41話「死者のメッセージ」

Try and Catch Me / 1977
人気女流ミステリー作家の「アビゲイル・ミッチェル」が「ヨットの事故で亡くなった姪」の夫エドモンド(チャールズ・フランク)を殺害。今回は金銭的な利害ではなく、姪のが死んだ責任はエドモンドにあると推理したアビゲイルが、その復讐を企んだもの。

エドモンドはフィリスを殺したか?

被害者のエドモンドは、それほど悪人には描かれていません。彼がフィリスを殺した証拠もありません。しかしエドモンドがアビーさんの部屋で、妻フィリスの写真を手にとって「薄笑い」をするシーンがあります。この表情は気にかかりますね。

この作品がベスト!と推すファンも多い。

ファンが選ぶベスト作品としては、やはり19話「別れのワイン」が最も多くの票を集めるのですが、この41話「死者のメッセージ」が一番好きだというコアなファンも多いのです。それくらい人気の高い作品。

ゲストスターのルース・ゴードンが素敵!

この作品も過去に見たときの印象がとても強かったです。まずゲストスターのアビゲイル・ミッチェル役:「ルース・ゴードン」が、素晴らしかったです。小柄な女性ですが、その小柄さと独特の仕草があいまってとても可愛らしく描かれていたと思います。
アビゲイル・ミッチェルはミステリーの女王「アガサ・クリスティ」がそのモデルになっているという説があります。
コロンボ警部が講演会のスピーチでも語っていますが「時には殺人犯を尊敬し、好意を抱くこともある」とは、まさにこの話のアビゲイル・ミッチェルを指しているのではと思われる程、お互いに敬意を表しながらストーリーは進みます。どこか19話「別れのワイン」に共通する雰囲気を持っている作品だと思いました。飛行機での旅行や、窒息死などの類似点もあります。

マリエット・ハートレイも魅力的

22話「第三の終章」にも出演のマリエット・ハートレイが演じた秘書のベロニカもとても良かったと思います。ゲストスターの犯行を見抜いて恐喝する脇役はたくさんいますが、「殺されなかった」ことも、この作品を美しく感じさせる要因となっています。この点も「別れのワイン」に通じますね。

秘書のベロニカは「聡い娘」

冒頭シーンでアビゲイルは秘書のベロニカを「聡(さと)い娘(こ)」だと評しています。聡いとは、感覚に優れ、聡明だという意味。ベロニカはエドモンドが金庫で死んだ時、すでにアビーさんの計画だと気づいていました。ベロニカはこの秘密をアビーさんの「遺産(財産)」と引き換えにするつもりだった。それを旅行中に提案しようと考えていた。(ぼろんこの妄想です)

大草原の小さな家「父さんの秘密」

大草原の小さな家のシーズン2・19話「父さんの秘密」(1976年)。魅力的な未亡人「エリザベス・サーモンド」役でマリエット・ハートレイを見ることができます。本作の1年ほど前だと思われ、ほぼ同年齢。美しく優しい女性として描かれています。2020年の4K再放送でこれを見られたことは、とても嬉しいことです。

計画殺人モノとしての醍醐味

シリーズ中最も人気の高い「別れのワイン」は計画殺人ではありません。その点、この作品ならではの楽しめる点も多いのです。冒頭のベロニカとの会話のシーンでは、エドモンドが金庫から大声を出しても外に聞こえないテスト。そして、ストップウォッチを覗き見する時の表情も見逃せません。

弁護士のマーチンは鋭い

また、遺書にサインした直後に「不審な死をとげた」エドモンドですが、抜群のタイミングで起きたこの事件に対し、弁護士のマーチンは「最初からアビゲイルが怪しい」と睨んでいたと思われます。旅立つ直前(犯行直後)に、金庫の前に立っている彼女と遭遇していますし…。船で口走った意味深な言葉はダメ押し的でしょう。

エドモンドの車のキー

ベロニカが「エドモンドの車のキー」の入手後、しばらくはアビゲイルの様子を伺っているのも、上手いな〜と思います。そして自ら恐喝に打って出ました。予期せぬ出来事「エドモンドの車のキー」の処理について、アビゲイルは2回キーを捨てるチャンスがありました。最初は犯行直後、2回目は警部の犬の散歩で出会った埠頭。推理小説の巨匠でも、生身の人間の行動においては、冷血な判断ができなかったのでしょう。キーは捨ててしまった方が良かったのです。

