15話「溶ける糸」

A Stitch in Crime / 1973

ご存知、スタートレックのMr.スポックの登場

レナード・ニモイ心臓外科医のバリー・メイフィールド(レナード・ニモイ)が看護婦で手術助手のシャロンを殺害。私にとっては‥かの有名な「Mr.スポック」の登場ということで、全コロンボ作品の中で最も記憶に深く刻まれた作品でした。犯人がその職業と関連の深いトリックで殺害(計画)するという、王道に当てはまる点でも大好きです。

日本語吹替版

吹き替えがテレビでお馴染みのMr.スポックの声(久松保夫さん)だったらな~って、欲もありますが、残念。ちなみに久松保夫さんは、5話「ホリスター将軍」の役をされましたね。

コロンボシリーズ中「最悪の人物」

私の印象としては「動機不十分」です。がしかし、それを上回るメイフィールドの悪人像は強烈です。自分を信頼してくれている恩師ハイデマン博士を殺害しようと計画。しかし、そのトリックを手術助手のシャロンに見抜かれそうになると一転、シャロンを殺害。この殺害が予期せぬ行動となり、コロンボ警部に矛盾を次々に暴かれてゆきます。そして、そのシャロン殺害をハリー・アレキザンダーなる元麻薬常習者の犯行に見せかけるため、アレキザンダーを殺害するという、凄まじい殺人鬼ぶりです。

「非論理的」って台詞すら出なかったが…冷静沈着なMr.スポック。

その犯行がすべて「沈着冷静で論理的?」に淡々と行われます。スタートレックでのMr.スポックとイメージがダブって、より一層ストーリーを引き締めていますね。しかしその冷静さが、コロンボ警部の目に止まり容疑者と特定され、しかも未遂に終わるハイデマン博士殺害計画の証拠を、博士の体内より引き出させてしまうという…コロンボファンにとっては美味しすぎる展開。そしてラストシーンも、この作品に相応しく「完璧に楽しめる」ものだったと言えるでしょう。

コロンボと犯人の対決を堪能できる作品

この「溶ける糸」では犯人の冷酷な連続殺人に対し、コロンボ警部が心からの怒りをぶちまけ「対決」宣言し、ラストシーンを向かえます。「コロンボ警部」対「頭脳明晰な犯人」という刑事コロンボシリーズの最大の醍醐味が最も良く表現された作品の一つです。この雰囲気(犯行後にも裏付け工作などをする…etc.)を持った作品としては、16話「断たれた音」も大好きです。
その反面、6話「二枚のドガの絵」、20話「野望の果て」、25話「権力の墓穴」などは、犯人が「少し間抜けで滑稽に感じる」「よせば良いのに…自分から罠にハマって来る」もので、別の意味で楽しめる作品です。

アン・フランシスが好演

アン・フランシス殺害された手術助手のシャロン・マーチン役はアン・フランシスで8話「死の方程式」の秘書ビショップ役と同一人物。口元のほくろが印象的なセクシー女優(?)ですが、今回は真面目な人柄の役を演じています。

一番好きな殺害シーン。

不謹慎な表現になりますが、刑事コロンボシリーズで一番好きな殺害シーンは?と聞かれたら‥本作の「シャロン殺害シーン」だと、答えるかもしれません。病院の駐車場、勤務を終えたシャロンの車に忍び寄るメイフィールド。シャロンは彼の殺気に気づき「私を殺すの?本気なの?」という恐怖を訴え、直後にバッグとキーが地面に落ちる。絶叫も流血もない。そのあと眠そうなコロンボ警部が現場検証にやってくる。これぞ刑事コロンボの絵作りですね!

ゆで卵が大好きなコロンボ警部

余談ですが、このお話の中でコロンボ警部が持参の「ゆで卵」を殺人に使われた凶器で割って食べるシーンは人気が高いと聞きます。実はこれはこの朝「2個目のゆで卵」で、1個目は車のボンネット付近で割って食べています。その後のシーンでメイフィールド医師から「胃薬」をもらいますが、おそらくゆで卵の食べ過ぎが原因ではないでしょうか?

