10話「黒のエチュード」

Etude in Black / 1972

2つのバージョンについて

この黒のエチュードには、75分と96分[96mv]の2バージョンが存在します。[96mv]と記載のある箇所は、75分版にはなかったシーンです。詳しくはゲストさんがこの2つを比較検証されたコメントもありますので、お読みください。
75分と96分バージョンの違いについて

オーケストラの指揮者を演じたジョン・カサヴェテス

ジョン・カサヴェテスオーケストラの指揮者アレックス・ベネディクト(ジョン・カサヴェテス)が愛人のピアニスト、ジェニファー・ウェルズを殺害。俳優カサヴェテスは、ピーターフォークの親友ですが、インディペンデント映画の製作・監督としても有名です。

ベネディクトはイタリア系

以前本記事で「ベネディクトはイタリア系」であると断言していましたが、その後自信がなくなり一旦削除しました。2020年に久々に見返しましたら、ラストシーンで「チャオ」って言っていますね。だからイタリア系で良いのだと思います。本編でも(コロンボ警部と同じ)イタリア系について触れたらよかったのにと思います。

完全犯罪とはほど遠い凡ミス

ジェニファーから離婚を迫られていたことが動機。ベネディクトはジェニファーの死を自殺に見せかけますが、現場で証拠品の「花」を落としてしまうという、推理作品で最低のミスを犯し、それが決め手となり逮捕されます。しかも、それを映像手法上で分かりやすく見せていて、最も重要なシーンを見逃させない工夫が施されています。おそらくこの作品、「決め手」を分かりやすく設定したことで、ドラマの側面を引き出しているのではないでしょうか。

サングラスに花が映るシーン [96mv]

ジョン・カサヴェテス現場検証の最中のジェニファー宅にベネディクトが現れたとき、彼のサングラスに花が映るのは大胆な演出です。花を落としたことに気づいたサインですね。4話「指輪の爪あと」のブリマーのアイデアと似ています。

一流の芸術家は色を好む?

芸術の世界で成功を収めているが、それに満足できず全てを失うリスクを知りつつ浮気に走るベネディクト。仕事での成功も、権力者の娘と結婚したことで得たもので、純粋な成功とは言い難い。ベートーヴェンやブラームスが色を好んだエピソードを楽しそうに語りますが事実はそれ程とも思えず、彼は「自分が色を好んでいる」ことを暗に肯定しているようにも見えます。ベートーヴェンは確かに女性を好んだようです。ブラームスはもう少し堅物な印象。両者とも生涯独身を通していて、ベネディクトのような既婚者の浮気性とは結びつきません。

一見、潔く逮捕されたように映るが‥

「ラストは潔い犯人」という意見も多くいただきますが、私はその反対の印象も持ちました。有罪を認めながらも妻ジャニスに「証言の時には、僕が愛していたことを思い出して」と、囁いています。夫が愛人を殺害した‥というショッキングな事実を突きつけられた直後に、その夫が裏切った妻に「裁判で自分に有利に働く証言」を求めているのです。その後の「チャオ!」までの言葉は確かに、潔く聞こえますが。最後にコロンボ警部が「フランク、もう一度回してよ。今のコンサート」という言葉で画面は止まりますが、後味の悪さを拭い去りたいような気分もしました。

なおこの「証言の時には、僕が愛していたことを思い出して」というセリフは英語版には無いとの情報をいただきました。ですので本来の作品は、日本語版より綺麗なエンディングだったのだと思われます。(加筆:2021年12月7日)

被害者について語る刑事 [96mv]

ヘンリー・ベックマンジェニファー宅の捜査で最初、彼女の死について自殺とか、青い瞳とか、ナチュラル・ブロンドとか語り合う刑事は俳優ヘンリー・ベックマン。この特徴ってジェニファーよりむしろ妻ジャニスに似てますね。さてこの場面は96分バージョンで付け足されたものだそうです。それを知れば、あまり意味のないシーンだとも思えますね。

後任の刑事?は、マイラー刑事

ルー・ノヴァ最初の刑事(ヘンリー・ベックマン)が画面から消えた後は、突然、このマイラー刑事(ルー・ノヴァ)が画面に登場。恰幅の良い人で存在感を出しています。この2つの場面を見ますとやはり、別の日に撮影したシーンをくっつけた感じです。

美人ピアニスト、ジェニファー・ウェルズ

アンジャネット・カマー既婚者のアレックスに結婚を迫り、殺害されてしまう愛人ジェニファー(アンジャネット・カマー)。コロンボは彼女を「美人で若さと才能にあふれる女性」と賞しています。眉毛の細さが際立ってます。ブロンドというより、ブルネットまたはブラウン系の髪に見えたけど。

ジェニファー・ウェルズが最初に弾いていたピアノ曲

YouTube「ピアノ練習曲(エチュード)」ピアニストのジェニファー・ウェルズが夜のコンサートの指慣らしに弾いていたピアノ曲をパソコン演奏で再現しました。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

ブログ・コメンテーターさんからの情報でこの曲は「バッハ Bach:平均律第1巻第15番ト長調 BWV860」であると判明しました。またこの曲は「練習曲(エチュード)ではない」と書いておりましたが、「練習曲」として分類されることが多いそうです。大変失礼いたしました。(加筆訂正:2021年11月26日)

ジェニファーが死ぬ直前に弾いたもう一つのピアノ曲

アレックスのリクエストでジェニファーが死ぬ直前に弾いた‥最後の曲「ショパン練習曲作品25-1(エオリアン・ハープ)」。10年以上ブログを書いていて、これを見逃していたのは本当に罪深いです…。今反省しながら所有している音源ポリーニの1972年の演奏を聴いています。(加筆:2021年11月25日)

妻ジャニス役ブライス・ダナーが印象的

ブライス・ダナー妻のジャニス(ブライス・ダナー)は美しく見えました。アメリカ人離れした容姿と気品が出ています。そして彼女が要所で見せた表情は抜群でした。しかし、ベネディクトは愛人ジェニファーに惹かれます。それには「彼が才能を美と感じる」芸術家独特の視点があったからでしょう。妻のジャニスはそれを見抜いていました。

娘はオスカー女優「グウィネス・パルトロー」。

ブライス・ダナーの長女は女優「グウィネス・パルトロー」。私はあまり馴染みがないのですが、今ではむしろグウィネスの方が広く知られているのかもしれません。Wikipediaを見ますと私生活などに多くの有名人が登場し、華やかというか…びっくりします。グウィネス・パルトロー主演の映画「恋におちたシェイクスピア」を観ました。さすがに美しく、輝きを放っていました。この作品で彼女は「アカデミー主演女優賞」など多数の受賞をしました。(加筆:2023年6月24日)