コロンボ警部の刑事哲学を感じました。

事件解決のエピソードはここでは語りませんが、ラストシーンで「特別扱いしてもらうわけではないが、この年だし、害のない人間だし…」と、見逃して欲しい…とすがるような態度を示すアビゲイルでした。ここでコロンボ警部が「先生も私も立派なプロですから」と諭した場面は、深く心に残るものです。コロンボにしてみれば、その動機から考えても同情したい気持ちは大きいのだが、「プロとして見逃すことはできない」ということでしょう。それはまた「殺人を扱う作家の完全殺人計画」が失敗に終わったことを認めた今、責任から逃避しないことを彼女に求めたのだと思われます。

ナイチンゲールはサヨナキドリ。

犯行の準備をするシーンで「何か聞こえる?ナイチンゲール?」のくだりがありますが、ナイチンゲールはサヨナキドリで鳴き声が美しい小鳥。「墓場鳥」とも呼ばれるそうで、コロンボ警部と初対面の日「警部がピアノでThis Old Man」を弾いた後、バーク刑事がドアを開けたシーンなどで庭から聞こえてくる鳥の鳴き声が、そのナイチンゲールなのでしょうか。

アビゲイル・ミッチェル邸。

ネットで調べたら「アビゲイル・ミッチェル邸」らしき場所の地図が見つかった。おぉ、ベロニカから恐喝をほのめかされた庭らしき形状がわかります。本当だろうか…。個人宅かもしれないので、いたずら行為等は厳禁です。

バーク刑事B

バーク刑事Bは「ジェローム・グアルディノ」。この41話を皮切りに、43話「秒読みの殺人」や、47話「狂ったシナリオ」と多用されています。

32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる俳優です。この人の他にもトッド・マーティンの演じる「バーク刑事A」が存在します!

「死者のメッセージ」は、音楽も素敵なんです。

YouTube「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」をパソコン演奏で再現しています。この作品が持つ「上品さ」はそのBGMの音楽性も大きく影響していると感じます。「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」とは、私が名付けた呼び名です。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

▼関連記事
– 美しい音楽とともに展開する「死者のメッセージ」

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ジーン・トンプソン、ポール・タッカホー
アビゲイル・ミッチェル:ルース・ゴードン
秘書ベロニカ:マリエット・ハートレイ
エドモンド:チャールズ・フランク
マーチン弁護士:G・D・スプラッドリン

加筆:2021年1月21日

43話「秒読みの殺人」

Make Me a Perfect Murder / 1978
テレビ局の女性プロデューサー:ケイ・フリーストン(トリッシュ・バン・ディーバー)は、支社長であり恋人でもあるマーク(ローレンス・ラッキンビル)を殺害。殺すほどの憎しみがあったのか‥。画面からはそこまで感じませんでした。

「秒読みの殺人」は名作です

この「秒読みの殺人」という作品、小学生時代にも間違いなく見ていました。しかしながら、27話「逆転の構図」や32話「忘れられたスター」ほど、強烈な印象は残っておらず、少しノーマーク的な作品でした。今回、再放送を拝見し、見事な作品であることを再認識しました、名作と言って間違いないでしょう。

刑事コロンボ的ストーリー展開を感じる

犯人役の女優や、脇役俳優の良さ云々はさておき、正当派「刑事コロンボ的ストーリー展開」が色濃く、ほとんどのシーンで無駄が無く(注)、密度の濃い作品となっています。コロンボ警部の「落としのテクニック」も、期待通り炸裂してくれています。

トリッシュ・バン・ディーバー

もう一つの側面「犯人役ゲストスター」の影響力は、他の傑作と比較し線は細めです。犯人のケイ「トリッシュ・バン・ディーバー」は美しく描かれていますが、突出した存在であったとは感じません。それ以上に、テレビ業界という厳しい環境において、人間が壊れてゆく様を見せてくれたと思います。

