46話「汚れた超能力」

Columbo Goes to the Guillotine / 1989

初期シリーズから一転、高インパクト重視な印象

超能力者、エリオット・ブレーク(アンソニー・アンドリュース)は、かつてウガンダの刑務所で裏切られたマジシャンのマックス・ダイソンをダイソン自作のギロチン装置で殺害。
テーマ・殺害方法・解決シーンなどは、これまでの刑事コロンボシリーズと比較し、やり過ぎと思えるほど劇的です。これも、新シリーズのスタートを強烈に印象づけたい狙いでしょうか。

ピーター・フォークの日本語吹き替えは石田太郎さん

ピーター・フォーク約10年の休暇(?)から復帰したコロンボ警部この時62歳。時間経過した分、貫禄がついたんじゃない?私は大好きです。日本語吹き替えは人気を博した小池朝雄さんから石田太郎さんにバトンタッチ。賛否両論あると思いますが、私にはそれほどの違和感も無く、馴染むことができました。

コロンボシリーズの醍醐味「心理戦」は健在

アンソニー・アンドリュース超能力者であれば、ダイソンがどのような心境で死に至ったか読み取れるであろうと相談を持ちかける警部。そこでブレークは「自殺であった」と示唆しますが、これがかえって自分への容疑を濃くしちゃってますね。発言の直後「自殺のはずがない」とコロンボ警部から一蹴されています。その理由を次々に見せられて、ブレークは一気にマズい立場に追いやられていました。

自殺でないと否定されたブレークは、事故だったと方針転換し、苦しい状況に拍車がかかります。コロンボ警部は「マイナスドライバーの矛盾」などにより「殺人」だと断定しながらも、ブレークに「自殺説」「事故説」を口にさせ、心理的に追い込んでいったのでしょう。

マックス・ダイソンは素敵だった

アンソニー・ザーブマックス・ダイソン(アンソニー・ザーブ)は素敵でした。インチキ臭さ&人間臭さを兼ね備えていて、それなりの風格もあります。犯人のエリオット・ブレーク(アンソニー・アンドリュース)も悪くないのですが、42話「美食の報酬」のポール・ジェラードと似た印象で風格に欠けました。配役が逆でも面白かった?などと書いては失礼でしょうか。

新シリーズの女性像

カレン・オースティン犯人エリオット・ブレークのパートナーであるポーラ・ハルは女優カレン・オースティン。70年代に制作された旧シリーズから10年以上の時を経て、脇役女性の描き方も変化があったように感じます。もちろんファッションの流行なども楽しめますね。

新シリーズの脇役俳優像

ジェームズ・グリーンマジシャンのバート・スプリンガーを演じたのは、ジェームズ・グリーン。こちらは旧作の登場人物と似たような雰囲気を持っており、懐かしい感じも受けました。例えば13話「ロンドンの傘」に登場する楽屋番のフェンウィックとか。

CIAのハロー氏

アラン・ファッジCIAのハロー氏を演じたのは、俳優アラン・ファッジ。気付きにくいのですが、この人は22話「第三の終章」に登場する弁護士のデビッド・チェイスと同一人物。さらには56話「殺人講義」の犯人クーパー・レッドマンの父親。

アロヨとフリードライブ

ブレークがいかさまトリックに使った地図は全ページ「アロヨとフリードライブ」だった?そして赤い点はあらかじめ打ってあった?それが国防省にバレないってこと‥ある?と、少しぼやかせてください。さてこの「アロヨ」はロサンゼルス北東のパサデナ近くにあるようです。しかし、例の地図とは地形が違う…気がします。→コロンボマップ

アロヨとフリードライブ

エンディングはユニークにまとめる

これは新シリーズの特長と言えるかも知れません。旧シリーズでは割と「スカッと決めておいて、コロンボ警部自身は少し後ろめたい表情をして止まる」パターンの方が多かった気がします。今回は特に「血なまぐさい」展開でしたので、最後だけは口元が緩むような終わり方にしたのでしょう。