ジャニスとカレンがお揃い

ジュリー・ハリスこの妻ジャニスが後半のハリウッド・ボウルでのリハーサル風景〜ラストで着ていた服は、何と19話「別れのワイン」の機中でカレン・フィールディングが着ていたものと酷似(ハッキリ言って同じ!)。(ゲストコメンテーターさん情報)→ジャニスとカレンがお揃い

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」の第4楽章

冒頭のベネディクト邸内やがコンサートで彼が指揮する交響曲は、ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」の第4楽章。この交響曲はベートーヴェンが唯一自分で「田園」と名付けた標題音楽的作品で、第4楽章は激しい雷雨・嵐の様子を表現しています。
→ 劇中で使われた印象的なクラシック音楽

モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第4楽章

もう1曲はモーツァルトのセレナーデ「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第4楽章。この2曲の演奏会であればかなり「ベタ」な演奏曲目ですが、本作ではともに「最もポピュラーな楽章」ではない楽章を採用していて、興味深いです。ちなみに両曲とも「第1楽章が最も有名」。

ピアニストが活躍する曲は?何だったのか…

ピアニストのジェニファー・ウェルズがドタキャンした…コンサートの本来の演奏予定曲目を大胆予想してみました。お遊び的な予想ですので、間違いかもしれません。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」
根拠はジェニファーが来れなくなった時ベネディクトは、「ベートーヴェンなら稽古済みだ(ベートーヴェンをピアノ無しの曲に差し替える)」と言っていること。そしてこの日のコンサートは「ベネディクト指揮 若者のための週末コンサート」であったこと。ベートーヴェンの有名なピアノ曲といえば「皇帝」でしょうね。

野外音楽ホール:ハリウッドボウルが舞台

犯人の職業がオーケストラの指揮者ということで、映像が華やかですね。そしてドラマの舞台がハリウッドボウルという美しい野外音楽ホールを中心に展開していること。このシチュエーションのパワーは大きいと思います。
→ハリウッドボウルの場所(PC)

コロンボ警部が演奏していた曲

コンサート会場で独りピアノを演奏していたコロンボ警部はベネディクトから「チョップスティック(曲名)は何十年ぶりに見た」と言われました。素人でも両手の人差し指だけで演奏できるのを、少し馬鹿にされた感じでした。チョップスティックとは「お箸(はし)」で、まるでお箸で弾いているような曲という意味です。

その後で、タイプライターの矛盾の指摘から始まり、修理に出した車の走行距離が15km増えた件に触れ、正式に他殺(殺し)事件として担当することになったと、切り返したのはスカッとしました。この話の流れだと警察は完全に「犯人=ベネディクト」と決めつけている感じですよね。

全編に流れる素敵な音楽

クラシック音楽を扱ったエピソードで、BGMもピアノ中心のクラシカルな曲でした。この「黒のエチュード」からスタートした「第2シーズン」。音楽監督を「ハル・ムーニー」が担当することになり、雰囲気が変わりました。私は大好きです。
→第2~第3シーズンの作品で使われるピアノBGM

第2~第3シーズンの不思議なピアノ曲

YouTube「不思議なピアノ曲」刑事コロンボの第2~第3シーズン「黒のエチュード」「偶像のレクイエム」「絶たれた音」「毒のある花」などで多用された「不思議な雰囲気を持ったピアノ曲」を再現しています。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

あのビートルズもコンサートを行ったハリウッドボウル

そのシーンもハリウッドボウルで撮影されていますが、このハリウッドボウルは私の大好きなビートルズ(イギリスのロックバンド)が1964年と1965年にライブコンサートをしていて、その様子は「The Beatles At The Hollywood Bowl」として当時ビートルズ唯一の公式ライブアルバムとして発表されています。

トランペットのポール・リフキン

ジェームズ・オルソントランペット奏者で南カリフォルニア交響楽団の楽団員ポール・リフキンは「ジェームズ・オルソン」。ジェニファーに振られたり、あらぬ容疑をかけられたり、理事長から睨まれたり、散々でした。2021年の加筆で初登場ですが、実は前から大好きなキャラでした。

LAのジャズの店と、ロンドンの蝋人形館が同一!

10話「黒のエチュード」で容疑をかけられるポールが演奏するLAのジャズの店と、13話「ロンドンの傘」の蝋人形館は同じ場所です。大胆な演出ですよね!(ブログゲストさんの発見でした)

LAのジャズの店ロンドンの蝋人形館1013

パット・モリタ [96mv]

パット・モリタベネディクト家の使用人を演じたのは、12年後に映画「ベスト・キッド」で一躍有名となった俳優「パット・モリタ」さん。黒のエチュードに出演時は40歳でした。コロンボをオーケストラのメンバーと間違えるシーンをコミカルに演じていました。このシーンのみベネディクトの髪が短く整髪されており、後で追加撮影されたことが良くわかります。でも良く見直しますと、この訪問でコロンボ警部が得たものは、ベネディクトの資産情報と直筆サインくらい。

コロンボ警部の年収が判明 [96mv]

アレックス・ベネディクト宅での会話、コロンボ警部の年収は自身が「1万1000ドル」であると口にしています。1972年当時の1ドルを約305円としますと、約335万円。そして消費者物価指数などを加味すると…600万円弱。という感じでしょうか。同情するほどの薄給ではありません。容疑者の方々がとてもセレブですので、差を感じますが。
→コロンボ警部の年収

楽団のビリー・ジョーンズ

ジェームス・マッキーチンジェニファーがコンサート会場に現れないことを知らせに来た、楽団のビリーは俳優ジェームス・マッキーチン。後の43話「秒読みの殺人」の映写技師「ウォルター」で再会できるでしょう。素敵な俳優さんです。

新聞社のエベレットがワイン屋のオヤジ! [96mv]

ジョージ・ゲインズランチのシーンで登場する。新聞社のエベレット(ジョージ・ゲインズ)は後に、19話「別れのワイン」でワイン屋のオヤジを演じています。雰囲気が変わるので気づきにくいですが、これは確かです!

新聞社のダーキーはドッグの校長先生 [96mv]

チャールズ・マカーリー同じシーンで登場する新聞社のダーキーは俳優:チャールズ・マカーリー。この俳優さんはなんと、23話「愛情の計算」で、犬の学校の校長先生を演じています。
また2話「死者の身代金」の捜査員もこの人ですが印象は薄いです。

修理工場のマイク

ドン・ナイトクラシックカーの修理が得意なマイク・アレキサンダーは俳優ドン・ナイト。助手のおじさんは、マイク・ラリーでしたね。クレジットにはアレキサンダーとされているが看板はグッドマンで、実際のこの修理工場のオーナーはグッドマンさんなのか?この修理工場はハリウッドボウルよりR101(ベンチュラ・ハイウェイ:アメリカの曲でも有名)を北西に向かい、R170で右折、オキシナード・ストリートを左折、バン・ナイーズ・ブールバードを北に向かうと最短距離で、往復でおよそ15kmです。(笑)
詳しくはコロンボマップ「ハリウッドボウルから修理工場」をご覧ください。

修理工場向かいのスタジオは閉店か?

