ウイルソン刑事

ボブ・ディシー Bob Dishy

11話「悪の温室」
36話「魔術師の幻想」
ウイルソン刑事は11話「悪の温室」で、登場の場面から事件解決までコロンボ警部を補佐、あるいは捜査の指揮をとっていました。最新の科学捜査を得意分野とし、コロンボ警部から「ハリキリボーイ」と冷やかされています。36話「魔術師の幻想」にも登場します。

ウイルソン刑事のポジション

コロンボシリーズでは事件解決の流れに影響する刑事役の起用は珍しいのですが、このウイルソン刑事は特に印象に残る人で、他の刑事に比べて明らかに別格です。出演の同僚刑事の中で最もコロンボ警部を尊敬しています。先進メカに強いエリート刑事ですが、どこかピント外れで冴えないキャラクターに描かれています。これは、コツコツと足で情報を集めて矛盾点を探すという「コロンボ警部の捜査手法」を、かえって際立たせる役目も担っています。

日本語版吹き替えの声優は野本礼三さん。ウイルソン刑事のキャラクターにぴったりの言い回しでした、お見事です。野本さんはアンダーソン検死官などの俳優「ハーヴェイ・ゴールド」の声も担当されました。またアニメ「ドカベン」で徳川監督(徳川家康)の声を担当されたことでも知られます。

加筆:2017年12月22日

11話「悪の温室」

The Greenhouse Jungle / 1972

ランの栽培家ジャービス・グッドウィンは、莫大な遺産を受け継いだ甥トニーの狂言誘拐を計画。成功の後、甥を射殺し身代金を横取りしたというお話。事件の背景にはおそらく「ランの栽培で儲かっていない」「甥の嫁の素行に腹を立てていた」ということもあるのでしょう。(原語では「グッドランド(Goodland)」という姓が正式なようです)

レイ・ミランドがピカイチ!

レイ・ミランドこの「悪の温室」は見どころが満載の作品でした。まず犯人のレイ・ミランドが素晴らしかったです。4話の「指輪の爪あと」で夫人を殺害されたケニカット氏とヘアースタイルに変化(笑)はあったものの、流石の演技でした。

グッドウィン伯父さんは毒舌を連射

犯人のジャービス・グッドウィン伯父さん(レイ・ミランド)は、数在るコロンボシリーズの犯人中、もっとも「ひねくれた性格」だったとも言えます。口を開く度に「憎まれ口」を連射。とにかく口が悪い人でした。それがミランドの表情・台詞と相まって、独特な悪人像を作り出していましたね。日本語版の臼井正明さんも良かったのでしょうね、音声言語を切り替えてみても違和感が全くなかったです。車の襲撃を偽装するために銃を構えたグッドウィン伯父さんがトニーに向かって「どいてくださらんか、坊や」と吐き付ける台詞は見事。

オスカー俳優レイ・ミランド

1945年の映画「失われた週末」ではアカデミー主演男優賞を受賞しています。まだ38歳の若々しいレイ・ミランドに会えますよ。Amazon Prime VideoなどのVODで見られる場合もありますので、ぜひチャレンジしみてください。

決め手となった「第3の弾」

コロンボがジャービスの温室で「金属探知機」を使って発見した「第3の弾」は事件解決の決め手になりました。が、よく考えてみますと‥ジャービスの銃(未登録)とキャシーの銃(登録済)をすり替えても、銃違いでバレちゃうのでは?とも、思いますね。銃本体にシリアル番号など、あるでしょう?

ウイルソン刑事

ボブ・ディシー次に相棒役のフレデリック・ウイルソン刑事(ボブ・ディシー:声野本礼三)。登場の場面から事件解決までコロンボ警部を補佐、あるいは捜査の指揮をとっていました。コロンボシリーズでは事件解決の流れに影響する刑事役の起用は珍しいのですが、このウイルソン刑事は特に印象に残る人でした。

事件現場での転落シーンは早回し?

テレビ番組で三谷幸喜氏が語っていた「転落シーン」は、何度見ても笑えますね。自分には少し早回しで再生しているのではないか?と思えました。転落後にそのまま撮影が続いていることから、アクシデントではなく「狙って作ったシーン」だと考えましたが、それにしても凄い!刑事コロンボはアクションシーンに頼らず、ストイックな程「犯人と刑事の会話」にこだわったドラマですが、こうした「ユニークで笑えるシーン」を盛り込むことにも情熱を注いでいますね。

グローバー刑事は万年ヒラか?