出世欲の強い女性の立場

その反面、心理の描写には鋭いものを感じます。殺意、焦り、意思の強靭さなど、通常の女性では表現しづらい心の揺れを、見事に表現しています。出世欲の強い女性が、組織のトップにのし上がる過程で、仕事を愛する気持ちよりも、成功したい願望が心を支配している様子がうかがえます。周囲の男性たちは、それを好ましく思っていませんでしたね。
それと対比し、同性愛を連想させる描写もありました。女優バレリーとの関係がそれです。初期のコロンボでは扱われなかった題材でしょう。ディレクターの男性が女性的なども、類似した観点です。

終わったら、ほっとすると言うが…

犯行を認める場面で、終わったらほっとすると言うが…その逆だ。と心境を語るケイ。まだ負けたわけじゃない、きっと這い上がってみせる…という意欲をみせました、女は強い。

フィルムチェンジをアリバイに用いたトリック

本作品「秒読みの殺人」では映写時に、フィルムのリールを切り替えるタイミングを画面右隅に表示されるパンチによって、見極める‥というテクニックが焦点となっていて、邦題「秒読みの殺人」に結びつけています。それに対し、21話「意識の下の映像」で映写技師のロジャー・ホワイトは、小銭をリール中心に挟み込んで、それが落ちたら交換のタイミングだと語っています。テレビ局の映写機は最新設備で、小銭を挟めない(カバーで覆われている)タイプでしたね。

映写技師ウォルター:ジェームス・マッキーチン

作品中重要な役割を果たす映写技師ウォルターを演じたのは、ジェームス・マッキーチン。10話「黒のエチュード」で、楽団の関係者ビリー・ジョーンズ役でも登場しています。どちらも良い演技を見せてくれます。

特に印象的なシーン「エレベータの中で…」

エレベータの天井に見えた「凶器の拳銃」を、犯人ケイが何とかしてそれを下に落とそうとするシーンは、秒読みの殺人で最も印象に残る場面です。身長が低い彼女が必死になっている様子がスリル満点に描かれています。しかも、その行為そのものが、コロンボ警部が仕掛けた罠だと気付かされ、完敗を認めるのも素晴らしかったです。

パトリック・オニール

テレビ局のお偉方の役で、パトリック・オニールが登場。彼は名作と呼ばれる9話「パイルD-3の壁」で犯人のエリオット・マーカムを演じています。今回もさすがの演技でした。

テレビを修理するクレイマー刑事

なぜかテレビを修理する人の役で、すっかり顔なじみのはずの「ブルース・カーヴィ」が登場。う、どう考えても不自然な起用だと思えますが、これはブルース・カーヴィが「ジョン・フィネガン」同様、特別な俳優扱いだったことを伺い知れます。ここシーンでは「愛犬ドッグ」も一緒にテレビを見ていますね。

バーク刑事

41話「死者のメッセージ」に続いて今回も捜査に起用されたバーク刑事Bは「ジェローム・グアルディノ」。あまり役に立ちませんが、憎めないキャラクターですね。32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる俳優です。

テレビ局のプロデューサー

女上司に不満げな「しがないテレビ局のプロデューサー」を演じたのは「ジョージ・スカフ」。気づきにくいのですが、この人はなんと33話「ハッサン・サラーの反逆」の領事館でアラブ人「クラ」を演じた人です!

撮影所(ロケ地)のモニター室では…

ケイはコロンボ警部に追い回され、ヒステリックに叫んでしまいます。メリーゴーラウンドの音楽と目まぐるしく切り替わる画面が印象的ですが、録画して何度も見られる時代となっては、このような強烈なシーンより、静かな場面の方がありがたいですね。同じような意味で「黄金のバックル」の、ジェニーが死体を発見して叫びそうになるシーンも、早送りしたくなります。(笑)

注)テレビ局のモニター室でコロンボ警部が、画面に模様(パターンのようなもの)を写して喜んでいるシーンは、不要でしょうかね~。冒頭で「鼻歌を歌いながら交通事故を起こすシーン」は、無駄と言い難い楽しいシーンでした。→プジョー403

