32話「忘れられたスター」

Forgotten Lady
1975[第5シーズン 32話]

泣けるコロンボ作品…

「忘れられたスター」は私が最も好きな刑事コロンボ作品のひとつ。解決編では、この作品ならではの結末を迎えます。それはコロンボ作品中、最も涙を誘うものです。

ジャネット・リー

往年の大女優グレース・ウィラー(ジャネット・リー)は輝きを放っていました。14話「偶像のレクイエム」のアン・バクスターの大女優も悪くはないのですが、私の好みも加味すると「格別」の感があります。

また40話「殺しの序曲」に登場するウエイトレスは「ジェイミー・リー・カーティス」で、ジャネット・リーの娘です。

コロンボシリーズで最も重要な「犯人ではない登場人物」

かつての名優ネッド・ダイヤモンド役ジョン・ペインの存在も際立っています。スターでありながらジェントルマンでもありましたね。

執事レイモンドはザイアス博士

ウィリス(グレース・ウィラー)家の執事・レイモンド役は猿の惑星の「ザイアス博士」でもお馴染みの俳優。「モーリス・エヴァンス(エバンス)」同名のNBA選手がいることから、ネット検索が困難です。

執事レイモンドは、その可愛い風貌も含めとても素敵でした。奥様のアルマさんはとても若かったですね。これらの登場人物が、すべて良い味を出してると思います。コロンボ作品で名作と呼べるものには、このように脇役が作品の魅力を高めているものが多い気がします。

忘れられたスターの魅力

原題と邦題はほぼ同意味で、この作品を端的に表すグッドなネーミングです。「ファンは自分を決して忘れていない」女優復帰に並々ならぬ意欲をみせる主人公:グレースですが、当人は記憶を失う病気で、余命幾ばく。それを知っている夫ヘンリーは復帰に反対するが、愛情とは理解されず妻に殺されてしまう…。グレースを心から愛する元パートナーの俳優ネッドは、身代わりとなり逮捕される。

憎しみを感じさせない、悲しい殺人事件

もはやコロンボの名前すら覚えられないグレース。財産をはたいてまで復帰を目指しますが、プロデュースを買って出たネッドでさえ、復帰の難しさを感じていたでしょう。生きているうちに…と世界旅行を提案する夫の優しさも虚しい。幸せとは何であるか?を考えさせられました。

覚えていないという主題

グレースは記憶を失う病気で、シーン各所にその伏線が見えています。ブログゲストさんのコメントにもありますが、何を覚えていて…何を忘れてしまったのか…その焦点もこの作品に不思議な魅力を加味しています。

コロンボはネッドに何を託したか

コロンボ警部がネッド・ダイヤモンドに事件の全てを説明するのは、意味深いです。グレースが執拗な捜査にいらだちつつも、好意的な態度に変わっていくことから、「通常の殺人犯人とは違う」ことには気付いていたでしょう。そのようなグレースに対し「自白に導く」というコロンボ特有の手法が不可能となりました。ネッドの前でグレースを追いつめることで、身代わり犯人を持ちかけたとも想像できます。

人気ランキングで常に上位を獲得

コロンボ作品の「人気ランキング」では、確実に「5位以内の座を獲得する作品」だと断言しておきましょう。(笑)1位は、やはり「別れのワイン」の指定席。32話ということで、決して傑作ぞろいの初期作品‥ではないのですが、まだこのような斬新なストーリーがあったのだと、びっくりします。

これもひとつのスタイル

私は刑事コロンボの王道的なスタイルとして「成功者の転落劇」にこだわっています。もちろん、そこに刑事コロンボの醍醐味が存在するのですが、この「忘れられたスター」のような「決して悪人とは思えない」犯人によるストーリーも感慨深いですね。19話「別れのワイン」、41話「死者のメッセージ」などに同じ雰囲気を感じます。

バーク刑事Bではない!

後の作品、41話「死者のメッセージ」、43話「秒読みの殺人」、47話「狂ったシナリオ」に登場するバーク刑事Bの「ジェローム・グアルディノ」ですが、今回はまだバークではなくハリス刑事としてちょい役で出演しています。

ランズバーグ先生とコリアー先生は同僚だ!