コロンボが修理工場を訪れるシーンで、ベネディクトが居た時と去った後では状況が一変!まずコロンボ警部がよそよそしく再登場します。クラシックカーの置いてあった場所がかなり手前に変わっていて、道路沿いに警部のプジョーが出現。そして道向かいの「レコーディング・スタジオ」が閉店し、別の店に変わっています。(ブログゲストさんの発見でした)

修理工場を訪れるシーン修理工場を訪れるシーン7596

ポールを吊るし上げる理事会の女性。

ダイアン・ターレイ・トラヴィス理事会で向かって右側に座るメガネの女性は「ダイアン・ターレイ・トラヴィス」で刑事コロンボに度々、ちょい役で登場するエキストラ女優さんです。女版「マイク・ラリー」だと言えます。

交響楽団の理事長は大女優。

マーナ・ロイ鮮やかな衣装も話題になった交響楽団の理事長リジー・フィールディングは女優「マーナ・ロイ」。映画の黎明期?から活躍した大女優の一人だそうです(私は馴染みがありませんが)。「影なき男」シリーズ(1934年〜)で一時代を築いたとされます。日本語吹き替えは麻生美代子さん(サザエさんのフネ役)です。マーナ・ロイは、チャールトン・ヘストン主演の映画「エアポート’75」で、7話「もう一つの鍵」のスーザン・クラークと共演しています。

ショパンはインコではない!

ピアニストのジェニファーが飼っていた鳥ピアニストのジェニファーが飼っていた鳥は、おそらく「キバタン」だと思われます。隣の女の子はコロンボに「ショパンはボタンインコ」と言っていますが、それは間違い。顔の配色をみますと…これは「キバタン」というオウムの一種です!インコの一種(オカメインコ)なら「おかめ」のように頬にオレンジ系の丸があります。

隣の女の子オードリー

隣の女の子オードリー隣の女の子は「オードリー」で子役「ドーン・フレーム」。犬を飼う手ほどきや権利の説明など、大人びたキャラクターが可愛かったですね。彼女ドーンはその後のキャリアは確認できず、本格的な女優にはならなかったのかな。

監督:ニコラス・コラサント
脚本:スティーブン・ボチコ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

アレックス・ベネディクト:ジョン・カサヴェテス(声:阪脩
ジャニス・ベネディクト:ブライス・ダナー(声:寺田路恵)
ジェニファー・ウエルズ:アンジャネット・カマー(声:有馬瑞香)
リジー・フィールディング:マーナ・ロイ(声:麻生美代子)
ビリー・ジョーンズ:ジェームス・マッキーチン(声:笹岡繁蔵)
ポール・リフキン:ジェームズ・オルソン(声:野島昭生)
オードリー:ドーン・フレーム(声:冨永みーな)
ベンソン獣医:マイケル・フォックス(声:今西正男)
ベネディクト家の使用人:パット・モリタ
修理工マイク・アレクサンダー:ドン・ナイト
修理工フランク:マイク・ラリー

大幅に加筆:2021年12月7日
少し加筆:2023年6月24日

23話「愛情の計算」

Mind Over Mayhem / 1974

こんな話、実際にありそう

リュー・エアーズ人工頭脳学調査研究所所長のケーヒル博士が、息子の研究論文の不正を知った同僚のニコルソン博士(リュー・エアーズ)を殺害。学会の論文に関しては、日本でも2014年に「スタップ細胞」大事件が起きました。

初期の駄作?と言っては…お終い。

初期の作品においては、イマイチ納得のゆかない代表作です。近未来を描いたSF作品のようなシチュエーションもあり、こっけいな感じが漂います。もちろんその主役は「MM7」なるロボットです。当時の最先端な描き方ですが、時の流れとともに現実離れしました。

上手く行かない時もあります

脚本陣にはスティーブン・ボチコ、ディーン・ハーグローブ、ローランド・キビーと名を連ねていますが、ちょっと投げ出したくなった?かも。このような連名は名作にも見られることから、決して悪いことではないようですが。

フライデーではなく、ロビー。

ロビーロボットMM7は「私の場合」宇宙家族ロビンソンに出てくる「フライデー」が目に浮かびましたが、そうではなく映画「禁断の惑星」に登場した「ロビー」です。お恥ずかしながら、禁断の惑星は未見でしてピンときませんでした。

スティーブン・スペルバーグ少年

ロビーそれと、犯行解明に一役買う天才少年「スティーブン・スペルバーグ」くんはリー・ハーコート・モンゴメリー。投稿時には否定的でしたが、今見ると可愛い少年です〜。この数年前に映画「ベン」の主役を演じています。冒頭のクレジットにも名を連ねています。

不思議な味:ロバート・ウォーカーJr

ロバート・ウォーカーJr犯人の息子にして、研究論文をパクったニール・ケーヒル役のロバート・ウォーカーJr(声:原田大二郎)は、意外と?と言いますか、すごく印象的でした。ひょろっとした感じで、登場シーンから、妙に「ひっかかりました」ね~。彼は、宇宙大作戦(スタートレック)の「セイサス星から来た少年」でも印象的な役を好演しています。

セイサス星から来た少年(チャーリーX)

ロバート・ウォーカーJrこのロバート・ウォーカーJrは宇宙大作戦(スタートレック)の「セイサス星から来た少年」でチャーリー(日本語版ではピーター)役で出演しています。何でも思い通りにできる超能力少年です。本作はとても印象に残っています。

愛情の計算?

Mind Over Mayhemは直訳「騒乱についての心」。私は英語力が乏しく、これ以上言及しませんが邦題「愛情の計算」はひねり出した結論でしょうか。確かにコロンボシリーズ中、人のために(依頼されたケース:22話「第三の終章」などを除く)殺害することは稀です。
 
張本人のご子息ニールも事実を知らないのですし。しかし息子のために「殺し」を実行したというより、ケーヒル博士自身の名誉を汚さぬために犯行に及んだとも考えられます。むしろ、放置すれば息子が殺人犯になってしまうことから、自分の犯行を自供したことが「愛情の証」で、コンピュータを使った計画から「計算」という単語を引き出したのでしょうね。

犯人役「ホセ・フェラー」

ホセ・フェラーちょっと地味に感じてしまう、ゲストスターの「ホセ・フェラー」について調べてみました。プエルトリコ出身で「アカデミー主演男優賞」「ゴールデングローブ賞主演男優賞」なんかも受賞してるすごい俳優みたいです!また「アラビアのロレンス」でベイ将軍を演じていました。