マークとケイのビーチハウス

マークとケイが暮らすビーチハウスは、数々の刑事コロンボの重要人物が居を構えるマリブビーチにありました。二人が務めるテレビ局のロス支局は、市街中心部近くだと思われ、冒頭シーンでコロンボ警部が愛車プジョーで追突事故を起こす道路はそこからほど近い場所です。


監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ロバート・ブリーズ

ケイ・フリーストン:トリッシュ・ヴァン・ディヴァー
フラナガン:パトリック・オニール
マーク:ローレンス・ラッキンビル
ウォルター:ジェームス・マッキーチン
 
加筆:2020年1月18日

44話「攻撃命令」

How to Dial a Murder / 1977

初期シリーズの最後から二番目の作品です。約10年後から再開された新・刑事コロンボシリーズに影響を与えた作品ではないかと感じます。ストーリーの展開や解決編などに、同じテイストを感じます。

ニコル・ウイリアムソン

犯人役のゲストスター、エリック・メイスン:ニコル・ウイリアムソンは、とても印象に残りました。少し宗教家じみた心理学者ですが、自分のスペースを確保するという自らの教えに反し、感情を剥き出しにする場面もあって笑えます。

 

ちょっと不可解?メイスン博士の性格設定。

このお話、殺害動機がらみの部分で少し釈然としません。犯人のメイスン博士は「普通の人間のような愛情表現」ができないように描かれています。それなのに、自分の妻と被害者チャーリーとの愛人関係を知ると、まず妻を殺害、そしてチャーリーを殺害(本件)。何が彼を復讐劇にかりたてたのでしょう。自尊心からでしょうか?であれば、妻の不貞を知り当事者2人を殺害したことの方が、もっと恥ずかしい気もします。

このエリック・メイスンは映画好き、テニス・ビリヤード好きということですが、キャラクターとは不似合いだったかも。それに対しピーター・フォークのビリヤードの腕前はピカイチでした。

キム・キャトラル

同居する若い女性:ジョアンナ・ニコルズ「キム・キャトラル」は美しく登場していましたが、メイスン博士に心を寄せるという設定は、不可解だった気もしますね。

トリシア・オニール

犬の訓練士コーコランを演じるトリシア・オニール(Tricia O’Neil)が人気です。このシーンでは「愛犬ドッグ」も可愛く登場していますね。詳細は不明ですが映画「タイタニック(1997)」にも出演しているようです。ぜひ探してみたいです。

「コロッケ」「コロンボ」はでっち上げ

コロンボ警部は「犬が言葉に反応して人に噛み付くか?」を模索するシーンで、「コロッケ」「コロンボ」と言いますが、これは日本語吹き替え版のアレンジのようです。実際にはピーター・フォークは「コロンボ」とは言っていません。メイスン博士が留置された犬に「チョコレート」を与えるシーンでコロンボはそれを阻止しますが、「犬にチョコレートは禁物」という知識にも基づいています。実際には少量のチョコレートの摂取では犬は死なないそうです。

映画「市民ケーン」

この作品を彩るシチュエーションとして重要な、映画オーソン・ウェルズ「市民ケーン」の全編は見ていません。もしも見ていたら、もっと楽しめた作品(攻撃命令)なのかもしれません。しかし2020年のNHK「映像の世紀プレミアム 第8集 アメリカ 自由の国の秘密と嘘」で取り上げられ、「市民ケーン」を断片的に見ることができました。

監督・製作・脚本・主演をオーソン・ウェルズが担っています。主人公のケーンは実在の新聞王ハーストをモデルにしていて、彼の権力により上映を妨害されたという有名なエピソードがあるそう。世界映画史上最高の金字塔とも称される名作とのことです。すごい!

コロンボ警部はビリヤードがお得意

2話「死者の身代金」では、初代バーニーの店(?)で、11話「悪の温室」でも犯人ジャービス・グッドウィン宅でもビリヤードの腕前を披露していますが、今回は解決編の進行にビリヤードを利用していて、演出としては少々やりずぎか…。しかしこれはメイスン博士を追いつめ、この際「コロンボを殺してしまえ」と決意させるための布石だったのでしょうね。

言葉遊びに見るコロンボ警部の刑事哲学

メイスン博士とコロンボ警部の「言葉遊び」の場面は興味深いものでした。ストーリー展開の上では「攻撃命令のキーワード」を引き出す仕掛けですが、コロンボ警部の「刑事哲学」を感じさせました。それは「正義=仕事」「苦痛=失敗」というくだり。自分の仕事はお金を得る手段とは考えておらず、「悪を許さない」こと、成功を収めたいという意味ではなく「失敗を許さない」こと、という2点。これは私(ぼろんこ)の目標ともダブることです。

類似シーンとして、40話「殺しの序曲」の中で犯人オリバー・ブラントとの会話でも見られます。

合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?

