12話「アリバイのダイヤル」

The Most Crucial Game / 1972

犯人ポール・ハンロンの殺害動機

スーザン・ホワードフットボール・チームのゼネラル・マネージャー、ポール・ハンロンがオーナーのエリック・ワグナーを殺害。私の考えでは「動機が不十分」。おそらくハンロンは、大金持ちで球団オーナーのエリックを殺害した後、エリックの妻シャーリー(スーザン・ホワード)と再婚し、お金とスポーツ施設の支配権の両方を手に入れるという壮大な未来像を描いていたのか…。とすれば頷けます。

俳優ロバート・カルプの魅力

ロバート・カルプこの「アリバイのダイヤル」という作品、フットボールスタジアムを背景に、大きなスケールで描かれていますが、何と言っても一番の魅力はゲストスターの「ロバート・カルプ Robert Culp」の演技。数多い刑事コロンボのゲストスターの中で、最も重要な俳優の一人です。

ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件

アリバイのダイヤルのロバート・カルプこれはかなり味の良いトリビアです。ゲストコメンテーターさんが発見してくれました。ロバート・カルプが犯人役を演じた3作品ですが、何といずれも「同じ服を着ているのです」。→詳しくは「ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件」をご覧ください。

刑事コロンボマップ:ポール・ハンロンのコロシアム

詳しくは知りませんが、このロバート・カルプを起用するという前提で、話が展開してゆくと言っても過言ではありません。作品の良し悪しとしては、秀作の4話「指輪の爪あと」を上回るかどうか判断できませんが、今回のカルプは「指輪の爪あと」を凌ぐ迫真の演技です。

「目で語る」演技の応酬

ピーター・フォーク話の流れや細かな点はさておき、今回の主題は「目で語る」演技でした。ハンロンが犯行後に、オフィスに戻り、冷や汗ものでコーチを利用したアリバイを完成させたときの目。コロンボ警部がハンロンのオフィスを初めて訪問するシーンで、警部から「矛盾をつかれた」後の目。

そして最後に、ハンロンの犯行を暴いたコロンボとハンロンの目での語り合い。これらの演技を発見できなければ、この作品の良さは理解できない気がします。

数々の布石

置時計の音がアリバイ崩しの決定打となりますが、「時計が壊れていた」と開き直ることも十分できたでしょう。しかし、もう逃げられない…。と観念させるシチュエーション作り、これがコロンボ警部の真骨頂なのです。それには、数々の布石が存在します。よく見ると、画面背景に何度も登場する置時計。「カルキ臭のしない不自然さ」から始まり、「インターフェアー後の電話」「アイスクリーム売りの車」の発見など。

犯人の「気がかり」を「手がかり」に

キャシー・ケリー・ウィジェットそして最も強烈だったのが二日でクビになった秘書をとの関係を突き止めたことでしょう。場面を振り返ると、何気なく新しい秘書(キャシー・ケリー・ウィジェット)とハンロンの会話「ロゴージンさんから何度も電話がかかって来ています」「今日は多忙を極め、電話には一切出ない」という些細な手がかりにしっかり聞き耳を立てていたのです。

一度見ただけでは気付きにくい、ピーターフォークのさりげない演技。

さらに、強烈な一打。これが最大の打撃です。ハンロンはどんな場面でも、フットボール中継のボリュームを消さないのに「カルキ臭のしない不自然さ」を見抜かれた時に、音を消した。それを初訪問で見破っているコロンボ警部。脱帽です。このシーンを見返すと一瞬コロンボの顔が変わって、「今は、これ以上お邪魔しません」と聴取を切り上げています。明らかにハンロンを犯人だと断定した瞬間だと思われます。

見事なエンディング描写

最後のシーンでは、このような今までに遭遇したことも無い程の頭脳と観察眼を持ったヨレヨレ刑事に、崖っぷちまで追い込まれ、その表情により「自分が犯人でございます」と言わされたハンロン=ロバート・カルプの演技が圧巻、というわけです。テープレコーダーが再生し終わり、空回りするエンディングは素晴らしかったですね。

ディーン・ストックウェル

ディーン・ストックウェル殺害されたエリック・ワグナーは、倒れ方が見事!演じた俳優はディーン・ストックウェルです。雰囲気が変わっていて気付きにくいのですが、29話「歌声の消えた海」(ゲスト俳優:ロバート・ヴォーン)で濡れ衣を着せられたバンドのピアニスト「ロイド・ハリントン」と同一人物です。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー盗聴器を仕掛けた探偵のラルフ・ダブス役は「ヴァル・アヴェリー」で、この他にも、5話「ホリスター将軍のコレクション」貸ヨット屋のオヤジ、25話「権力の墓穴」の前科者アーティ・ジェサップ、34話「仮面の男」のシンドバッドのオーナー「ローウィ」も演じました。

