37話「さらば提督」

Last Salute to the Commodore / 1976

完全に倒叙でない刑事コロンボ作品です。私のような保守的な刑事コロンボファンの場合、受け入れ難いのですが、普通に考えれば面白い作品なのだと思えます。

提督はジョン・デナー

ジョン・デナー提督(オーティス・スワンソン)役の俳優さんはジョン・デナーで、24話「白鳥の歌」のパング・ボーンも演じています。今回は帽子をかぶっているので、パング・ボーンとはまた別の印象が強いですね。このように作品をまたいで出演している俳優さんの発見は、とても楽しいです。

ロバート・ヴォーン

ロバート・ヴォーン死体遺棄の犯人(チャーリー・クレイ)として、29話「歌声の消えた海」のロバート・ヴォーンが再登板。今回は、いつもに増して馴れ馴れしく接近してくるコロンボ警部にタジタジな感じでした。私としては‥ロバート・ヴォーン=ダンジガーさんがお気に入りですが。

フレッド・ドレイパー

フレッド・ドレイパー18話「毒のある花」31話「5時30分の目撃者」等、数々のコロンボ作品に出演のフレッド・ドレイパーがスワニー・スワンソン役で登場。また、お馴染みの「クレーマー刑事:ブルース・カービー」が重要な役を務めるなど、華やかでした。

シオドア・アルビンスキー刑事

デニス・デューガンでも、事件解決編で新米エリート刑事のシオドア・アルビンスキー:デニス・デューガン(なぜか通称マック)と一緒に、声高に説明をし出すシーンは、日本のサスペンス劇場顔負けの演出で楽しめました(笑)。

ブログ訪問者さんからの情報(1)

この「デニス・デューガン」は、その後の作品63話「4時02分の銃声」で監督をつとめています。さらには(1973年 – 1987年の間)「ジョイス・ヴァン・パタン」の夫だったそうです。彼女は27話「逆転の構図」、39話「黄金のバックル」に出演している重鎮女優ですね。

執事のタナーを発見!

ウィルフリッド・ハイド=ホワイト弁護士の老紳士ケタリングは。13話「ロンドンの傘」でサー・ロジャーの執事タナーを演じた俳優「ウィルフリッド・ハイド=ホワイト」でした。アリバイの証言内容など、ちょっと一癖ある人物を好演しています。

金太郎あめのような俳優

ジョン・フィネガンそれは「ジョン・フィネガン」。今回はガードマンの役で出てました。調べてみたら合計12回出演しているようです。おそらくコロンボシリーズ最多出演(セリフあり&クレジット)の俳優と考えて間違いないでしょう。

最終回的な匂いの漂う作品

ジョン・フィネガンラストシーンのクレーマー刑事との会話「やめたんじゃないですか?」「まだまだ。まだやめられませんよ。もうちょい、やらせてもらうよ」。と煙草の話に引っ掛けた台詞があります。これは本作品が最終回になる予定であったと伝えられるが「ピーターフォークはやる気満々」という意思表示に映ります。「カミさんも乗せてやろうと思って…せめてこのボートに」と海に去って行くコロンボ警部でした。しかし…残念なことに、BGMの「THIS OLD MAN」のメロディが間違っているんです!

ジョシュア・ブライアント

ジョシュア・ブライアントスワンソン造船所の所長ウェイン・テイラー(黄色いジャンパーの人)は俳優ジョシュア・ブライアント。この人は25話「権力の墓穴」でマクマレイ検視官を演じていました。

特に第7シーズンに秀作が続く!

しかし本作が意外に好評だったのか? 第6シーズン以降の8作品が制作されることになりました。その中には41話「死者のメッセージ」43話「秒読みの殺人」など私の好きな作品も含まれています。

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37話「さらば提督」のチャーリー・クレイ邸と、55話「マリブビーチ殺人事件」のテレサ・ゴーレン邸は同じでした。これには両作とも脚本が「ジャクソン・ギリス」であったことも関係しているのでしょうか。

クレイ邸テレサ邸

左:チャーリー・クレイ邸 右:テレサ・ゴーレン邸

周囲が車寄せの道に囲まれた円形の花壇が印象的な豪邸です。マリブビーチというロサンゼルス中心から北西に位置します。おそらく近くには「マイロ・ジャナス」「ブリマー」「マックス・バーシーニ」「フィールディング・チェイス」などの有名人が住んでいました。実在の「ピーター・フォーク」の家も近かったようです。
それに対しヨットハーバー「 バルボア・ベイ・リゾート」は、ロス中心からずっと南の方で、家とはぜんぜん近くないのです。

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジャクソン・ギリス

オーティス・スワンソン提督:ジョンデナー(声:小林修
チャーリー・クレイ:ロバート・ヴォーン(声:西沢利明
ジョアンナ・クレイ:ダイアン・ベイカー(声:水野久美)
スワニー・スワンソン:フレッド・ドレイパー(声:佐藤英夫)
リザ・キング:スーザン・フォスター(声:松金よね子)
ケタリング:ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(声:松村彦次郎)
クレーマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也
シオドア・アルビンスキー刑事:デニス・デューガン(声:玄田哲章)
ガードマン:ジョン・フィネガン
ウェイン・テイラー:ジョシュア・ブライアント(声:鈴木泰明)
オコーナー少尉:ロッド・マッケリー(声:納谷六朗

