22話「第三の終章」

Publish or Perish / 1974

2022年の加筆

出版社社長のライリー・グリーンリーフが、契約がもつれたことを恨み、お抱えの売れっ子小説家マロリーを殺害します。この殺害計画に「殺し屋」を雇ったというのはシリーズ中、唯一で、ぼろんこの好みではなく、推薦作から漏れています(*)。ただし、本作を推すファンも多いようで、奥が深そうです。

ガッチリしたアリバイを主張しなかったグリーンリーフ

実行犯はエディ・ケーンなので、もともとアリバイは完璧なはず。しかしグリーンリーフはその夜泥酔していたため、アリバイを主張できない。鍵が殺人現場に落ちていたり、凶器の拳銃もビル内で見つかり、彼のものであったり。あたかもグリーンリーフが犯人であるかのように、証拠がぼろぼろ出てきます。

見逃しがちな些細なシーンに、凄さが隠されている…

テッド・ゲーリング殺人現場の初期捜査で、コロンボ警部がコーヒーやベティ・デイヴィスの映画の話をしながら「カギが合わない」ことを発見する場面。殺人とは無関係の話に気をとられるとポイントを逃します。この時コロンボ警部の話相手になる警備員は、テッド・ゲーリング。

犯人を捕らえる罠工作

カギ屋に立ち寄っているシーンここを見逃すな!という場面はその後、先述した通りグリーンリーフへの疑惑を抱くコロンボが、「ブラックさんのカギ屋に立ち寄っているシーン」数秒のカットで、ウインドウ看板の文字を見なければ、単に「道を尋ねている」くらいにしか気に止めないのですが、このとき既に「グリーンリーフがカギに対する疑惑を解消するために、動く可能性がある」と睨み、細工(カギの交換を発注)をしているのです!

濡れ衣作戦が命取り

エディ・ケーンに全ての罪をなすり付けて、グリーンリーフの作戦は成功するはずだった。マロリーの新作のアイデアが、エディ・ケーンによる持ち込みであったとか、その件で揉め事に発展したとか。凶暴性も含め、彼の犯行動機まで結びつけている。しかし結末は、エディ・ケーンが持っているはずのないマロリーの鍵、そして彼には書けないはずの梗概(あらすじ)が決め手となりました。

原題は「出版か死か(Publish or Perish)」

「第三の終章」という邦題が少し損しているでしょうか?この第三は何を表しているのでしょう。「終章」という言葉も本編には出てこないし。「梗概(こうがい)」を邦題に含めて欲しかった願望があります。例えば‥「盗まれた梗概」とか、笑っちゃいます?殺し屋を雇った(*)ことがマイナスポイントとしなければ、格好良い作品だと言えるかも知れませんんね。

グリーンリーフの悪態が炸裂!

ジャック・キャシディコロンボ作品の中でもスピルバーグ監督が手がけたとして有名な3話「構想の死角」に続き、ジャック・キャシディが犯人役ライリー・グリーンリーフとして再登板。前作以上とも言える圧倒的な存在感です。特に第一殺人のアリバイ工作のために、バーで管を巻くシーンでの台詞「臭せ~店だ。お前もこの店もドブの臭いがする」は、絶好調でした!でも、泥酔し車をぶつけた相手のご婦人に「そんな顔じゃ、整形手術をした方が良いよ」は、言い過ぎ!ドラマの中の台詞としては節度を欠いています。

ジョン・デイビス・チャンドラーのパワー

ジョン・デイビス・チャンドラー第二殺人で被害者となる共犯のエディ・ケーン(ジョン・デイビス・チャンドラー)のキャラは強烈。数々の映画作品に出演されている俳優さんのようです。この「第三の終章」では、ジャック・キャシディ以外のすべての出演俳優を吹き飛ばすパワーを感じました。

エディ・ケーンは橋爪功さん

そのエディ・ケーンの日本語吹き替えは橋爪功さん。日本のミステリードラマなどで数多く刑事役を演じています。(本作とは関係ないけど)

人間コロンボを垣間見るシーン

ロッキー・フレール本筋とは関係がありませんが、高級レストラン「チェイソンズ」でのシーン。おんぼろカーでレストランに到着した時、駐車係(ロッキー・フレール)に「あのクルマは盗まれないから大丈夫」と移動サービスを拒否されていました。

高額なチリを注文してしまう

モーリス・マルサック大好物のチリを注文する場面ではウエイター(モーリス・マルサック)に、メニューに無いチリを無理矢理注文し、さらにケチャップや塩を要求(自分の味にこだわる姿勢?)したりして笑えます。支払い時に高額な請求をされ笑いを誘います。乱暴に計算しますと、チリが6ドルで1800円、追加請求のアイスティが75セントで225円となり、アイスティの方は高級レストランにしては、極端に安い?のかもね(笑)

気になる女優「マリエット・ハートレイ」

マリエット・ハートレイニール出版の秘書アイリーン役のマリエット・ハートレイは41話「死者のメッセージ」でも犯人アビゲイル・ミッチェルの秘書ベロニカを演じています。見た瞬間に目が止まるような不思議な魅力のある女優さんです。

同じマンションに住んでいる?

刑事コロンボのマンションところでアイリーンと11話「悪の温室」のグロリア・ウエストのマンションは同じ外観です。二人がご近所さんであることは間違い無し。

大草原の小さな家「父さんの秘密」

マリエット・ハートレイ大草原の小さな家のシーズン2・19話「父さんの秘密」(1976年)。魅力的な未亡人「エリザベス・サーモンド」役でマリエット・ハートレイを見ることができます。美しく優しい女性として描かれています。

宇宙大作戦(スタートレック)

マリエット・ハートレイまたマリエット・ハートレイは、宇宙大作戦(スタートレック)の「タイムマシンの危機」の回のザラベス役で出演しています。あのスポックが彼女に恋愛感情を抱くエピソードです。1969年放送で、彼女が29歳の時です。

アラン・マロリー役は本物の小説家

ミッキー・スピレインアラン・マロリーを演じたミッキー・スピレインは、ハードボイルド探偵小説「マイク・ハマー」シリーズで知られる有名な小説家です。

ジェフリン・ニール

:ジャックス・オーブションニール出版の社長ジェフリン・ニールは俳優:ジャックス・オーブション。そして日本語吹き替えは、アニメ「ルパン三世」の次元大介や、俳優ジェームズ・コバーンの吹き替えとして知られる「小林清志」さん。58話影なき殺人者のヒュー・クライトン(ダブニー・コールマン)も担当されました。