31話「5時30分の目撃者」の精神科医コリアー先生と、32話「忘れられたスター」の外科医ランズバーグ先生の病院は同じでした!詳しくは「廊下に色ラインが描いてある病院」をご覧ください。

アンダーソン検死官

「アンダーソン検死官」「ハーヴェイ・ゴールド」。33話「ハッサン・サラーの反逆」でも検死官、27話「逆転の構図」ではカメラ店のハリー・ルイスを演じています。日本語吹き替えは「ウイルソン刑事」「ドカベンで徳川監督役」の野本礼三さん。

監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ウィリアム・ドリスキル
グレース・ウィラー:ジャネット・リー
ネッド・ダイヤモンド:ジョン・ペイン
執事レイモンド:モーリス・エヴァンス
アンダーソン検死官ハーヴェイ・ゴールド(野本礼三)
 
加筆:2015年12月5日
 

“32話「忘れられたスター」” への65件の返信

  1. NHKBSで久しぶりに見て、やはり名作中の名作だと思いました

    ただ、レイモンドがシャンパンでいい気分にならず、映画の終了時間の1時間45分後に来てしまった場合、無人の映写室に出くわしてしまったわけで、正直、トリックとしては微妙な気はします

  2. ぼろんこさん、はじめまして。
    人気が高いのがうなずける、とても味わい深い作品ですが、ひとつだけ気になるというか解せない点があります。毎晩のように奥様(グレース)のためにフィルムを回している執事レイモンドが、1時間45分の映画が2時間経っても終わっていなかったことに、なぜ疑問を抱かなかったのか? 謎解きのカギを握る部分だけに、作りとしてとても惜しい気がします。

  3. ジャネット・リーは撮影当時、48歳くらいだったそうですが、若い頃と変わらない美しさプロポーションですっかり魅了されてしまいました。私はこのエピソードを観るまでは、彼女がミュージカルスターだったというのは知らなくて、むしろヒッチコック監督の「サイコ」での印象が強い女優さんでした。恐怖におののく彼女の表情は絶品で、美しいだけでなく演技力もあることは証明済みで、このエピソードの中でも圧巻の存在感ですね。彼女が登場するだけで、画面が華やかになります。

    残された命が僅かであることを知らされなかったために、スターとして再び脚光を浴びることを夢見て、善良な夫を殺害してしまう。しかも、そのことすら忘れてしまっているという、何ともやりきれない話です。
    ラストシーンの、少女のように目を輝かせながら自分の往年の映画を見入っている彼女が、涙を誘いますね。

    1. 先日放送された「忘れられたスター」の余韻が覚めやらぬ間に、偶然、TSUTAYAでジャネット・リーが出演している「サイコ」のレンタル落ちBlu-rayを発見!500円だったので迷わず即購入しました(笑)

      テレビで何度も観たことはあったのですが、今あらためて観ると、やっぱり凄い。映像、音楽、俳優の演技全てが一体となって迫ってきます。また現代の技術のおかげで、約60年前の作品にも関わらず、とても映像がクリアで音響もリアルでした。
      何と言っても、後年、刑事コロンボに犯人役でゲスト出演しているジャネット・リー、ヴェラ・マイルズを観れるのが嬉しかったし、またアンソニー・パーキンスの怪演も必見です。彼はノーマン役があまりにハマりすぎてしまったために、そのイメージを払拭出来ず、その後の俳優人生にも大きな影響を受けてしまいました。もっと評価されて良かった俳優さんだと思います。

      続編のサイコ2~4はまだ未見なので、そのうち観たいと思います。刑事コロンボの視聴から派生して、また楽しみが増えました。

  4. 皆がグレースに良くしてあげるお話ですね ホロリ
    ネッドが後ろ姿で電話してやる!と怒りながらコロンボと話すシーン、吹替が別の人っぽいと思いました
    4Kで再放送してるようですがテレビなくて見れない・・・
    にしてもネッドがかっこいいねえ
    歌もダンスもてんでダメだというコロンボに「評論家におなりなさい」って、最高だわ
    殺しを決心してすぐ実行しちゃう→忘れちゃう
    なんだか悲しい
    古い映画って、90分のとかありますもんね