フローレス刑事

ビクター・ミランこのシーンや最後の手術後のシーンに登場するフローレス刑事は「ビクター・ミラン」という俳優さんで、ラテン系なお顔で印象に残ります。この人は19話「別れのワイン」のテレビニュースでリックの死について解説するお医者さんと同一人物です。

ハイデマン博士

ウィル・ギア殺されかけたハイデマン博士(演:ウィル・ギア)」もやさしいおじさん風で良いですね。次作である16話「断たれた音」のトムリン・デューディックと、キャラが被ります。ウィル・ギアは本作の5年後1978年に76才で亡くなっています。

ニタ・タルボットも可愛い

ニタ・タルボット看護師シャロンの友人「マーシャ・ダルトン(演:ニタ・タルボット)」が可愛かったです。コロンボ警部やメイフィールド医師とのやりとりは、微笑を誘いますね。刑事コロンボに登場する脇役女優の中でも、特に大好きです。

看護師モーガン

アネタ・コルソーシャロンの後任でハイデマン博士のお世話をしたモーガン看護師は女優:アネタ・コルソー。この女優さんも、ちょっといい雰囲気でしたね。数々のテレビドラマに出演しているようです。

ハリー・アレキザンダー

ジャレッド・マーティン悲しい運命を辿ってしまうハリー・アレキザンダー(演:ジャレッド・マーティン)。Wikipediaによると、「白バイ野郎ジョン&パンチ」「ナイトライダー」「ジェシカおばさんの事件簿」など、お馴染みのテレビドラマにも出演しています。

病院の清掃係

バート・グリーン病院で掃除機をかける人は俳優バート・グリーン。この人は2話「死者の身代金」で裁判の傍聴人、9話「パイルD-3の壁」のサングラスの作業員で出演しています。

こちらは清掃のおばちゃん

パッシー・ギャレットこちらは別のシーンでコロンボ警部と楽しく会話をする掃除のおばちゃん女優:パッシー・ギャレット。脳みその模型を磨きながら事件当日のシャロンの様子を語っていました。

溶ける糸の解説をするポール医師

ケン・サンソム物語の後半、溶ける糸の解説をするポール医師は俳優ケン・サンソム。この人は4話「指輪の爪あと」の免許センターらしき施設の検眼係の男性と同一人物です。どちらも黒ブチ眼鏡がよく似合う可愛いキャラクターです。

決め手となった溶ける糸

メイフィールドが「コロンボのポケットで見つかった溶ける糸」に見覚えが無い…としらを切った場合は?という質問コメントを頂き加筆します。
糸には…
ハイデマン博士の血液が付着している。
染色して溶けない糸に見せかけている。
メイフィールド医師がコロンボのポケットに糸を放り入れた…ことは認めなくても、糸の存在が決定的証拠となりそうです。だからメイフィールドは、溶ける糸を処分したかった。その一時的な隠し場所が、コロンボのポケットというわけです。もしハイデマン博士が溶ける糸の影響で死亡すれば検死解剖により、メイフィールド医師が殺害目的に使用したことはバレてしまいます。リスク覚悟で溶ける前に体内から取り出そうと決めたわけです。

病棟のエレベーターが同じ!

15話「溶ける糸」と、16話「断たれた音」の病棟のエレベーターは同じでした。廊下の天井の照明の配列が似ていますが、色が違って見えます。内装の配色も、溶ける糸は地味で断たれた音はかなり派手なので、同じ病院かどうかは、定かではありません。詳しくは「皆さん同じ病院に入院?」をご覧ください。

溶ける糸のエレベーター15

断たれた音のエレベーター16

溶ける糸のエレベーター15

断たれた音のエレベーター16

音楽担当はビリー・ゴールデンバーグ

メイフィールド邸でのパーティで使われているBGM、特にコロンボ警部の車が走っている場面でよく聞こえます。この音楽は2話「死者の身代金のテーマ」と同じです!作曲家は「ビリー・ゴールデンバーグ」。70年代っぽいポップなサウンドなので、聞いてみてください。

刑事コロンボマップ

監督:ハイ・アヴァーバック
脚本:シリル・ヘンドリックス
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

バリー・メイフィールド医師:レナード・ニモイ(声:天田俊明)
シャロン・マーチン看護婦:アン・フランシス(声:翠準子
エドモンド・ハイデマン博士:ウィル・ギア(声:巖金四郎)
マーシャ・ダルトン:ニタ・タルボット(声:佐原妙子)
ハリー・アレキザンダー:ジャレッド・マーティン(声:津嘉山正種)
フローレス刑事:ビクター・ミラン
ポール医師:ケン・サンソム
シンプソン医師:マレイ・マクリード
ミケルソン医師:レオナルド・サイモン
外科医:トニー・レーガン
外科医:ロバート・バッキンガム
看護師モーガン:アネタ・コルソー(声:沢田敏子
私服刑事:マイク・ラリー
警察官:ゲーリー・ライト
警察官:ボブ・ハークス
清掃婦:パトシー・ギャレット
清掃係:バート・グリーン
 