エリオットブレークの吹き替えは野沢那智さん

野沢那智さんは、8話「死の方程式」で犯人のロジャー・スタンフォードを演じて以来2度目の犯人役。私は少し演技が大袈裟かな…と感じてしまいますが、ブログゲストの方々などには好評です。

監督:レオ・ペン
脚本:ウィリアム・リード・ウッドフィールド
音楽:ジョン・カカヴァス

エリオット・ブレーク:アンソニー・アンドリュース(声:https://fact-web.com/columbon/?p=3540#nozawa”>野沢那智)
マックス・ダイソン:アンソニー・ザーブ(声:阪脩
ポーラ・ハル:カレン・オースティン(声:https://fact-web.com/columbon/?p=3540#fujida”>藤田淑子)
CIAのハロー氏:アラン・ファッジ(声:樋浦勉)

最終加筆:2022年8月13日

49話「迷子の兵隊」

Grand deceptions / 1989

犯人が悪人なだけに、殺害動機は十分!

ロバート・フォックスワースこれは初回放送時に見ています!国防関連財団の幹部ブレイリー大佐(ロバート・フォックスワース)が部下のキーガン曹長を殺害。殺害動機は十分でブレイリー大佐が財団を利用し私腹を肥やしていたり、名誉会長であるパジェット将軍の妻との愛人関係を暴露すると脅迫されたためです。

「祝砲の挽歌」に似ているか?

この作品を最初に見た時は「祝砲の挽歌」とイメージが重りましたが、しかし何回も見てみると、随分違うテイストでした。とにかくブレイリー大佐なる人物がかなりの悪人で、戦争帰りの「タフさ」が悪の方向に向いています。殺されたキーガン曹長は生き様として正当性を感じませんので、ドラマ自体に美しさは全くありません。殺害状況には若干無理を感じますが、全体の流れとして受け止めることはできます。

物語は、結構面白いのです

キーガン曹長が「恐喝」という新たな職を得たこと。愛人関係にあったパジェット将軍の妻ジェニーがコロンボの車を発見し、密会場所に現れなかった場面。笑いを誘う教会のシーン。いろいろ見どころはありましたね。秘密のファイルが「赤と緑」に色分けされている設定も笑えます。パジェット将軍は美しく描かれていると感じました。軍人とはかくあるべき、でしょうね。

ただし、トリックには大疑問です

決め手になる段ボール箱の件は、容認できません。私は何回も引っ越した経験がありますが、宅配業者に問い合わせれば「中身が本であったか否か」は歴然。本が段ボール箱いっぱいに詰まっていれば、重くて容易に持てませんね。パーティ当夜:軍隊ミニチュアと書かれた段ボール箱が届きますが、これをブレイリー大佐ご本人でさえ、持ち抱えられず引きずっています(笑)

その点、中身が人形であれば重量は数分の一です。なので、段ボールの容積を量る以前の問題です。また「人形を並べていた=強力なアリバイがある」というものかなり強引な印象です。共犯者がいた可能性がゼロであれば別ですが。

すでに敗色濃厚だ

日本語版では犯人ブレイリー大佐が「すでに敗色濃厚だ」という台詞で終わります。これは、コロンボ作品らしいエンディングで気持ち良いです。権利の説明とコロンボ人形のアップのシーンは、新シリーズならでは…かな。

邦題「迷子の兵隊」

原題は「Grand deceptions」で直訳「壮大な詐欺」となりました。軍隊と全く無関係のタイトルになってしまいますので、「迷子の兵隊」は大正解でしょうか。この迷子の兵隊とは殺されたキーガン曹長を比喩したものと考えます。刑事コロンボ’90版では「おもちゃの兵隊」というタイトルでしたか、「迷子の兵隊」の方が好きかな~。

スティーブン・エリオット

スティーブン・エリオット出演した俳優陣は好きでした。パジェット将軍のスティーブン・エリオットは声優の北村和夫さんとセットで大満足です。エリオットは初期作品31話「5時30分の目撃者」でジョージ・ハミルトンに殺される被害者「カール・ドナー」として出演。日本語の北村和夫さんは「権力の墓穴」ハルプリン次長も素敵。

