52話「完全犯罪の誤算」

Agenda for Murder / 1990

政界入りを目論む弁護士オスカー・フィンチが自分の過去の汚点を知るステイプリンを殺害。フィンチは下院議員ポール・マッキーを支援し将来の司法長官を目指すが、無名時代にマッキーと共に犯した「証拠書類隠滅」をネタにステイプリンより脅迫されて犯行に至ります。

パトリック・マクグーハンが登場

犯人役のパトリック・マクグーハンはコロンボ作品中、最も重要だとも言えるゲスト俳優。異常な程時間にシビアな犯人フィンチが、日本人には理解し難い下ネタジョークに大笑いしたり、タイヤを鳴らして急発進したりする場面はこっけい。このフィンチの最大の欠点が「つまみ食い」であるというのも、かなり計算された笑いどころだと感じます。

殺しの場面に血を使わないコロンボシリーズだったが…一滴だけ

殺人シーンの描き方は緊張感が漂うものでした。けど、撃たれた後に血が一滴?は若干違和感があります。それでもフィンチの工作シーンや、殺害後オフィスに戻って濡れた髪を乾かす仕草など、良く描かれていました。

新シリーズ中では最高ランクの作品

音楽の使い方も好きでした。冒頭のシーンの「デキシーランドジャズ」は印象的ですし、撃たれた時の効果音的な音楽も絶妙でした。エンディングの「命取りでした」というコロンボの言葉で画面が固まる場面など、新・刑事コロンボの作品の中ではとても良いの出来だと言えます。

オスカー・フィンチの人物像は、強烈!

パトリック・マクグーハン弁護士としての名声を博したオスカー・フィンチ。執拗につきまとうコロンボ警部に「死後硬直のアドバイス」をしたり、不敵な笑みを浮かべて自信満々に「電話じゃ人は殺せんよ」とマッキー議員に豪語したり、とても魅力的な描かれていました。そうそう、警部の「プジョー403」を「鉄クズ」と呼んでいましたね。

吹き替えは俳優の久米明さん。やはり流石です。選挙に勝利した祝賀ムードの中でコロンボ警部に「濡れちゃったズボン」と大声で指摘され、「失望したよ、キミ」という台詞を吐くあたり、最高潮です。また「下ネタジョーク」でアイリッシュのジョークは聞きたくないと答えるフィンチ氏。パトリック・マクグーハンはおそらくアイリッシュ系ではないでしょうか?自分はこの手の話には詳しくないので、勉強する必要がありそうです。

マッキー議員

デニス・アーントポール・マッキー下院議員役のデニス・アーント[Denis Arndt]もなかなかの好演です。表ではコロンボ警部に敬意を表しながらも、裏では「猿芝居」呼ばわりしていますね。でも、やはりそこは議員。うっとうしいサインの要求にも笑顔で応えていました。

フランク・ステイプリン

ルイス・ゾリックオスカー・フィンチの弱みに付け込み殺害されるフランク・ステイプリン役はルイス・ゾリック。声優さんの吹き替えもぴったりでとても良い味を出していました。「もし俺が5年くらったら、いや例え半年でも‥俺を見殺しにした奴を良く思わんだろう」は凄みがあります。テレビドラマ「あなたにムチュー(Mad About You)」で主人公の父親バート・バックマンが代表作のひとつ。

モントゴメリー候補

アーサー・ヒル大統領候補のモントゴメリー知事は俳優アーサー・ヒル。大物らしい堂々とした演技で印象に残りました。大草原の小さな家にも出演しているようで、調べてみます。(そして調べてみました)

アーサー・ヒル

アーサー・ヒルこのアーサー・ヒルですが、大草原の小さな家「春の別れ(前後編)」で、チャールズ・インガルスの父親、ランスフォードを演じていました。準主役級でかなり良い役です。ぜひご覧ください。大草原が1976年(54歳)コロンボが1990年(68歳)。

クレーマー刑事出演作品

クレーマー刑事役名としてのクレーマー刑事(演:ブルース・カービー)が出演している最後の作品となります。その後の65話「奇妙な助っ人」では、残念ですがブリンドル刑事。クレーマー刑事は28話「祝砲の挽歌」で初登場、主に第4シーズン第5シーズンを中心に活躍しました。

選挙参謀のティム

スタンリー・カメルモントゴメリー候補の選挙参謀ティムはスタンリー・カメル。良い俳優さんだな〜と思ったら、やはり数々のテレビドラマに出演しています。「名探偵モンク」では神経質な主人公の主治医Dr.チャールズ・クローガーを演じました。しかし2008年に心臓発作で急死。後任ともいえるDr.ネーブン・ベルは33話「ハッサン・サラーの反逆」のヘクター・エリゾンドが担っています。

オスカー・フィンチの秘書ルイーズ

アン・ヘイニーテキパキした感じの秘書ルイーズは女優アン・ヘイニー。仕事に厳しそうな反面、優しさも備えた素敵な役どころでした。彼女はたくさんの映画やドラマに出演しています。

邦題「完全犯罪の誤算」について

「完全犯罪の誤算」という邦題は原題「Agenda for Murder(殺人の計画?)」とかけ離れますが惜しいですね~。フィンチ氏の「忙しさ」を表現すると思われる「Agenda」にこだわった題名が欲しかったと悔やまれます。

オスカー・フィンチの事務所

監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ブルーム

オスカー・フィンチ:パトリック・マクグーハン(声:久米明)
ポール・マッキー議員:デニス・アーント(声:黒沢良)
フランク・ステイプリン:ルイス・ゾリック(声:小松方正)
モントゴメリー候補:アーサー・ヒル
秘書ルイーズ:アン・ヘイニー
フィンチ夫人:アン・ヘイニー
ティム・ヘインズ:スタンリー・カメル
トビー・リット:スティーブン・フォード
レベッカ・クリスティ:アニー・スチュワート
ダイアン:キャロル・バービー
クレーマー刑事:ブルース・カービー

加筆:2024年8月29日