  5. BSスペシャル投票第3位。コロンボの珍しい正装姿が見られる一篇(次の「ハッサン・サラー」共々)というのもNHK初放映当時の「売り」でした。
    観ている方の自分が年を取り、かつ「認知症」に関する認識が普及した今観ると一段と胸に迫るものがあります。本当に人が変わってしまうんですよね。そして「忘れる」・・・サブタイトルがこれまた身に沁みる。今の私としては、グレースは犯行直後から忘れ始めていた、に一票ですね。そして役者が皆、主役から脇、シリアスからコメディまでほれぼれするほどイイですねえ。

  6. 犯人は私欲のために殺人を犯し、しかも計画的であり同情の余地はない。コロンボ警部は最後の夜、きちんと真実を打ち明けるつもりだったと思います。

    しかし一方、被害者が一人で抱えていた秘密を、やはり案じていたネッドに話したのは身代わり逮捕も「選択肢として有」としたからなのでしょう。

    詳細が語られなかった、自動車事故。
    ネッドが裏方に、グレースが実質引退に追い込まれたのは、スキャンダルとされたからかな…彼は賠償金のため働きづめに、彼女はその際支えになった主治医と結婚?

    互いを思いながら結ばれなかった関係が、全体の品につながっているように思えます。

    働き者の執事夫妻は、グレースの死後無罪に(警部が立証して)なったネッドが、再就職を斡旋したのではないかと。それくらいのハッピーエンドを期待したくなる、何度見てもしんみりする内容だと感じます。

  7. 40年近く前、TVで初めて観た時の最後のコロンボのセリフは、
    コロンボ 「どこまで出来るかやってみましょうか・・・」
    で、録り直されたのかは判りませんが、もの凄く印象に残っています。

    1. はい、そうなんです!私もこの作品がコロンボシリーズの中でNo.1なので、昨夕は楽しみに待っていたラストシーンのこのコロンボの セリフに「?」と何か違和感を感じていたのです。やっぱりそうだったのか、何故変えてしまったのだろう……バカだな

  8. みなさん、コメントありがとうございます。楽しく読ませていただいております。この作品に2票追加します。

  9. 私も「ぼろんこ」さん同様、70年代の小学生時分に「刑事コロンボ」に魅せられた世代です。
    この作品も皆さんがお書きになっているように、名作の一つだと思いますが、もう1つ違う観点から感想を述べさせて頂くなら、「コロンボ」を演じたピーター・フォークが、その晩年にアルツハイマー病に冒され、「自分が「コロンボ」であったこともわからなくなった」という外伝を目にすると、この作品のラストが余計に切なくなります。

  10. KZ様の推理(こう言っては失礼かもしれませんが)、すばらしいです。
    >私としては、ダイヤモンドのような高潔な人物が、あんなに自己中心的で勝手なグレースを愛するとは思えないのです。たとえ現役当時のまさにスターだった頃の話だったとしても。作品中のグレースは、すでに病気により本来の人格……ダイヤモンドが愛した頃のグレースの人格から歪められた状態になっていたのではないでしょうか?
     KZ様の体験から導き出されたとのことですが、お説のように考えるとすべて納得ができます。コロンボの何気ないような忘れ物の挿話の解釈も見事です。
     私も清水義範の短編小説「靄の中の終章」を思い出しました。
     ちょっと救いのない話ではありますが、「忘れられたスター」、名作だと思います。

