An Exercise in Fatality / 1974
健康クラブの経営者マイロ・ジャナスが加盟店のオーナーであるジーン・スタッフォード(フィリップ・ブランズ)氏を殺害。スタッフォードは憎まれっ子的なキャラだが、マイロを「お前、泥棒だな」と強烈に非難(笑)。日本語吹き替えは「バカボンのパパ」でお馴染みの雨森雅司(あめのもり まさし)さん。
悪人マイロに、コロンボ警部が激怒!
マイロ・ジャナス(ロバート・コンラッド)は不正な経営で私腹を肥やしていて大金を持ってスイスに高飛びする予定だったが、それをスタッフォードに見抜かれ、破滅が決定的になり殺してしまいます。かなりの悪人が迎えた結末ということですが、この作品では「激怒するコロンボ警部」を見ることもできます。マイロの声を担当したのは俳優:日下武史(くさかたけし)さん。
激怒する直前の成り行きを何度も繰り返し見ましたが、必然性は感じませんでした。スタッフォード夫人のルース(コリン・ウィルコックス)に対する同情が引金となっていますが、その割には背景を描ききれていない気がします。コロンボ警部は15話
「溶ける糸」でも激怒しますが、こちらは納得できました。
ほのぼの笑えるシーン
ルイス・レーシーの元勤務先トライコン工業社の女性社員(アン・コールマン)とのやりとりは笑えます。70年代のコンピュータはあんなに巨大だったのですね。これは「トータルデータ検索システム」だそうで…凄い。残念ながらこのシーンは短いバージョンではカットされたようです。
当初本記事ではこの女優を「スーザン・ジャコビー」だと記載しておりましたが、正しくは「アン・コールマン」でした。
→トライコン工業社の女性社員
加筆訂正:2023年11月26日
ルイス・レーシー
事件のカギを握るルイス・レーシー氏(ダレル・ツワーリング)。トライコン工業社のコンピュータを駆使して探しただけに、印象的な役柄に仕上がっています。
大草原の小さな家
コリン・ウィルコックスは、
大草原の小さな家の「ベイカー先生 休診」に、ベス・ノヴァック役で出演しています。自縛の紐から約3年後の作品です。ベスは妊娠中に夫を事故で亡くしたベスは高齢出産に臨む未亡人です。このお話には、若いローガン医師の役で、28話
「祝砲の挽歌」のルーミス大尉(バー・デベニング)も出演しています。
ダレル・ツワーリングは、
大草原の小さな家の「愛と祈り」に、メアリーの目の手術をする病院の経理担当「ベンソン」役で出演しています。インガルス家に高額な手術費用を請求する‥ちょっと融通の効かない人です。
エド・マクレディ
トライコン工業社の警備員は「
エド・マクレディ」で、その後の新シリーズで多数出演してる俳優さんです。ちょい役ばかりですがとても印象に残る素敵な俳優さんです。ちょっと見逃せませんよ〜ぜひチェックしてください。
少し納得しかねるシーンなど…
コロンボは病院で子どもとお母さんの会話を見た時に「自縛の紐」のトリックを暴きますが、「そうか、わかった!」的な描き方であまり好きではありません。もう少しさり気ない演出をしてくれたらな~って思いました。決め手の他に「着替えを知っているのは犯人である証拠」だと力説する場面は、かなり迫力あるシーンです。よく聞かないと意味が分かりませんが、それでも論理の筋立てや話し口調など、犯人を「落とす」パワーは並々ならぬものを感じました。
邦題「自縛の紐」考察
タイトル「自縛の紐」は、上手い邦題だと思いますが「決め手のまんま」。これも15話「溶ける糸」との共通点です。最初にこの作品を見た当時は小学生だったでしょうか、「自爆」だと思っていました。原題はAn Exercise in Fatalityで直訳は「死の中のエクササイズ」と出ました。他でも詳しく語りますが、コロンボシリーズの邦題には「△△の☆☆」というスタイルがたいへん多く、△△の部分にこのような普通に使われない名詞「自縛」を用いたことは、興味深いですね。
少し寂しげな表情が印象的な秘書ジェシカ
マイロ・ジャナスの秘書で愛人のジェシカ・コンロイ(グレッチェン・コーベット)は20話
「野望の果て」に出てくるヘイワード夫人の秘書のリンダ(
ティシャ・スターリング)と雰囲気が似ていました。でもこのジェシカがマイロに「今日のあなたは元気がない」というシーン、割と元気だったと思ったが(笑)
怒りながらも、犯人を追い込んでゆく?
