[1928年3月19日 – 2009年1月13日]
28話「祝砲の挽歌」陸軍幼年学校校長:ラムフォード大佐
34話「仮面の男」 国際謀報部員:ネルソン・ブレナー
37話「さらば提督」(演出のみ)
52話「完全犯罪の誤算」 弁護士:オスカー・フィンチ
67話「復讐を抱いて眠れ」 葬儀会社社長:エリック・プリンス
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筆者ぼろんこが刑事コロンボの素晴らしさを語る。コロンボ全話解説・出演者研究など。
作品の持った雰囲気がとても好きです。絵的な美しさ、兵学校という閉鎖された特殊なシチュエーション。他にも軍隊ものの作品はありますが、この「祝砲の挽歌」には及びません。
陸軍幼年学校の劣等生にその罪をきせる行動と相反し擁護するような言葉も…。厳しいが故に学校で孤立してしまう立場も…。生徒たちの「自供」により殺人を暴かれてしまう下りも…。流れるようにつながっています。また、学校の平面図から「陸軍幼年学校」が「男女共学のキャンパス」に改築される計画があったことを見破るあたり、コロンボ警部の着眼は流石です。
廊下をこそこそと進んで行くと、砲弾の工作をしている背中が見えてくる。予め準備した材料を丁寧に加工する手元。冷静ながらも…汗がしたたる表情。丁寧に指紋を拭き取る。火薬を流すために蛇口を振り回す。外に出た時、初めてタイトルクレジットの文字が表示され、微かなドラムロールでBGMが始まる。砲台での準備を終え、後に大きな意味を持つ「りんご酒」を見つける。6分30秒を過ぎた頃、軍隊ラッパの音と共に台詞付きのドラマがスタートします。始まりから6分30秒まで台詞は一切なし、音楽もごく小さい。この冒頭シーンを見ただけでこの作品がどれほど凄いかを直感します。
ラムフォード大佐は、自分の保身のために殺人を犯したとは思えません。むしろ間違った方向を向き始めたアメリカに対し「NO」と言いたかったのでは?私は戦争擁護の立場ではありません。ただ大佐の気持ちを考えただけです。
ラムフォード大佐の吹き替え「佐野浅夫」さんは素敵でしたが、ミラー当番兵(靴が汚れていた生徒)を再度呼び出して説教するシーンからしばらくの間、別の声優になっていました。佐野浅夫さんとは似ていない声で、この部分がとても残念でした。初期放送版ではカットされていたのでしょうね。重要な場面だと思いますが放送時間の関係でしょうね。
コロンボ警部が容疑者を「ラムフォード大佐」に絞る場面は、大佐がボロ布を最初に見た時に言及を避けたのに対し、スプリンガー候補生はためらうこと無く「大砲の清掃用の布」と答えたことにあるでしょうか。ラムフォード大佐は事故の原因をスプリンガーの不始末として片付けることを前提として、この犯行計画を始めたわけであり、自分の計画どおりに進む捜査に対し、すこしだけためらいの感情が出たのでしょうか。
原題は「By Dawn’s Early Light」で直訳は「夜明けの明りで」という感じ。「挽歌」とは中国で葬送の時に柩(ひつぎ)をひく者が歌った歌で、エンディングに歌とともに訓練する響きも通じて、納得の邦題です。これについては、ブログゲストさんが詳しく解説してくれていますので、ぜひお読みください。
「ヘインズ陸軍幼年学校」はサウスカロライナ州チャールストンがロケ地だということです。ですので海外ロケに匹敵するほどの作品スケールが感じられるわけです。
監督:ハーヴェイ・ハート
脚本:ハワード・バーク
ライル・C・ラムフォード大佐:パトリック・マクグーハン(声:佐野浅夫)
スプリンガ―候補生:マーク・ホイーラー
ミラー候補生:ロバート・クロットワーシー
モーガン候補生:ブルーノ・カービー
秘書ブレイディ:マデレーン・シャーウッド(声:高橋和枝)
クレイマー刑事:ブルース・カービー
ルーミス大尉:バー・デベニング(声:徳丸完)
ウィリアム・ヘインズ:トム・シムコックス(声:堀勝之祐)
加筆:2020年7月26日
壮大なスケールで描かれた二作品、33話「ハッサン・サラーの反逆」と35話「闘牛士の栄光」に挟まれたこのお話も、犯人がCIAの情報部員であるという意味で、凄く大げさな背景でした。
追いはぎ天国で、初動捜査にあたる検死官の一人:アンダーソンは、バーク刑事Bの「ジェローム・グアルディノ」と良く似ていますが、おそらく別人で「カーメン・アルジェンツィアノ」という俳優さんです。
戦歴も誉れ高く、経営コンサルタントとしても有名。それにしても、半端でなく家が豪華!もの凄いプールで十人近いゲストが泳いでいるし。こりゃ、悪いことして蓄財してますって、自分で言っているようなもので、「二重スパイで荒稼ぎ」って、CIAは見抜けなかったんでしょうかね?