ロバート・カーンズ年齢の割には平刑事の「グローバー刑事(ロバート・カーンズ)」は、20話「野望の果て」バーノン刑事として再登場します。両者とも寡黙ですが存在感がありますね、出来れば同じ名前にして欲しかったです。参照:「ロス警察の気になる同僚たち」

被害者の夫人キャシーの家宅捜査で年下のウイルソン刑事から手足のように使われて、少し気分を害していたのでしょう。その後コロンボ警部の言いつけで弾道検査の報告を持ち込みむ際に、少し自慢げな顔を見せていました。

被害者のトニー・グッドウィン

ブラッドフォード・ディルマン伯父さんの罠にはまって殺害される甥のトニー(アンソニー:演ブラッドフォード・ディルマン)の日本語吹き替え版の声優は、山田康雄さんでアニメ「ルパン三世」で有名ですね。

妻のキャッシーも強者(つわもの)

サンドラ・スミス(Sandra Smith)殺害されたトニー(アンソニー・グッドウィン)の妻、キャッシー(サンドラ・スミス Sandra Smith:阪口美奈子)もなかなかの強者。おじのジャービスの毒舌に負けじとばかり、チクチクと皮肉めいた言葉を吐いています。

ストーリー後半で夫殺しの容疑(濡れ衣)をかけられた妻キャシーが警察本部に連行される途中に、ジャービス・グッドウィン邸に呼び戻されて…
コロンボ警部「奥さん今晩は。お疲れでしょう、とにかく…おかけください」
キャシー「いいえ結構、私立ってます。(どうせ)刑務所に入ればゆっくり休めるんではありませんこと?」と突っ込んだのは、鋭い切れ味でした。

邦題は「悪の温床(おんしょう)」のパロディ

悪の温床とは、悪人・悪事や悪い思想を助長する場所のような意味で使われます。それを「温室」とかえて邦題化したのでしょうが、ジャービス・グッドウィンの悪人ぶりとイメージが合致して、こっけいで可愛い印象すら与えています(笑)

「不気味とユーモア」両極端な印象の不思議な作風

お気づきとは思いますが、この作品の特長として「不気味な音楽」を挙げたいと思います。しかしその反面、セリフは皮肉やユーモアに溢れています。この両極端な2つの要素が独特な雰囲気を醸しています。

可愛らしい「グロリア・ウエスト」

アーリーン・マーテル(Arlene Martel)トニーの受付嬢「グロリア・ウエスト」を演じるのは女優:アーリーン・マーテル(Arlene Martel)です。この人は25話「権力の墓穴」でウェクスラー宝石店の女性として再登場します。グロリア・ウエストはブロンド、ウェクスラー宝石店の女性はブルネットですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。

宇宙大作戦とサンドラ・スミス

サンドラ・スミストニーの妻キャッシーのサンドラ・スミスは宇宙大作戦(スタートレック)の「変身!カーク船長の危機」で、カーク船長の元恋人役も演じています。カーク船長に変身してしまうという、大役でした。

宇宙大作戦とアーリーン・マーテル

アーリーン・マーテルそしてトニーの受付嬢グロリアを演じたアーリーン・マーテル「バルカン星人の秘密」で、スポックの婚約者プリング(バルカン人)役で出演しています。ハクション大魔王の「アクビちゃん」みたいで可愛いですよね。1967年の作品で、悪の温室より5年ほど前。

同じマンションに住んでいる?

刑事コロンボのマンションところでグロリア・ウエストと22話「第三の終章」のアイリーンのマンションは同じ外観です。二人がご近所さんであることは間違い無し。
マリーナ・デル・レイ

マリーナ・デル・レイ

キャッシー夫人のヨットハーバーは「マリーナ・デル・レイ」で、31話「5時30分の目撃者」のマーク・コリアーのヨットハーバーと同じ場所です。
マリーナ・デル・レイ

監督:ボリス・セイガル
脚本:ジョナサン・ラティマー
音楽:オリヴァー・ネルソン

ジャービス・グッドウィン:レイ・ミランド(声:臼井正明)
フレデリック・ウイルソン刑事:ボブ・ディシー(声:野本礼三
トニー(アンソニー)・グッドウィン:ブラッドフォード・ディルマン(声:山田康雄)
キャシー・グッドウィン:サンドラ・スミス(声:阪口美奈子)
グロリア・ウエスト:アーリーン・マーテル(声:北浜晴子)
ケン・ニコルズ:ウイリアム・スミス(声:津嘉山正種)
グローバー刑事:ロバート・カーンズ(声:寺島幹夫