  11. ごく最近この作品を観まして、数年前まで介護していた認知症の母と重なり、胸に来るものがありました。
    この作品、やはり犯人のグレースに対する評価が分かれるようです。
    しかし私としては、ダイヤモンドのような高潔な人物が、あんなに自己中心的で勝手なグレースを愛するとは思えないのです。たとえ現役当時のまさにスターだった頃の話だったとしても。
    作品中のグレースは、すでに病気により本来の人格……ダイヤモンドが愛した頃のグレースの人格から歪められた状態になっていたのではないでしょうか?
    私の母も本来は比較的温和で、御人好しが過ぎると評されるタイプの人間でした。しかし認知症を煩ってからはワガママ勝手気味になり、すぐに激高したり頻繁に被害妄想を抱くようになるなど、本来の母を知る人からは考えられないような状態になりました。そのあたりが作品中のグレースの言動と重なって感じられるのです。
    作品中では脳の血管障害による病状という設定ですが、製作年当時も認知症(痴呆)という症例はあったようですし、病状の参考にしたということは十分に考えられるでしょう。昔のことは覚えているのに短期記憶がボロボロ……鏡の前に座った時にはすでに自分が犯した殺人を忘れていたり、ダイヤモンドがヘンリーを殺したと自白して逮捕されたことをその数秒後には忘れて映画に楽しく見入っていたり(もしかしたらこの時点で、映画の当時の自分に人格退行していたのかも)など、まさに認知症の症状そのものです。だとしたら、作品中ではすでに病気で人格が変貌していたのだとしてもおかしくはないとも思うわけです。
    過程の話でしかないかもしれませんが、そんな風に考えると、この作品はより哀愁を感じられる名作と感じられるのではないでしょうか。
    ついでですが、コロンボがいつもよりたくさんの忘れ物をしたり、借りたものを返すのを忘れるというネタで「忘却」がテーマだと示唆していることを考えると、意味もなく挿入されているように見える射撃訓練云々はやっぱり、この作品の結末である替え玉逮捕を暗喩しているのでしょうね。

  12. グレースのラストシーンの微笑みが、本当に美しく、儚くて、ずっと記憶に残っています。
    そんなわけで、コロンボで思い出すのはこの回ですね。

  13.  去年初めて見て、今日録画で2度目を見ました。
    そしてこれはかなり評価の別れる作品だと思いました。
     ネッド・ダイヤモンドの渋い男らしさには惹かれるものの、犯人グレース・ウィラーには全く共感できません。余命いくばくかという病のせいで哀れさは感じるが完全に自己中心的な性格は見ていていらいらが募りました。(始まって間もなくの機関銃のようなトークからしてそうでした)
     これはそういう彼女を優しく包もうとした夫、ダイヤモンドそしてコロンボに焦点を当てた作品なのだと思います。
     とは言っても夫は妻に病気のことを明かし、過去を懐かしみながら余生を心安く過ごさせるべきだったのではと思います。寝室を別にし、バカ話の本を読み、重い病気とは言え、しゃにむに妻の再起に反対したのは、もともと愛はなかったと言いながらもとるべき方法ではなかったと思います。
     コロンボは珍しく犯人を見逃すことにしましたが、それなら「死者のメッセージ」のおばあちゃんを見逃してやってほしかった。グレース・ウィラーは捕まったとしても病気と記憶喪失で釈放される可能性がある。
     この話は犯行の手口や解明がどうこうと言うより人物の性格、行動に興味のわく珍しい作品でした。

  14. このエピソードは、皆さんが書かれているように晩節を迎えつつある私のような年代にとっては、涙なしには語れませんね。
    事件解決の場面では、高揚感に満ちたグレースの命の絶唱が際立っており、衝撃を受けました。
    悲しいエピソードながらも人生を生き抜くとは一体何なのかを考えさせられました。
    グレースの人生は、本人にその自覚識がなくとも
    二人の男性の愛に満ち足りた幸福な人生だったと信じています。
    文句なくNO.1の作品だと思います。

  15. おそらく年代別で価値観が変わる作品でしょうね。
    コロンボファンの中心層はおそらくちょっとオジサン(というのもアレですが)かと思います。
    この年代で推理モノや映画好きの人は「こうした空気の作品」としか言いようが無い演出や作りに
    作品性の品格みたいなのを感じる場合が多い。
    20代後半くらいまでの若い人ですと、当然話の筋や
    演出・女優の名演を感じつつもつまるところ
    「利己主義・個人主義」を感じすぎてしまいどうも
    好きになれないんじゃないでしょうか。
    こういう私もジョン・ペインこそこの作品の核と思ってますし。
    この作品の人気というのはつまるところコロンボ作品での異質さそのもの、推理モノとしてある意味定番でもあり反則とも言える犯人に記憶障害と寿命を
    設定させた作品、という事が主要なんでしょうね。
    犯人を裁くのはあの世~天に任せる、という結末を
    良く感じるか悪く感じるかは人それぞれだと思いますが、年配者ほど受け入れられるテーマかなという気がします(※だからといってそれが正しいというわけでも勿論ありませんが)。