ドッグの校長先生

チャールズ・マカーリー「愛犬ドッグ」が犬の学校を退学になります。この威厳のある校長先生:ファーンズワースは俳優:チャールズ・マカーリー。この一癖ありそうな俳優さんは、2話「死者の身代金」の捜査員、10話「黒のエチュード」では新聞社のダーキー役でも出演しています。

ニコルソン夫人

ジェシカ・ウォルター殺害されたニコルソン博士の夫人マーガレットは女優「ジェシカ・ウォルター」。とても美しい若奥さまでした。年の差婚なのですが、ざっと計算(笑)してみますと、夫ハワード(66歳)妻マーガレット(33歳)となりました。夫は実年齢より老けて見えるか!ジェシカ・ウォルターは映画「恐怖のメロディ」で監督・主演のクリント・イーストウッドと共演しています。また、コロンボと同時代のテレビドラマ「警部マクロード」にも出演しています。2021年81歳で他界しました。

フィールズ巡査部長

ウイリアム・ブライアントこの事件現場で活躍する刑事は、フィールズ巡査部長(ウイリアム・ブライアント)。この刑事さんは14話「偶像のレクイエム」でジェフリー刑事とて登場しています。同じようなキャラクターですので、名前も揃えて欲しかったです。

駐車場係のマーフ

アーサー・バタニデス顔を真っ黒にして働いていた駐車場係のマーフは俳優アーサー・バタニデス。彼は宇宙大作戦「スタートレック」にも出演しており、今後加筆いたします。

可愛いキャラ、ロス博士

ルー・ワグナー小柄な研究員、ロス博士はルー・ワグナー。シャツの大きな襟が印象的です。ドアに付いた「靴がかすった跡」の高さから、死体を運んだ人物とは思えず容疑者から除外。なんとも可愛いキャラでした。

2021年の大発見!

ルー・ワグナー2021年の7月にテレビで映画「猿の惑星」を録画することができました。その中で新たな発見をすることができました。人間テイラーを助ける甥っ子のチンパンジー「ルーシャス」がこのロス博士:ルー・ワグナーだったのです。小柄な体格を活かした名演技です、この発見は大感動でした。詳しい猿の惑星情報は研究記事「刑事コロンボと猿の惑星」をご覧ください。

ダイアン・ターレイ・トラヴィス

ダイアン・ターレイ・トラヴィス冒頭シーン「人工頭脳学調査研究所所長」の「第三次世界大戦のシミュレーション」で、登場する女性研究員の女優は「ダイアン・ ターレイ・トラヴィス」で、その他のコロンボ作品にも多少出演しています。

研究所の受付嬢を見逃すな

ディードル・ホールセリフも大写しもないので絶対見逃しますが、研究所の受付嬢は女優「ディードル・ホール」で、15年後に51話「だまされたコロンボ」でダイアン・ハンターを演じる有名女優です。本作は27歳、どんなに頑張ってもこれがベストショットで、言われてみればディードル・ホール本人かも?程度ですね。

監督:アルフ・ケリン
脚本:スティーブン・ボチコ、ディーン・ハーグローブ、ローランド・キビー
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

マーシャル・ケーヒル所長:ホセ・フェラー(声:鈴木瑞穂)
ニール・ケーヒル:ロバート・ウォーカーJr(声:原田大二郎)
ハワード・ニコルソン博士:リュー・エアーズ(声:真木恭介)
マーガレット・ニコルソン:ジェシカ・ウォルター(声:谷口香)
ロボットMM7:ロビー
スティーブン・スペルバーグ:リー・モンゴメリー(声:手塚学)
ロス博士:ルー・ワグナー
ドッグの校長先生:チャールズ・マカーリー
女性研究員:ダイアン・ ターレイ・トラヴィス
男性研究員:マイク・ラリー

加筆:2022年8月14日

30話「ビデオテープの証言」

Playback / 1975

ある意味、すごい豪邸

電子工業の社長ハロルド・ヴァンウィックが義母を殺害。手を叩いたら「ドアが開く家」なども含め、数十年前に見た当時を懐かしく思い出しました。今であれば簡単なことかもしれませんが、当時の個人宅でビデオ監視システムを使って家を警備しているなど、恐ろしいほど生活経費をかけていたものです。

オスカー・ウェルナー

オスカー・ウェルナーまずは何と言っても犯人役のハロルド(オスカー・ウェルナー:山田吾一)はGOODです。新しモノ好きで、子供のような性格に描かれています。それでいて、少し女好きでもありますね。私だけが感じるのかも知れませんが、顔がちょっとロック歌手のロッド・スチュアートとダブりました。

今回の再放送で彼の顔を見たとたん、「そうそう、この人、この顔!」って感じで、大はしゃぎしました。それくらい深いインパクトを与える俳優さんだと思います。

ジーナ・ローランズ

ジーナ・ローランズ犯人の妻エリザベス役ジーナ・ローランズも流石の存在感で、とても美しく見えました。哀愁の漂う素敵な奥様を演じていたと思います。彼女は10話「黒のエチュード」で犯人の指揮者アレックス・ベネディクトを演じた大物「ジョン・カサヴェテス」の奥様。「愛犬ドッグ」を可愛がってくれるシーンも良いですね。

映画「きみに読む物語」

きみに読む物語のジーナ・ローランズ「きみに読む物語」はAmazonプライムで見ました。とても良い映画です。監督はニック・カサヴェテスであの「ジョン・カサヴェテス」の息子。そして助演女優として74歳の「ジーナ・ローランズ」に会うことができます。とても素敵な役です。よろしかったらご覧ください。

マーサ・スコット

マーサ・スコット被害者となるマーガレット夫人は女優マーサ・スコット。日本語吹き替えは、このちょっと意地悪そうな夫人役のイメージにぴったりの女優「佐々木すみ江」さん。

凄い解決編、本当に文字まで読めるの?

解決編で、ビデオの映像を拡大して、そこに画廊の招待状が映っていた。というのは、どうも…。当時の解像度でそこまで読み取れますかね?オープンリールのようなかなり大きな記録メディアなので、そうなのかもしれませんが…ちょっと疑問です。(これについては後日、業界の方から「識別可能だ」とのご指摘を頂きました)

開けゴマ?

