5話「ホリスター将軍のコレクション」

Dead Weight / 1971

プロローグ

ジョン・カーマーチン・J・ホリスター元将軍(エディ・アルバート)は、不正を働くパートナーである現役軍人ダットン大佐を殺害。私が子供だった頃、この作品を確かに見ました。ヨットハーバー付近が舞台になっている作品で記憶に深く残っていました。

初期の作品としては少し不人気

私が傑作だと推薦する4話「指輪の爪あと」と6話「二枚のドガの絵」に挟まれ、少々不人気な印象の作品です。犯行の目撃者が犯人の味方になってしまうという、凝ったストーリーです。やはりシンプルな展開の方が、かえって優れた作品になるのでしょうか。

英雄は大悪人

エディ・アルバート実はこの「ホリスター元将軍」は「大悪人」でした。現役軍人ダットン大佐(ジョン・カー)と共謀し不正取り引きで私腹を肥やし、悪事を隠すためにはためらうこと無く大佐を射殺。殺人現場の目撃者ヘレンに接近・誘惑し味方に引き入れるという「卑怯・卑劣のオンパレード」です。→エディ・アルバートと映画「ローマの休日」

このように戦争において「英雄になれる人物像」とは、決して潔く誠実なものではない。エンディングでコロンボ警部がヘレンに言い聞かせる「将軍がいかなる人物かよく表している物」…見せるための軍服、弾丸を受け止めた本、とてもよく理解できますね。

事件の目撃者ヘレン

スザンヌ・プレシェットヘレン・スチュワート役のスザンヌ・プレシェットは、とても可愛らしい女性に描かれていました。ホリスター元将軍のことを最後に「カス」呼ばわりしていた場面は、ほのかな笑いを呼ぶシーンでした。

映画「鳥」の小学校の先生

スザンヌ・プレシェットスザンヌ・プレシェットはコロンボから8年前、名匠ヒッチコックの代表作のひとつ「鳥」に小学校の先生「アニー・ヘイワース」役で出ています。主演のティッピ・ヘドレンのブロンド・ヘアと対照的に、黒髪で目鼻立ちがキリッとした印象が魅力的でした。

日本語吹き替えは久松保夫さん

ちなみにホリスター将軍(エディ・アルバート)の日本語吹き替えは「久松保夫」さんで、スタートレック(宇宙大作戦)のMr.スポックの声でもお馴染み。でも、Mr.スポックのレナード・ニモイが刑事コロンボ15話「溶ける糸」に出演の際にメイフィールド医師を天田俊明さんが担当した理由は不明(今後調べてみます)。

真珠を散りばめたコルト拳銃

ブログゲストさんから「将軍愛用の真珠を散りばめたピストルが、いつ陳列されたか?」という疑問が寄せられました。ダットン大佐を殺害する時は確かに、木箱から取り出しました。いつ展示室に持ち込んだかは、場面を見るだけでは断定できないようです。大切な「本」も木箱に無かったので、祝典当日に自分で持ち込んだのかな?凶器なので…捨ててしまうか…迷ったか。

木箱の中に無かったことがヒントになってしまう

コロンボが木箱の中味を確かめた際、確かに真珠の拳銃は入っていませんでした。このことが逆に「凶器がこの拳銃である」というヒントになってしまう。45口径であれば大佐殺害の銃である可能性が高いことに、もっと早い段階で気づくのでは?と疑問は残ります。コロンボは既に展示室に足を運んでいるはずですし。
それにしてもやはり、将軍はこの銃を海にでも捨てるべきだった。誇りたいはずの名誉の品だけど、結局はそれが命取りでした。

軍人を扱ったコロンボ作品

戦争の国アメリカ(と表現すると失礼でしょうか?)ならではの題材だと感じます。刑事コロンボには他にも数作品で、犯人役が軍人または軍事関連の作品がありますね。この作品に関してはその色は薄く「過去の栄光」としての「英雄・将軍」を描いています。後の作品28話「祝砲の挽歌」のラムフォード大佐、49話「迷子の兵隊」のパジェット将軍にもこのイメージは通じます。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー帽子とサングラスを着用していて気付きにくいのですが、犯行を目撃するヨットハーバーで「貸ヨット屋のオヤジ」を演じるのはヴァル・アヴェリー。12話「アリバイのダイヤル」で盗聴器を仕掛けた探偵:ダブス、25話「権力の墓穴」では重要人物:前科者のアーティ、さらには34話「仮面の男」でローウィーを演じています。