加筆:2024年9月3日

“15話「溶ける糸」” への136件の返信

  1. はじめまして
    コロンボは伏線の張り方も小粋で面白いものが多いと思うのですが
    この作品も途中のパーティーシーンで身振り手振りを交え熱心に美容整形のリフトアップ手術のことを話しているのが映っていて「溶ける糸」に対する視聴者への強調をしていると思うのですが
    考えてみれば50年前でも美容整形が結構当たり前になっていたんだなってたょっとびっくりしてしまいます
    ひょっとしたら撮影現場ではごく身近な話で脚本家はそこから着想を得てこのお話を書いたのかも?
    ルームメイトの看護士さんを美容整形外科担当にしたのはそのせいかも?
    最近は過剰なアンチエイジング美容整形で残念な進化をしてしまった俳優さんもいますがそれだけ当時から身近な話題だったのかなって思いました

  2. ぼろんこさん、初めまして。
    小生「宇宙大作戦」のファンでもあり、「ルーサン警部の犯罪」のカーク船長とMr.チェコフのニアミスには気付きましたが、「溶ける糸」の病院内アナウンスがメイジェル・バレットさんだったとは最近まで知りませんでした。こちらはMr.スポックとチャペル(看護師)のニアミスですね。歩くメイフィールド医師(レナード・ニモイ氏)にアナウンスがかぶるシーンもあり、共演と言えなくもありません。
    「宇宙大作戦」ではチャペルがMr.スポックに想いを寄せるという設定だったので、当時のコロンボ制作陣の粋な計らいかなと思ったりもします。

    1. たそがれシンプル・ラブさん、お返事が遅くなりました。
      アーリーン・マーテルへのコメントでしたが、ご希望通り「溶ける糸」のページに移植いたしました。
      >病院内アナウンスがメイジェル・バレットさん
      あまり詳しく存じませんでお返事に困りましたが、今後の調査の課題とさせてください。

  3. 溶ける糸は名作だと思います。
    子供の頃、NHKの名作5選に選ばれてVHSに録画していました。懐かしい。(他は、死の方程式、5時半の目撃者、殺人の序曲、もう一つなんだっけな?謀略の結末でしたっけ?)

    コロンボの醍醐味は知能犯との知恵比べであり、インテリ層である知能犯の裏側にある汚れた劣等感が、風采は上がらないが実は名刑事であるコロンボによって、事件の解明とともに露わになって行く過程とコントラストが痛快ですね。作品によっては劣等感はではなく犯人が経験してきた人生の悲しみに根ざした犯行である場合には、コロンボの深い共感が垣間見えるところも魅力です。

    また本作のように鉄棒にゆで卵を割るシーンなどコロンボはユーモア満載です。
    救済所のシスターとのやりとりなどは少し盛りすぎの感もありますがおかしさが絶えませんwww

    1. お返事が2年近くも遅くなりました笑。すみません。
      投稿当時も拝読しておりますが、今日再読しました。楽しいコメントをありがとうございました。

  4. こんにちは。
    DVDで第一話から見直しているのですが、この話は、DVDの裏に、
    「コロンボを本気で怒らせた唯一の犯人にミスタースポックの・・」
    と書いてあるのですが、
    あれは本気で怒ったのではなく、再手術をさせるための演技だと思います。
    死んだら検死解剖に回す、と脅すのは、当然ながら、死なせないため。
    いかなる犯人よりも計算高いコロンボ警部がよくわかるシーンだと思います。
    どこかに書こう、と思って探して、ここに書きます。

    1. 肺炎双球菌さん、ありがとうございます。
      >コロンボを本気で怒らせた唯一の犯人
      唯一とは思えず、マイロ・ジャナスも同じくらい怒られてました。禁煙でイライラしてたのもありますが、スタッフォード夫人の病院にノコノコ出現したからですね。
      溶ける糸では、二人の対比があります。冷静が売り物のメイフィールドが高笑いし、警部が一喝しました。
      私は両方とも、本気の怒りを感じました。警部の虫の居所が悪かった理由は、やはり犯人の態度・行動が許せん!と思います。

  5. 個人的に、シリーズ上最も好きな作品です。
    私は中学2年生で、医学知識などゼロに等しいのですが、
    分かりやすく描かれていて楽しく見させてもらいました。
    手術を上からコロンボが見張っているシーンなど
    圧巻でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿はできません。リンクが含まれる投稿は承認待ちとなります。