それに対し、銃声でドアが開いてしまったことを発見する着眼点は素晴らしかったですね。実際にピストルを発射して実験していますが、よく考えたら家中のドアが全部開くはずで、もっと大げさな状況になっていたのでは?とも…。ドアごとに感知のON/OFFをしていたのでしょうか? いずれにせよ、これらは足の不自由な奥様への愛情の証として考えられた装置であると思われます。

画廊の美人受付嬢に興味

トリシャ・ノーブルハロルドは知り合いのブラント画廊に採用された新人受付嬢「マーシー」に興味を抱いていました(笑)この女優さんはトリシャ・ノーブル(Trisha Noble)さんです。

画廊を訪問するコロンボ

パトリシア・バリー計算された「笑えるシーン」もありました。それはコロンボ警部がブラント画廊を訪問する場面。店主のフランシーヌ(パトリシア・バリー:曽我町子)とアート作品の価格について問答します。換気口をアート作品と勘違いするコロンボ警部の表情は「思わずにんやり」してますよね。日本語吹き替えの曽我町子さんは、オバケのQ太郎の声や主題歌を担当した方です。

はじめっから、顔が笑ってます

この時警部は自分でも、ちょっと笑っちゃっているでしょう、きっと。帰り際に照れながら「誰にも言わないでくれ」と、受付嬢マーシーに自分から失敗談を語ってしまうのも、コロンボ警部の人柄を上手に表現しています。

日本語吹き替え版のラストは少し残念…

母親殺害の犯人が実の夫だったとわかり、妻のエリザベスが泣き叫ぶシーンでエンディングを迎えますが…少し残念。美しいコロンボ作品を好む私としては、声は不要だった…です。

ブロンソン巡査への疑惑

フランク・エメット・バクスターこれもどうでも良い話なのですが、解決編で登場するブロンソン巡査。誰かに似ているな~と思ったら、気になってしまって。6話「もう一つの鍵」で新社長に就任したベス・チャドウィックが「自分の方針に逆らうなら再就職を考えなさい」と脅される役員の俳優さんと似ています。

この俳優さんは38話「ルーサン警部の犯罪」でウォードのギャラをさらに上げることに反対するテレビ局の役員でも出演しています。
これがもし同一人物だとすると…「フランク・エメット・バクスター」という俳優です。2011年の12月に名前が判明いたしました。

監督:バーナード・L・コワルスキー
脚本:デビッド・P・ルイス、ブッカー・T・ブラッドショー

ハロルド・バン・ウィック:オスカー・ウェルナー(声:山田吾一)
妻エリザベス:ジーナ・ローランズ(声:二階堂有希子)
マーガレット・ミダスマーサ・スコット(声:佐々木すみ江)
アーサー・ミダス:ロバート・ブラウン(声:佐々木功)
バクスター:ハーバート・ジェファーソンJr.(声:伊武雅之
フランシーヌ:パトリシア・バリー(声:曽我町子)
受付嬢マーシー:トリシャ・ノーブル(声:沢田敏子
レストランの客:マイク・ラリー

加筆:2014年2月28日

32話「忘れられたスター」

Forgotten Lady / 1975

泣けるコロンボ作品…

「忘れられたスター」は私が最も好きな刑事コロンボ作品のひとつ。解決編では、この作品ならではの結末を迎えます。それはコロンボ作品中、最も涙を誘うものです。

永遠のスター「ジャネット・リー」

ジャネット・リー往年の大女優グレース・ウィラー(ジャネット・リー)は輝きを放っていました。14話「偶像のレクイエム」のアン・バクスターの大女優も悪くはないのですが、私の好みも加味すると「格別」の感があります。

ジャネット・リーの代表作のひとつ映画「サイコ」では、名匠ヒッチコックが彼女の肉体的な魅力をも引き出していると感じられます。

「ウォーキング・マイ・ベイビー」のジャネット・リー

ウォーキング・マイ・ベイビー「Walking My Baby Back Home」は1953年のミュージカル映画。これより22年前(26歳)の作品だということです。ジャネットの役名は「クリス・ホール」で、ローズメリー・ランドル(ロージー)ではありません。主役の男性はダイヤモンドではなく「ドナルド・オコーナー」。

殺しの序曲のウエイトレス

また40話「殺しの序曲」に登場するウエイトレスは「ジェイミー・リー・カーティス」で、ジャネット・リーの娘です。

コロンボシリーズで最も重要な「犯人ではない登場人物」

ジョン・ペインかつての名優ネッド・ダイヤモンド役ジョン・ペインの存在も際立っています。スターでありながらジェントルマンでもありましたね。犯人でも被害者でもない登場人物として、ピカイチの存在感ですね。大好きです。日本語吹き替えはウルトラマンのムラマツ隊長(キャップ)で知られる「小林昭二(あきじ)」さん。

コロンボはネッドに何を託したか

コロンボ警部がネッド・ダイヤモンドに事件の全てを説明するのは、意味深いです。グレースが執拗な捜査にいらだちつつも、好意的な態度に変わっていくことから、「通常の殺人犯人とは違う」ことには気付いていたでしょう。そのような(病状の)グレースに対し「自白に導く」というコロンボ特有の「落としの手法」が不可能となりました。ラストシーンでコロンボ警部はおそらくグレースを逮捕しようとしますが、それはネッドの偽りの自白により阻止されます。もしもそのまま犯行を覚えていないグレースの逮捕という結末では‥後味が悪いですね。

エンディングシーンは警部のセリフ「それがいいね」と、自らを納得させるような表情。そして直前のネッドの自白すらも忘れ映画に見入るグレース。別れのあいさつをせず、ドアを閉めるコロンボ。この結末は最高に美しいです。(加筆:書きかけ2022年12月30日)

忘れられたスターの魅力

原題と邦題はほぼ同意味で、この作品を端的に表すグッドなネーミングです。「ファンは自分を決して忘れていない」と、女優復帰に並々ならぬ意欲をみせるグレースですが、当人は記憶を失う病気で、余命幾ばく。それを知っている夫ヘンリーは復帰に反対するが、愛情とは理解されず妻に殺されてしまう…。グレースを心から愛する元パートナーの俳優ネッドは、身代わりとなり逮捕される。

憎しみを感じさせない、悲しい殺人事件

アーミー・アーチャードもはやコロンボの名前すら覚えられないグレース。財産をはたいてまで復帰を目指しますが、プロデュースを買って出たネッドでさえ、復帰の難しさを感じていたでしょう。生きているうちに…と世界旅行を提案する夫の優しさも虚しい。幸せとは何であるか?を考えさせられました。(写真は冒頭の番組の司会者:アーミー・アーチャード本人役)

名作にふさわしい演出

ウォーキング・マイ・ベイビーウィリス邸での映画鑑賞会で、殺人は自分の犯行だと告白するネッド。それを知って驚くグレース。この二人の表情を、上映中の「ウォーキング・マイ・ベイビー」が照らし、際立たせる演出。会話の最中だけ映画音楽がカットされ、光と陰のみで表現されています。何回見ても感動するわけです。静止画にすると怖いけど綺麗なシーンです。これを意識して、もう一度このシーンを見てください!

覚えていないという主題

グレースは記憶を失う病気で、シーン各所にその伏線が見えています。ブログゲストさんのコメントにもありますが、何を覚えていて…何を忘れてしまったのか…その焦点もこの作品に不思議な魅力を加味しています。

夫ヘンリーはこの時84歳!