ティモシー・ケリー

ティモシー・ケリー窓に貼られた店名文字(逆版)で推測しますと「バートの店」だと分かります。「チリ」を得意料理とするシェフは俳優ティモシー・ケリー。このティモシー・ケリーは刑事コロンボに3回登場する重要な俳優さんです。

テレビ番組のアナウンサー

クリート・ロバーツマーチン・J・ホリスター元将軍を讃えるテレビ番組でアナウンサーをつとめるのは「クリート・ロバーツ」。この人は20話「野望の果て」の選挙番組でもアンサウンサーとして登場します。

エディングシーンでコロンボの替え玉

刑事コロンボの替え玉エンディングシーンの後ろ姿は一部、ピーターフォークではありません。ヘレンさんが「だらしのない服装をしているよりずっと好感が持てる」と言った後、ホリスター将軍が現れる直前まで、少し横顔が見えちゃいます。情報によると監督をするしないで、制作側ともめていたそう。出演者のエディ・アルバートやスザンヌ・プレシェットとの仲もこじれたそうです。(*2021年ブログコメンテーターさんの発見です。)

エキストラ俳優ゲーリー・ライト

ゲーリー・ライトこの時にホリスター将軍を連行する刑事の一人は俳優「ゲーリー・ライト」。セリフこそありませんが、刑事コロンボに7回も出演した常連さんなのです。眉毛が濃い目で、ぱちっとした感じの人ですので目立ちます。他の5回も探してみてください。

映画「ローマの休日」

ローマの休日のエディ・アルバート映画「ローマの休日」と言えばその名を知らない人がいないほど有名です。この中で、カメラマンのアーヴィング役でエディ・アルバートが出演していますね。この時彼は47歳、ホリスター将軍は18年後の65歳になります。主演はグレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーン。このオードリー・ヘプバーンは14話「偶像のレクイエム」でゴシップ記事作家のジェリー・パークスを演じた俳優「メル・ファーラー」と結婚していました。

ギル・メレの音楽

冒頭からダットン大佐が登場する前までのBGMにゆったりとしたジャズ音楽が流れます。それに短いですがエンディングシーンのBGM。これらはジャズ音楽家「ギル・メレ(Gil Mellé)」によるものです。ギル・メレの音楽はこの他、4話「指輪の爪あと」 、8話「死の方程式」などにも使われています。

ホリスター将軍のヨットハーバー

将軍の船に「THE IRON HORSEMAN NEW PORT」と書いてあります。おそらくロサンゼルスの南に位置する「バルボア・ベイ・リゾート」がホリスター将軍の家ではないかと思われます。調べによると、このホリスター将軍の家は、実際にはピーターフォークの所有だったらしいです。ここは「さらば提督」のチャーリー・クレイのヨットも停泊しています。間違っているかもしれません、鵜呑みにしないでください。
バルボア・ベイ・リゾート

ホリスター将軍のヨットハーバー

その他のエピソード

将軍の船に乗せてもらった時に船酔いをしまして、将軍から「コロンブスの子孫のくせにだらしない」と言われています。(コロンボ警部の好き嫌い)また、将軍の家で、ライターを借りています。退役記念に幕僚からプレゼントとされた、とても立派なライターでした。

監督:ジャック・スマイト
脚本:ジョン・デュガン

マーチン・J・ホリスター:エディ・アルバート(声:久松保夫)
ヘレン・スチュワート:スザンヌ・プレシェット(声:鈴木弘子)
ヘレンの母(ウォルターズ夫人):ケイト・リード
ロジャー・ダットン:ジョン・カー
ハリー・バーンズ:ヴァル・アヴェリー(声:清川元夢)
バート:ティモシー・ケリー(声:鈴木泰明)
サンチェス巡査:ロン・カストロ
刑事:ゲーリー・ライト
アナウンサー:クリート・ロバーツ

加筆:2021年9月4日

12話「アリバイのダイヤル」

The Most Crucial Game / 1972

犯人ポール・ハンロンの殺害動機

スーザン・ホワードフットボール・チームのゼネラル・マネージャー、ポール・ハンロンがオーナーのエリック・ワグナーを殺害。私の考えでは「動機が不十分」。おそらくハンロンは、大金持ちで球団オーナーのエリックを殺害した後、エリックの妻シャーリー(スーザン・ホワード)と再婚し、お金とスポーツ施設の支配権の両方を手に入れるという壮大な未来像を描いていたのか…。とすれば頷けます。

