7話「もう一つの鍵」

Lady in Waiting / 1971
リチャード・アンダーソン高圧的な兄を殺害する妹。という恐ろしいシナリオ。被害者は広告代理店の社長にして大富豪のブライス・チャドウィック(リチャード・アンダーソン)。犯人はその妹のベス・チャドウィック。前半のシーンでは、このベスが、それほど「悪人」とは感じさせない。質素で美しい女性だと感じ、悪人はむしろ兄のブライスではないかと錯覚します。

ベス・チャドウィックが美しく(実は醜く)変貌してゆく

スーザン・クラークその印象が逆転するのは、事件を知って駆けつけた二人の母親がベスをひっぱたくシーンだと感じました。この時の彼女(スーザン・クラーク)のいでたちが、本編で最高に美しく表現されているように見えました。私が質素な女性を好むというだけなのかも知れませんが…。
スーザン・クラーク独裁者(兄)が不在になった後のベスは、派手な洋服を買いあさったり、スポーツカーを手に入れたり、あげくに会社社長の座について、経営権を我がものにしようと企みます。それに比例するように、彼女は醜くなってゆくように描かれています。

もう一度最初から見返せば、なるほど冒頭近くに庭で朝食を食べるシーンでも、どこか歪んだ心をもった女性の表情が見え隠れしてますね。

時代性を感じる映像処理

意外な展開となったのは「画面が揺れているような描写」のシーンで、最初に見た時には「睡眠薬か麻薬かで、精神が普通でない表現」なのかと、勘違いしました。実際には「こうなる予定」を表現していたのでしょうね。初期の作品(特に第1シーズンまで)には、このような「頑張った映像処理」が多く登場します。テレビドラマの特殊効果に限界のあった時代の産物でしょう。

決め手はピーターの記憶力…ではなくベスの性格?

事件解決シーンでは「婚約者のピーターが、犯行の時の鮮明な記憶を語った」こととなりますが、実際には犯人特定の証拠とは言いきれず、その後のベスの行動「コロンボを銃で撃ってしまえ」というアクションが決め手となりました。これもベスの性格を見抜いたコロンボの切り札だったと言えます。びとつ間違えれば、撃たれて死んでしまうのですが。

これがひっかかるんです、「ピーター」の人間像。

レスリー・ニールセンひとつ腑に落ちないのは、婚約者のピーター・ハミルトンがそれほど「野心家」に描かれていないという点。むしろ正直で不正を好まない人物だった気がします。逆に妹のベスはかなりの野心家で、兄の殺害は婚約を反対されていることが動機ではなく、地位と富を一気に手に入れ、派手に暮らしたいという願望が強かったことがわかります。今となっては遅いのですが、彼女がピーターと結婚していれば、夫が妻を上手く操縦できたような気も…。この婚約者ピーターは後の作品34話「仮面の男」でジェロニモとしても登場する「レスリー・ニールセン」です。

裸の銃を持つ男

レスリー・ニールセンレスリー・ニールセンはコメディ映画「裸の銃を持つ男」(三部作・1988-1994年)の主役を演じていることは有名です。2023年にこの映画がテレビで放送され、私も観ることができました。レスリー・ニールセンが演じるのは、間抜けな警部補フランク・ドレビン。「警部補でフランク」ってコロンボへのオマージュでしょうね。

大草原の小さな家のオルソンさん

リチャード・ブル兄のブライスが撃たれて死んだことで、妹のベスを聴取する刑事の一人(裸眼の方)は、な、何と!同時代の人気ドラマ「大草原の小さな家」のオルソンさん(演:リチャード・ブル)でした!コメンテーターさんからの質問があり、調べたら分かった次第です。本当に嬉しい発見でした!オルソン役はこれより3年以上後のことでしょうが、本作の刑事は若く見えますね!カツラ使用かな?

フレッド・ドレイパーを見逃すな

フレッド・ドレイパーチャドウィック家のお母上が到着する場面に出てくるタクシーの運転手は、お馴染みの「フレッド・ドレイパー」です。コロンボを家の召使いと決めつけて代金を請求し、おつりを持っていないと「新米だね」と、さらに見下すのは、笑えました。

この3人の事務所が同じビルに!

刑事コロンボに登場のビル2話「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズ弁護士事務所、7話「もう一つの鍵」のチャドイック宣伝広告社、19話「別れのワイン」のステインさんの事務所はすべてこのビルの中にあります。

LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE

裁判所また、裁判の開かれる「LOS ANGELES COUNTY COURTHOUSE」も「死者の身代金」のレスリー・ウィリアムズの裁判所と同じ場所です。(映像アングルは異なります。)

ちょい役でお馴染みのフランク・エメット・バクスター

フランク・エメット・バクスター広告代理店の会議室で、ベスに逆らってクビになりそうになる重役は、38話「ルーサン警部の犯罪」でもテレビ局の撮影所所長として出てくる「フランク・エメット・バクスター」です。どちらも同じようなキャラクターで、はまり役です。

美容室の受付係はバーバラ・ローデス

バーバラ・ローデスコロンボの葉巻を預かり汚そうに扱う美容室の受付係は、バーバラ・ローデス。短いシーンですが印象に残ります。このバーバラ・ローデスは後の34話「仮面の男」で遊園地の女性カメラマン「ジョイス」を演じます。

ブティックの店員はキャサリン・ダーク

キャサリン・ダークベスが派手な服を買うブティックの店員は女優キャサリン・ダーク。この人は、6話「二枚のドガの絵」で画家サム・フランクリンのヌードモデルを務めていた女優さんです。

監督:ノーマン・ロイド
脚本:スティーブン・ボチコ

ベス・チャドウィック:スーザン・クラーク(声:小沢紗季子)
ピーター・ハミルトン:レスリー・ニールセン(声:柴田昌宏)
ブライス・チャドウィックリチャード・アンダーソン(声:小林恭治)
チャドウィック夫人:ジェシー・ロイス・ランディス(声:鈴木光枝)
美容室の受付係:バーバラ・ローデス
美容室の荷物運び:マイク・ラリー
ブティックの店員:キャサリン・ダーク

加筆:2023年6月24日

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