サム・ジャッフェ夫のヘンリー・ウィリスは俳優「サム・ジャッフェ」で、この時なんと84歳(1891年生まれ)。妻のグレースが48歳ですので、36歳の年の差婚なわけです。ちなみに23話「愛情の計算」、ニコルソン博士(66歳)妻マーガレット(33歳)、33歳の年の差婚なのでこっちの勝ちです!

サム・ジャッフェの実際の奥さま

ベティー・アッカーマン2021年にこれまたビックリ情報(コメンテーターさん情報)を得ました。この俳優サム・ジャッフェは、10話「パイルD-3の壁」で秘書のシャーマンさんを演じたベティー・アッカーマンが実の奥さまだということです。彼女は1924年生まれで、実際にも33歳差という、年の差婚だったのです!

人気ランキングで常に上位を獲得

コロンボ作品の「人気ランキング」では、確実に「5位以内の座を獲得する作品」だと断言しておきましょう。(笑)1位は、やはり「別れのワイン」の指定席。32話ということで、決して傑作ぞろいの初期作品‥ではないのですが、まだこのような斬新なストーリーがあったのだと、びっくりします。

これもひとつのスタイル

私は刑事コロンボの王道的なスタイルとして「成功者の転落劇」にこだわっています。もちろん、そこに刑事コロンボの醍醐味が存在するのですが、この「忘れられたスター」のような「決して悪人とは思えない」犯人によるストーリーも感慨深いですね。19話「別れのワイン」、41話「死者のメッセージ」などに同じ雰囲気を感じます。

執事レイモンドはモーリス・エヴァンス

モーリス・エヴァンスウィリス(グレース・ウィラー)家の執事レイモンドは、その可愛い風貌も含めとても素敵でした。奥様のアルマさんはとても若かったですね。これらの登場人物が、すべて良い味を出してると思います。コロンボ作品で名作と呼べるものには、このように脇役が作品の魅力を高めているものが多い気がします。

猿の惑星や奥さまは魔女などで活躍

モーリス・エヴァンス執事レイモンド役はモーリス・エヴァンスで、映画「猿の惑星」の「ザイアス博士」でもお馴染みの俳優。またテレビドラマ「奥さまは魔女」では、主人公サマンサのお父さま「モリース」を演じています。

バーク刑事Bではない!

ジェローム・グアルディノ後の作品、41話「死者のメッセージ」、43話「秒読みの殺人」、47話「狂ったシナリオ」に登場するバーク刑事Bの「ジェローム・グアルディノ」ですが、今回はまだバークではなくハリス刑事としてちょい役で出演しています。

ランズバーグ先生とコリアー先生は同僚だ!

ロス・エリオット31話「5時30分の目撃者」の精神科医コリアー先生と、32話「忘れられたスター」の外科医ランズバーグ先生(ロス・エリオット)の病院は同じでした!詳しくは「廊下に色ラインが描いてある病院」をご覧ください。

この病院で登場する女性警察官

レフコウィッツ巡査部長この女性警察官レフコウィッツ巡査部長は、フランシーヌ・ヨーク。制服がよく似合う素敵な女性でしたね。これをきっかけに、ラティ警部など数人の警察署員が顔をだして賑やかになります。

本屋の店員

本屋の店員自殺した(ようにみえる)夫のヘンリー・ウィリスが読んでいた本「マクトウィグ夫人の変身」について、詳しく教えてくれる店員さんは、31話「5時30分の目撃者」のコリアー先生の友人の一人です。

アンダーソン検死官

ハーヴェイ・ゴールド「アンダーソン検死官」「ハーヴェイ・ゴールド」。33話「ハッサン・サラーの反逆」でも検死官、27話「逆転の構図」ではカメラ店のハリー・ルイスを演じています。日本語吹き替えは「ウイルソン刑事」「ドカベンで徳川監督役」の野本礼三さん。

階段の吹き抜けと壁紙が印象的な豪邸

このウィリス邸は、玄関脇から2階に上る階段がとても印象的で、見上げたり、見下ろしたり、いろいろなアングルから撮影されています。また、花柄を基調とした壁紙も素敵です。グレースのお部屋などは白地にに明るい配色の花柄。それに対しご主人のお部屋などはブルーの花柄になっていて、シックな印象を受けます。邸宅が高台にあることから、窓越しの景色にハイウェイが見えたりして、とても素敵です。

一枚のドガの絵

一枚のドガの絵ゲスト・コメンテーターさんの発見です。後半の「ネッド・ダイアモンド・スタジオ」の廊下に飾られている絵は、あの「二枚のドガの絵」の中の一枚です!オリジナルとは‥考えにくい(複製の可能性)ですけど、楽しい発見。ドア越しにずっとこの絵が映っており確信犯だと思われます。
刑事コロンボのウィリス邸

監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ウィリアム・ドリスキル
音楽:ジェフ・アレギザンダー

グレース・ウィラー:ジャネット・リー(声:鳳八千代)
ネッド・ダイヤモンド:ジョン・ペイン(声:小林昭二)
執事レイモンド:モーリス・エヴァンス(声:巖金四郎)
アンダーソン検死官ハーヴェイ・ゴールド(声:野本礼三
パーティの客:マイク・ラリー
 
加筆:2024年3月4日

41話「死者のメッセージ」

Try and Catch Me / 1977
チャールズ・フランク人気女流ミステリー作家の「アビゲイル・ミッチェル」が「ヨットの事故で亡くなった姪」の夫エドモンド(チャールズ・フランク)を殺害。今回は金銭的な利害ではなく、姪のが死んだ責任はエドモンドにあると推理したアビゲイルが、その復讐を企んだもの。

エドモンドはフィリスを殺したか?

被害者のエドモンドは、それほど悪人には描かれていません。彼がフィリスを殺した証拠もありません。しかしエドモンドがアビーさんの部屋で、妻フィリスの写真を手にとって「薄笑い」をするシーンがあります。この表情は気にかかりますね。

この作品がベスト!と推すファンも多い。

ファンが選ぶベスト作品としては、やはり19話「別れのワイン」が最も多くの票を集めるのですが、この41話「死者のメッセージ」が一番好きだというコアなファンも多いのです。それくらい人気の高い作品。

ゲストスターのルース・ゴードンが素敵!