俳優ロバート・カルプの魅力

ロバート・カルプこの「アリバイのダイヤル」という作品、フットボールスタジアムを背景に、大きなスケールで描かれていますが、何と言っても一番の魅力はゲストスターの「ロバート・カルプ Robert Culp」の演技。数多い刑事コロンボのゲストスターの中で、最も重要な俳優の一人です。

ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件

アリバイのダイヤルのロバート・カルプこれはかなり味の良いトリビアです。ゲストコメンテーターさんが発見してくれました。ロバート・カルプが犯人役を演じた3作品ですが、何といずれも「同じ服を着ているのです」。→詳しくは「ロバート・カルプが毎回同じファッションをしている件」をご覧ください。

刑事コロンボマップ:ポール・ハンロンのコロシアム

詳しくは知りませんが、このロバート・カルプを起用するという前提で、話が展開してゆくと言っても過言ではありません。作品の良し悪しとしては、秀作の4話「指輪の爪あと」を上回るかどうか判断できませんが、今回のカルプは「指輪の爪あと」を凌ぐ迫真の演技です。

「目で語る」演技の応酬

ピーター・フォーク話の流れや細かな点はさておき、今回の主題は「目で語る」演技でした。ハンロンが犯行後に、オフィスに戻り、冷や汗ものでコーチを利用したアリバイを完成させたときの目。コロンボ警部がハンロンのオフィスを初めて訪問するシーンで、警部から「矛盾をつかれた」後の目。

そして最後に、ハンロンの犯行を暴いたコロンボとハンロンの目での語り合い。これらの演技を発見できなければ、この作品の良さは理解できない気がします。

数々の布石

置時計の音がアリバイ崩しの決定打となりますが、「時計が壊れていた」と開き直ることも十分できたでしょう。しかし、もう逃げられない…。と観念させるシチュエーション作り、これがコロンボ警部の真骨頂なのです。それには、数々の布石が存在します。よく見ると、画面背景に何度も登場する置時計。「カルキ臭のしない不自然さ」から始まり、「インターフェアー後の電話」「アイスクリーム売りの車」の発見など。

犯人の「気がかり」を「手がかり」に

キャシー・ケリー・ウィジェットそして最も強烈だったのが二日でクビになった秘書をとの関係を突き止めたことでしょう。場面を振り返ると、何気なく新しい秘書(キャシー・ケリー・ウィジェット)とハンロンの会話「ロゴージンさんから何度も電話がかかって来ています」「今日は多忙を極め、電話には一切出ない」という些細な手がかりにしっかり聞き耳を立てていたのです。

一度見ただけでは気付きにくい、ピーターフォークのさりげない演技。

さらに、強烈な一打。これが最大の打撃です。ハンロンはどんな場面でも、フットボール中継のボリュームを消さないのに「カルキ臭のしない不自然さ」を見抜かれた時に、音を消した。それを初訪問で見破っているコロンボ警部。脱帽です。このシーンを見返すと一瞬コロンボの顔が変わって、「今は、これ以上お邪魔しません」と聴取を切り上げています。明らかにハンロンを犯人だと断定した瞬間だと思われます。

見事なエンディング描写

最後のシーンでは、このような今までに遭遇したことも無い程の頭脳と観察眼を持ったヨレヨレ刑事に、崖っぷちまで追い込まれ、その表情により「自分が犯人でございます」と言わされたハンロン=ロバート・カルプの演技が圧巻、というわけです。テープレコーダーが再生し終わり、空回りするエンディングは素晴らしかったですね。

ディーン・ストックウェル

ディーン・ストックウェル殺害されたエリック・ワグナーは、倒れ方が見事!演じた俳優はディーン・ストックウェルです。雰囲気が変わっていて気付きにくいのですが、29話「歌声の消えた海」(ゲスト俳優:ロバート・ヴォーン)で濡れ衣を着せられたバンドのピアニスト「ロイド・ハリントン」と同一人物です。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー盗聴器を仕掛けた探偵のラルフ・ダブス役は「ヴァル・アヴェリー」で、この他にも、5話「ホリスター将軍のコレクション」貸ヨット屋のオヤジ、25話「権力の墓穴」の前科者アーティ・ジェサップ、34話「仮面の男」のシンドバッドのオーナー「ローウィ」も演じました。

盗聴された場所について

ディーン・ジャガー盗聴されていた場所は「ワグナー邸」「ハンロンの事務所」の2箇所。ワグナー邸を盗聴させたのは弁護士のウォルター(ディーン・ジャガー)、ハンロンの事務所を盗聴させたのは誰かは言及されていないが、これもおそらくウォルター。ダブスが白状したと思われます。