ブログのお客様からのご指摘。「コロンボに犬をけしかけようとするラスト近くのシーン、合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?」た、確かに!そうですね。シナリオ…全然駄目じゃん(笑)
↑と思いきや…絶対的な存在である飼い主を襲うことはない という原則に基づいたシナリオであればOK!とのことで納得です。

以外にも近場で!

メイスン博士のご自宅と、犬の訓練士コーコラン先生の訓練場所が、目と鼻の先っていう不思議(笑)

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:トム・ラザラス
エリック・メイスン:ニコール・ウィリアムソン
ジョアンナ・ニコルズ:キム・キャトラル
チャーリー・ハンター:ジョエル・ファビアーニ
コーコラン:トリシア・オニール

加筆:2020年11月9日

47話「狂ったシナリオ」

Murder, Smoke and Shadows / 1989
若き天才監督アレックス・ブレイディ(フィッシャー・スティーブンス)が、かつての友人レニー・フィッシャー(ジェフ・ペリー)を殺害。ブレイディが無名時代に自分の妹を見殺しにしたことの復讐にきたためです。広大な映画スタジオが舞台ということでスケール感もあり、エンタテインメント性もあります。新リーズではダントツで好きな作品です。

フィッシャー・スティーブンスはグッド

犯人アレックス・ブレイディ役のフィッシャー・スティーブンスには存在感を感じました。子供がそのまま大人になったような性格ですね。年齢こそ若いですが、天才映画監督ということで、犯人の風格は出ていました。

犯人ゲストスターと、コロンボ警部の年齢関係が逆転

ブレイディの描き方は面白いです。自分は「映画の天才」だと思っているのに、一見無能に映る中年の刑事に次々に「ボロ」を出します。おそらく計画的な殺人ではなかっため、彼自身かなり悔やまれる犯行状況だったと推測されます。新・刑事コロンボからは、このように犯人と警部の年齢関係が逆転し、かつてのように「コロンボ君」と警部を呼べるような犯人は極めて少なくなります。

成功者の転落劇は健在

ポイントは主人公が世間が羨む典型的な成功者に見えて、実はすでに将来が破綻している状況であることです。業界の大物で恩人のモロスコ氏(スティーブン・ヒル)から見捨てられましたね。周囲の人間から疎まれており、協力者はささやかな「あやかりたい願望」で、すり寄ってくる人くらいです。

秘書のおばさんローズが素晴らしい

あげくの果てに、秘書のおばさんローズや元恋人の女優にまで裏切られ引導を渡されてしまいます。秘書ローズを演じたのはナン・マーティンです。確かに良い女優さんでしたし、ファンが多いのも頷けます。また、吹き替えの此島愛子さんも抜群でした。

モリー・ヘーガン

アレックス・ブレイディの元恋人で、ラストでブレイディを裏切る女優ルース・ジャニガンは「モリー・ヘーガン」です。ブレイディと一緒にチョコレートサンデーに燥(はしゃ)ぐなど、二人の子供っぽい関係を演じています。彼女は63話「4時02分の銃声」で、犯人のフィールディング・チェイスの娘ビクトリア役でも出演しました。

エンディングはかつてのコロンボ風ではない…でも許す!