後半のシーンで、ブレナーはコロンボを自宅に誘います。署に戻る必要があると一旦は断わりますが、日を改めて邸に出向くことになります。ここでブレナーはお酒を振る舞いますが「百薬の長としては、何が望みか?」とコロンボに尋ねます。シンドバッドのオーナーが「毒は何にします?」と言い回したのと対照的で面白いです。
中国の麻雀セットを見せてもらったコロンボから「ギャンブルがお好きなんですね?」と尋ねられ「それ以外、何がある?」と答えるブレナー。コロンボ作品の中には、ギャンブル好きの登場人物が多く出てきます。
ブレナーは数々の成功を収め名誉も富も手に入れたのに、退屈な人生だと評しシラけた口調です。コロンボ警部がブレナーの部屋で珍しいものを見てハシャイでいるので、何とも不思議な会話になっています。
ラストシーンのジョークの意味が不明であるというコメントを頂くことがあります。これはぼろんこの私的解釈ですが、ポーカーは「ポーカーフェイスなブレナー」を比喩しています。マージャンは中国発祥のゲーム。「ポーカー(ブレナー)がマージャン(中国)と賭けをして、はじめはポーカーが優勢、ところが後半…逆転。」これはブレナーの完全犯罪は、中国のオリンピック不参加報道によって阻まれた…という感じでしょうか。
コメンテーターさんの調べで原文は
Columbo “Would you like to hear something funny?”
Brenner “I’d love to.”
Columbo “Today, Chinese…they changed their minds.”
Brenner “Did they, again?”
Columbo “They’re back in the games…”
Brenner “in the games….Mah-Jong.”
だそうです。
監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ウィリアム・ドリスキル
ネルソン・ブレナー:パトリック・マクグーハン(声:佐野浅夫)
ジェロニモ:レスリー・ニールセン(声:家弓家正)
クレーマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也)
コリガン部長:デヴィット・ホワイト(声:早野寿郎)
サルヴァトーレ・デフォンテ:ヴィトー・スコッティ(声:相模太郎)
ローレンス・メルビル:オティス・ヤング
シンドバッドのバーテン:ヴァル・アヴェリー(声:金井大)
アンダーソン検視官:カーメン・アルジェンツィアノ
射的屋:ウイリアム・マイムズ
写真屋ドン:クリフ・カーネル
ジョイス:バーバラ・ローデス
遊園地の女の子:アリシア・チャンバース
ホテルのボーイ:ケリー・フリン
ホットドッグ屋:ベン・フロマー
タクシーの運転手:マイク・ラリー
広告会社の若手重役:エドワード・バック
ブレナーの秘書:アンジェラ・メイ
ブレナーの使用人:ビクター・トヨダ
加筆:2024年11月5日
完全に倒叙でない刑事コロンボ作品です。私のような保守的な刑事コロンボファンの場合、受け入れ難いのですが、普通に考えれば面白い作品なのだと思えます。
この「デニス・デューガン」は、その後の作品63話「4時02分の銃声」で監督をつとめています。さらには(1973年 – 1987年の間)「ジョイス・ヴァン・パタン」の夫だったそうです。彼女は27話「逆転の構図」、39話「黄金のバックル」に出演している重鎮女優ですね。
しかし本作が意外に好評だったのか? 第6シーズン以降の8作品が制作されることになりました。その中には41話「死者のメッセージ」43話「秒読みの殺人」など私の好きな作品も含まれています。
37話「さらば提督」のチャーリー・クレイ邸と、55話「マリブビーチ殺人事件」のテレサ・ゴーレン邸は同じでした。これには両作とも脚本が「ジャクソン・ギリス」であったことも関係しているのでしょうか。
周囲が車寄せの道に囲まれた円形の花壇が印象的な豪邸です。マリブビーチというロサンゼルス中心から北西に位置します。おそらく近くには「マイロ・ジャナス」「ブリマー」「マックス・バーシーニ」「フィールディング・チェイス」などの有名人が住んでいました。実在の「ピーター・フォーク」の家も近かったようです。
それに対しヨットハーバー「 バルボア・ベイ・リゾート」は、ロス中心からずっと南の方で、家とはぜんぜん近くないのです。