加筆:2023年1月4日

36話「魔術師の幻想」

Now You See Him / 1976

ジャック・キャシディ

ジャック・キャシディ大魔術師のサンティーニは、自分の隠された過去をネタに恐喝する魔術クラブのオーナーを殺害。サンティーニ役は、刑事コロンボの犯人役の巨匠「ジャック・キャシディ」が三度目の登場です。過去の作品、3話「構想の死角」、22話「第三の終章」と比べても、今回はもっとも良い味を出していたように思えました。

魔術王サンティーニ

ジャック・キャシディの手品の腕前がなかなかのモノです。場面がつなげてある箇所もありますし、仕掛けが見えそうになっているシーンも確かにありますが、それにしてもお見事。スターとしての風格が漂うサンティーニ。ユーモアもたっぷりで、ジャック・キャシディのハマり役だたっと言えます。

娘のデラはシンシア・サイクス

シンシア・サイクスサンティーニの魔術のアシスアントで娘のデラは女優「シンシア・サイクス」。パッと目をひくような美女で、コロンボファンの男性陣に人気のようです。

ボブ・ディシー

ボブ・ディシー強力な脇役として、ウイルソン刑事「ボブ・ディシー」も再登場しました。11話「悪の温室」とほぼ同じテイストで、抜群の存在感でした。刑事役としてこのように、印象深く配置されることは稀で、やはり別格ということでしょう。

文明の利器が決め手になるパターン。

リボン式タイプライターが証拠になりました。これは犯人の大きな見落としですが、最新式なので気づかなかったか‥。また、小さなスピーカーから聴こえる声を実際の人間の声と間違えるだろうか?とか、いくつかの疑問が残りましたが、とても楽しめる作品に仕上がっています。

裏方のジョージ

レドモンド・グリーソンジェロームの店でアナウンスなど裏方で活躍するジョージは俳優:レドモンド・グリーソン。サンティーニに「ジェロームさんを消しちゃってください」とジョークを言う男性です。彼は31話「5時30分の目撃者」でマーク・コリアーの友人(ホームパーティの一人)です。

ロバート・ロジア

ロバート・ロジアブランドフォード役のロバート・ロジアも、素敵でした。大忙しの厨房で「おふくろが来てキスしても気付きませんぜ」は金言。ラストシーンの直前ではサンティーニが殺人犯人だと知らされていたのでしょう、少し冷ややかな態度でした。

悪人オーナーのジェローム

ネヘミア・パーソフ暖炉で薪を炊き、顔にびっしょり汗をかきながら、食事をしながら、サンティーニを恐喝するジェローム。なかなかのど悪人のようで、店の従業員たちからも嫌われています。演じるネヘミア・パーソフはイスラエル出身の俳優というのも隠し味か。

気のいいやつ、サッカリー

ジョージ・スパーダコスお店の従業員、サッカリー役はジョージ・スパーダコス。魔術王サンティーニとも仲の良い彼は、この後の40話「殺しの序曲」でシグマクラブ員のワグナー役でも出演しています。

手品ショップの店主

セイヤー・デヴィッドその他、意外と効いていた役者さんが、手品ショップの店主「セイヤー・デヴィッド:Thayer David」。吹き替えの声優さんの良さもありますが、良い味でした。

警察署の研究員

ロバート・ギボンズロス市警の署内で鍵や凶器の拳銃などについて分析して語るおじさんは、俳優:ロバート・ギボンズ。どっかで見たことある?そうそう、9話「パイルD-3の壁」で長蛇の列ができた役所のオヤジさんです!