スイーニー刑事

ルー・パルター第一殺人の現場検証で登場するスイーニー刑事は俳優:ルー・パルター。「スイーニー、そっちなんかあった?」「ないっすね、出るのは埃ばっかり。」こういうマリオ風のキャラクターはぼろんこ好みです、名前も可愛いし(笑)

弁護士のチェイス

アラン・ファッジ弁護士のデイビッド・チェイスを演じたのは、俳優アラン・ファッジ。気付きにくいのですが、この人は46話「汚れた超能力」に登場するCIAのハロー氏と同一人物。さらには56話「殺人講義」の犯人クーパー・レッドマンの父親。

コロンボ警部持参の魔法瓶

コロンボ警部の魔法瓶前半のマロリーさんの殺害現場で、冷めたコーヒーをもらう魔法瓶は、カップが赤くて、本体がアルミ色です。これはマロリーさんのために毎晩用意された魔法瓶なのに、12話「アリバイのダイヤル」でコロンボ警部が持参した魔法瓶と同じ!!
コロンボ警部の魔法瓶それなのに少し後のシーン、ロス市警の取調室でグリーンリーフにコーヒーをすすめる時の魔法瓶は、コロンボ警部の私物っぽいのに「赤くて黒のダイヤ模様の魔法瓶」、これは24話「白鳥の歌」でトミー・ブラウンがセスナに持ち込むバルビタール入りコーヒーの魔法瓶と「同じ!。

→刑事コロンボと魔法瓶

監督:ロバート・バトラー
脚本:ピーター・S・フィッシャー

ライリー・グリーンリーフ:ジャック・キャシディ(声:田口計
エディ・ケーン:ジョン・デイビス・チャンドラー(声:橋爪功)
アイリーン・マクリー:マリエット・ハートレイ(声:公卿敬子)
ジェフリン・ニール(出版社社長):ジャックス・オーブション(声:小林清志
アラン・マロリー:ミッキー・スピレイン
デビッド・チェイス(弁護士):アラン・ファッジ
スイーニー刑事:ルー・パルター
ヤング刑事:ポール・シェーナー
警備員:テッド・ゲーリング
ウォルパート:ジャック・ベンダー
鍵屋のブラック:ジョージ・ブレンリン
駐車係:ロッキー・フレール
ウエイター:モーリス・マルサック
バーテンダー:マイク・ラリー
加筆:2024年8月29日

25話「権力の墓穴」

A Friend in Deed / 1973

ギャンブル好きが命取り…ロス警察ハルプリン次長

財産目当てに妻を殺害するロス警察の上司マーク・ハルプリン次長のキャラクターが素晴らしい。殺人動機が弱いとも感じるが、夫婦仲は良くない状況が続いていたと思われます。しかしながら隣の2軒で連続殺人が起きれば、相当厳しく捜査されるのが予想される中で、よく夫人殺害という犯行に及んだと感心します。自分の現在の地位・名誉を全て失うだけの価値がある殺人だったということです。ズバリ財産目当てですね。

隣人のヒュー・コールドウェル

マイケル・マクガイア隣人のヒュー・コールドウェル(マイケル・マクガイア)が奥さんを死なせてしまったことが、事の発端になりますが、それを知った直後に、ハルプリン次長は自分の妻もついでに殺して、二人の共犯で罪を闇に葬る計画をしたということです。このコールドウェルのキャラクターが良いですね。お坊っちゃま風で、私は大好きです。

見どころが満載の作品

ローズマリー・マーフィ捜査の過程で、自分に都合の良いようにコロンボに指示を出すハルプリン次長の傲慢さに、いかにも官僚的な体質が見えます。また、巧みとは言い難いですが「妻(ローズマリー・マーフィ)が犯人を見てしまったかもしれない」ように仕立てるのもポイント。

邦題は「けんりょくのぼけつ」?

読みの問題。「はかあな」ではなく「ぼけつ」が正解だと思われます。NHKのアナウンサーが番組紹介でそのように読んでいました。この作品はWikipedia「刑事コロンボ」の代表的な画像としても登場しています。

シロとクロを嗅ぎ分ける嗅覚

他の作品でも感じますが、コロンボ警部の嗅覚は凄いです。このお話の場合、まず疑うべきは夫のコールドウェル。次に連続窃盗犯も有力に思えます。しかし、コールドウェルは証言の些細な部分からシロと判定。連続窃盗犯も「窃盗」の容疑者を狭めつつ、殺人ではシロと判定し、本題の事件解決の協力者へと導きます。このような鋭い嗅覚が身に付けば、我々の仕事にも役立つと思うのですが…。

「チャンスを得た」は、大きな勘違い

ハルプリン次長が署内でコロンボから前科者のリストを見せてもらうシーン。思いがけず決定的に有利な情報を得て、濡れ衣工作を思いつくのですが、それもコロンボ警部の仕組んだ罠だという展開は素晴らしいですね。あくまでも次長の命令に従っているだけの行動に見せています。まかれた餌にまんまと食いつかせたわけです。

シリーズ中、最も爽快なラストシーンの一つ

前科者アーティに殺人の罪をなすりつけ、その仕上げ工作の最中に自分が真犯人だということを「自らの行動で証明」してしまう場面。罪を被せられそうになるアーティの自宅(実はコロンボの部屋)で、「あなたが奥さんを殺したんです」とコロンボ警部に告げられるまで、一所懸命に証拠品を探しているハルプリン次長の必死の形相は傑作です。警察権力に対して、一石を投じたと言わんばかりの爽快なラストシーンでした。

リチャード・カイリーのハルプリン次長

リチャード・カイリーリチャード・カイリー(リチャード・キーリー)はハルプリン次長役を名演したと思います。見逃せないのは、妻マーガレット殺しのシーン。会話の際に見せる「優しそうな笑み」が本当に怖いです。そして「私の財産だ」という名台詞も必聴。

おそらくキャリア・エリートの設定で、現場バリバリのコロンボ警部の評判を良く知らなかったのでしょう。経験不足から、指紋の指摘に始まる失言を連発し、墓穴を掘ってしまいます。報告書を提出しろ!と、何度も催促するのも役人根性の表れで、笑えました。コロンボの「突っ込み」に、たじたじの様子が可愛く描かれています。