以前『美しいコロンボ劇にはなっていません。美しく感じないもっと大きな理由は「激怒するコロンボ警部」です。』と書きましたが、そうでもなかったです。もう一度見直すと『怒りながらも、犯人を追い込んでゆく』ように感じました。『スタッフォード夫人の緊急入院』で怒ったことも、不要なシチュエーションとまで言えませんね。また、冒頭からコロンボ警部は不機嫌な雰囲気で登場しているのも面白い(早朝に呼び出されてとのこと)です、このような登場シーンは多いですね。
清掃員のマーフィ
健康クラブの清掃員:マーフィ(ジュード・フェアズ)が素敵です。コロンボの捜査に迷惑そうに応対するが徐々に協力的に転じ、茶色の靴底の推理では「たいしたもんだわ」と感心していました。このジュード・フェアズは20話「
野望の果て」コロンボ警部が運転中に検問される際に登場する若い方の警官の俳優と同一人物です。
現場検証のリッカー巡査
健康クラブでの現場検証で中心的な役目を担っているのはリッカー巡査(俳優:レイモンド・オキーフ)。グリーン系のチェックのブレザーがよく似合ってました。
秘密組織が毒を盛った?
スタッフォードの死因について、秘密組織が毒を盛った‥なんてジョークを飛ばす検死官は、
ビクター・イゼイ。この人は36話
「魔術師の幻想」の鍵屋のオヤジさんと同一人物です。若い人はせっかちだとか説教する人です。38話
「ルーサン警部の犯罪」では、ややこしいですが劇中劇の犯人役で出ています。
病院の待合室でとばっちり
15話
「溶ける糸」以来、珍しく激怒したコロンボ警部。病院の待合室で居合わせた人たちは、とばっちりでえらい迷惑を被りました。そしてク警部は我慢していた葉巻を所望、隣の男性にマッチをもらいます。この男性は俳優:
ミッキー・ゴールデンで、この回を始め、合計11回も刑事コロンボに出演しているエキストラ俳優です。
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さてこのスタッフォード夫人のルースが運び込まれた病院と、16話「断たれた音」でトムリン・デューディックが入院する病院は、廊下がほぼ同じです。この病院は天井の照明が印象的ですね。「断たれた音」の方はその青色が際立っています。
また「溶ける糸」の病院もよく似ています。詳しくは「皆さん同じ病院に入院?」をご覧ください。
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投稿日:2023年10月16日
口笛で、THIS OLD MAN♪
また、コロンボ警部が海岸を歩くシーンでは、ピーターフォークの「THIS OLD MAN」自身の鼻歌が吹き替え無しで披露されています。
→「THIS OLD MAN」について
それに対しマイロ・ジャナス健康クラブはLA中心よりやや北側の「チャット・ワース(チャッツ・ワース)」にあります。
さらに、マイロがアリバイ工作に利用した「パーカーの店」はLA東部のパサデナ地区にあり、マイロの自宅から反対方向に位置します。この距離感はいかにもマイロがアリバイを主張したくなるほど遠いです。
パサデナ周辺(パーカーの店)*カーターは誤りです。
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事件解決の決め手(2020年9月加筆)
この一連の会話が重要だと思うのです。
マイロ:「電話でスタッフォードは、もうトレーニングシャツに着替えたから、30分ばかり(トレーニング)やってから、帰宅する」と確かに言ったんだ。
コロンボ:「そりゃ無茶ですな、そんなはずないです。」
その後の実演で「運動靴は第三者(犯人と断定)が履かせた」と実証しました。マイロもそれを認めています。