盗聴された場所について

ディーン・ジャガー盗聴されていた場所は「ワグナー邸」「ハンロンの事務所」の2箇所。ワグナー邸を盗聴させたのは弁護士のウォルター(ディーン・ジャガー)、ハンロンの事務所を盗聴させたのは誰かは言及されていないが、これもおそらくウォルター。ダブスが白状したと思われます。

勘違いしそうになりますが、スタジアム内の専用ボックス席は、盗聴されていません。ここは、ロケットの試合がある時だけ使われる部屋で、ハンロンのオフィスは別の場所です。

リゾコーチは

ジェームズ・グレゴリーフットボールチーム「ロケット」のリゾコーチは、8話「死の方程式」のバックナー社長も演じた、ジェームズ・グレゴリー。人間味が感じられるキャラクターです。派手な赤いジャケットがよく似合っていました。

ヴァレリー・ハーパー

ヴァレリー・ハーパーイブ・バブコップ(別名:ロゴージン)を演じたのは女優「ヴァレリー・ハーパー」です。軽いノリで楽しいシーンを作ってくれました。素敵な女優さんです。

旅行会社のフレモント氏

リチャード・スタルハンロンのモントリオール行きの旅行の予約を調べに行った旅行会社の場面。コロンボが靴擦れで足が痛いこともあって、活気のない会話になってます(笑)。面倒臭そうに接客する人は「リチャード・スタル」という俳優さんで、18話「毒のある花」でも旅行会社のボス、21話「意識の下の映像」にも登場しますので要チェックです!

クレメンス刑事はクリフ・カーネル

クリフ・カーネルエリック・ワグナーの邸宅で「らんちきパーティ」発言をするクレメンス刑事は俳優クリフ・カーネルです。9話「パイルD-3の壁」、34話「仮面の男」にも出演しています。

クリンゴン人マーラ

スーザン・ホワードエリックの妻を演じたスーザン・ホワードは、宇宙大作戦(スタートレック)の「宇宙の怪!怒りを喰う!?」で、クリンゴン人の女性マーラ役で出演しています。画面に登場した初めてのクリンゴン女性らしいです。これはすごい発見!

コロンボ警部持参の魔法瓶

コロンボ警部の魔法瓶ラストシーンのスタジアム内の専用ボックスで大きなバッグからテープレコーダーと一緒についでに取り出す魔法瓶。カップ(蓋)が赤くて、本体がアルミ色です。コロンボ警部の私物「魔法瓶A」とします。これは21話「意識の下の映像」で映写技師のロジャー・ホワイトのアイス・ティーが入った魔法瓶、22話「第三の終章」でマロリーさんの殺害現場で、冷めたコーヒーをもらう魔法瓶と同じだ!
→刑事コロンボと魔法瓶

エリック・ワグナー邸はケン・フランクリン邸と同じ

エリック・ワグナー邸は、この他にも「構想の死角」のケン・フランクリン邸としても登場します。長年スタール邸だと勘違いしていましたが、ベルエア地区にある別の家で、「権力の墓穴」のマーク・ハルプリン次長宅に近いです。
エアオールウェイの豪邸

エリックワグナー邸
ポール・ハンロンがアイスクリームの車で訪れるシーン(左)。グーグルアース(右)で見た、この道沿いに車を停めたのだと思われます。個人情報になりますので、現在の家の形は掲載していません。

刑事コロンボマップ

オーシャン・サイド・イースト・カフェ

Ocean Side East Cafe12

Ocean Side East Cafe41

探偵ダブスとコロンボ警部が会う店は、「オーシャン・サイド・イースト・カフェ」です。駐車場の階段を降りた所にお店があります。この階段は41話「死者のメッセージ」で犬の散歩中にアビゲイル・ミッチェルに出くわす、海岸沿いのデッキと同じ(あるいは近い)場所です。手すりの色が違いますが、5年経っているので、取り替えられたのかな。

監督:ジェレミー・ケイガン
脚本:ジョン・デュガン

ポール・ハンロン:ロバート・カルプ(声:梅野泰靖
エリック・ワグナー:ディーン・ストックウェル(声:森功至)
シャーリー・ワグナー:スーザン・ホワード(声:武藤礼子)
ウォルター・キャネル弁護士:ディーン・ジャガー(声:真木恭介)
ラリー・リゾ コーチ:ジェームズ・グレゴリー(声:富田耕生
イブ・バブコック:ヴァレリー・ハーパー(声:荒砂ゆき)
秘書:キャシー・ケリー・ウィジェット
探偵ラルフ・ダブス:ヴァル・アヴェリー(声:塩見竜介
クレメンス刑事:クリフ・カーネル
旅行会社のフレモント:リチャード・スタル(声:谷口節
フットボール実況(声:塩見竜介)
副検視官:ドン・キーファー

加筆:2023年1月14日