日本語版は北村和夫さん

北村和夫さんは俳優としてのお仕事がメインで、吹き替えは多くないようです。その中でも刑事コロンボではこの「権力の墓穴:リチャード・カイリー:ハルプリン次長」と「迷子の兵隊:ステファン・エリオット:パジェット将軍」を担当されました。

ヴァル・アヴェリー

ヴァル・アヴェリー前科者アーティ・ジェサップはこのエピソードの重要人物で、好きな人も多いことでしょう。演じた俳優の「ヴァル・アヴェリー」は12話「アリバイのダイヤル」で盗聴器をしかけた探偵:ダブス役や、34話「仮面の男」のバー:シンドバッドのオーナー役としても登場します。目立たない役では5話「ホリスター将軍のコレクション」の貸しヨット屋でも出演。

妻のテルマ

ヴァル・アヴェリーアーティの妻テルマは女優「エレノア・ズィー」。柄は悪いが、仲悪そうで‥そうでもないこの夫妻。妻殺しを犯したコールドウェルやハルプリン夫妻とは、対照的に描かれます。ローラーゲームのチケットのくだりは見どころ。

ダフィ警部

ダフィ警部ダフィ警部はお馴染みの、ジョン・フィネガン。警察官役で数回登場しますが「ダフィ警部」と特定できるのはこの一回のみ。(Wikiでは毒のある花もダフィ警部と記載)

高級住宅地「ベル・エア」地区

ベル・エア地区はハルプリン次長と友人ヒュー・コールドウェルらの家がある閑静な高級住宅街。コロンボ警部が「プジョー403」でバック運転していましたね。それに対しアーティの偽造アパートは、下町にあります。ロス市警からほど近く捜査しやすい‥という狙いもあったでしょうか。

野望の果てとの共通点

この「権力の墓穴」は20話の「野望の果て」と何か共通するテイストを感じます。その最大の理由は「音楽」でしょう。エピソードのテーマ曲とも呼べる「 不気味な雰囲気のホルンのメロディー」はとても印象的な音楽です。その他にもう1曲、隠し味の曲があります。ハルプリンとコードウェルが会うクラブのバーで流れるピアノ曲。これは「野望の果て」で夫人の誕生パーティで女性がピアノの生演奏をしている曲と同じ曲なんです。

クラブのマネージャー

ジャドソン・モーガンクラブで「ローレンス様がたいへんついていらっしゃいまして」と話すマネージャー風の男性チャールズ(写真左)は俳優ジャドソン・モーガン。この俳優さんは、2話「死者の身代金」の裁判長と同一人物。2024年の新発見でした。

クラブのバーテンダー

ベン・フロマーこのクラブのバーでバーテンダーを務めるなんとも印象的な太っちょの俳優さんはベン・フロマー。この人は34話「仮面の男」にも登場します。コロンボがCIAに後をつけられている遊園地のシーンです。

宝石商ウェクスラー

エリック・クリスマス宝石商のウェクスラーを演じたのはエリック・クリスマス、可愛い名前ですよね。こういう年配の俳優さんの存在はストーリーを落ち着かせてくれて、とても心地よいです。

ウェクスラー宝石店の女性

グロリア・ウエストウェクスラー宝石店「ナガサキですか‥」の女性は女優:アーリーン・マーテルです。この人は11話「悪の温室」で「グロリア・ウエスト」嬢を演じていました。ウェクスラー宝石店ではブルネット、グロリア・ウエストはブロンドですので少し印象が異なりますが、間違いなく同じ女優さんで大きな感動です。 

ジャニスのボーイフレンド

ジョン・カルビン亡くなったジャニス・コールドウェルのボーイフレンド「チャーリー・ショープ」は俳優ジョン・カルビン。彼はコロンボ警部の愛車プジョー403を「約28,000円」なら下取ると、申し出ました。

ランドール刑事

、ベン・モリノラストシーンで前科者アーティを連れてくるランドール刑事は、ベン・モリノ。刑事コロンボシリーズ屈指の名シーンに立ち会いました。こういった黒縁のメガネをかけたキャラクターは、良いです好きです。

ドイル刑事

ビクター・カンポスコールドウェル夫人やハルプリン夫人の現場検証で、指揮を振るうドイル刑事は俳優ビクター・カンポス。若いけど結構「やり手」っぽい刑事さんです。吹き替えの声優さんも良かったです。

マクマレイ検視官

ジョシュア・ブライアントハルプリン夫人の検視官として登場するマクマレイ先生は俳優ジョシュア・ブライアント。「言うに及ばずさ」や、無線194の「石鹸だよ、シャボンだ」はいずれも名セリフ。この人の吹き替えも良いです。このジョシュア・ブライアントは37話「さらば提督」のスワンソン造船所の所長ウェイン・テイラー(黄色いジャンパーの人)も演じています。

アルマ・ベルトラン

アルマ・ベルトランコールドウェル家のメイドを演じたのは女優:アルマ・ベルトラン。この人は21話「意識の下の映像」のノリス邸でもメイドとして働いていました。

バーニー・クビー

バーニー・クビージャニス・コールドウェルの葬儀屋「明朝8時半までは、閉めさせていただきます」の人は、俳優バーニー・クビー。風貌も名前も可愛いですね。この人は、3話「構想の死角」の生命保険屋マイク・タッカーと同一人物です。

監督:ベン・ギャザラ
脚本:ピーター・S・フィッシャー
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

マーク・ハルプリン:リチャード・カイリー(声:北村和夫
ヒュー・コールドウェル:マイケル・マクガイア(声:山本勝)
アーティ・ジェサップ:ヴァル・アヴェリー(声:金井大)
ダフィ警部ジョン・フィネガン
テルマ・ジェサップ:エレノア・ズィー
マーガレット・ハルプリン:ローズマリー・マーフィー(声:白坂道子)
ランドール刑事:ベン・モリノ(声:岡部政明)
ドイル刑事:ビクター・カンポス
マクマレイ検視官:ジョシュア・ブライアント
刑事:ロバート・バッキンガム
ウェクスラー:エリック・クリスマス(声:杉田俊也
宝石店の女性:アーリーン・マーテル
チャーリー・ショープ:ジョン・カルビン
クラブのバーテンダー:ベン・フロマー
クラブの客:ダイアン・ターレイ・トラヴィス
クラブの客:コスモ・サルド
コールドウェル家のメイド:アルマ・ベルトラン
葬儀屋:バーニー・クビー
下町のバーテンダー:マイク・ラリー

加筆:2024年9月3日

26話「自縛の紐」

An Exercise in Fatality / 1974
フィリップ・ブランズ健康クラブの経営者マイロ・ジャナスが加盟店のオーナーであるジーン・スタッフォード(フィリップ・ブランズ)氏を殺害。スタッフォードは憎まれっ子的なキャラだが、マイロを「お前、泥棒だな」と強烈に非難(笑)。日本語吹き替えは「バカボンのパパ」でお馴染みの雨森雅司(あめのもり まさし)さん。

悪人マイロに、コロンボ警部が激怒!

