44話「攻撃命令」

How to Dial a Murder / 1977

初期シリーズの最後から二番目の作品です。約10年後から再開された新・刑事コロンボシリーズに影響を与えた作品ではないかと感じます。ストーリーの展開や解決編などに、同じテイストを感じます。

ニコル・ウイリアムソン

犯人役のゲストスター、エリック・メイスン:ニコル・ウイリアムソンは、とても印象に残りました。少し宗教家じみた心理学者ですが、自分のスペースを確保するという自らの教えに反し、感情を剥き出しにする場面もあって笑えます。

 

ちょっと不可解?メイスン博士の性格設定。

このお話、殺害動機がらみの部分でどうも釈然としません。犯人のメイスン博士は「普通の人間のような愛情表現」ができないように描かれています。それなのに、自分の妻と被害者チャーリーとの愛人関係を知ると、まず妻を殺害、そしてチャーリーを殺害(本件)。何が彼を復讐劇にかりたてたのでしょう。自尊心からでしょうか?であれば、妻の不貞を知り当事者2人を殺害したことの方が、もっと恥ずかしい気もします。

キム・キャトラル Kim Cattrall

同居する若い女性:ジョアンナ・ニコルズ「キム・キャトラル」は美しく登場していましたが、メイスン博士に心を寄せるという設定は、不可解だった気もしますね。

トリシア・オニール Tricia O’Neil

犬の訓練士コーコランを演じるトリシア・オニール(Tricia O’Neil)が人気です。詳細は不明ですが映画「タイタニック(1997)」にも出演しているようです。ぜひ探してみたいです。

「コロッケ」「コロンボ」はでっち上げ

コロンボ警部は「犬が言葉に反応して人に噛み付くか?」を模索するシーンで、「コロッケ」「コロンボ」と言いますが、これは日本語吹き替え版のアレンジのようです。実際にはピーター・フォークは「コロンボ」とは言っていません。メイスン博士が留置された犬に「チョコレート」を与えるシーンでコロンボはそれを阻止しますが、「犬にチョコレートは禁物」という知識にも基づいています。実際には少量のチョコレートの摂取では犬は死なないそうです。
この作品を彩るシチュエーションとして重要な、映画オーソン・ウェルズ「市民ケーン」は見ていません。もしも見ていたら、もっと楽しめた作品なのかもしれませね。エリック・メイスンは映画好き、テニス・ビリヤード好きということですが、キャラクターとは不似合いだったかも。それに対しピーター・フォークのビリヤードの腕前はピカイチでした。

コロンボ警部はビリヤードがお得意

2話「死者の身代金」では、初代バーニーの店(?)で、11話「悪の温室」でも犯人ジャービス・グッドウィン宅でもビリヤードの腕前を披露していますが、今回は解決編の進行にビリヤードを利用していて、演出としては少々やりずぎか…。しかしこれはメイスン博士を追いつめ、この際「コロンボを殺してしまえ」と決意させるための布石だったのでしょうね。

言葉遊びに見るコロンボ警部の刑事哲学

メイスン博士とコロンボ警部の「言葉遊び」の場面は興味深いものでした。ストーリー展開の上では「攻撃命令のキーワード」を引き出す仕掛けですが、コロンボ警部の「刑事哲学」を感じさせました。それは「正義=仕事」「苦痛=失敗」というくだり。自分の仕事はお金を得る手段とは考えておらず、「悪を許さない」こと、成功を収めたいという意味ではなく「失敗を許さない」こと、という2点。これは私(ぼろんこ)の目標ともダブることです。
類似シーンとして、40話「殺しの序曲」の中で犯人オリバー・ブラントとの会話でも見られます。

合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?

ブログのお客様からのご指摘。「コロンボに犬をけしかけようとするラスト近くのシーン、合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?」た、確かに!そうですね。シナリオ…全然駄目じゃん(笑)
↑と思いきや…絶対的な存在である飼い主を襲うことはない という原則に基づいたシナリオであればOK!とのことで納得です。
監督:ジェームズ・フローリー
脚本:トム・ラザラス
エリック・メイスン:ニコール・ウィリアムソン
ジョアンナ・ニコルズ:キム・キャトラル
チャーリー・ハンター:ジョエル・ファビアーニ
コーコラン:トリシア・オニール
加筆:2015年4月30日

“44話「攻撃命令」” への37件の返信

  1. 素晴らしいWebに感銘を受けました。

    私は1970年代にNHKで、刑事コロンボ(本来は警部補でしょうけど)を観ていた世代です。
    此度の「攻撃命令」に関してですが、イヌの名前のLaurel and Hardyとは、1920年代に活躍していたコメディアンに由来しているのではありますまいか?
    たしか日本では「極楽コンビ」などと訳されていたようです。

    またコロンボ刑事がビリヤードをやるシーンで壁に貼ってあるのは、やはりコメディアンのW. C. Fieldsと見受けられます。
    1970年代に作られたテレビ作品ですから、当時の視聴者にとって「あぁ懐かしい」と感じるhommage(オマージュ)のひとつ、と考えましたがいかがでしょうか。