そして、その後の会話‥
マイロ:「靴を履かせたのが僕だっていう、証拠は何一つ上がっていないじゃないか!」
コロンボ:「アンタしかいないんだ。自分で認めてるでしょ?」
ここまでは、良い。
私は‥次の決め台詞が混乱の原因となっていると確信します。
コロンボ:「スタッフォードさんを第三者が最後に見たのは7時半で、その時は背広だった。翌朝死体が発見された時は、運動着を着ていた。その間、誰も彼を見ていない。ところがアンタは、前の晩午後9時に、いいかね、アンタ1人だけがあの人が着替えたのを知ってたんだ。あの時間アリバイのあるはずのアンタが、何故そのことを知っているんです?」「完全なアリバイを作ろうとしたんだが、そのアリバイが命取りでしたね。」
この際、反則かもしれませんが、ぼろんこがこの台詞を自分なりに書き直してみましょう。
マイロ:「靴を履かせたのが僕だっていう、証拠は何一つ上がっていないじゃないか!」
コロンボ:「アンタなんです。自分で認めてるでしょ?」
コロンボ:「犯人に履かされた運動靴、運動着も犯人が着せたんですよねぇ、よござんすね?マイロさん。それでは、9時過ぎに『運動着に着替えた』と電話してきたのは、一体誰でしょう?着替えたことを知っているのは、犯人だけ、そりゃあアンタですよ。」
ぼろんこ:「ニセ電話のスタッフォードの会話」と「自縛の運動靴の実証実験」。この2つだけで、マイロを犯人だと決定づけられたはずです。考えてみてください‥自分で着替えていないということは、気絶か、眠らされていたか、死んでいたか、どれかでしょう?それを、元気に自分で着替えました‥と電話してきた人が犯人なのです。
解決編がスッキリしなかった状況
しつこいコロンボに対しマイロが苛立ち、スタッフォード夫人が病院に担ぎ込まれ、コロンボも激怒(マイロの図太さに切れた)。このヒートした流れのまま、マイロの事務所で解決編をむかえます。この流れは劇的なのですが、結果的に混乱を招いています。(マイロが病院と、翌朝の事務所の服装が同じことも良くないです)
そして頭に血が上ったコロンボが、決定打ではない「力説」をするので、混乱したのです。
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刑事コロンボと魔法瓶
スタッフォードの殺害現場「マイロ・ジャナスの健康クラブ」で、コロンボ警部が持参した魔法瓶は新しいアイテムで「濃い緑で四角模様」に変わっていました!これは24話
「白鳥の歌」で木っ端微塵になったのが原因か?
→刑事コロンボと魔法瓶
監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:ピーター・S・フィッシャー
原案:ラリー・コーエン
音楽:ディック・デ・ベネディクティス
マイロ・ジャナス:ロバート・コンラッド(声:日下武史)
ジェシカ・コンロイ:グレッチェン・コルベルト(声:三田和代)
ジーン・スタッフォード:フィリップ・ブランズ(声:雨森雅司)
ルース・スタッフォード:コリン・ウィルコックス(声:藤野節子)
検死官:ビクター・イゼイ
リッカー巡査:レイモンド・オキーフ
アル・マーフィ:ジュード・フェアズ
バディ・キャッスル:パット・ハリントンJr(声:寺島幹夫)
ルイス・レーシー:ダレル・ツワーリング
トライコン工業社の女性社員:アン・コールマン
ローズ:スーザン・ジャコビー
警備員:エド・マクレディ
待合室の男性:ミッキー・ゴールデン
待合室の男性:トニー・レーガン
*作品のエンディングに関して:賛否の激しい解釈については記載を削除しましたが、2020年のBS一挙再放送で議論が再燃したため、加筆しました。
加筆:2024年8月29日