ロバート・コンラッドマイロ・ジャナス(ロバート・コンラッド)は不正な経営で私腹を肥やしていて大金を持ってスイスに高飛びする予定だったが、それをスタッフォードに見抜かれ、破滅が決定的になり殺してしまいます。かなりの悪人が迎えた結末ということですが、この作品では「激怒するコロンボ警部」を見ることもできます。マイロの声を担当したのは俳優:日下武史(くさかたけし)さん。
コリン・ウィルコックス激怒する直前の成り行きを何度も繰り返し見ましたが、必然性は感じませんでした。スタッフォード夫人のルース(コリン・ウィルコックス)に対する同情が引金となっていますが、その割には背景を描ききれていない気がします。コロンボ警部は15話「溶ける糸」でも激怒しますが、こちらは納得できました。

ほのぼの笑えるシーン

アン・コールマンルイス・レーシーの元勤務先トライコン工業社の女性社員(アン・コールマン)とのやりとりは笑えます。70年代のコンピュータはあんなに巨大だったのですね。これは「トータルデータ検索システム」だそうで…凄い。残念ながらこのシーンは短いバージョンではカットされたようです。
当初本記事ではこの女優を「スーザン・ジャコビー」だと記載しておりましたが、正しくは「アン・コールマン」でした。→トライコン工業社の女性社員
加筆訂正:2023年11月26日

ルイス・レーシー

ダレル・ツワーリング事件のカギを握るルイス・レーシー氏(ダレル・ツワーリング)。トライコン工業社のコンピュータを駆使して探しただけに、印象的な役柄に仕上がっています。

大草原の小さな家

コリン・ウィルコックスコリン・ウィルコックスは、大草原の小さな家の「ベイカー先生 休診」に、ベス・ノヴァック役で出演しています。自縛の紐から約3年後の作品です。ベスは妊娠中に夫を事故で亡くしたベスは高齢出産に臨む未亡人です。このお話には、若いローガン医師の役で、28話「祝砲の挽歌」のルーミス大尉(バー・デベニング)も出演しています。
ダレル・ツワーリングダレル・ツワーリングは、大草原の小さな家の「愛と祈り」に、メアリーの目の手術をする病院の経理担当「ベンソン」役で出演しています。インガルス家に高額な手術費用を請求する‥ちょっと融通の効かない人です。

エド・マクレディ

エド・マクレディトライコン工業社の警備員は「エド・マクレディ」で、その後の新シリーズで多数出演してる俳優さんです。ちょい役ばかりですがとても印象に残る素敵な俳優さんです。ちょっと見逃せませんよ〜ぜひチェックしてください。

少し納得しかねるシーンなど…

コロンボは病院で子どもとお母さんの会話を見た時に「自縛の紐」のトリックを暴きますが、「そうか、わかった!」的な描き方であまり好きではありません。もう少しさり気ない演出をしてくれたらな~って思いました。決め手の他に「着替えを知っているのは犯人である証拠」だと力説する場面は、かなり迫力あるシーンです。よく聞かないと意味が分かりませんが、それでも論理の筋立てや話し口調など、犯人を「落とす」パワーは並々ならぬものを感じました。

邦題「自縛の紐」考察

タイトル「自縛の紐」は、上手い邦題だと思いますが「決め手のまんま」。これも15話「溶ける糸」との共通点です。最初にこの作品を見た当時は小学生だったでしょうか、「自爆」だと思っていました。原題はAn Exercise in Fatalityで直訳は「死の中のエクササイズ」と出ました。他でも詳しく語りますが、コロンボシリーズの邦題には「△△の☆☆」というスタイルがたいへん多く、△△の部分にこのような普通に使われない名詞「自縛」を用いたことは、興味深いですね。

少し寂しげな表情が印象的な秘書ジェシカ

グレッチェン・コーベットマイロ・ジャナスの秘書で愛人のジェシカ・コンロイ(グレッチェン・コーベット)は20話「野望の果て」に出てくるヘイワード夫人の秘書のリンダ(ティシャ・スターリング)と雰囲気が似ていました。でもこのジェシカがマイロに「今日のあなたは元気がない」というシーン、割と元気だったと思ったが(笑)

怒りながらも、犯人を追い込んでゆく?

以前『美しいコロンボ劇にはなっていません。美しく感じないもっと大きな理由は「激怒するコロンボ警部」です。』と書きましたが、そうでもなかったです。もう一度見直すと『怒りながらも、犯人を追い込んでゆく』ように感じました。『スタッフォード夫人の緊急入院』で怒ったことも、不要なシチュエーションとまで言えませんね。また、冒頭からコロンボ警部は不機嫌な雰囲気で登場しているのも面白い(早朝に呼び出されてとのこと)です、このような登場シーンは多いですね。

清掃員のマーフィ

ジュード・フェアズ健康クラブの清掃員:マーフィ(ジュード・フェアズ)が素敵です。コロンボの捜査に迷惑そうに応対するが徐々に協力的に転じ、茶色の靴底の推理では「たいしたもんだわ」と感心していました。このジュード・フェアズは20話「野望の果て」コロンボ警部が運転中に検問される際に登場する若い方の警官の俳優と同一人物です。

現場検証のリッカー巡査

レイモンド・オキーフ健康クラブでの現場検証で中心的な役目を担っているのはリッカー巡査(俳優:レイモンド・オキーフ)。グリーン系のチェックのブレザーがよく似合ってました。

秘密組織が毒を盛った?