  16. この作品がどうして人気が高いのかがどうしてもわかりません。
    「別れのワイン」と比較されますが、「別れのワイン」の犯人が同情を誘うのは、やむにやまれぬ事情と、ワインに対するなみなみならぬエキセントリックな愛です。
    が、この女は自分自身の栄達、栄光を取り戻すという自己愛が動機。そんなことで殺されたらたまったものじゃありません。脳の病気で仕方がなかったんだ、という説明も出来ますが、あくまで「仕方ない」であって涙なんか誘いません。仮に抑制が効かなくなったとしても、その犯行とそれを隠蔽するアリバイ作りは周到に行なわれ、もとからそのような自己愛とエゴに満ちた人格であるということを証明しています。
    もう一つ、「祝砲の挽歌」とあわせてこの三作が同情をさそう犯人であるといわれていますが、祝砲の挽歌の犯人も卑劣で同情できません。こちらは完全に無辜の若者に罪をなすりつけようとしています。グレースも、健忘症にかかっていなければ平気で他人に罪を擦り付ける人物でしょうね。

  17. こんにちは。
    ジャネット・リーは役柄上ではコロンボより相当年上に設定されていたのですね?!
    実は同い年位でしたでしょうに。。
    演じきった彼女の女優魂に情熱を感じました。
    でも役の中での彼女は、かつての栄光・美しさに執着しすぎてしまったのだろうと思えてなりません。
    観客の拍手喝采、自分を照らすスポットライト・・・夢のような出来事として、彼女は過去に葬り去ることは出来なかった。
    今の自己を認め、愛し、幸福を希求できなかった。。。
    それが夫殺しを思いついた引き金となった。
    でも。
    彼女の正常な判断力を奪い去る進行が、彼女自身の内部でなされていた。
    その結末に愕然としました、初めて見た時は。。。
    単に忘れてしまう、だけではなくて。
    人として、社会人常識というものを欠落させて生きる結末の一つを、彼女は示してくれました。
    活き活きとした瞳で。
    ラストシーンのダイヤモンド氏の惚れ惚れするような粋な姿と、コロンボの深いため息混じりの頷きと、対をなすような彼女のキラキラした瞳とが、すべてが必要不可欠な要素だったと思えてならないのです。。。。この物語の味わいを深めるのには・・・。
    最後まで彼女は昔の自己に浸りきり、美しく華やかな大スターとして天国心地で生きる。
    深い夫の愛情に気づけなかったからには、死して後、それなりの反省はするのだろうが、何といっても、今の心=「念」をいつも目の前の過去の華やぎに置く限り、幸福の極みに居られる彼女は、哀れなどではない。
    私達もやたらストレスにやられるばかりではなく、彼女から何かを学ぶべきだろう。
    という思いも沸きました。
    それにしても・・・本物の紳士達に命がけで守られる彼女は、きっと、とても一生懸命に打ち込む人で、大輪の花の魅力を醸し出す、ホンモノのオンナだったのでしょうね。

  18. ジャネット・リーの晩年を知る貴重な出演作でした。コロンボはファーストオンエアから何度も見ています。コロンボというより、ゲストスターを見るのが楽しみですね。
    こういうドラマを作ることが出来た時代。インターナットも、PCも、スマホも・・・なにもなく、アメリカが輝いて見えた時代。そんな時代の貴重な映像作品は、永遠に色褪せないでしょう。
    数々のゲストスターも、主演を演じきったピーター・フォークもみんな鬼籍に入ってしまいました。

  19. BSでのあらすじ紹介で、核心であるあの事実が思いっきりネタバレされているのを見てしまったので、ミステリーとしては本来の半分も楽しむことができなかった悔しい思い出のあるエピソードです。
    しかし、それでも「美しい刑事コロンボ」として屈指の出来であることは確かです。謎解きだけがコロンボではない。本作はグレース・ウィラーという女性を描いた上質なドラマなのであってミステリーの要素などは添え物に過ぎないのでしょう。悲しすぎるラストは他のエピソードにはない後味を残します。
    と言いつつ、やっぱり個人的には「断たれた音」や「逆転の構図」のようなエピソードが好きなんですよね~。味わい深いドラマを堪能できないあたり、ぼくはやっぱり子供だなあとつくづく思います。