ジャネット・エイルバー

ジャネット・エイルバー将軍の若き夫人ジェニーのジャネット・エイルバーも印象に残りました。単にパジェット将軍の地位と名誉に目がくらんだようには描かれていませんでしたね。特に「ダンスタン」のアパートの下で、コロンボの「プジョー403」と出くわすシーン。その後、夫のパジェット将軍にそのことを告白する演技など、良かったです。

アンディ・ロマノ

アンディ・ロマノキーガン特務曹長のアンディ・ロマノも良かったです。軍人アガリのタフさが出ていてリアリティがありました。「ポッポ」「ネンネ」など、下品なスラングを連呼するも、綺麗好きな一面もあり、独特のキャラクターが際立っていました。

マイケル・マクマナス

マイケル・マクマナス教会のシーンで登場するキーガンの戦友「タンザー曹長」を演じたのは、マイケル・マクマナス。表情豊かに演技をしていて、とてもよかったです。たたき上げの軍人っぽさも出ていて印象に残りました。

リン・クラーク

リン・クラーク財団に勤める事務員(秘書)のマーシャは女優リン・クラーク。カラッと陽気で天真爛漫な感じで、すごく可愛かったですね。似た感じの秘書さん、他の作品にも登場します。今度まとめてみます。

日本語版吹き替えは羽佐間道夫さん

ロバート・フォックスワースの吹き替えの羽佐間道夫さんは絶妙です。日本声優界の大御所の一人です。シルヴェスター・スタローンのロッキーなど数々の名作で吹き替えを担当。マイナーな仕事ですが「巨人の星の速水譲次」では、意地悪な声色が強烈で大好きでした。
そして、ロバート・フォックスワースは、日本でも大人気を博したテレビドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ役「エリザベス・モンゴメリー」と結婚していました。

監督:サム・ワナメイカー
脚本:シイ・サルコッツ
音楽:ジョン・カカヴァス

フランク・ブレイリー:ロバート・フォックスワース(声:羽佐間道夫)
ジャック・パジェット:スティーブン・エリオット(声:北村和夫
ジェニー・パジェット:ジャネット・エイルバー(声:宗形智子)
レスター・キーガン:アンディ・ロマノ(声:麦人)
 
加筆:2022年8月13日

57話「犯罪警報」

Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health / 1991

千両役者:帰ってきたジョージ・ハミルトン

ジョージ・ハミルトン
人気司会者のウェイド・アンダースが同業者のバド・クラークを殺害。犯人がテレビ業界の有名人、被害者が犯人の過去を知って脅迫、追いつめられた犯人が殺害といった王道のど真ん中をゆく作品。しかも、犯人役には「ジョージ・ハミルトン」を起用。ということで、背景は文句なしです。

原題と邦題

原題の「Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health」は、タバコのパッケージ側面に書かれた(一般的な)注意書き「Caution: Cigarette Smoking May Be Hazardous to Your Health」を文字っています。この「警告:喫煙は健康に害を及ぼす可能性があります」の「Cigarette Smoking May」を「Murder Can」に置き換えているのです。要するに「警告:殺人は健康に害を及ぼす可能性があります」MayをCanにしたのは、少し語気を強めたのか?何か意味がありそうですね。ですので番組名(邦題)の「犯罪警報」にもつながるニュアンスんですね。私は呼びやすい「犯罪警報」の邦題が気に入っています。

大文字と小文字

刑事コロンボの原題はすべて「大文字」なのはご存知の通り。ですので「CAUTION: MURDER CAN BE HAZARDOUS TO YOUR HEALTH」となります。バド・クラークはこの「オールキャップス」スタイルでタイトルを打っていました。それに対し、ウェイド・アンダースは(ほぼ)全ての単語の頭を大文字にする「タイトルケース」を好みました。これは「タバコの注意書き」と同じ手法だという皮肉もあるのでしょうか?