ビクター・イゼイ スタッフォードの死因について、秘密組織が毒を盛った‥なんてジョークを飛ばす検死官は、ビクター・イゼイ。この人は36話「魔術師の幻想」の鍵屋のオヤジさんと同一人物です。若い人はせっかちだとか説教する人です。38話「ルーサン警部の犯罪」では、ややこしいですが劇中劇の犯人役で出ています。

病院の待合室でとばっちり

ミッキー・ゴールデン15話「溶ける糸」以来、珍しく激怒したコロンボ警部。病院の待合室で居合わせた人たちは、とばっちりでえらい迷惑を被りました。そしてク警部は我慢していた葉巻を所望、隣の男性にマッチをもらいます。この男性は俳優:ミッキー・ゴールデンで、この回を始め、合計11回も刑事コロンボに出演しているエキストラ俳優です。

断たれた音の病院16

自縛の紐の病院26

さてこのスタッフォード夫人のルースが運び込まれた病院と、16話「断たれた音」でトムリン・デューディックが入院する病院は、廊下がほぼ同じです。この病院は天井の照明が印象的ですね。「断たれた音」の方はその青色が際立っています。

また「溶ける糸」の病院もよく似ています。詳しくは「皆さん同じ病院に入院?」をご覧ください。

溶ける糸のエレベーター15

断たれた音のエレベーター16

 
投稿日:2023年10月16日

口笛で、THIS OLD MAN♪

また、コロンボ警部が海岸を歩くシーンでは、ピーターフォークの「THIS OLD MAN」自身の鼻歌が吹き替え無しで披露されています。
「THIS OLD MAN」について

マリブビーチ
マイロ・ジャナスはLA北西部のマリブビーチに住んでいて、なんとご近所に「指輪の爪あと」の探偵のブリマー邸もあります。ジェシカがビキニで登場したり、マイロが海岸でトレーニングしたりで、とても印象に残ります。
マリブ周辺(マイロ・ジャナス邸)

マイロ・ジャナス健康クラブ
それに対しマイロ・ジャナス健康クラブはLA中心よりやや北側の「チャット・ワース(チャッツ・ワース)」にあります。
パサデナ地区
さらに、マイロがアリバイ工作に利用した「パーカーの店」はLA東部のパサデナ地区にあり、マイロの自宅から反対方向に位置します。この距離感はいかにもマイロがアリバイを主張したくなるほど遠いです。
パサデナ周辺(パーカーの店)*カーターは誤りです。

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事件解決の決め手(2020年9月加筆)

この一連の会話が重要だと思うのです。
マイロ:「電話でスタッフォードは、もうトレーニングシャツに着替えたから、30分ばかり(トレーニング)やってから、帰宅する」と確かに言ったんだ。
コロンボ:「そりゃ無茶ですな、そんなはずないです。」

その後の実演で「運動靴は第三者(犯人と断定)が履かせた」と実証しました。マイロもそれを認めています。
そして、その後の会話‥

マイロ:「靴を履かせたのが僕だっていう、証拠は何一つ上がっていないじゃないか!」
コロンボ:「アンタしかいないんだ。自分で認めてるでしょ?」

ここまでは、良い。
私は‥次の決め台詞が混乱の原因となっていると確信します。

コロンボ:「スタッフォードさんを第三者が最後に見たのは7時半で、その時は背広だった。翌朝死体が発見された時は、運動着を着ていた。その間、誰も彼を見ていない。ところがアンタは、前の晩午後9時に、いいかね、アンタ1人だけがあの人が着替えたのを知ってたんだ。あの時間アリバイのあるはずのアンタが、何故そのことを知っているんです?」「完全なアリバイを作ろうとしたんだが、そのアリバイが命取りでしたね。」

この際、反則かもしれませんが、ぼろんこがこの台詞を自分なりに書き直してみましょう。

マイロ:「靴を履かせたのが僕だっていう、証拠は何一つ上がっていないじゃないか!」
コロンボ:「アンタなんです。自分で認めてるでしょ?」
コロンボ:「犯人に履かされた運動靴、運動着も犯人が着せたんですよねぇ、よござんすね?マイロさん。それでは、9時過ぎに『運動着に着替えた』と電話してきたのは、一体誰でしょう?着替えたことを知っているのは、犯人だけ、そりゃあアンタですよ。」

ぼろんこ:「ニセ電話のスタッフォードの会話」と「自縛の運動靴の実証実験」。この2つだけで、マイロを犯人だと決定づけられたはずです。考えてみてください‥自分で着替えていないということは、気絶か、眠らされていたか、死んでいたか、どれかでしょう?それを、元気に自分で着替えました‥と電話してきた人が犯人なのです。

解決編がスッキリしなかった状況

しつこいコロンボに対しマイロが苛立ち、スタッフォード夫人が病院に担ぎ込まれ、コロンボも激怒(マイロの図太さに切れた)。このヒートした流れのまま、マイロの事務所で解決編をむかえます。この流れは劇的なのですが、結果的に混乱を招いています。(マイロが病院と、翌朝の事務所の服装が同じことも良くないです)
そして頭に血が上ったコロンボが、決定打ではない「力説」をするので、混乱したのです。

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刑事コロンボと魔法瓶

スタッフォードの殺害現場「マイロ・ジャナスの健康クラブ」で、コロンボ警部が持参した魔法瓶は新しいアイテムで「濃い緑で四角模様」に変わっていました!これは24話「白鳥の歌」で木っ端微塵になったのが原因か?
→刑事コロンボと魔法瓶

監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:ピーター・S・フィッシャー
原案:ラリー・コーエン
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

マイロ・ジャナス:ロバート・コンラッド(声:日下武史)
ジェシカ・コンロイ:グレッチェン・コルベルト(声:三田和代)
ジーン・スタッフォード:フィリップ・ブランズ(声:雨森雅司
ルース・スタッフォード:コリン・ウィルコックス(声:藤野節子)
検死官:ビクター・イゼイ
リッカー巡査:レイモンド・オキーフ
アル・マーフィ:ジュード・フェアズ
バディ・キャッスル:パット・ハリントンJr(声:寺島幹夫
ルイス・レーシー:ダレル・ツワーリング
トライコン工業社の女性社員:アン・コールマン
ローズ:スーザン・ジャコビー
警備員:エド・マクレディ
待合室の男性:ミッキー・ゴールデン
待合室の男性:トニー・レーガン

*作品のエンディングに関して:賛否の激しい解釈については記載を削除しましたが、2020年のBS一挙再放送で議論が再燃したため、加筆しました。
 
加筆:2024年8月29日

27話「逆転の構図」

Negative Reaction / 1974

傑作の一つ「逆転の構図」

ディック・ヴァン・ダイク著名な写真家ポール・ガレスコ(ディック・ヴァン・ダイク)が口うるさい妻を殺害し、誘拐殺人に見せかけるというお話です。この作品、「ポール・ガレスコ」という犯人の名前が非常に印象的で、小学生時代に見た頃から、コロンボシリーズ中、最も好きな作品として心に残っていました。そしてNHK BSの再放送で数十年ぶりに再会しました。色褪せていません、傑作のひとつだと思います。