勘違いしそうになりますが、スタジアム内の専用ボックス席は、盗聴されていません。ここは、ロケットの試合がある時だけ使われる部屋で、ハンロンのオフィスは別の場所です。

リゾコーチは

ジェームズ・グレゴリーフットボールチーム「ロケット」のリゾコーチは、8話「死の方程式」のバックナー社長も演じた、ジェームズ・グレゴリー。人間味が感じられるキャラクターです。派手な赤いジャケットがよく似合っていました。

ヴァレリー・ハーパー

ヴァレリー・ハーパーイブ・バブコップ(別名:ロゴージン)を演じたのは女優「ヴァレリー・ハーパー」です。軽いノリで楽しいシーンを作ってくれました。素敵な女優さんです。

旅行会社のフレモント氏

リチャード・スタルハンロンのモントリオール行きの旅行の予約を調べに行った旅行会社の場面。コロンボが靴擦れで足が痛いこともあって、活気のない会話になってます(笑)。面倒臭そうに接客する人は「リチャード・スタル」という俳優さんで、18話「毒のある花」でも旅行会社のボス、21話「意識の下の映像」にも登場しますので要チェックです!

クレメンス刑事はクリフ・カーネル

クリフ・カーネルエリック・ワグナーの邸宅で「らんちきパーティ」発言をするクレメンス刑事は俳優クリフ・カーネルです。9話「パイルD-3の壁」、34話「仮面の男」にも出演しています。

クリンゴン人マーラ

スーザン・ホワードエリックの妻を演じたスーザン・ホワードは、宇宙大作戦(スタートレック)の「宇宙の怪!怒りを喰う!?」で、クリンゴン人の女性マーラ役で出演しています。画面に登場した初めてのクリンゴン女性らしいです。これはすごい発見!

コロンボ警部持参の魔法瓶

コロンボ警部の魔法瓶ラストシーンのスタジアム内の専用ボックスで大きなバッグからテープレコーダーと一緒についでに取り出す魔法瓶。カップ(蓋)が赤くて、本体がアルミ色です。コロンボ警部の私物「魔法瓶A」とします。これは21話「意識の下の映像」で映写技師のロジャー・ホワイトのアイス・ティーが入った魔法瓶、22話「第三の終章」でマロリーさんの殺害現場で、冷めたコーヒーをもらう魔法瓶と同じだ!
→刑事コロンボと魔法瓶

エリック・ワグナー邸はケン・フランクリン邸と同じ

エリック・ワグナー邸は、この他にも「構想の死角」のケン・フランクリン邸としても登場します。長年スタール邸だと勘違いしていましたが、ベルエア地区にある別の家で、「権力の墓穴」のマーク・ハルプリン次長宅に近いです。
エアオールウェイの豪邸

エリックワグナー邸
ポール・ハンロンがアイスクリームの車で訪れるシーン(左)。グーグルアース(右)で見た、この道沿いに車を停めたのだと思われます。個人情報になりますので、現在の家の形は掲載していません。

刑事コロンボマップ

オーシャン・サイド・イースト・カフェ

Ocean Side East Cafe12

Ocean Side East Cafe41

探偵ダブスとコロンボ警部が会う店は、「オーシャン・サイド・イースト・カフェ」です。駐車場の階段を降りた所にお店があります。この階段は41話「死者のメッセージ」で犬の散歩中にアビゲイル・ミッチェルに出くわす、海岸沿いのデッキと同じ(あるいは近い)場所です。手すりの色が違いますが、5年経っているので、取り替えられたのかな。

監督:ジェレミー・ケイガン
脚本:ジョン・デュガン

ポール・ハンロン:ロバート・カルプ(声:梅野泰靖
エリック・ワグナー:ディーン・ストックウェル(声:森功至)
シャーリー・ワグナー:スーザン・ホワード(声:武藤礼子)
ウォルター・キャネル弁護士:ディーン・ジャガー(声:真木恭介)
ラリー・リゾ コーチ:ジェームズ・グレゴリー(声:富田耕生
イブ・バブコック:ヴァレリー・ハーパー(声:荒砂ゆき)
秘書:キャシー・ケリー・ウィジェット
探偵ラルフ・ダブス:ヴァル・アヴェリー(声:塩見竜介
クレメンス刑事:クリフ・カーネル
旅行会社のフレモント:リチャード・スタル(声:谷口節
フットボール実況(声:塩見竜介)
副検視官:ドン・キーファー

加筆:2023年1月14日