監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジャクソン・ギリス
オーティス・スワンソン提督:ジョンデナー(声:小林修)
チャーリー・クレイ:ロバート・ヴォーン(声:西沢利明)
ジョアンナ・クレイ:ダイアン・ベイカー(声:水野久美)
スワニー・スワンソン:フレッド・ドレイパー(声:佐藤英夫)
リザ・キング:スーザン・フォスター(声:松金よね子)
ケタリング:ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(声:松村彦次郎)
クレーマー刑事:ブルース・カービー(声:杉田俊也)
シオドア・アルビンスキー刑事:デニス・デューガン(声:玄田哲章)
ガードマン:ジョン・フィネガン
ウェイン・テイラー:ジョシュア・ブライアント(声:鈴木泰明)
オコーナー少尉:ロッド・マッケリー(声:納谷六朗)
加筆:2022年8月14日
政界入りを目論む弁護士オスカー・フィンチが自分の過去の汚点を知るステイプリンを殺害。フィンチは下院議員ポール・マッキーを支援し将来の司法長官を目指すが、無名時代にマッキーと共に犯した「証拠書類隠滅」をネタにステイプリンより脅迫されて犯行に至ります。
犯人役のパトリック・マクグーハンはコロンボ作品中、最も重要だとも言えるゲスト俳優。異常な程時間にシビアな犯人フィンチが、日本人には理解し難い下ネタジョークに大笑いしたり、タイヤを鳴らして急発進したりする場面はこっけい。このフィンチの最大の欠点が「つまみ食い」であるというのも、かなり計算された笑いどころだと感じます。
殺人シーンの描き方は緊張感が漂うものでした。けど、撃たれた後に血が一滴?は若干違和感があります。それでもフィンチの工作シーンや、殺害後オフィスに戻って濡れた髪を乾かす仕草など、良く描かれていました。
音楽の使い方も好きでした。冒頭のシーンの「デキシーランドジャズ」は印象的ですし、撃たれた時の効果音的な音楽も絶妙でした。エンディングの「命取りでした」というコロンボの言葉で画面が固まる場面など、新・刑事コロンボの作品の中ではとても良いの出来だと言えます。
吹き替えは俳優の久米明さん。やはり流石です。選挙に勝利した祝賀ムードの中でコロンボ警部に「濡れちゃったズボン」と大声で指摘され、「失望したよ、キミ」という台詞を吐くあたり、最高潮です。また「下ネタジョーク」でアイリッシュのジョークは聞きたくないと答えるフィンチ氏。パトリック・マクグーハンはおそらくアイリッシュ系ではないでしょうか?自分はこの手の話には詳しくないので、勉強する必要がありそうです。
「完全犯罪の誤算」という邦題は原題「Agenda for Murder(殺人の計画?)」とかけ離れますが惜しいですね~。フィンチ氏の「忙しさ」を表現すると思われる「Agenda」にこだわった題名が欲しかったと悔やまれます。
監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ブルーム
オスカー・フィンチ:パトリック・マクグーハン(声:久米明)
ポール・マッキー議員:デニス・アーント(声:黒沢良)
フランク・ステイプリン:ルイス・ゾリック(声:小松方正)
モントゴメリー候補:アーサー・ヒル
秘書ルイーズ:アン・ヘイニー
フィンチ夫人:アン・ヘイニー
ティム・ヘインズ:スタンリー・カメル
トビー・リット:スティーブン・フォード
レベッカ・クリスティ:アニー・スチュワート
ダイアン:キャロル・バービー
クレーマー刑事:ブルース・カービー
加筆:2024年8月29日
特に犯罪を隠蔽するためにせっせと工作する時の仕草、表情は絶品。まるでそれを楽しんでいるかのようにも見えるし、強がっているようにも見えます。「復讐を抱いて眠れ」でのハリウッドで葬儀屋の社長エリック・プリンスは、28話「祝砲の挽歌」のラムフォード大佐、52話「完全犯罪の誤算」の弁護士オスカー・フィンチより、若干キャラクター性を抑え気味でしたが、十分にマクグーハンを堪能できる作品でした。
後半でコロンボ警部が語気を急に強める場面は、他の回と比べて嫌悪感を露にしていない犯人に対して、すこし唐突な態度に感じました。おそらく、遠く離れた相手に向かって、大きめに喋ったのでしょう。執拗に付きまとうコロンボ警部に対し、今回のエリック・プリンス氏は忍耐強かったと思いますね。