ルース・ゴードンこの作品も過去に見たときの印象がとても強かったです。まずゲストスターのアビゲイル・ミッチェル役:「ルース・ゴードン」が、素晴らしかったです。小柄な女性ですが、その小柄さと独特の仕草があいまってとても可愛らしく描かれていたと思います。
アビゲイル・ミッチェルはミステリーの女王「アガサ・クリスティ」がそのモデルになっているという説があります。
コロンボ警部が講演会のスピーチでも語っていますが「時には殺人犯を尊敬し、好意を抱くこともある」とは、まさにこの話のアビゲイル・ミッチェルを指しているのではと思われる程、お互いに敬意を表しながらストーリーは進みます。どこか19話「別れのワイン」に共通する雰囲気を持っている作品だと思いました。飛行機での旅行や、窒息死などの類似点もあります。

マリエット・ハートレイも魅力的

マリエット・ハートレイ22話「第三の終章」にも出演のマリエット・ハートレイが演じた秘書のベロニカもとても良かったと思います。ゲストスターの犯行を見抜いて恐喝する脇役はたくさんいますが、「殺されなかった」ことも、この作品を美しく感じさせる要因となっています。この点も「別れのワイン」に通じますね。この作品でベロニカは老眼鏡をかけるシーンがあります。でも実年齢は37歳。老眼にはまだ早すぎる気も‥。

秘書のベロニカは「聡い娘」

冒頭シーンでアビゲイルは秘書のベロニカを「聡(さと)い娘(こ)」だと評しています。聡いとは、感覚に優れ、聡明だという意味。ベロニカはエドモンドが金庫で死んだ時、すでにアビーさんの計画だと気づいていました。ベロニカはこの秘密をアビーさんの「遺産(財産)」と引き換えにするつもりだった。それを旅行中に提案しようと考えていた。(ぼろんこの妄想です)

大草原の小さな家「父さんの秘密」

マリエット・ハートレイ大草原の小さな家のシーズン2・19話「父さんの秘密」(1976年)。魅力的な未亡人「エリザベス・サーモンド」役でマリエット・ハートレイを見ることができます。本作の1年ほど前だと思われ、ほぼ同年齢。美しく優しい女性として描かれています。2020年の4K再放送でこれを見られたことは、とても嬉しいことです。

宇宙大作戦(スタートレック)

マリエット・ハートレイまたマリエット・ハートレイは、宇宙大作戦(スタートレック)の「タイムマシンの危機」の回のザラベス役で出演しています。あのスポックが彼女に恋愛感情を抱くエピソードです。1969年放送で、彼女が29歳の時です。

計画殺人モノとしての醍醐味

シリーズ中最も人気の高い「別れのワイン」は計画殺人ではありません。その点、この作品ならではの楽しめる点も多いのです。冒頭のベロニカとの会話のシーンでは、エドモンドが金庫から大声を出しても外に聞こえないテスト。そして、ストップウォッチを覗き見する時の表情も見逃せません。

弁護士のマーチンは鋭い

G・D・スプラッドリンまた、遺書にサインした直後に「不審な死をとげた」エドモンドですが、抜群のタイミングで起きたこの事件に対し、弁護士のマーチン(G・D・スプラッドリン)は「最初からアビゲイルが怪しい」と睨んでいたと思われます。旅立つ直前(犯行直後)に、金庫の前に立っている彼女と遭遇していますし…。船で口走った意味深な言葉はダメ押し的でしょう。

エドモンドの車のキー

ベロニカが「エドモンドの車のキー」の入手後、しばらくはアビゲイルの様子を伺っているのも、上手いな〜と思います。そして自ら恐喝に打って出ました。予期せぬ出来事「エドモンドの車のキー」の処理について、アビゲイルは2回キーを捨てるチャンスがありました。最初は犯行直後、2回目は警部の犬の散歩で出会った埠頭。推理小説の巨匠でも、生身の人間の行動においては、冷血な判断ができなかったのでしょう。キーは捨ててしまった方が良かったのです。

コロンボ警部の刑事哲学を感じました。

事件解決のエピソードはここでは語りませんが、ラストシーンで「特別扱いしてもらうわけではないが、この年だし、害のない人間だし…」と、見逃して欲しい…とすがるような態度を示すアビゲイルでした。ここでコロンボ警部が「先生も私も立派なプロですから」と諭した場面は、深く心に残るものです。コロンボにしてみれば、その動機から考えても同情したい気持ちは大きいのだが、「プロとして見逃すことはできない」ということでしょう。それはまた「殺人を扱う作家の完全殺人計画」が失敗に終わったことを認めた今、責任から逃避しないことを彼女に求めたのだと思われます。

ナイチンゲールはサヨナキドリ。

犯行の準備をするシーンで「何か聞こえる?ナイチンゲール?」のくだりがありますが、ナイチンゲールはサヨナキドリで鳴き声が美しい小鳥。「墓場鳥」とも呼ばれるそうで、コロンボ警部と初対面の日「警部がピアノでThis Old Man」を弾いた後、バーク刑事がドアを開けたシーンなどで庭から聞こえてくる鳥の鳴き声が、そのナイチンゲールなのでしょうか。

アビゲイル・ミッチェル邸。

ネットで調べたら「アビゲイル・ミッチェル邸」らしき場所の地図が見つりました。おぉ、ベロニカから恐喝をほのめかされた庭らしき形状がわかります。本当だろうか…。個人宅かもしれないので、いたずら行為等は厳禁です。しかし劇中では近所らしき海岸を散歩しますので、マリブ近辺に住んでいる設定です。

コロンボマップ
コロンボマップ

バーク刑事B

ジェローム・グアルディノバーク刑事Bは「ジェローム・グアルディノ」。この41話を皮切りに、43話「秒読みの殺人」や、47話「狂ったシナリオ」と多用されています。

32話「忘れられたスター」で射撃テストの身代わりになる俳優です。この人の他にもトッド・マーティンの演じる「バーク刑事A」が存在します!

「死者のメッセージ」は、音楽も素敵なんです。

音楽は、パトリック・ウィリアムズが担当しています。この他でも合計9作品に関わっているそうです。刑事コロンボ第7シーズンは音楽が素敵です。この「死者のメッセージは特に音楽が素敵」もその一つです。

「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」

YouTube「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」をパソコン演奏で再現しています。この作品が持つ「上品さ」はそのBGMの音楽性も大きく影響していると感じます。「アビゲイル・ミッチェルのテーマ」とは、私が名付けた呼び名です。音楽もお好きな方は、こちらもご覧ください。(*ご注意:YouTubeへのリンクは音が出ます!)