  20. グレースはヘンリーの部屋へ入る時、手に持った拳銃を先にした。
    ヘンリーが寝入っているのを確信してだが、強い殺意を思わせる行為だ。
    ヘンリーも言っているように、グレースは愛情だけで結婚したのではない。
    愛情以上に財産目当てだ。不幸な結婚生活でもなかった。
    むしろ、我がまま気ままな生活であり、ヘンリーもそれを許していた。
    それが、グレースの思い上がりを助長してしまう。
    増長した我利我欲の殺害動機に同情の余地はない。よって評価は低い。
    同情の有無で評価の高低を決めるのは、コロンボの人生観との間で
    交流できるかどうかにかかっているから。
    刑事コロンボのだいご味とは、犯人とコロンボの魂の奥底で交わされる
    目に見えない交流にある。我利我欲で固まり、更に病気とあっては無理だ。
    今回はペンのみならず、バッジや手帳まで忘れて、あまつさえ、
    借りたペンと手帳を持ち帰ろうとして迷惑顔の執事から注意されている。
    手帳に自分が書いた部分をビリビリ破いて執事に返した。
    いったん帰ろうとしたのに、思い留まってまた2階へ上がったとき、
    執事の驚きとあきれが同時に表情に出ていた。
    カットされた部分で大事なシーンがけっこうありますね。
    当初現場での事情聴取などが大幅カットになっています。
    コロンボがヘンリーの部屋履きの裏側に泥がついてないのを
    確認するシーンや銃の持ち込み確認はカットすべきではない。
    コロンボが、別れのワインに続いて、また自分を音痴だと言った。
    コロンボは、グレースへの最初の質問攻めでウソを見抜いている。
    どんな質問に対しても冷静にヘンリーが自殺であることを肯定する
    模範回答に終始している。どんな質問に対しても「分からない」とは
    言わず、無理してでも回答する。これはウソをつく犯人の特徴である。
    中盤での会話。
    グレース:主人はね、人並みすぐれて立派な人でした。
         医者としても尊敬され愛されていました。
         いったい誰が、あの人を殺そうとするでしょうか!?
    コロンボ:・・・・・・・・・・・・・・・[驚]。
    この時のコロンボの驚いた表情は、今までに見た事のないものだった。
    これには、心底驚いていたのだ。
    犯人の問いかけに対して、何も答えを返せないでいることなど今まで無かった。
    グレースの言葉には、それだけ真実がこもっていたからだ。
    コロンボは、自分のウソ発見機の修正を加えなければ?、と思ったか。
    いつもだったら、もう一つとか・・・、何かしら口上を残して行くのだが、
    「・・・」のまま、驚きの表情を隠しもせずに出て行った。
    この時を境として、コロンボの捜査は加速していく。
    細かい矛盾を一つ一つ掘り起こす段階から、殺害動機や更に深い本質へと
    切り込んでいくことになる。
    グレースがコロンボ夫妻を招待するときには、殺人犯という内面は全て
    消え失せ、ファンの対してサービス精神旺盛なスターの魂のみになっていた。
    コロンボ:あんたの自白なんか、スグにひっくり返されますよ。
    ネッド :頑張ってみせる、二月間は。
    コロンボ:そう~[驚]・・・、それがいいね。
    また、コロンボが驚いた。
    さすがに、この場面は観ていて涙があふれた。
    いつもの刑事コロンボは、コロンボ自身の言動に感動するものだが、
    今回においては、グレースとネッドの言動にコロンボが驚異し感動する。
    ネッドの真実にコロンボが折れた。

    1. 昭和の頃放送されていたコロンボのセリフは「あんたの証言なんて優秀な弁護士に5分でバラバラにされちまう」だったと記憶していましたが今回のBS放送も違いましたね。
      いずれにしてもネッド氏の決意に自説を曲げてまで逮捕するのは敬意なのか余命幾何もない「忘れられ、かつ忘れたスター」への同情なのか。