犯行トリックに関しては、全然駄目でした~

自分が刑事でも「吸い殻の不自然さ」は見逃しませんね。犯人のアンダースは、死に至った被害者クラークに対し「だからタバコはやめろと言ったんだ」的な台詞を吐きますが、実は「タバコの知識に疎いくせにタバコを殺人に利用した」ことが命取りだったというオチですね。
特に印象的なのがコロンボ警部から「ニコチンのシミがフィルターについていない(つまり煙草を吸わない人による工作)の怪」を指摘されるシーンでの顔。半開きの眼で自らのミスを後悔する表情はとても良いです。

ダンディな犯人とヨレヨレ刑事の対比

ウェイド・アンダースの紳士ぶりとコロンボ警部の身なりの対比も面白いです。これは旧作20話「野望の果て」で、上院議員候補ヘイワード氏とのシーンを思い出させます。

バド・クラークの逆襲

ピーター・ハスケル殺害されるバド・クラーク役のピーター・ハスケルは好きでした。「まだタバコを吸っているのか?」とアンダースから忠告され「スハ~~~~」って彼の顔に煙を吐きかけて返事をするあたり、なかなかの態度。そのくせ、死ぬ間際に「く苦しい、たすけて~」とアンダースに頼むあたりも憎い。

恥ずかしい過去は、いつかバレたような気も…

ポルノ映画に出ていたことで脅迫される犯人ですが、ビデオ屋の主人もその事実を知っているので、クラークの口を封じでも、やがて明るみになったでしょうね。もう少し頑張ってくれたら、初期作品に匹敵するほど好きになれたと思います。

ジョージ・ハミルトンジョージ・ハミルトンは1974年の31話「5時30分の目撃者」に続く2度目の犯人役。旧作・新作で何れも犯人役を演じたのは、「パトリック・マクグーハン」「ウィリアム・シャトナー」と、この「ジョージ・ハミルトン」の3人のみ。

初期作品風の見所が多い作品

冒頭の劇中劇シーンは、コロンボの物語の一部だと錯覚させる仕掛け。14話の「偶像のレクイエム」を思い出しました。パソコンの出力用紙の指紋に対する発見は、10話「黒のエチュード」のタイプ用紙の一件を思い出しました。監視録画は30話「ビデオテープの証言」。そういう意味では、初期作品を思わせるような見所が多いです。

テレビ局はKRVA 3

Ocean Side East Cafe56

Ocean Side East Cafe57

犯罪警報のテレビ局は「KRVA 3」です。これは56話の「殺人講義」でラスク教授の殺害シーンを放送したテレビ局と同じです。また、59話「大当たりの死」で「ロト番組」が始まる直前にチラッと映る、3チャンネルのニュース番組もこの「KRVA 3」です。

ディレクター「マキシーン」

ペニー・ジョンソン・ジェラルド犯罪警報の女性誌レクター「マキシーン・ジャレット」は、女優ペニー・ジョンソン・ジェラルド。かなり多数のテレビドラマ等に出演しているようで、今後の調査対象です。

KRVA 3の女性社員

マリー・チャンバースKRVA 3の女性社員リサは女優マリー・チャンバース。スラっとした感じの女性で、ちょっと49話「迷子の兵隊」の「ジャネット・エイルバー」に似た雰囲気でした。

インタビュアの東洋系女性

エミリー・クロダアンダース氏にインタビューする東洋系女性リンダは、エミリー・クロダ。その名の通り日系の女優さんのようです。この方も数々のドラマ作品等に出演されています。

検死医のジョージ

スティーヴン・ギルボーン検死医のジョージ・ジョンソン先生(俳優:スティーヴン・ギルボーン)も再登場。鼻メガネの表情がとても印象的で大好きな俳優さんです。

監督:ダリル・デューク
脚本:ソニア・ウルフ・パトリシア・フォード・エイプリル・レイネル
音楽:ジョン・カカヴァス

ウェイド・アンダース:ジョージ・ハミルトン(声:小林勝彦)
バド・クラークピーター・ハスケル(声:麦人)
マキシーン:ペニー・ジョンソン・ジェラルド(声:高乃麗)
検死医ジョージ:スティーヴン・ギルボーン
リサ:マリー・チャンバース
リンダ:エミリー・クロダ
 
加筆:2023年12月17日