殺意を抱き続ける夫、ポール・ガレスコ

まず、被害者にも非があること。計画的な殺害でありほぼ計画通りに実行できている。動機が十分である(と、思われる…。本当は殺してはいけません。)。状況証拠の揃え方も見事。コロンボ警部がしつこく犯人がいらだつ。結末が意外性を持っていて爽快。などなどです。

妻のフランシス

アントワネット・バウアー犯人のポール・ガレスコは「この世からお前が消えてくれれば良いのに‥と何度も願った」ほど、妻のフランシス(アントワネット・バウアー)を憎んでいました。会話の中で「15年間」と言っていますが、離婚できなかったのでしょうか?おそらく計画通りに事(殺人)が運べば離婚より幸せな将来が待っていると想像したのでしょう。

計画はほぼ思い通りに進みます。1点のみ、廃車置き場でトマス・ドーラン(ヴィトー・スコッティ)(浮浪者風の男)に殺害の様子を「聞かれた」こと以外でしょうか。それも決定的な証拠とはなりません。むしろ、計画通りに運んだのだが、数カ所の「落ち度」をコロンボ警部に見抜かれてしまうことが、命取りになります。

ガレスコ氏の緻密な殺害計画

ドン・ゴードンガレスコ氏の計画は、なかなかのものです。ガソリンスタンドでのアリバイ工作。メイドに誘拐をほのめかすこと。そして前科者のアルビン・ダシュラー(ドン・ゴードン)を誘拐殺人の犯人に見立てて、銃撃戦で殺して口封じをする。おそらく担当刑事がコロンボでなければ、完全犯罪として成立したと思われます。担当のホフマン刑事(マイケル・ストロング)はまんまと騙されていますね。まあ、よく考えてみれば「タクシーを使って誘拐の準備をする」ってことはあり得ないんですが。まるで自分の行動を運転手に教えているようなものです。

コロンボ警部の捜査のポイントは見どころ満載です。まず容疑者のダシュラーが相当の「お馬鹿さん」で無い限り、真犯人ではないことに気付く点です。それにガレスコ夫人を誘拐したダシュラーが脅迫状に添えた写真になぜ「時計」が必要であったか?普通に考えれば必要の無いアイテムです。日めくりやテレビ番組など、日付を特定したいものであれば別ですが、時間を特定する必要は無いと思われます。この2点で、単なる誘拐殺人ではないことは明白となります。

徐々に表情が曇るガレスコ氏

その他は、芋づる式に状況証拠が揃います。要するに、初期捜査の着眼点が他の手がかりを引き出してゆくのです。メイドに誘拐をほのめかす際に「脅迫電話のメモ」を書いた矛盾は最大の失敗のひとつです。さらには誘拐犯からの呼び出し時間のズレを、後になって解説したこと。ダシュラーのモーテルの部屋で、彼が犯人であることを分かりやすく演出しすぎたこと。これらの「甘さ」がコロンボ警部を「逆転の構図」作戦の実行に駆り立てたと感じます。つまり犯人は100%の確率でガレスコ氏と断定でき、あとはガレスコ氏自身に「私がやりました」と言わせれば良いのです。

そのために、状況証拠をちびちびとガレスコ氏に見せ、彼を追い込んでゆきます。その手法が凄いです。自分が撮影した下手な写真を見せガレスコ氏のプロカメラマンとしての誇りを引き出し「犯人像とダブる」ことを伝える。助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)を「奇麗な方ですね~」と、二人の男女関係を疑う。ホテルの部屋の件は「メイドが掃除をさぼったことで嘘をついた」という、苦し紛れのガレスコの証言を「復唱しながらメモ」しています。さらには、刑務所の写真集からガレスコ氏と前科者のダシュラーの関係を突き止める。そして最後に「脅迫状作成を実演」です。

コロンボ警部の得意技「大芝居」

エンディングは圧巻。注目すべき点は、コロンボ警部が「ここが重要です。あたし自身が采配をとり、全て落ち度なくやった」と自慢気に喋る場面。「頭脳明晰で手強い刑事」から「お間抜けデカ」に印象が変わるように演じています。そこで生まれた一瞬のスキが「崖っぷちまで追い込まれた」状況から「大逆転」のチャンスと錯覚させ、証拠品のカメラにを手に出させるのです。

よ~く考えてください。「証拠写真を複写して引き延ばした。その際にミスで裏焼きした。オリジナル写真は紛失した。」のですが「複写したネガ」は存在するわけで、そのネガを調べれば「裏焼き」は明白。それに気付かれれば、全てがフイになる「賭け」のような作戦だったと思います。まんまと自分の罠にハマるガレスコ氏。コロンボ警部は、彼の捨て台詞に対し一言も解答せず、無言のラストを向かえます。

ホフマン刑事もびっくり

マイケル・ストロング「残念でした」という印象的な台詞。ホフマン刑事(マイケル・ストロング)の表情もとても印象的です。現場タタキ上げのような刑事ですが、「あんた、自分で罪を認めたんだよ」って、コロンボ警部の補佐について「どえらい体験しちゃった」台詞でした。このマイケル・ストロングは、宇宙大作戦(スタートレック)「コンピューター人間」のコービー博士役で出演しています。

誰が見ても怪しい関係?