加筆:2022年8月14日 

63話「4時02分の銃声」

Butterfly In Shades Of Grey / 1993
ジャック・ラウファーラジオ有名コメンテーターで政治評論家の「フィールディング・チェイス」が養女の友人で元スタッフのジェリー・ウインタース(ジャック・ラウファー)を殺害。フィールディング・チェイスとジェリー・ウインタースの家の場所→刑事コロンボMAP

ウィリアム・シャトナー+矢島正明さんが実現

犯人はかのカーク船長ことウィリアム・シャトナー。今回はこの主人公の圧倒的なキャラクター描写に尽きます。しかも吹き替えの矢島正明さんは絶品。短気で怒鳴り散らしたかとおもったら、猫なで声で電話をかけるなど、ばっちり楽しませてくれました。矢島さんは、ロバート・ヴォーン(29話「歌声の消えた海」のダンジガー、37話「さらば提督」のチャーリー・クレイ)も持ち役としていましたが、この2作とも西沢利明さんが担当されています。

カーク船長 vs 刑事コロンボ

カーク船長と刑事コロンボの競演というだけでも、他に何も必要ないほど「濃い」状況。冒頭のラジオ番組放送シーンで「カーク船長がチャーリーからの電話を受ける」というシーンにも少し「ニヤリ」でした。

怪物「フィールディング・チェイス」

ウィリアム・シャトナー犯行はかなりリスキーですし、わざと残した証拠のハンカチなど幼稚な面も見逃せません。それにしても、このフィールディング・チェイスという人物像、強烈です!コロンボ警部の「そうそう、もう一つだけ…」の展開に「そんなに物忘れがひどいなら、病院へ行きたまえ」とリアクションした人物は初ではないでしょうか。

少し大袈裟なトーンの吹き替えと評される石田太郎さんですが、今回のトーンは矢島正明さんとの絡みもあり、けっこう良い雰囲気だったと感じました。その中でもエンディング近くのフィールディングの自宅で、ビクトリアの母の肖像画に対し「温かい人柄が偲ばれますなー」と、小馬鹿にしたような台詞まわしは絶妙でした。

久々の「こうなったらコロンボを殺してしまえ」

さらには解決シーンでは、コロンボのウソにおびき出されたあげく犯行を暴かれ、この際「コロンボを殺してしまえ」と銃に手をかけるフィールディング・チェイス。可愛すぎます!このシーンで、クラクションを鳴らすピーター・フォークの演技は絶品だと感じました。
原題は「Butterfly In Shades Of Grey」で直訳は「灰色のシェードの蝶」で意味不明。邦題の「4時02分の銃声」もイマイチな気がしますが、どうでしょうか。

モリー・ヘーガンが再登場

モリー・ヘーガン養女のビクトリア(ビッキー):モリー・ヘーガンは、47話「狂ったシナリオ」のアレックスの元恋人で女優の「ルース・ジャニガン」役でも出演していました。二度とも重要な役柄でしたね。このモリー・ヘーガンは映画「ハドソン川の奇跡(Sully)」に客室乗務員ドリーン・ウェルシュ役で出演しています。

傲慢な独裁者が守りたかったもの…恐れたもの…

フィールディング・チェイスは政治アナリストとして成功をおさめていますが、その背景には「独裁者的」「手段を選ばない」ことで、多くの敵をつくります。そして相手から意に沿わない行動を示されると「お前を破滅させる」と恫喝するのです。非常に寂しい立場の成功者と言えます。しかも、溺愛する養女ビクトリアからも「パパに必要なのはパパだけ」と、愛情を拒絶されてしまいます。
自ら多くの敵を作り、敵対意識を糧に成功して来たフィールディングが最も恐れたもの…それは敵対者から及ぶ、愛するものへの復讐…だったんでしょうね。恨まれる人生を生きることは避けたいものです。

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監督の「デニス・デューガン」は、37話「さらば提督」で、シオドア・アルビンスキー刑事を演じました。さらには(1973年 – 1987年の間)「ジョイス・ヴァン・パタン」の夫だったそうです。彼女は27話「逆転の構図」、39話「黄金のバックル」に出演している重鎮女優ですね。

フィールディング・チェイスとジェリー・ウインタースの家

フィールディング・チェイスとジェリー・ウインタースの家の場所はコロンボマップでも見ることができます。
マリブ・ピア(フィールディング・チェイス邸)
サンタモニカ(ジェリー・ウインタースの家)

監督:デニス・デューガン
脚本:ピーター・S・フィッシャー

フィールディング・チェイス:ウィリアム・シャトナー(声:矢島正明
ビクトリア・チェイス:モリー・ヘイガン(声:佐々木優子)
ジェリー・ウインタース:ジャック・ラウファー(声:堀内賢雄)
ゴードン・マディソン上院議員:ロビン・クラーク
ディードレ・ロス:ビバリー・リーチ

テッド・マローイ:マーク・ロナウ
ルー・ケイトン:リチャード・クライン
家政婦:デニス・クマガイ

加筆:2024年10月8日