    また当時20歳過ぎたばかりのKim Cattrallが、20年後にはSex and the Cityの人気俳優になっていることは、感慨深いことと存じました。
    素晴らしいWebを有難うございました。

    1. コメントありがとうございます。「極楽コンビ」のお話、興味深いですね。「市民ケーン」やコメディアンの小ネタなど、好きな人にはたまらない演出なのでしょう。

  2. ジョアンな可愛い。けど、事件の目撃者になるために同居させてたのか?愛を受け入れないのに同居まあゲストハウスだけど住まわせてて、何か怖いこと起こりそう。
    この子がもうちょっとなんか役割あればなあ。博士に殺されそうになってたのかな。あれ本気じゃないよね。

  3. ひびきさん、私も犬を飼っておりまして、たいへん可愛がっております。散歩で他の犬連れの方をみかけると、わんちゃんに目がいって、同じように愛情がわいてきます。コロンボの犬への愛情が、犯行に使われた犬たちにも向けられており、心が温まる作品です。それを上回る不気味さには勝てませんが(笑)

  4. 訓練された犬が登場する当話は、骨子としてとても楽しめました。
    ただ残念なことに、犯人の苦しみ・悲しみの心情が理解できず、脚本・演出に不満も感じました。
    コロンボの怒りは、家族として共に人生を過ごす犬を、まるで殺人銃器のように扱い、使用し終えたら捨ててしまえ!とばかりに殺すことにばかり先を急ぐ犯人に対しての、正義と愛が源でもあったのでしょう。
    君だけは絶対に許せん!!という煮えたぎるような怒り。
    だから犬達を、何が何でも生かしてあげたい!と必死になった。
    彼らこそが被害者なんだ!!
    という正当性を立証するために駈けずりまわった。
    攻撃命令としての、訓練のし直しは二重の意味で大変だったと思います。
    最初は、
    遠方から電話のベルを聞きつけて集結する

    当人がキーワードを言うことで

    言った当人を攻撃し、殺す
    犯人に対峙したラストシーンでは、
    命令を下す人物が発した言葉に反応し

    離れた場所にいる人物に飛び掛るようにした
    ・・・つまり、飛び掛る対象が違っていたのですね。
    Aが口にする → Aに飛び掛る

    Aが口にする → Bに飛び掛る
    という風に、あの美人訓練士の下でコロンボが寝る間も惜しんで、犬達に新たな反応を教え込んだ。
    彼らの命を救うために。。
    そして犯人を追い詰める為に。
    我が身を汚すことなく、完全犯罪を成し遂げようとした犯人は本当に破廉恥極まりない。
    どの角度から考察しても好きになれませんでした。
    せめて犯人の苦悩が描かれていれば、多少なりとも人間として同調できる箇所があれば、もっと深く濃度のある作品に仕上がったことでしょうに・・・と残念です。
    ストーリーが楽しかったのに、感動が薄くて。
    「もったいない!」と思ってしまいました。
    それにしても、犬も人間も、教育一つで天地の差だと、改めて教えられました。
    同じ単語に対して、どんな反応を示すのか?
    人間の感情・反応もさまざまですものね。
    どれが正しい反応か?ということよりも、これは愛ある反応か?を究極の回答へのよりどころにしたいなぁ、と感じました。

  5. はじめまして
    ここ数ヶ月、視聴時間とHDD残量地獄に陥っています。
    犬の攻撃の件ですが、電話のベルが「その場所に行く」だけでなく「攻撃の準備動作」になっているように思えます。
    警察署のシーンでも電話のベルで攻撃準備に入っているように見えます。
    「電話のベル」+「電話の場所」+「バラのつぼみ」が揃って初めて人間を攻撃するように調教をしたのではないでしょうか?
    攻撃が終了すれば命令はリセットされ、いくら「バラのつぼみ」といっても攻撃は実行されずもう一度「電話のベル」から始める必要がある。
    安全性を考えてもその方が理にかなっているように思えます。間違って誰かが襲われる可能性も低くなるでしょうし。
    それにしても、こないだ観たばかりなのにそんな気がする程度ではっきり覚えていないという自分の記憶力が情けない・・・

  6. 動機、チャンス、方法を状況証拠を絡めて犯人を追い込んだ感じだが、
    推理の域を出てなくて、決定的証拠にはなっていない。
    攻撃命令のキーワードが発覚した形にはなっているが、それすら、
    証拠の一つとなるのだろうか?。単に犬の気まぐれだと主張もできるだろう。
    心電図が証拠なのかな?。それと攻撃命令との関連性はあるのか?。
    犯人が最後の勇み足さえしなければ、裁判は微妙だったのに。残念です。

  7. ふきかえふぁんさん、とても深いお話を書いてくださって、今の私には、すべてを理解できませんが、時間をかけて探求いたします。ありがとうございます!