ジョアンナ・キャメロン助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)の美脚がカメラワークにより魅力的に表現されていました。またコロンボの「奇麗な方ですね~」に対し、仕事での有能ぶりを評価していると逃げたガレスコ氏の台詞に「うしろめたさ」を見ることができました。

成功者に美人秘書あり

英雄は色を好む…ですか、コロンボシリーズで頻繁に見られるシチュエーション「成功者に美人秘書(今回は助手)あり」。もしも、ガレスコ氏がローナとフィリピンに逃避行しなければ、もっとスッキリ逮捕したかったのでしょうね、コロンボ警部~。

家政婦さんも良い感じ

アリス・バックスガレスコ邸の家政婦さんは女優:アリス・バックス。口うるさい夫人は彼女の仕事ぶりが不満なようでした。確かに冴えない‥ような雰囲気もありますが、脅迫電話に聞き耳をたてたり、メモを見たりなど印象に残ります。

可愛い!ジョイス・ヴァン・パタン

ジョイス・ヴァン・パタンシスター役の女優「ジョイス・ヴァン・パタン」とのやりとりは何度見ても傑作です。ジョイス・ヴァン・パタンはこの後の作品39話「黄金のバックル」で美術館の館長ルース・リットンで犯人役を好演します。やはり素敵な女優さんは、脇役でも光るものです。

笑える場面が盛りだくさん、楽しい作品です

しかしこの作品は本題の完成度に加え楽しめる箇所も多いです。人間コロンボの魅力もいたる場面に盛り込まれています。警部がガレスコ宅で灰皿を見つけられず、ポケットにタバコの灰を捨てる仕草もかなり笑えました。一部始終を見ているガレスコ氏もあえて突っ込まないのがGOODでした。

名優「ヴィトー・スコッティ」

ヴィトー・スコッティ名優「ヴィトー・スコッティ」との知的な会話も面白いです。トマス・ドーランは酔っぱらいの浮浪者風の男ですが、供述の証言や食堂での会話からも知的なキャラクターに描かれていて、とても面白いです。供述書で自分を「余(よ)」と呼んでいました。コロンボ警部はこのドーランに対し優しく接していて、社会的弱者の味方であることが伺い知れます。

ハリー・ルイスにも注目!

ハーヴェイ・ゴールドカメラ店のハリー・ルイスを演じた「ハーヴェイ・ゴールド」も良かったです。ハーヴェイ・ゴールドは32話「忘れられたスター」と33話「ハッサン・サラーの反逆」「アンダーソン検死官」を演じます。日本語吹き替えは「ウイルソン刑事」「ドカベンで徳川監督役」の野本礼三さん。

 

解決編については疑問も残る

解決編があっさりしている(突然のクライマックスを向かえる)という解釈は少々違う気がしています。カメラ店でヒントを得た後、運転免許の試験官ウイークリー氏と会う場面で、すでに「逆転の構図」作戦を着々と実行していたわけです。ほぼ全ての場面で無駄の無い作り、それでいてユーモアもたっぷりです。

また、ポラロイドカメラの特性や裏焼きなどについて、不自然に感じたというご意見も多いのですが、私的には「証拠品を自分で選んでしまう」ことを狙ったことを評価しようと思います。

ラリー・ストーチ

ラリー・ストーチストーリー後半の短い出番でしたがウイークリー役のラリー・ストーチの演技も良かったです。神経質な性格で、仕事に嫌気がさしていて、かなりマイってました。公務員の気質丸出しで可愛かったです(笑)ウイークリー氏が「教習所の教官」と思っている人は間違いで正しくは運転免許試験場の試験官。ダシュラーは運転を習う必要はありません。

サンプソン警部

ビル・ザッカート警察署内でダシュラーの話で盛り上がっている場面です。この人は俳優ビル・ザッカートで、後の33話「ハッサン・サラーの反逆」のオーガスタ部長として再登場します。またこの俳優さんはぐぐ〜と年を経て55話「マリブビーチ殺人事件」にも登場します。

不動産屋マグルーダー

ジョン・アシュトン不動産屋マグルーダーは俳優ジョン・アシュトン。何となく19話「別れのワイン」のワインツアーのガイドに似ていると目をつけましたが‥別人でした。髪型が違うかあ~。でも印象に残る俳優さんでした。

モーテルのオヤジ

トーム・カーニーダシュラーが滞在していたモーテルのオヤジ「チャールズ・ビクター」は俳優:トーム・カーニー。ダシュラーとは折り合いが悪かったらしく、彼の文句ばっか言ってました。このモーテルでダシュラーはガレスコに電話をかけているが、「555」から始まる電話番号は架空のものとして多用されます。

証拠写真を撮るカメラマン

フレッド・ドレイパーガレスコ夫人の誘拐殺人現場で証拠写真を撮るカメラマンは、ご存知「フレッド・ドレイパー」。ですが今回は何か不自然さを感じます。まるで変装しているかのようですね。

解決シーンにも立ち会う署員

マイケル・エドワード・ラリーまぁ本当に執念のようなねちっこさで発見しました。警察署内で証拠品を保管している係の署員は「マイケル・エドワード・ラリー」で24話「白鳥の歌」で、セスナの墜落現場を撮影していたカメラマンと同じ俳優さんです。しかも有名エキストラ俳優「マイク・ラリー」の息子さんです!

刑事コロンボと魔法瓶

やはり前作「自縛の紐」で新しい魔法瓶を買ったようで、今回27話「逆転の構図」のロス市警のシーンでは新しい魔法瓶が大写しになっています。辻褄が合いますよね!
→刑事コロンボと魔法瓶

映画「タワーリング・インフェルノ」

ドン・ゴードン日本公開1975年の映画「タワーリング・インフェルノ」に前科者のアルビン・ダシュラーが出演しています。消防士のオハラハン(スティーブ・マックイーン)の部下の消防士(カピー)の役です。結構映ってますし、マックイーンとの2ショットなど、かなりカッコ良くて感激します。

監督:アルフ・ケリン
脚本:ピーター・S・フィッシャー

ポール・ガレスコ:ディック・ヴァン・ダイク(声:新田昌玄)
ホフマン刑事:マイケル・ストロング(声:緑川稔)
アルビン・ダシュラー:ドン・ゴードン
フランシス・ガレスコ:アントワネット・バウアー(声:阿部寿美子)
ローナ・マクグラス:ジョアンナ・キャメロン
トマス・ドーラン:ヴィトー・スコッティ(声:近石真介
シスター・マーシー:ジョイス・ヴァン・パタン(声:加藤道子)
ハリー・ルイス:ハーヴェイ・ゴールド(声:野本礼三
家政婦:アリス・バックス
サンプソン警部:ビル・ザッカート
モーテル主人:トーム・カーニー
不動産屋マグルーダー:ジョン・アシュトン
鑑識カメラマン:フレッド・ドレイパー
ウイークリー:ラリー・ストーチ(声:筈見純)
写真展の客:ダイアン・ ターレイ・トラヴィス
写真展の客:エセルレッド・レオポルド
ロス市警署員:マイケル・エドワード・ラリー

加筆:2023年9月17日

31話「5時30分の目撃者」

A Deadly State of Mind / 1975

精神科医のマーク・コリアーが愛人ナディアの夫カール・ドナーを殺害。計画殺人ではなく、妻との愛人関係に気付いたカールが二人の密会現場に居合わせてしまったためです。このような展開上、私の好きな刑事コロンボのストーリー(計画殺人)は望めませんでした。