犬の散歩で出くわす海沿いのデッキ

Ocean Side East Cafe12

Ocean Side East Cafe41

コロンボ警部が犬の散歩中にアビゲイル・ミッチェルに出くわす海岸沿いのデッキは、12話「アリバイのダイヤル」で探偵ダブスとコロンボ警部が会う店と同じ(あるいは近い)場所です。ちなみにこの階段の下には「オーシャン・サイド・イースト・カフェ」があります(12話当時)。手すりの色が違いますが、5年経っているので、取り替えられたのかな。

三谷幸喜さんの大河ドラマ

三谷幸喜さんが脚本を手掛けられた2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、北条義時は妻に毒殺されたと描かれます。実際にそのように書かれた歴史資料も見つかっています。「鎌倉殿の13人」の最終回では、はは〜、アビゲイル・ミッチェルの講演会の言葉通りだな‥と頷きました。

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:ジーン・トンプソン、ポール・タッカホー
音楽:パトリック・ウィリアムズ

アビゲイル・ミッチェル:ルース・ゴードン(声:南美江)
秘書ベロニカ:マリエット・ハートレイ(声:桧よしえ)
エドモンド:チャールズ・フランク(声:松橋登)
マーチン弁護士:G・D・スプラッドリン(声:内藤武敏)

加筆:2023年2月3日

刑事コロンボマップ 刑事ぼろんこチャンネル

44話「攻撃命令」

How to Dial a Murder / 1977

初期シリーズの最後から二番目の作品です。約10年後から再開された新・刑事コロンボシリーズに影響を与えた作品ではないかと感じます。ストーリーの展開や解決編などに、同じテイストを感じます。

ニコル・ウイリアムソン

ニコル・ウイリアムソン犯人役のゲストスター、エリック・メイスン:ニコル・ウイリアムソンは、とても印象に残りました。少し宗教家じみた心理学者ですが、自分のスペースを確保するという自らの教えに反し、感情を剥き出しにする場面もあって笑えます。

 

ちょっと不可解?メイスン博士の性格設定。

このお話、殺害動機がらみの部分で少し釈然としません。犯人のメイスン博士は「普通の人間のような愛情表現」ができないように描かれています。それなのに、自分の妻と被害者チャーリーとの愛人関係を知ると、まず妻を殺害、そしてチャーリーを殺害(本件)。何が彼を復讐劇にかりたてたのでしょう。自尊心からでしょうか?であれば、妻の不貞を知り当事者2人を殺害したことの方が、もっと恥ずかしい気もします。

このエリック・メイスンは映画好き、テニス・ビリヤード好きということですが、キャラクターとは不似合いだったかも。それに対しピーター・フォークのビリヤードの腕前はピカイチでした。

キム・キャトラル

ジョアンナ・ニコルズ同居する若い女性:ジョアンナ・ニコルズ「キム・キャトラル」は美しく登場していましたが、メイスン博士に心を寄せるという設定は、不可解だった気もしますね。

トリシア・オニール

トリシア・オニール犬の訓練士コーコランを演じるトリシア・オニール(Tricia O’Neil)が人気です。このシーンでは「愛犬ドッグ」も可愛く登場していますね。詳細は不明ですが映画「タイタニック(1997)」にも出演しているようです。ぜひ探してみたいです。

「コロッケ」「コロンボ」はでっち上げ

コロンボ警部は「犬が言葉に反応して人に噛み付くか?」を模索するシーンで、「コロッケ」「コロンボ」と言いますが、これは日本語吹き替え版のアレンジのようです。実際にはピーター・フォークは「コロンボ」とは言っていません。メイスン博士が留置された犬に「チョコレート」を与えるシーンでコロンボはそれを阻止しますが、「犬にチョコレートは禁物」という知識にも基づいています。実際には少量のチョコレートの摂取では犬は死なないそうです。

映画「市民ケーン」

この作品を彩るシチュエーションとして重要な、映画オーソン・ウェルズ「市民ケーン」の全編は見ていません。もしも見ていたら、もっと楽しめた作品(攻撃命令)なのかもしれません。しかし2020年のNHK「映像の世紀プレミアム 第8集 アメリカ 自由の国の秘密と嘘」で取り上げられ、「市民ケーン」を断片的に見ることができました。

監督・製作・脚本・主演をオーソン・ウェルズが担っています。主人公のケーンは実在の新聞王ハーストをモデルにしていて、彼の権力により上映を妨害されたという有名なエピソードがあるそう。世界映画史上最高の金字塔とも称される名作とのことです。すごい!

コロンボ警部はビリヤードがお得意

2話「死者の身代金」では、初代バーニーの店(?)で、11話「悪の温室」でも犯人ジャービス・グッドウィン宅でもビリヤードの腕前を披露していますが、今回は解決編の進行にビリヤードを利用していて、演出としては少々やりずぎか…。しかしこれはメイスン博士を追いつめ、この際「コロンボを殺してしまえ」と決意させるための布石だったのでしょうね。

言葉遊びに見るコロンボ警部の刑事哲学

メイスン博士とコロンボ警部の「言葉遊び」の場面は興味深いものでした。ストーリー展開の上では「攻撃命令のキーワード」を引き出す仕掛けですが、コロンボ警部の「刑事哲学」を感じさせました。それは「正義=仕事」「苦痛=失敗」というくだり。自分の仕事はお金を得る手段とは考えておらず、「悪を許さない」こと、成功を収めたいという意味ではなく「失敗を許さない」こと、という2点。これは私(ぼろんこ)の目標ともダブることです。

類似シーンとして、40話「殺しの序曲」の中で犯人オリバー・ブラントとの会話でも見られます。

合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?

ブログのお客様からのご指摘。「コロンボに犬をけしかけようとするラスト近くのシーン、合言葉を口にした途端襲われるのはメイスン先生のハズだったのでは?」た、確かに!そうですね。シナリオ…全然駄目じゃん(笑)
↑と思いきや…絶対的な存在である飼い主を襲うことはない という原則に基づいたシナリオであればOK!とのことで納得です。

意外にも近場で!

メイスン博士のご自宅と、犬の訓練士コーコラン先生の訓練場所が、目と鼻の先っていう不思議(笑)どちらも「グリフィスパーク」の周辺もしくは公園内です。

犬の訓練士コーコラン先生の訓練場所

メイスン教授の講義の会場

ドクター・ケプルの試写会場エリックメイスン教授の大学の講義の会場エリックメイスン教授の大学の講義の会場は、21話「意識の下の映像」のドクター・ケプルの試写会の会場と同じです!(2022年ブログ・コメンテーターさんの発見)ちなみに9話「パイルD-3の壁」のマーカムの授業の会場は異なります。

音楽はパトリック・ウィリアムズ

音楽は、パトリック・ウィリアムズが担当しています。41話「死者のメッセージは特に音楽が素敵」を皮切りに、43話「秒読みの殺人」、45話「策謀の結末」と立て続けにコロンボ作品の音楽を担当。それらが素晴らしい仕上がりになっています。本作では「不気味」な印象が漂うBGMですね。それがそのまま作品のテイストにもなっています。

監督:ジェームズ・フローリー
脚本:トム・ラザラス
音楽:パトリック・ウィリアムズ

エリック・メイスン:ニコール・ウィリアムソン(声:平田昭彦)
ジョアンナ・ニコルズ:キム・キャトラル(声:宗形智子)
チャーリー・ハンター:ジョエル・ファビアーニ(声:寺島幹夫)
コーコラン:トリシア・オニール(声:藤夏子)

加筆:2022年9月2日