  21. フレドさん>10月23日に1票追加しています。ご報告がおそくなりました。
     
    バーディさん>1票追加いたします。
     
    トレモニさん>そうですね〜人情ドラマ的な部分もありますね、私はそれも好きです。
     
    遅れてきたコロンボファンさん>「前立腺の病気」…そうなんですね!専門知識がある方だと…気づいてしまいますね。
     
    バジルさん>コロンボの自宅…は、でっちあげなら「権力の墓穴」と「かみさんよ、安らかに」に登場します。本当の家は見たことない気がします。
     

  22. ぼろんこさん、初めまして。お邪魔いたします。
    皆さんの感想もとても楽しいです。
    これは私も大好きな作品で何度も見ています。
    コロンボの楽しみのひとつが「豪華な家」を見ること。今回もまるでお城のようですね。でもグレースの部屋はかなり少女趣味。スターであったころの時間のまま止まっているようです。
    私はアメリカ人好みの大きくて、目いっぱいお金かけましたという家より、コロンボの自宅のようなこじんまりした温かい雰囲気の家が好きなんですが、どの回か忘れてしまいました。あれはコロンボの家じゃなかったかも?
    「忘れる」に敏感な年齢なもので・・・ごめんなさい。

  23. 先日、CS放送の連続放送で、この回を見ました。
    小生、本職は泌尿器科医なんですが、ランズバーグ医師が、ヘンリーさんの前立腺の病気の治療について、手術室の前でコロンボに説明する内容は、医学的には完全に間違っていました。
    「前立腺の除去手術より、抗生物質を選択、云々」のコメントは、ナンセンスに近いです。
    医学的監修がなされなかったのかな、と残念に思いました。

  24. コロンボにとって、犯人を逮捕するという意義をどこへ見出すだろうか?。
    罪を犯した犯人は、当然裁きを受けなければならない。
    罪は憎む。しかし人の本質、豊かな知性やユーモアは憎まない。
    犯行の動機には同情も示す。だが、犯行自体は絶対に許さない。
    同情が過ぎて、自ら裁判官になって逃がしたケースすらあったが、
    それは警察による犯罪のもみ消しで問題もある。
    このエピソードもネッドのウソ自供を知っていて受け容れるという
    まあ、やってはイケナイ事をやってしまう。
    コロンボとは、理詰め以上に感情の多い人と言えるだろう。

  25.  1本を選べと言われればこの作品ですね。
    ネッド・ダイヤモンドが「これぞ男」というところを見せてくれるのがたまりません。
     射撃訓練の下りですが、75分が100分に尺が伸びたのを埋めるための追加だそうです。コロンボシリーズは脚本を練りこむので逆に尺が余るということがあるということがすごいことだと思います
     

  26. 他にも面白い作品やよく出来た作品は数あれど、自分はこの作品が全シリーズ中一番好きです。なんてったって被害者も犯人も皆美しい。切なく悲しく美しい人情話ですね。
    不可解な対応が多かったグレースの謎も、コロンボが解き明かしてくれて。最初のとこなんか(自分で実行しておいて鎮静剤が必要なほどショックを受けられるのかよ大女優凄すぎだろ…)とか思ってました。
    犬を飼ってた身としてアイスを食べさせるのはビックリしました。が、10年くらい前に晩御飯のステーキの最後の一切れを落としてダックスに食べられ半泣きになったのを思い出し、「ワンちゃんってこういうの食い付きいいよなぁ」としみじみもしてたり(ノ´∀`*)
    ダイヤモンドさんの男気には憧れますね。今作で一番好きなキャラです。あんな大人になりたい…
    射撃訓練のくだりはなんでしょうね。あれが無駄だと思う人も多いわけですが…お得意の心理戦がグレース相手に上手くいかない上での追い討ちかな?もうわずかの期限ってグレースを示唆してるのかな?カエダーマは最後の身代わりに重ねてるのか?…なんて考えすぎでしょうか。
    しかしコロンボ、タキシードが似合わない(笑)カッコいいからいいけど(;´_ゝ`)まああの正装だからこそ異例のラストが品良く締まった仕上がりになってるのかも。
    ジャネット・リーあってこその今作ですが、彼女が巧妙に伏線を張り続け、ピーターフォークが見事に回収し、ジョン・ペインが綺麗に締める。役者が皆素晴らしいです。邦題もイイ。
    好きな場面はまだあるけどもこれ以上話すのもアレなので笑
    ともかく1票入れさせていただきます!

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