっているのが特徴で、スポーティな印象を受けます。
アビゲイル・ミッチェルのロールス・ロイスエリック・メイスンのロールス・ロイス4144
新シリーズとなり47話「狂ったシナリオ」の若き天才監督アレックス・ブレイディは(彼に似合わず)ロールス・ロイス「コーニッシュ」(オープンカー)に乗っています。58話「影なき殺人者」のマーシー・エドワーズは1981年式のロールス・ロイス・シルバー・スパーで、名前入りナンバープレートでした。
アレックス・ブレイディのロールス・ロイスマーシー・エドワーズのロールス・ロイス4758
そして59話「大当たりの死」のレオン・ラマーはアレックス・ブレイディと色違いのほぼ同モデルです。こっちはバッチリ似合っていますね。そして61話「死者のギャンブル」のビッグ・フレッドの「STALLION1」もレオン・ラマーとそっくりのロールス・ロイス「コーニッシュ」(オープンカー)でした。ご存知の通り爆薬で吹き飛ばされました。
レオン・ラマーのロールス・ロイスビッグ・フレッドのロールス・ロイス5961

 
 

Bentley

先述のようにベントレーはオーナーが自分で運転するのがコンセプトとされるそうですが、ウィラー家では執事レイモンドが運転します。ご主人が高齢になったということもあるでしょう。

さて32話「忘れられたスター」執事レイモンドが運転するのは1955年式のベントレーSIだということです。暗くて見づらいのですが観音開きの4ドアで後部座席のドアを前から開けやすいタイプです。ボディがブルーとホワイトのツートンカラーに塗装されたり、後部にフェンダーカバーが付いていたりして特別仕様のようです。

ウィラー家のロールス・ロイス32

一方11話「悪の温室」のジャービス・グッドウィンのベントレーは1959年式のS2で2ドア仕様。でもこの車をよく見ますと、ボディの右側前タイヤの近くが凹んでいる(画像中の矢印)ように思えます。お金持ちでもちょっとだけ貧祖な印象を受けませんか?
ジャービス・グッドウィンのベントレージャービス・グッドウィンのベントレー11a11b

13話「ロンドンの傘」のサー・ロジャーのベントレーは1960年式のS2だということです。本場英国の大金持ちの老紳士に似合う車種ですね。

サー・ロジャーのベントレー13

Bentley Turbo R

68話「奪われた旋律」のフィンドレー・クロフォードが運転するベントレーはターボ・Rだということです。コロンボ警部の「のろのろ運転」にイラッと来ちゃった時の車ですね。

フィンドレー・クロフォードのベントレー68

*記事は書きかけ・研究中です。誤りや気付き等はコメント欄にお書きください。
投稿:2024年1月13日

11話「悪の温室」

The Greenhouse Jungle / 1972

ランの栽培家ジャービス・グッドウィンは、莫大な遺産を受け継いだ甥トニーの狂言誘拐を計画。成功の後、甥を射殺し身代金を横取りしたというお話。事件の背景にはおそらく「ランの栽培で儲かっていない」「甥の嫁の素行に腹を立てていた」ということもあるのでしょう。(原語では「グッドランド(Goodland)」という姓が正式なようです)

レイ・ミランドがピカイチ!

レイ・ミランドこの「悪の温室」は見どころが満載の作品でした。まず犯人のレイ・ミランドが素晴らしかったです。4話の「指輪の爪あと」で夫人を殺害されたケニカット氏とヘアースタイルに変化(笑)はあったものの、流石の演技でした。

グッドウィン伯父さんは毒舌を連射

犯人のジャービス・グッドウィン伯父さん(レイ・ミランド)は、数在るコロンボシリーズの犯人中、もっとも「ひねくれた性格」だったとも言えます。口を開く度に「憎まれ口」を連射。とにかく口が悪い人でした。それがミランドの表情・台詞と相まって、独特な悪人像を作り出していましたね。日本語版の臼井正明さんも良かったのでしょうね、音声言語を切り替えてみても違和感が全くなかったです。車の襲撃を偽装するために銃を構えたグッドウィン伯父さんがトニーに向かって「どいてくださらんか、坊や」と吐き付ける台詞は見事。

オスカー俳優レイ・ミランド

1945年の映画「失われた週末」ではアカデミー主演男優賞を受賞しています。まだ38歳の若々しいレイ・ミランドに会えますよ。Amazon Prime VideoなどのVODで見られる場合もありますので、ぜひチャレンジしみてください。

決め手となった「第3の弾」

コロンボがジャービスの温室で「金属探知機」を使って発見した「第3の弾」は事件解決の決め手になりました。が、よく考えてみますと‥ジャービスの銃(未登録)とキャシーの銃(登録済)をすり替えても、銃違いでバレちゃうのでは?とも、思いますね。銃本体にシリアル番号など、あるでしょう?