  8.  BS-TBSで観直し、物語の骨子はサイコホラー要素が70年代の映画よりもっとずっと古典的なものと思えて来ました。
     「青ひげ公」の物語をご存知でしょうか?執拗に求婚を重ね結婚した妻に「この鍵を使う部屋は開けてはいけない」と約束させ、約束を破った妻を何人も殺した城主の話です。欧米では結婚は契約。浮気だ不倫だと言葉を飾っても約束を破った事は確か。約束破りの人間、ここでは不倫妻の相手を(ゴシック調の屋敷で?)殺すという大筋はまさに「青ひげ公」のものでした。
     「青ひげ公」では鍵に血が付いて洗っても落ちない、という『マクベス』のような展開が含まれて居ます。メイスン博士役を演じたニコル・ウィリアムソンが83年にTV映画でマクベスを演じているのはコジツケっぽいですがちょっと面白い。
     電子機器がオカルトっぽい物語に関わって来るのは『エクソシスト』ですね。少女の精神的症状に当時の最新機器で全く説明が付かない不気味さが似通っています。そういえばウィリアムソンは90年の『エクソシスト3』では神父役でしたっけ。
     スピルバーグ作品からの引用もありました。人形「チャーリー」のアップからカメラが急速に引く場面は『激突!』と音楽に至るまで酷似しています。ぬいぐるみの名前「スィグモンド」もスピルバーグ作品『未知との遭遇』や『続 激突!』を手掛けた撮影監督のヴィルモス・スィグモンドの名前からいただいたようです。この名キャメラマンの風貌がクマのぬいぐるみに見えるかどうかはあなた次第(ゴメン)
     地上波未放送部分の追加録音キャストはコロンボが銀河万丈さん。メイスン博士は『奪われた旋律』の佐々木勝彦さんでした。面白いなあご自身『ゴジラ』シリーズに出演し2014年の”GODZILLA”吹き替え版でも芹沢博士(渡辺謙さん)の隣に居た佐々木さんを芹沢博士声の穴埋めに呼ぶなんて。

  9.  当話は突然犬が獰猛に変質して人を喰う話。『オーメン』やスティーブン・キングの『クジョー』みたいなオカルトホラーの香りが漂います。
     動物が人間を襲う映画として連想されたのが『鳥』です。『サイコ』で「忘れられたスター」を呆気無く理不尽な形で退場させたヒッチコック監督は、ブロンド美女が好きで片想いだったティッピ・ヘドレンを鳥の大群に突付かせ啄ばませるという強姦的な場面を創り出していますね。
     キーワードとなる「バラのつぼみ」について。
     『市民ケーン』の主人公・新聞王ケーンのモデルになったのが製作当時のメディア王ハースト(今でいうとマードック的な?)で、彼にまつわるエピソードを沢山盛り込んだと言われています。
     アダルトな話題になってしまいますが、ハーストは売れない女優を愛人に持ち、彼女の秘所を「バラのつぼみ」と呼んでいたという話があります。こういう言葉を選ぶとはメイスン博士、ただの映画好きではない。ジョアンナに対する欲情の表れとも捉えられるでしょう。動物と劣情のシンボル…『鳥』とも共通しています。
     気持ちは分からないでもない。ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で一番エロエロなパートを担当していたのがキム・キャトラルですもん(赤面)
     『オーメン』、『鳥』、『市民ケーン』を、BS-TBSの放送前に御覧になってみてはいかが?放送当時の雰囲気にうまくシンクロ出来るかも知れません。
     吹き替え犯人役が『ゴジラ』の芹沢博士なのですよねー。キャスティングに拘りがあったのかしら。

  10. 犯人は最後に、コロンボへ対して攻撃命令をかけようとする。
    その時、アリバイ工作を何もしていませんよ。
    コロンボはヘマはやりませんが、仮に攻撃命令が成功したとすると、
    コロンボは上司へ報告しているはずなので、必ず捕まります。
    必ず捕まって罪が重くなるだけで、だったら、きれいに観念すべきです。

  11. シリーズ屈指の残忍な殺害方法であるためか、不気味な雰囲気が漂うエピソードです。電話のビープ音や、落ちた藁、心電図といった手がかりはなかなか気が利いていて、ミステリー的にも上々の出来だと思います。ビリヤードのポケットから次々と証拠を取り出すという演出はぼくは洒落ていると思いましたが、人によっては芝居がかっていて新シリーズみたい、と良くは思わないこともあるようです。

  12. コロンボの話術に人間負け、根気負けした感じがする。
    心電図が決めて?。まあ状況証拠や動機は分かるが、結局最後は、
    攻撃命令を仕掛けるという自らの行動によって自滅した。
    ただ心電図に依らなくても、電話会社の通話記録によって
    犯人が電話したのは明らかになるはず。それが何だと言うのか?。
    コロンボでは、度々、この通話記録を強力な証拠の一つとして挙げる
    ことが多い。しかし、エピソードによっては通話記録が証拠となり得る
    にもかかわらず、なぜか証拠に採用しない場合もある。
    一貫性が無いとも言えるが、あまり細かいかな?。

  13. タップおばさん>不思議な魅力をもった作品です。それにしても「犬の訓練士さん」は人気があります。

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