ジョージ・ハミルトン

ジョージ・ハミルトン犯人役のゲストスター「ジョージ・ハミルトン」は日本でも有名な俳優さんですね。後の57話「犯罪警報」にも犯人役として出演しています。独特な色気を持った俳優さんです。「女たらし」がごく自然に見えますね(笑)

愛人のナディアは決壊寸前

犯行を愛人のナディア(レスリー・アン・ウォーレン)に目撃されているので、コリアーにとってはかなり不利な状況でした。強盗による犯行に見せようと努力しますが、状況証拠やナディアの曖昧な供述による矛盾をコロンボ警部に見抜かれて、どんどん追いつめられてゆきます。女優レスリー・アン・ウォーレンは「スパイ大作戦」にも出演しています。

また出た、コロンボ警部の大芝居

状況証拠は十分でも、決め手が無い。コロンボ警部は「偽の目撃者」を仕立てます。コリアーは「自分は5時30分にドナー邸に居なかった」と跳ね返せば、良かったのでしょうが、人の心理を読むコロンボ作戦はまんまと成功します。不利な状況にある人間は「正当な部分は主張したがる」ということです。これは27話「逆転の構図」でポール・ガレスコが犯したミスと似ていますね。

おぉ、マーチソン博士!

フレッド・ドレイパー「偽の目撃者」であるデビッド・モリス(兄)は、18話「毒のある花」でマーチソン博士を演じたフレッド・ドレイパー。兄弟が並んだ場面で、眼鏡を外した瞬間に「おぉ、マーチソン博士」と叫んでしまいました。日本語版は「永井一郎さん(サザエさんの磯野波平役で有名)」

おぉ、パジェット将軍!

スティーブン・エリオットまた被害者のカール・ドナーはスティーブン・エリオットで、この作品より14年後、49話「迷子の兵隊」でパジェット将軍(ほぼ別人!)を演じています。カール・ドナーの日本語版は「大平透さん(ハクション大魔王)」

犯罪警報のウェイド・アンダースで復帰

ゲストスターのジョージ・ハミルトンはこの16年後(1991年)の57話「犯罪警報」に再登場します。エリオット(パジェット将軍)の変貌ぶりを考えると、「犯罪警報」のハミルトンは「流石、若作り!」と拍手を贈りたくなります。

ボーデン博士のカレン・マッコーン

カレン・マッコーン脇役としてはアニタ・ボーデン博士のカレン・マッコーンも素敵でした。コリアーから「勤勉に働け」と叱咤された場面では不機嫌そうでした。コロンボ警部から「殺人事件について質問しているんですよ!」と叱られた場面など印象的です。

コロンボ警部、またまた大ショック

クレーマー刑事クレーマー刑事「ブルース・カービー」も光っていました。愛人ナディアの飛び降り自殺(実際には殺害された)の現場でカール・ドナーの所持品を発見した際の「コロンボ警部、またまた大ショック」は最高です。しかも、別の着眼点に夢中のコロンボ警部に無視されていました。

コリアーの友人アーノルド

マーク・コリアーの友人アーノルド(ホームパーティの一人)はレドモンド・グリーソン。彼は36話「魔術師の幻想」のジェロームの店でアナウンスなど裏方で活躍するジョージ。サンティーニに「ジェロームさんを消しちゃってください」とジョークを言う男性です。

ランズバーグ先生とコリアー先生は同僚だ!

キャシー・スピアーズ31話「5時30分の目撃者」の精神科医コリアー先生と、32話「忘れられたスター」の外科医ランズバーグ先生の病院は同じでした!詳しくは「廊下に色ラインが描いてある病院」をご覧ください。それとは関係ないですが、病院の受付の女性(キャシー・スピアーズ)が必要以上に色気ムンムンでした。そしてここは、殺人講義の大学のロケ地でもあります。
刑事コロンボマップ
刑事コロンボマップマーク・コリアーのヨットハーバーは、悪の温室のキャッシーのそれと同じ場所「 マリーナ・デル・レイ
」です。海岸沿いに南下しますと、ナディア・ドナーのマンションがあります。かなり眺望が良いと思われます。

犯行直後に車を門にぶつけた件

ブログゲストさんからのご指摘があり、加筆します。コリアーは犯行現場にブルーのベンツのクーペで来ていました。そして犯行後に逃げる際、目が不自由なダニエル・モリスさんが飛び出したため、避けるために白い門に激しく車をぶつけています。その衝撃で門の角度が変わったほどです。

そしてその夜、コリアーが呼び出されて現場に駆けつける時は、ボーデン先生のシルバーの大きな車で来ていました。ブルーのベンツはバンパーに傷がついたはずなので、自分の車で来れなかったのか?日が変わり、コロンボがコリアーの病院を訪れた時、駐車場のコリアーの車を調べています。この時には、コリアーはすでにベンツを修理に出した後なのでしょう。コロンボはタイヤのトレッド(模様)に着目していますが、バンパーの傷は無さそうでした。
本編では兄のデビッド・モリスは「急ブレーキを踏んで止まった」と証言していて、衝突したことには触れていません。そうでなく、「5時30分に出て来た車は、自分を避けるために何かに激しく衝突した」と証言し、コリアーが直後にフロントバンパーを修理したことも証拠にすれば良かったが…。

しかしここはやはり目撃者に「ブルーのクーペに乗っていた」と証言させ、「目撃者は目が見えないはずだ」とコリアーに反論させたことで、十分面白いのでしょう。
 
監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ピーター・S・フィッシャー
マーク・コリアー:ジョージ・ハミルトン(声:小林勝彦)
ナディア・ドナー:レスリー・アン・ウォーレン(声:渋沢詩子)
アニタ・ボーデン:カレン・マッコーン(声:村昌子)
カール・ドナー:スティーブン・エリオット(声:大平透)
クレイマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也)
ハント医師:ウイリアム・ウインターソール
チャック・ホイーラン:ライアン・マクドナルド
病院の受付:キャシー・スピアーズ
看護師:プリシラ・バーンズ
アーノルド:レドモンド・グリーソン
デヴィッド・モリス:フレッド・ドレイパー(声:永井一郎)
ダニエル・モリス:ジャック・マニング
ヘンドリックス刑事:バンス・デイビス

加筆:2024年8月29日