原題「Ashes to Ashes」の直訳は「灰から灰」で、邦題の「復讐を抱いて眠れ」よりも内容に直接的な題名です。復讐を抱いて眠れは間違っていませんが、ベリティの復讐心が殺される引金になったとしても、その後の展開ではあまりクローズアップされていないのでピンと来ません。
また決め手となった金属製の砲弾の破片ですが、プリンス氏が骨壺に灰を入れる際にもっと慎重に行っていれば、入っていなかったでしょうね、割と慎重そうな人物ですけど。
ベリティ・チャンドラーが次回のハリウッド裏情報は「骨がカタカタ言い出すようなレポート」だと予告しているのも興味深いです。これはネタの対象が「葬儀屋」であることだけでなく、ラストシーンで骨壷を振ったらカタカタと音がしたことへも繋がっています。
ベリティのメモの解読の過程で候補にあがったイニシャルの中で「スティーブン・ボチコ」は、1話「構想の死角」7話「もう一つの鍵」9話「パイルD-3の壁」10話「黒のエチュード」17話「二つの顔」などを手掛けた脚本家。
ドロテア・ページの旧邸の位置はピンポイントではなく、サンセット・ブールバードを示しています。それに対しハバランド・プリンス葬儀社はストリートビューで見ると2021年現在「ほぼ当時のまま」のを見ることができます。
監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ハッチャー
エリック・プリンス:パトリック・マクグーハン(声:有川博)
リズ・ヒューストン:サリー・ケラーマン(声:大西多摩恵)
ベリティ・チャンドラー:ルー・マクラナハン(声:此島愛子)
リタ:キャサリン・マクグーハン(声:駒塚由衣)
ロジャー・ギャンブルス:スペンサー・ギャレット
フレッド:オーベリー・モリス
レービー夫人:エディ・マクラッグ
エディ・フェネル:ロン・マサック
ジェラルド:スコット・N・スティーブンス
ヘンリー・シャルホン弁護士:コンラッド・バックマン
デガルモ刑事:リチャード・リール
加筆:2024年9月1日
しかし警部はいったいどのタイミングでクロフォード氏を犯人とにらみましたかね~。狂言ガス欠をしたくらいなので、その前ということになりますが、私はそれほど怪しく感じませんでした。
コロンボが犯人を徐々に追いつめて行く雰囲気もなく、将棋で言えば長い序盤が延々と続き、急に投了シーン…という雰囲気。しかも、えらく楽しそうに犯行を認めているし。普通だったら認めません、殺人容疑ですから。「復讐を抱いて眠れ」も同じく、こんなにあっさり片付けないでほしい気がします。演出のパトリック・マクグーハンの好みでしょうか。
コロンボ作品のラストシーンは、犯人がじたばたしながらも完全に敗北を認めざるを得ない…ってのが美しいと思ったりしますが、今回は動機と状況証拠だけで逮捕してます。「音楽クラブのある刑務所があったら紹介してくれ」が自供ですね、楽観的な人です~。
「あまりに多くの音符」というのは、クロフォードの作風を意味しているのでしょうか?映画「アマデウス」でモーツァルトが皇帝から「音符が多すぎる」と指摘され「自分の曲には必要な音符しかない」と反論した場面を思い出しました。音符が多いというのは、洗練されていないような意味にもとられ、クロフォードの作風が古臭いことを比喩しているのだとも感じます。それに対しガブリエルの曲は映画を引き立たせる最小の音符で構成されていたとか。
音楽には一般的に「CDEFGAB」「ドレミファソラシ」のNoteがあるのですね。
「G・A・B・E」「B・E・C・C・A」
「B・E・C・C・A」「G・A・B・E」
というメロディ(音符・Notes)を愛する人に渡した手紙(メモ・Note)。これはとても綺麗なテーマだと思えます。しかも「Too Many Notes」ではなくシンプル。よく見ると4/4の楽譜に納まっていませんが(笑)
私の好きな「ペンギン・カフェ・オーケストラ」が敬愛する作曲家「ジョン・ケージ」に捧げた曲「Cage Dead(1993)」では「C・A・G・E」「D・E・A・D」のコードあるいは音符を順に弾く構成でできています。本作のヒントになっているでしょうか?
監督:パトリック・マクグーハン
脚本:ジェフリー・ケーヴァ、パトリック・マクグーハン
フィンドレー・クロフォード:ビリー・コノリー(声:佐々木勝彦)
ガブリエル・マッケンリー:チャド・ウィレット(声:森岡弘一郎)
レベッカ:ヒラリー・ダナー(声:山田里奈)
シドニー・リッター:チャールズ・チョフィ(声:小林勝彦)
デガルモ刑事:リチャード・リール
マーシア:アン・マクグーハン
加筆:2024年9月5日