ウイルソン刑事

ボブ・ディシー次に相棒役のフレデリック・ウイルソン刑事(ボブ・ディシー:声野本礼三)。登場の場面から事件解決までコロンボ警部を補佐、あるいは捜査の指揮をとっていました。コロンボシリーズでは事件解決の流れに影響する刑事役の起用は珍しいのですが、このウイルソン刑事は特に印象に残る人でした。

事件現場での転落シーンは早回し?

テレビ番組で三谷幸喜氏が語っていた「転落シーン」は、何度見ても笑えますね。自分には少し早回しで再生しているのではないか?と思えました。転落後にそのまま撮影が続いていることから、アクシデントではなく「狙って作ったシーン」だと考えましたが、それにしても凄い!刑事コロンボはアクションシーンに頼らず、ストイックな程「犯人と刑事の会話」にこだわったドラマですが、こうした「ユニークで笑えるシーン」を盛り込むことにも情熱を注いでいますね。

グローバー刑事は万年ヒラか?

ロバート・カーンズ年齢の割には平刑事の「グローバー刑事(ロバート・カーンズ)」は、20話「野望の果て」バーノン刑事として再登場します。両者とも寡黙ですが存在感がありますね、出来れば同じ名前にして欲しかったです。参照:「ロス警察の気になる同僚たち」

被害者の夫人キャシーの家宅捜査で年下のウイルソン刑事から手足のように使われて、少し気分を害していたのでしょう。その後コロンボ警部の言いつけで弾道検査の報告を持ち込みむ際に、少し自慢げな顔を見せていました。

被害者のトニー・グッドウィン

ブラッドフォード・ディルマン伯父さんの罠にはまって殺害される甥のトニー(アンソニー:演ブラッドフォード・ディルマン)の日本語吹き替え版の声優は、山田康雄さんでアニメ「ルパン三世」で有名ですね。

妻のキャッシーも強者(つわもの)

サンドラ・スミス(Sandra Smith)殺害されたトニー(アンソニー・グッドウィン)の妻、キャッシー(サンドラ・スミス Sandra Smith:阪口美奈子)もなかなかの強者。おじのジャービスの毒舌に負けじとばかり、チクチクと皮肉めいた言葉を吐いています。

ストーリー後半で夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」と突っ込んだのは、鋭い切れ味でした。

邦題は「悪の温床(おんしょう)」のパロディ

悪の温床とは、悪人・悪事や悪い思想を助長する場所のような意味で使われます。それを「温室」とかえて邦題化したのでしょうが、ジャービス・グッドウィンの悪人ぶりとイメージが合致して、こっけいで可愛い印象すら与えています(笑)

「不気味とユーモア」両極端な印象の不思議な作風

お気づきとは思いますが、この作品の特長として「不気味な音楽」を挙げたいと思います。しかしその反面、セリフは皮肉やユーモアに溢れています。この両極端な2つの要素が独特な雰囲気を醸しています。

可愛らしい「グロリア・ウエスト」

アーリーン・マーテル(Arlene Martel)トニーの受付嬢「グロリア・ウエスト」を演じるのは女優:アーリーン・マーテル(Arlene Martel)です。この人は25話「権力の墓穴」でウェクスラー宝石店の女性として再登場します。グロリア・ウエストはブロンド、ウェクスラー宝石店の女性はブルネットですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。

宇宙大作戦とサンドラ・スミス

サンドラ・スミストニーの妻キャッシーのサンドラ・スミスは宇宙大作戦(スタートレック)の「変身!カーク船長の危機」で、カーク船長の元恋人役も演じています。カーク船長に変身してしまうという、大役でした。

宇宙大作戦とアーリーン・マーテル

アーリーン・マーテルそしてトニーの受付嬢グロリアを演じたアーリーン・マーテル「バルカン星人の秘密」で、スポックの婚約者プリング(バルカン人)役で出演しています。ハクション大魔王の「アクビちゃん」みたいで可愛いですよね。1967年の作品で、悪の温室より5年ほど前。

同じマンションに住んでいる?

刑事コロンボのマンションところでグロリア・ウエストと22話「第三の終章」のアイリーンのマンションは同じ外観です。二人がご近所さんであることは間違い無し。
マリーナ・デル・レイ

マリーナ・デル・レイ

キャッシー夫人のヨットハーバーは「マリーナ・デル・レイ」で、31話「5時30分の目撃者」のマーク・コリアーのヨットハーバーと同じ場所です。
マリーナ・デル・レイ

監督:ボリス・セイガル
脚本:ジョナサン・ラティマー
音楽:オリヴァー・ネルソン

ジャービス・グッドウィン:レイ・ミランド(声:臼井正明)
フレデリック・ウイルソン刑事:ボブ・ディシー(声:野本礼三
トニー(アンソニー)・グッドウィン:ブラッドフォード・ディルマン(声:山田康雄)
キャシー・グッドウィン:サンドラ・スミス(声:阪口美奈子)
グロリア・ウエスト:アーリーン・マーテル(声:北浜晴子)
ケン・ニコルズ:ウイリアム・スミス(声:津嘉山正種)
グローバー刑事:ロバート・カーンズ(声:寺島幹夫

加筆:2023年1月4日