29話「歌声の消えた海」

Troubled Waters / 1975

お馴染みの俳優、ロバート・ヴォーンが登場。

ロバート・ヴォーン中古車販売会社社長ヘイドン・ダンジガー(ロバート・ヴォーン)が登場。この俳優ロバート・ヴォーンは、0011ナポレオン・ソロというテレビ番組をよく見ていたので、最初にこの作品を見た当時(おそらく私は小学生)は、最も好きな作品のひとつでした。

人の弱みに付け込むことは「命取り」

動機は自分の浮気相手から脅迫されたというもの。今回の犯人ダンジガー氏は、コロンボシリーズの犯人の中でも抜群の「セレブ度」ではない感じ。苦労して中古車販売会社を育ててきた印象です。だから、それを失うことをとても恐れたし、脅迫には屈しないという感情も出たのでしょう。人の弱みに付け込むことは「命取り」に なりかねませんね。18話「毒のある花」21話「意識の下の映像」でも、犯人を脅迫した人が、返り討ちにあってますね。

今回のテーマが「船旅での殺人事件」ということで、まぁ壮大なスケールの中で娯楽性もたっぷりの推理モノテレビ番組~みたいになりがちですが、そんなことそっちのけで「最高傑作クラス」の充実感がありました。コロンボ夫人はアカプルコまでの客船内で一度も登場しません。しかもコロンボ警部はいつも通りのレインコート姿。この設定は疑問を持たずに受け入れるべし…ですね。

濡れ衣工作はほとんどの場合、命取りになっちゃう

29作品目ということで、コロンボ警部の貫禄具合もちょうど良い感じです。医務室で「鳥のはね」を発見したことが、ダンジガーを容疑者として絞ることの決定的な理由ですが、その他にも犯人を被害者のバンドのメンバーロイドに見せかけたい「工作」が、すべてコロンボの「引っかかり」の対象になってしまうという皮肉。
コロンボ作品で犯人が「被害者の自殺にみせかける」「第三者に濡れ衣を着せる」という行動を起こすと、ほとんど「命取り」になります。この作品では顕著ですね。

どんどん手袋が減っちゃいますよね(笑)

事件解決の道筋は大疑問。ダンジガーはコロンボ警部から「犯人は医務室から使い捨てのゴム手袋を拝借して犯行に使った。それは数を数えたから確かだ。」と、説明されているのに、同じ場所から「決め手の証拠を作るための手袋」を、もう一回拝借して濡れ衣工作をした。

ダンジガー役の声優さん

ヘイドン・ダンジガーの声を演じたのは「西沢利明」さんで、刑事物や時代劇で活躍された俳優さんです。今回は少し声が「裏返りそう」になる場面があり、それも私は好きです。(笑)ロバート・ヴォーンの吹き替えは西沢さんの他、矢島正明さんも担われています。

ダンジガー夫人は手袋を忘れた…

バーナード・フォックスダンジガーのゴルフ用の手袋を妻のシルビア(ジェーン・グリア)が忘れたのが、そもそもの原因。「アカプルコで買えばすむことよ」に「船中での殺人に使うつもりだったんだ」と言い返せるわけもなかったですね。

鼻歌で犯人を追いつめる珍しいシーン。

ラストシーンでは、コロンボ警部の得意技「犯人の行動から『自分が犯人でございます』と本人に言わせる」という、最もスカっとする手法が見られます。しかも、警部は鼻歌で例の「THIS OLD MAN」を歌いながら、犯人ダンジガーを追いつめます。この時の表情が最高ですね。実際のピーターフォークの鼻歌では「ダンジガーさ~ん♪」は、確認できませんでした。

客船パーサーのワトキンズ

バーナード・フォックス客船パーサーのワトキンズはバーナード・フォックス。ボートと汽船の違いにこだわる男でした笑。この人はご存知と思いますが、13話「ロンドンの傘」でロンドン警視庁のダーク刑事部長を演じたバーナード・フォックス。

奥様は魔女の「ドクター・ボンベイ」

ドクター・ボンベイこのバーナード・フォックスは、ほぼ同時代のTVドラマ「奥様は魔女」の魔女専門の医者である「ドクター・ボンベイ」を演じています。

ギボンズ船長

パトリック・マクニーギボンズ船長はイギリス出身の俳優パトリック・マクニー。母方は男爵家の血筋、イートン校にも通ったというお坊っちゃま。テレビシリーズ「アベンジャーズ」で活躍したそうです。またこの人は「レスリー・ニールセン」主演の「レスリー・ニールセンの裸の宇宙銃を持つ男」にも出演しています。

スーザン・ダマンテ

スーザン・ダマンテ脇役ですが、看護婦メリッサ役の女優は「スーザン・ダマンテ」で、アドベンチャーファミリーにも出演。さりげない優しさが演技に出ていました。死体の検査をする場面では少し緊張した表情でしたね。とても人気が高いキャラクターです。(2020年、スーザン・ダマンテ・ショウより一般的だと思われる、スーザン・ダマンテの表記に直しました。)

ロイド・ハリントンはエリック・ワグナー(笑)

ディーン・ストックウェル濡れ衣を着せられるバンドのピアノマン「ロイド・ハリントン」役はディーン・ストックウェルで、12話の「アリバイのダイヤル」で殺害される御曹司エリック・ワグナーと同一人物です。素敵な俳優さんでした。

ロザンナ・ウエルズ

プーピー・ボッカー殺害される歌手のロザンナ・ウエルズは女優プーピー・ボッカーで、日本語吹き替えの中村晃子さんは、60年代後半〜70年代に活躍した歌手・女優さんです。

バンマスのアーティ

ピーター・マローニー楽団のバンマス:アーティ・ポデルを演じたのはピーター・マローニー。ぎょろっとした目とメガネが印象的で、どことなく40話「殺しの序曲」のジェイスン・ダンジガーさんに似ている気も‥笑。

ダンジガーの非常階段のテーマ

YouTube「ダンジガーの非常階段のテーマ」をパソコン演奏で再現しています。ヘイトン・ダンジガーがロザンナ殺害後に非常階段で医務室に戻る際のBGMです。緊迫感が伝わってくる素敵な音楽です。刑事コロンボはこのような音楽に関しても、素晴らしいですね。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

監督:ベン・ギャザラ
脚本:ウィリアム・ドリスキル

ヘイドン・ダンジガー:ロバート・ヴォーン(声:西沢利明
ロイド・ハリントン:ディーン・ストックウェル(声:上田忠好)
客船パーサーのワトキンズ:バーナード・フォックス(声:西田昭市)
看護婦メリッサ:スーザン・ダマンテ(声:沢田敏子
医師フランク・ピアース:ロバート・ダグラス(声:塩見竜介)
ロザンナ・ウエルズ:プーピー・ボッカー(声:中村晃子)
アーティ・ポデル:ピーター・マローニー(声:肝付兼太)
シルビア・ダンジガー:ジェーン・グリア(声:寺島伸枝)
ギボンズ船長:パトリック・マクニー(声:柳生博)
ウエイター:マイク・ラリー

加筆:2022年8月13日