エンディングの演出は、もうかつての刑事コロンボではありませんね。ハリウッド映画のようでした。だとしても面白かったですよ。警官(ベニントン巡査部長:リサバーンズら)が俳優になって、犯人と秘書の会話の証人になるってのは、よく考えたな~って感心です。しかもその布石が前に犯人が仕組んだ演出劇への報復だったということで、爽快な最後でした。

警備員はフィル・コルセット

刑事コロンボの面白さは、一度見ただけでは決してすべてを楽しめないことかもしれません。その点は、この「狂ったシナリオ」にもあてはまります。最初に見た時はブレイディが仕組んだ「大芝居」に出演の警備員フィル・コルセット(演:アル・プリエセ)の態度が不自然だとは気付きませんでした。

老けたバーク刑事B

41話「死者のメッセージ」43話「秒読みの殺人」などで活躍したバーク刑事B「ジェローム・グアルディノ」が登場。ちょっと老けたかな〜、でも相変わらずの無能ぶりでした(笑)32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる役を演じました。

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:リチャード・アラン・シモンズ
アレックス・ブレイディ:フィッシャー・スティーヴンス
レニー・フィッシャー:ジェフ・ペリー
ローズ・ウォーカー:ナン・マーティン
ルース・ジャニガン:モリー・ヘイガン
バーク刑事:ジェローム・グアルディノ

加筆:2021年2月20日

48話「幻の娼婦」

Sex and the Married Detective / 1989

この作品は好き嫌いが分かれます

女性心理学者ジョーン・アレンビー(リンゼイ・クローズ)が恋人でもあるパートナーのデービッド・キンケードを殺害。2009年BS Hi(現BSプレミアム)での放送を初めてみました。これは私がノーマーク時代のコロンボ作品でした。作風は私の好みではありませんが、紛れもなく刑事コロンボの一作品であります。

犯人の職業設定にも苦労したのか?

犯人も多彩になってきた印象です。当時は視聴率へのプレッシャーから様々な努力をしたのでしょうね。妖艶な絵作り・音楽…全体的にそのようなムードで描かれています。ただし、このような雰囲気・音楽が好きだというファンもいらっしゃいまして、それも頷ける点です。2021年の再放送をご覧になったゲストさんが、参考になるコメントを書いてくださったので、読んでみてください。

賛否両論の「賛」

この作品は倒叙法で書かれていますし、コロンボ警部の地道な捜査によって事件が解決されるという、あるべきスタイルは守られていますよね。37話「さらば提督」よりこっちの方が好きです(笑)キャメルヘアのコートの商品タグ、デービッドのキーの件、待たせたタクシーの怪など。面白い「ひっかかり」もたくさんありました。

女性トイレに長蛇の列

警部がミュージックホールの女性トイレを調べるシーン、その後、女性たちの長蛇の列ができています。「こんなに?」と思いますが、クラシックコンサートの休憩時間と重なったわけです。そのシーンの切り替えのBGMが楽曲の終わりを意味していて、よく考えられたユーモアシーンです。

賛否両論の「否」

後半になってジョーンはまたリサに扮装し、夜のクラブをハシゴして、お金や伝言をばらまき、指紋をベタベタ残し、バーテンダーなどにも印象づけるような行動をしています。このシーンはどういう意味なのでしょうか?

お色気の有無は別として

クリニックで働く助手シンディを演じたのは女優:ジュリア・モンゴメリー。一部のコメンテーターからは、むしろ主役のジョーンより美人だという意見もありますが、どうでしょう?私にはちょっと軽い感じがして、役柄としてはそれ以上の魅力は感じませんでした。

またまたバーク刑事

今回バーク刑事Cを演じたのは俳優スチュワート・J・ツリー。「今回」と強調したのは、この「バーク刑事」はよっぽどコロンボ警部のお気に入りらしく、「トッド・マーティン」「ジェローム・グアルディノ」に次ぐ三代目なのです。演じる俳優こそ異なりますが、皆それぞれ、良い味を出しています。

重要ではありませんが、このビル

番組内に登場するこのビル、アレンビー・クリニックがテナンで入っていますが、65話「奇妙な助っ人」と66話「殺意の斬れ味」にも登場します。いずれも下から上に眺めるようなシーンで、同じフィルムを使い回したのでしょうか?

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ジェラルド・リー・ルドウィッツ

ジョーン・アレンビー:リンゼイ・クローズ
デービッド・キンケード:ステファン・マクト
シンディ:ジュリア・モンゴメリー
バーク刑事C:スチュワート・J・ツリー

加筆:2021年3月5日