大草原の小さな家

ロバート・ギボンズこのロバート・ギボンズは、テレビドラマ「大草原の小さな家」のシーズン3の7話「春の別れ(後編)*」で、駅員役を演じています。ちょっとした端役なのですが、良い味を出しています。*他の回でも駅員役を演じています。

ビクター・イゼイ

ビクター・イゼイ「若い人はせっかちだ」とかコロンボに説教する鍵屋の主人は、ビクター・イゼイ。この人は26話「自縛の紐」でスタッフォードの死因について語る検死官と同一人物なんです!両者とも、なかなか良い味を出してくれていますよ。それと38話「ルーサン警部の犯罪」では、ややこしいですが劇中劇の犯人役で出ています。

伝説のちょい役俳優「マイク・ラリー」

マイク・ラリー刑事コロンボシリーズに何十回もちょい役で出演している「マイク・ラリー」。今回は「マイケル・ラリー」として出演しています。サンティーニの友人で、元ヨーロッパ随一の綱渡りの名人の老人の役です。

レストランでサンティーニに誘われる女性

キャサラン・スキレンレストランでサンティーニに巡業の新しい助手に誘われる女性(ミス・マッカーシー)は、女優キャサラン・スキレン。プロフィールを調べますと、この人は女優だけでなく近年はドラマ「AVA」のプロデューサーなどでも活躍しているようです。

ハッ、ホッ という奇妙な台詞

サンティーニのショウを見に来たコロンボ警部は、こっそり控え室に忍び込み水槽の幻想の仕掛けを見破ります。その場面で「あの手錠外しはお見事でした、流石、名人ですな~ハッ」という、妙な台詞がありますが、これは英語バージョンも同じでした。
ブログのゲストさんのお話:「英語の表現としては、さほど奇妙なものではありません」とのことでした。参考にさせて頂きます。

新調されたコートが、何とも…

新調されたコロンボのコート新調されたコロンボのコートが滑稽。まるで銀河鉄道999に出てくる、車掌さんのようにも見えました。この1回きりで、またもとのヨレヨレのコートに戻りますが、素晴らしい味付けだと感心します。

マジックショーのライト夫妻

ゲーリー・ライト1回目のマジックショーの舞台に登場するお客さんの男性は俳優「ゲーリー・ライト」です。サンティーニから「ライト夫妻に拍手をどうぞ」と本名で紹介されていますね。ゲーリー・ライトは今計7回目の刑事コロンボ出演で、有終の美を飾りました。

ジェロームの秘書

ドロシー・デルスこのショーが始まる前に、>ジェロームに金庫を渡しながら「今夜も大入りですか?」と話しかける秘書は、ドロシー・デルス。この金髪女性は38話「ルーサン警部の犯罪」で、コロンボ警部が映り込んじゃうシーンのスタッフです。

ほんの些細な発見ですが‥

ベンジー・バンクロフトラストでサンティーニを連行する際に、肩に手をかけ睨まれる警察官は、俳優ベンジー・バンクロフト。この人‥印象薄いのですが、17話「断たれた音」のチェスの試合の立会人の一人です。向かって左に座っている男性。また13話「ロンドンの傘」の芝居の打ち上げパーティにも居ます(笑)

どうでも良いような発見ですが‥

ボブ・ホークスさらにどうでも良い発見ですが、ジェロームの店のウエイターの一人は俳優ボブ・ホークスで、名作19話「別れのワイン」のバーで「先週の火曜に雨が降らなかったか?」と尋ねられ「さぁ覚えていないね」と答える男性のお客さんです。

これは、すごい発見ですが!

今回出てくるジェロームの店(少なくともその外観)は、24話「白鳥の歌」で、エドナとメアリーアンの葬儀が行われた教会と同じです!これはブログのゲストさんがコメントで教えてくれました。すごい発見です。
教会ジェロームの店2436
コロンボマップ
コロンボマップ

監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:マイケル・スローン

グレート・サンティーニ:ジャック・キャシディ(声:田口計
デラ(サンティーニの娘):シンシア・サイクス
フレデリック・ウィルソン刑事:ボブ・ディシー(声:野本礼三
ジェシー・ジェローム:ネヘミア・パーソフ(声:立川勇三)
ハリー・ブランドフォード:ロバート・ロジア(声:草薙幸二郎)
サッカリー:ジョージ・スパーダコス
裏方のジョージ:レドモンド・グリーソン
歌手のダニー:パトリック・カリトン
Mr.ライトライト:ゲーリー・ライト
手品ショップの店主:セイヤー・デヴィッド
警察署の研究員:ロバート・ギボンズ
ジェロームの秘書:ドロシー・デルス
ミス・マッカーシー:キャサラン・スキレン
ラシター:ビクター・イゼイ
マイケル・ラリー:マイク・ラリー
ウエイター:ジョン・フランシス
ウエイター:ボブ・ホークス
巡査:ベンジー・バンクロフト
店の客:レオダ・リチャーズ
店の客:トニー・レーガン

加筆:2024年8月29日